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第四章 ノースの街作り
第103話 世界樹の街⑤
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「こ、これが世界樹……」
「神々しいですね……」
「ノース様の作り上げる街にピッタリですね!」
なにがピッタリなのかはわからないけど、とりあえず、言えるのは圧巻の一言だけだ。
世界を支える大樹の名に恥じない大きさ。
世界樹の葉からは神々しいまでの光が零れ、その光が辺り一帯をやさしく包み込んでいく。
「ありがとう。クロユリさん」
「いえ、私はなにもしていません。お礼はこのドラちゃんに言って下さい」
ドライアドに視線を向けると、ドライアドは胸を張り、『キュイ!』と鳴いた。
相変わらずの可愛さだ。
クロユリさんのようにずっと肩に乗せていたい。
「ありがとうございます。ドライアド様」
そう言って、頭を下げると、ドライアドが僕の方に飛び乗ってくる。
そして『キュイ!』と鳴くと、クロユリさんの下に戻っていった。
いまのはなんだったんだろうか?
ずっと僕の肩に乗っていてもいいのに……。
ドライアドがクロユリさんの肩に戻っていったことを少しだけ残念に思っていると、ナビさんが視界に文字を浮かべてくる。
<さて、世界樹を囲うように街を作るには時間がありません。一時間以内に作業を終えますよ! それ以上、時間をかけると邪魔が入りそうですからね>
ナビさんがそう文字を浮かべると、クロユリさんの背後にマッシュルーム・アサシンが現れる。そして、木の板のような物をクロユリさんに渡すと、そのまま、森の開拓作業に戻っていった。
「クロユリさん。マッシュルーム・アサシンからなにを受け取ったの?」
「はい。どうやら、これはこの辺り一帯の地図のようですね。世界樹を中心として半径十キロ以内のモンスターは排除したから、この地図に沿って『精霊壁』を築いてほしいと書いてあります」
どうやら、ナビさんはマッシュルーム・アサシンを通してクロユリさんに『精霊壁』で街を囲うようお願いしたみたいだ。
「そっか、世界樹を生やしたばかりで大変かもしれないけど、お願いできないかな?」
一応、俺からもお願いしておく。
すると、クロユリさんは満面の笑みを浮かべた頷いた。
「はい! はい、はい、はい! 私、ノース様のお願いならなんでも聞いちゃいます! 私にできることがあれば、なんでも言って下さい!」
「う、うん。なにかあったらお願いすることにするよ……」
「それじゃあ、早速、精霊壁を築いちゃいますね!」
そう言うと、クロユリさんはドライアドと共に、地図を片手に走っていってしまう。
だ、大丈夫だろうか……。
なんだか、クロユリさんの好意に付け込んでいるみたいで心が痛い。
<大丈夫です。これもすべて、あのハーフエルフが望んだことです。ノース様が心を痛める必要はありません>
(いや、そうもいかないでしょ)
最近、トイレに行っても、風呂に入っていても、夢の中でさえも時頼、クロユリさんの視線を感じることがある。
まあ、そんなことを考えること自体、自意識過剰だし、多分、気のせいだとは思うけど……。
<いえ、それ、気のせいじゃないですよ?>
(えっ?)
なんだかいま、ナビさんに怖いことを言われたような気がする。
視界の隅を確認するが、ナビさんの浮かべた文字は既に消えていた。
まあいいか……。
しばらくすると、世界樹を起点に精霊壁がせり上がってくる。
「おお、壮観だね」
やっぱりクロユリさんは凄い。
あんな広範囲に『精霊壁』を築くことができるなんて……。
「でも、なんだか精霊壁の大きさが、ホオズキの街より大きいような……」
気のせいかな?
なんだか、精霊壁の高さが十メートルを超えているような気が……。
まあ、低すぎるよりはいいか。
そんなことを考えていると、クロユリさんが駆けてくる。
「ノース様~! 見ていて下さいましたか?」
「うん。クロユリさん、ありがとう。あれだけ大きな防壁があれば安全に過ごすことができそうだよ!」
「そうですか! 私、ノース様のお役に立てて嬉しいです!」
「そ、そう? クロユリさんもなにか困ったことがあれば、遠慮なく言ってね? 僕にできることならなんでもするからさ」
そう言うと、クロユリさんの表情が一瞬固まり、真剣な表情を浮かべる。
「……ノース様? 『なんでも』というのはどの辺りのことまで許容されるのでしょうか?」
「えっ? う~んと、そうだね。僕にできる範囲のことならなんでもいいよ?」
クロユリさんとドライアドには、なにかとお世話になってるし、自分にできる範囲のことであれば聞いてあげるつもりだ。
まあ、全財産を頂戴! とか、私と一緒に死んで! とか、言われたら話は別だけど……。
そう言った直後、クロユリさんが考え込み始めてしまった。
『ノース様の私物を……いえ、やはりここは一緒の寝室で……でも、それだと……』
声が小さくてよく聞こえないけど、クロユリさんがなんか、怖いことを呟いている。
だ、大丈夫だろうか?
今更ながら、とんでもない発言をしてしまった気がする。
ま、まあ、常識の範囲内でね? 常識の範囲内のお願いであれば聞くけど、それ以外は難しいからね?
