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第三章 ホオズキの街
第98話 ホオズキの街の視察③
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次に向かった場所はこの街の重要拠点、湧泉と呼ばれる場所だった。
湧泉とは、地下水が地表に自然に出てきたもののことをいい、ホオズキの街では、この湧泉から生活用の水を得たり、田畑に水を引いて利用しているらしい。
「村の中に湧泉があるなんて凄いですね」
「ええ、この辺りは色々な所に湧泉があります。オーダー様は、湧泉のあるこの場所を起点としてこのホオズキの街を築いたのです」
やっぱりお父さんは凄い。
流石はこの辺り一帯を治める領主様だ。
それに比べて……。
「フォーリッシュ兄様はなにをやっているのですか?」
「わかりません。あの方の考えることはいつも突拍子もなく考えなしで動くことがあるので……」
「えっ、考えなしで動くことがあるんですか?」
街を預かる領主としてどうなんだろうか。
目の前には、湧泉で水浴びをするフォーリッシュ兄様の姿があった。
「湧泉って、飲水として使われているんですよね? そんな所で水浴びして大丈夫なんですか?」
「いえ、大丈夫ではないです」
「私もあの人が浴びた水を飲みたくないです」
「だよね……」
クロユリさんと同感である。
水浴びをしているのが、フォーリッシュ兄様だったとしても、人が浸かった水なんて飲みたくない。
なんていうか、色々な菌的なものが繁殖してそうだし……。
「ふうーっ! 湧泉の水は最高だね。筋肉に染みわたるようだ。君達も一緒にどうだい?」
「遠慮させて頂きます」
フォーリッシュ兄様の誘いをアメリアさんが一刀両断で断った。
流石はアメリアさんだ。
フォーリッシュ兄様の誘いを一刀両断で断るなんてこと、僕にはできない。
「そうかい? こんなに気持ちがいいのに……、まあいいか。それでは私達で湧泉の水を楽しむとしよう!」
「「「はい!」」」
フォーリッシュ兄様が腕を振り上げ、力こぶを作ると、水中から筋肉質な街の人達がブーメランパンツ一丁で現れた。
もし、湧泉の水を口に含んでいたら吹き出していたであろう光景だ。
「……ノース様はあのようにならないで下さいね?」
「……うん。そうだね」
街の人の生活を支える湧泉の水に浸かるとか、一体なにを考えているのだろうか?
ぽっちゃり体型から筋肉質な体型に変わったことで、脳内構造まで変化したのかもしれない。
「それでは次にゴミ処理場に向かいましょう」
「ゴミ処理場ですか……」
初めて見るな。ゴミ処理場か、一体、どんな所だろう?
アメリアさん案内の下、ゴミ処理場に向かうと、そこには大量のゴミが山のように積み重なっていた。
「えっと、ここ……ゴミ処理場ですよね?」
「はい。ゴミ処理場です」
「ゴミ置き場ではなくてですか?」
「はい。ゴミ処理場です……」
「そ、そうですか……」
ゴミ処理場なのにゴミが処理されず山になっている。
これ、大丈夫なのだろうか?
<いえ、大丈夫ではありません。このまま、ゴミを処理せず放置し続ければ、疫病の発生源になってしまう可能性があります。もはや、一刻の猶予もありません。こんな街は見捨てて、街の外に新たな街を作るべきです>
で、でも、そんなことをすれば角が立つんじゃ……。
<ノース様。あの筋肉ダルマは馬鹿です。角が立つ以前の問題です。あの馬鹿に街の運営を任せていては一ヶ月と持たず、この街は崩壊します。これまでは、多分、デネブが筋肉ダルマに代わりこの街の管理を行っていたのでしょう。しかし、そのデネブは檻の中です。街の住民の受け入れ先を用意しておかなければ、大変なことになりますよ? ノース様はそれでもいいんですか?>
い、いや、良くはないけど……。
<それなら実行に移すべきです。幸いなことに、この辺りには湧泉が数多く存在します。あの馬鹿が水浴びしていた湧泉とは別の湧泉を捜しだし、そこに街を作りましょう。安心して下さい。ナビとそこのハーフエルフがいれば街づくりなんてなんとでもなります>
そ、そう?
<はい。その通りです。すぐに行動に移すべきです!>
確かに、言われてみれば、そんな気になってきた。
「……僕、この街の外に、新しい街を作ろうかな? なんて……」
そう呟くと、アメリアさんが僕の両手を握ってくる。
「……その言葉、お待ちしておりました。正直、いますぐにでもこの街を出たい気分で一杯です。しかし、ノース様が本気を出すというのであれば、私も微力ながら力をお貸しいたします」
「わ、私もノース様に協力します! アメリアさんには負けません!」
なにを競っているかわからないが、アメリアさんもクロユリさんも僕の街づくりに協力してくれるようだ。
「うん。ありがとう。それじゃあ、まずは街の外に湧泉を探しに行こうか」
「いえ、その必要はございません。この辺りの地理は調査済みです。早速、現地に向かいましょう」
「えっ? 湧泉のある場所知ってるの?」
「はい。念のため、この街に来る前に調べておきました。ただ、少しだけ問題が……」
「問題?」
一体、なんだろう?
