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第四章 ノースの街作り
第99話 世界樹の街①
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エルフとは、自然と豊かさを司る小神族で、その容姿は美しく若々しい外見を持ち、森や泉、地下などに住むとされる。また彼らは不死あるいは長命であり、精霊との親和性もよく魔法の力を持っていると、一般的には言われている。
「……えっと、湧泉って、そこにしかないのかな? もしかして、その湧泉もエルフの人達が使ってるんじゃない? それに湧泉の近くにエルフが住んでいると、なにか問題があるの?」
そう質問すると、アミリアさんは苦笑いを浮かべた。
「エルフは基本的に湧泉を完全に潰すまで、湧泉を使い続けるので問題ありません。しかし、街を作るに適した立地がそこしかないのです。しかし、そこでエルフが問題となってきます」
「問題?」
そう呟くと、アミリアさんはクロユリさんに視線を向ける。
「……クロユリ様、気を悪くしないで聞いて下さいね?」
「はい? わかりました」
クロユリさんはイマイチ、ピンときていない様子だ。アメリアさんの言う問題とは一体、なんなのだろうか?
頭に疑問符を浮かべていると、アメリアさんが話し始める。
「いいですか? まずこの世界には、ハイエルフ、エルフ、ハーフエルフの三種類のエルフがいます。それぞれ、特徴があり生活様式に違いはありますが、基本的にどのエルフにも一貫して共通する部分。それは、自然の中を生きることを至上命題としている所です」
「は、はあ……それで?」
それのどこに問題があるというのだろうか?
ここまでの話を聞く限り問題ないように感じる。森と共に生きるエルフのイメージとピッタリだ。
「ハーフエルフについては、あまり問題がないのですが、ハイエルフとエルフが問題でして、彼等はその生活様式から湧泉を潰してしまうのです」
「ゆ、湧泉を!? えっ、なんで?」
どんな生活様式を送ったらそうなるの!?
「エルフ達は、先ほどのフォーリッシュ様のような行いを平気な顔して湧泉で行いますからね。森に生き森に還る。それがエルフの生き方です。あれぐらいならまだかわいいものですが、エルフの中には湧泉に排泄物を流したり、湧泉近くに森で狩ったモンスターを埋めたりする者もいます。その結果、湧泉が汚染され使えなくなってしまうのです」
「ええっ……」
なんでそんなことを湧泉で……やるなら、もう少し下流でやればいいのに……。
クロユリさんに視線を向けると、うんうんと頷いている。
「その通りです。私の場合、お母様がしっかりしていましたから、湧泉に排泄物を流したり、モンスターを湧泉近くに埋めるなんてことは致しませんでした。その点、お父様はダメでしたね。何度言い聞かせても、エルフの伝統がどうたら言って、最終的には、お母様が鉄拳制裁を下すことで、毎回ことを治めていました」
「そ、そうなんだ……」
知らなかった。
エルフってそんな感じなんだ。
そうだとすると、湧泉の確保は喫緊の課題。
少なくともエルフに確保される前に、保全する必要がある。
「それじゃあ、急いで湧泉を保全しないと大変だね。早速、湧泉に向かおう。アメリアさん、この近くの湧泉に案内してくれない?」
「はい。わかりました」
アメリアさん、クロユリさんと共に、ホオズキの街を出ると、近くの湧泉に向かった。
「ほ、本当にこの辺りに湧泉があるの?」
森の中を進むこと三十分。
湧泉のゆの字も見つからない。
「おかしいですね。この辺りにあるはずですが……」
すると、クロユリさんが声を上げる。
「あっ! 見て下さい、ノース様。あれじゃないですか?」
「あれ?」
クロユリさんの指さす方向に視線を向けると、そこには蒼く澄んだ湧泉があった。
「これが湧泉……綺麗だね」
「よかった。この湧泉はまだエルフに見つかっていなかったようですね。早速、湧泉を保全しましょう」
「で、でも、どうやって……」
「そんなのは簡単です。ねえ? クロユリ様?」
そう言うと、アメリアさんはクロユリさんに視線を向けた。
どうやら他力本願だったらしい。
クロユリさんはポカーンとした表情を浮かべるも、肩に乗っている森の精霊ドライアドを見てポンっと手を叩く。
「ああ、そういうことですか。任せて下さい。ノース様が喜んでくれるなら、私、なんでもします!」
「そ、そう?」
「それでは、アメリア様。この湧泉に誰も入れないよう『精霊壁』で湧泉を囲って頂けますか?」
「はい。わかりました!」
「それじゃあ、ドラちゃん。湧泉を精霊壁で囲っちゃって下さい」
クロユリさんがそうお願いをすると、ドライアドは『キュイ!』と鳴き声を上げる。
すると、突如として地面が揺れ出し、防壁が翠色の光を帯びると、継ぎ目のない樹でできた防壁が築かれていく。
もちろん、湧泉から流れ出る水の通り道は塞いでいない。
完璧である。
「ノース様、これでいかがですか!?」
「うん。ありがとう。やっぱり、クロユリさんは頼りになるね」
「はい! ありがとうございます!」
クロユリさんの頭を撫でると嬉しそうにそう言った。
「それじゃあ、次に街作りだね。湧泉は確保したけど、街にはどんな設備が必要かな?」
「そうですね。とりあえず、湧泉は確保しましたし、田畑とごみを処理する設備、それと家があれば問題ないのではないでしょうか?」
田畑にごみを処理する設備か……。
さて、どうしようか。
そんなことを考えていると、ナビさんが視界に文字を浮かべた。
「……えっと、湧泉って、そこにしかないのかな? もしかして、その湧泉もエルフの人達が使ってるんじゃない? それに湧泉の近くにエルフが住んでいると、なにか問題があるの?」
そう質問すると、アミリアさんは苦笑いを浮かべた。
「エルフは基本的に湧泉を完全に潰すまで、湧泉を使い続けるので問題ありません。しかし、街を作るに適した立地がそこしかないのです。しかし、そこでエルフが問題となってきます」
「問題?」
そう呟くと、アミリアさんはクロユリさんに視線を向ける。
「……クロユリ様、気を悪くしないで聞いて下さいね?」
「はい? わかりました」
クロユリさんはイマイチ、ピンときていない様子だ。アメリアさんの言う問題とは一体、なんなのだろうか?