わかっているよね??
「神々しいですね……」
「ノース様の作り上げる街にピッタリですね!」
なにがピッタリなのかはわからないけど、とりあえず、言えるのは圧巻の一言だけだ。
世界を支える大樹の名に恥じない大きさ。
世界樹の葉からは神々しいまでの光が零れ、その光が辺り一帯をやさしく包み込んでいく。
「ありがとう。クロユリさん」
「いえ、私はなにもしていません。お礼はこのドラちゃんに言って下さい」
ドライアドに視線を向けると、ドライアドは胸を張り、『キュイ!』と鳴いた。
相変わらずの可愛さだ。
クロユリさんのようにずっと肩に乗せていたい。
「ありがとうございます。ドライアド様」
そう言って、頭を下げると、ドライアドが僕の方に飛び乗ってくる。
そして『キュイ!』と鳴くと、クロユリさんの下に戻っていった。
いまのはなんだったんだろうか?
ずっと僕の肩に乗っていてもいいのに……。
ドライアドがクロユリさんの肩に戻っていったことを少しだけ残念に思っていると、ナビさんが視界に文字を浮かべてくる。
<さて、世界樹を囲うように街を作るには時間がありません。一時間以内に作業を終えますよ! それ以上、時間をかけると邪魔が入りそうですからね>
ナビさんがそう文字を浮かべると、クロユリさんの背後にマッシュルーム・アサシンが現れる。そして、木の板のような物をクロユリさんに渡すと、そのまま、森の開拓作業に戻っていった。
「クロユリさん。マッシュルーム・アサシンからなにを受け取ったの?」
「はい。どうやら、これはこの辺り一帯の地図のようですね。世界樹を中心として半径十キロ以内のモンスターは排除したから、この地図に沿って『精霊壁』を築いてほしいと書いてあります」
どうやら、ナビさんはマッシュルーム・アサシンを通してクロユリさんに『精霊壁』で街を囲うようお願いしたみたいだ。
「そっか、世界樹を生やしたばかりで大変かもしれないけど、お願いできないかな?」
一応、俺からもお願いしておく。
すると、クロユリさんは満面の笑みを浮かべた頷いた。
「はい! はい、はい、はい! 私、ノース様のお願いならなんでも聞いちゃいます! 私にできることがあれば、なんでも言って下さい!」
「う、うん。なにかあったらお願いすることにするよ……」
「それじゃあ、早速、精霊壁を築いちゃいますね!」
そう言うと、クロユリさんはドライアドと共に、地図を片手に走っていってしまう。
だ、大丈夫だろうか……。
なんだか、クロユリさんの好意に付け込んでいるみたいで心が痛い。
<大丈夫です。これもすべて、あのハーフエルフが望んだことです。ノース様が心を痛める必要はありません>
(いや、そうもいかないでしょ)
最近、トイレに行っても、風呂に入っていても、夢の中でさえも時頼、クロユリさんの視線を感じることがある。
まあ、そんなことを考えること自体、自意識過剰だし、多分、気のせいだとは思うけど……。
<いえ、それ、気のせいじゃないですよ?>
(えっ?)
なんだかいま、ナビさんに怖いことを言われたような気がする。
視界の隅を確認するが、ナビさんの浮かべた文字は既に消えていた。
まあいいか……。
しばらくすると、世界樹を起点に精霊壁がせり上がってくる。
「おお、壮観だね」
やっぱりクロユリさんは凄い。
あんな広範囲に『精霊壁』を築くことができるなんて……。
「でも、なんだか精霊壁の大きさが、ホオズキの街より大きいような……」
気のせいかな?
なんだか、精霊壁の高さが十メートルを超えているような気が……。
まあ、低すぎるよりはいいか。
そんなことを考えていると、クロユリさんが駆けてくる。
「ノース様~! 見ていて下さいましたか?」
「うん。クロユリさん、ありがとう。あれだけ大きな防壁があれば安全に過ごすことができそうだよ!」
「そうですか! 私、ノース様のお役に立てて嬉しいです!」
「そ、そう? クロユリさんもなにか困ったことがあれば、遠慮なく言ってね? 僕にできることならなんでもするからさ」
そう言うと、クロユリさんの表情が一瞬固まり、真剣な表情を浮かべる。
「……ノース様? 『なんでも』というのはどの辺りのことまで許容されるのでしょうか?」
「えっ? う~んと、そうだね。僕にできる範囲のことならなんでもいいよ?」
クロユリさんとドライアドには、なにかとお世話になってるし、自分にできる範囲のことであれば聞いてあげるつもりだ。
まあ、全財産を頂戴! とか、私と一緒に死んで! とか、言われたら話は別だけど……。
そう言った直後、クロユリさんが考え込み始めてしまった。
『ノース様の私物を……いえ、やはりここは一緒の寝室で……でも、それだと……』
声が小さくてよく聞こえないけど、クロユリさんがなんか、怖いことを呟いている。
だ、大丈夫だろうか?
今更ながら、とんでもない発言をしてしまった気がする。
ま、まあ、常識の範囲内でね? 常識の範囲内のお願いであれば聞くけど、それ以外は難しいからね?
わかっているよね??
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