首を傾げていると、アメリアさんがその問題について話し始める。
「実はその湧泉の近くに、エルフが住んでいるのです」
「エ、エルフが?」
クロユリさんに視線を向けると、ポカーンとした表情を浮かべた。
湧泉とは、地下水が地表に自然に出てきたもののことをいい、ホオズキの街では、この湧泉から生活用の水を得たり、田畑に水を引いて利用しているらしい。
「村の中に湧泉があるなんて凄いですね」
「ええ、この辺りは色々な所に湧泉があります。オーダー様は、湧泉のあるこの場所を起点としてこのホオズキの街を築いたのです」
やっぱりお父さんは凄い。
流石はこの辺り一帯を治める領主様だ。
それに比べて……。
「フォーリッシュ兄様はなにをやっているのですか?」
「わかりません。あの方の考えることはいつも突拍子もなく考えなしで動くことがあるので……」
「えっ、考えなしで動くことがあるんですか?」
街を預かる領主としてどうなんだろうか。
目の前には、湧泉で水浴びをするフォーリッシュ兄様の姿があった。
「湧泉って、飲水として使われているんですよね? そんな所で水浴びして大丈夫なんですか?」
「いえ、大丈夫ではないです」
「私もあの人が浴びた水を飲みたくないです」
「だよね……」
クロユリさんと同感である。
水浴びをしているのが、フォーリッシュ兄様だったとしても、人が浸かった水なんて飲みたくない。
なんていうか、色々な菌的なものが繁殖してそうだし……。
「ふうーっ! 湧泉の水は最高だね。筋肉に染みわたるようだ。君達も一緒にどうだい?」
「遠慮させて頂きます」
フォーリッシュ兄様の誘いをアメリアさんが一刀両断で断った。
流石はアメリアさんだ。
フォーリッシュ兄様の誘いを一刀両断で断るなんてこと、僕にはできない。
「そうかい? こんなに気持ちがいいのに……、まあいいか。それでは私達で湧泉の水を楽しむとしよう!」
「「「はい!」」」
フォーリッシュ兄様が腕を振り上げ、力こぶを作ると、水中から筋肉質な街の人達がブーメランパンツ一丁で現れた。
もし、湧泉の水を口に含んでいたら吹き出していたであろう光景だ。
「……ノース様はあのようにならないで下さいね?」
「……うん。そうだね」
街の人の生活を支える湧泉の水に浸かるとか、一体なにを考えているのだろうか?
ぽっちゃり体型から筋肉質な体型に変わったことで、脳内構造まで変化したのかもしれない。
「それでは次にゴミ処理場に向かいましょう」
「ゴミ処理場ですか……」
初めて見るな。ゴミ処理場か、一体、どんな所だろう?
アメリアさん案内の下、ゴミ処理場に向かうと、そこには大量のゴミが山のように積み重なっていた。
「えっと、ここ……ゴミ処理場ですよね?」
「はい。ゴミ処理場です」
「ゴミ置き場ではなくてですか?」
「はい。ゴミ処理場です……」
「そ、そうですか……」
ゴミ処理場なのにゴミが処理されず山になっている。
これ、大丈夫なのだろうか?
<いえ、大丈夫ではありません。このまま、ゴミを処理せず放置し続ければ、疫病の発生源になってしまう可能性があります。もはや、一刻の猶予もありません。こんな街は見捨てて、街の外に新たな街を作るべきです>
で、でも、そんなことをすれば角が立つんじゃ……。
<ノース様。あの筋肉ダルマは馬鹿です。角が立つ以前の問題です。あの馬鹿に街の運営を任せていては一ヶ月と持たず、この街は崩壊します。これまでは、多分、デネブが筋肉ダルマに代わりこの街の管理を行っていたのでしょう。しかし、そのデネブは檻の中です。街の住民の受け入れ先を用意しておかなければ、大変なことになりますよ? ノース様はそれでもいいんですか?>
い、いや、良くはないけど……。
<それなら実行に移すべきです。幸いなことに、この辺りには湧泉が数多く存在します。あの馬鹿が水浴びしていた湧泉とは別の湧泉を捜しだし、そこに街を作りましょう。安心して下さい。ナビとそこのハーフエルフがいれば街づくりなんてなんとでもなります>
そ、そう?
<はい。その通りです。すぐに行動に移すべきです!>
確かに、言われてみれば、そんな気になってきた。
「……僕、この街の外に、新しい街を作ろうかな? なんて……」
そう呟くと、アメリアさんが僕の両手を握ってくる。
「……その言葉、お待ちしておりました。正直、いますぐにでもこの街を出たい気分で一杯です。しかし、ノース様が本気を出すというのであれば、私も微力ながら力をお貸しいたします」
「わ、私もノース様に協力します! アメリアさんには負けません!」
なにを競っているかわからないが、アメリアさんもクロユリさんも僕の街づくりに協力してくれるようだ。
「うん。ありがとう。それじゃあ、まずは街の外に湧泉を探しに行こうか」
「いえ、その必要はございません。この辺りの地理は調査済みです。早速、現地に向かいましょう」
「えっ? 湧泉のある場所知ってるの?」
「はい。念のため、この街に来る前に調べておきました。ただ、少しだけ問題が……」
「問題?」
一体、なんだろう?
首を傾げていると、アメリアさんがその問題について話し始める。
「実はその湧泉の近くに、エルフが住んでいるのです」
「エ、エルフが?」
クロユリさんに視線を向けると、ポカーンとした表情を浮かべた。
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