頭に疑問符を浮かべていると、アメリアさんが話し始める。
「いいですか? まずこの世界には、ハイエルフ、エルフ、ハーフエルフの三種類のエルフがいます。それぞれ、特徴があり生活様式に違いはありますが、基本的にどのエルフにも一貫して共通する部分。それは、自然の中を生きることを至上命題としている所です」
「は、はあ……それで?」
それのどこに問題があるというのだろうか?
ここまでの話を聞く限り問題ないように感じる。森と共に生きるエルフのイメージとピッタリだ。
「ハーフエルフについては、あまり問題がないのですが、ハイエルフとエルフが問題でして、彼等はその生活様式から湧泉を潰してしまうのです」
「ゆ、湧泉を!? えっ、なんで?」
どんな生活様式を送ったらそうなるの!?
「エルフ達は、先ほどのフォーリッシュ様のような行いを平気な顔して湧泉で行いますからね。森に生き森に還る。それがエルフの生き方です。あれぐらいならまだかわいいものですが、エルフの中には湧泉に排泄物を流したり、湧泉近くに森で狩ったモンスターを埋めたりする者もいます。その結果、湧泉が汚染され使えなくなってしまうのです」
「ええっ……」
なんでそんなことを湧泉で……やるなら、もう少し下流でやればいいのに……。
クロユリさんに視線を向けると、うんうんと頷いている。
「その通りです。私の場合、お母様がしっかりしていましたから、湧泉に排泄物を流したり、モンスターを湧泉近くに埋めるなんてことは致しませんでした。その点、お父様はダメでしたね。何度言い聞かせても、エルフの伝統がどうたら言って、最終的には、お母様が鉄拳制裁を下すことで、毎回ことを治めていました」
「そ、そうなんだ……」
知らなかった。
エルフってそんな感じなんだ。
そうだとすると、湧泉の確保は喫緊の課題。
少なくともエルフに確保される前に、保全する必要がある。
「それじゃあ、急いで湧泉を保全しないと大変だね。早速、湧泉に向かおう。アメリアさん、この近くの湧泉に案内してくれない?」
「はい。わかりました」
アメリアさん、クロユリさんと共に、ホオズキの街を出ると、近くの湧泉に向かった。
「ほ、本当にこの辺りに湧泉があるの?」
森の中を進むこと三十分。
湧泉のゆの字も見つからない。
「おかしいですね。この辺りにあるはずですが……」
すると、クロユリさんが声を上げる。
「あっ! 見て下さい、ノース様。あれじゃないですか?」
「あれ?」
クロユリさんの指さす方向に視線を向けると、そこには蒼く澄んだ湧泉があった。
「これが湧泉……綺麗だね」
「よかった。この湧泉はまだエルフに見つかっていなかったようですね。早速、湧泉を保全しましょう」
「で、でも、どうやって……」
「そんなのは簡単です。ねえ? クロユリ様?」
そう言うと、アメリアさんはクロユリさんに視線を向けた。
どうやら他力本願だったらしい。
クロユリさんはポカーンとした表情を浮かべるも、肩に乗っている森の精霊ドライアドを見てポンっと手を叩く。
「ああ、そういうことですか。任せて下さい。ノース様が喜んでくれるなら、私、なんでもします!」
「そ、そう?」
「それでは、アメリア様。この湧泉に誰も入れないよう『精霊壁』で湧泉を囲って頂けますか?」
「はい。わかりました!」
「それじゃあ、ドラちゃん。湧泉を精霊壁で囲っちゃって下さい」
クロユリさんがそうお願いをすると、ドライアドは『キュイ!』と鳴き声を上げる。
すると、突如として地面が揺れ出し、防壁が翠色の光を帯びると、継ぎ目のない樹でできた防壁が築かれていく。
もちろん、湧泉から流れ出る水の通り道は塞いでいない。
完璧である。
「ノース様、これでいかがですか!?」
「うん。ありがとう。やっぱり、クロユリさんは頼りになるね」
「はい! ありがとうございます!」
クロユリさんの頭を撫でると嬉しそうにそう言った。
「それじゃあ、次に街作りだね。湧泉は確保したけど、街にはどんな設備が必要かな?」
「そうですね。とりあえず、湧泉は確保しましたし、田畑とごみを処理する設備、それと家があれば問題ないのではないでしょうか?」
田畑にごみを処理する設備か……。
さて、どうしようか。
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