90 / 121
第三章 ホオズキの街
第90話 フォーリッシュ兄様との対面(side兵士)
しおりを挟む
ノース達がデネブの家にいる頃、ホオズキの街近くに千を超える軍勢が近付きつつあった。
「ちっ、まさか街一つを占拠するためだけに俺達を呼ぶとはなぁ。デネブの野郎、随分と偉くなったみたいじゃないか……」
「まあまあ、そういうな。デネブによると、あの街の付近には最近見つかったばかりの塔型ダンジョンがあるらしい。なんでも、希少な金属が採れる可能性があるとのことだ。そのためには、どうしてもあの街を抑えなければならない。お前ならわかるだろう?」
「ああ、わかっているよ。俺はただ、あのデネブの野郎が偉そうに指示を飛ばしてくるのが気に食わないだけだ」
「ホオズキの街を占拠しちまえば、デネブの野郎は不要だ。切り捨てちまえばいいんだよ。それよりも道が悪いな……。辺境とはいえ、ここはオーダー辺境伯領のはずだろ? なぜ、道を整備されていないんだ?」
「知らねぇよ! おらっ、さっさと行くぞ!」
ストレリチア王国辺境にある街から移動すること三日間。
ひたすら悪路を走らされ、兵士達は苛立ちを覚えていた。
「……デネブの野郎。ちゃんと、やることをやっているんだろうな?」
ぼそりと呟いた言葉を、隣を走っていた兵士が拾う。
「まあ、大丈夫でしょう。おや、どうやら見えてきたようですね」
「なにっ?」
兵士が指さす方向に視線を向けると、そこには街がある。
「おいおい、俺達はいまからあんな場所を占拠しに行くのかよ!?」
「ああ、そうみたいだな」
それにしても、街の様子がおかしい。
その風貌もあってか、街を護る壁と、その周りに建っている巨大キノコが際立って見える。
「……ちっ、デネブの野郎。なにがボロボロの防壁だ。新品そのものじゃねーか。門もどこにも見当たらねぇ……まあいい」
見た所、街を護る防壁も木製のようだ。
一体、どうするべきかと考えを巡らしている内に、ホオズキの街近くに来ていた。
馬を降りると、そこには大きな防壁がそびえ立っている。
「おいおいおいおい……。やっぱり話と全然違うじゃねーか! 防壁はボロボロのはずだろ!?」
「た、確かに、これでは防壁を壊して中に入るほかありませんな……」
「ちっ、仕方がねーなぁ! おい!」
そう言うと、部下が攻城兵器を持ってくる。
「俺様はここでゆっくりしているからよぉ。お前達はその間にそれで壁をぶち壊せ。わかったな?」
部下がコクリと頷くのを確認すると、俺はスリープタイムに突入するため、馬から降りて目を瞑ろうとする。
すると、突然、攻城兵器片手に防壁を壊そうとした部下がぶっ飛んできた。
「お、おい! 大丈夫かっ!」
突然の出来事に、唖然とした表情を浮かべる。
前を向くとそこには、大量のキノコ型モンスターの姿があった。
「な、なんだコイツ! どこから現れたっ!?」
さっきまでこんな奴いなかっただろうがっ!?
というよりなんだこのキノコ?
新種のモンスターか?
そんなことを考えていると、ボコボコと地面から音が鳴り出し、剣と盾を持ったキノコ型モンスターが姿を現していく。
「くっ! 総員戦闘用意! かかれぇぇぇぇ!」
そう声を上げると、剣と盾を構えながらキノコ型モンスターに向かっていく。
「せいっ!」
掛け声と共にモンスターに一閃。
しかし、その一閃は無情にも剣を折られる結果に終わることとなる。
バキッ!
という小気味いい音と共に国に支給された大切な剣が根元から折れ、折れた剣が宙を舞う。
「な、なにぃ!?」
まさかモンスター如きに剣を折られると思っておらず、唖然とした表情を浮かべながら宙に舞った剣に視線を向けると、モンスターが目の前まで来ていることに気付いた。
「なぁ? ま、待てっ!?」
しかし、そんな言葉を発した所でモンスターは止まらない。
「ううっ……ぐぶぉえっ?」
そのまま、盾で殴られると気を失ってしまう。
「うっ……ここは……なあっ!?」
目を覚ますと、そこには多くの兵士達がキノコ型モンスターに縛り上げられていた。
ど、どういうことだ……俺はどの位の時間、寝ていた。いや、あのモンスターにやられたのか?
おいおいおいおい!
なんだ? コイツらはなにを……俺達になにをしてるんだぁぁぁぁ!?
見れば俺達と共にホオズキの街を占領にきた兵士達の頭にキノコが生えていた。
キノコ型モンスターは兵士達の頭に生えたキノコを毟り取ると、毟り取ったキノコをそのまま、頭にキノコが生えていない兵士の口に無理矢理捩じ込んでいく。
唖然とした表情を浮かべことの推移を見ていると、キノコをむしられた兵士の頭から、またキノコが生えてきた。
あまりの恐怖に「なんだこれはぁぁぁぁ!」と絶叫を上げると、キノコ型モンスターがこちらに視線を向けてくる。
ヤバいと思い口を閉じた時にはもう遅かった。キノコ型モンスターは、兵士の頭に生えているキノコを毟ると俺に近付いてくる。
「な、なにを? やめっ! ぐぽぁ!」
無理矢理口にキノコを捩じ込まれると、頭の先がムズムズ痒くなってきた。
同時に頭の中に霧がかかったかのように、考えが纏まらなくなっていく。
気付けば、俺達はなんでこんな所にいるのかさえわからなくなった。
「ちっ、まさか街一つを占拠するためだけに俺達を呼ぶとはなぁ。デネブの野郎、随分と偉くなったみたいじゃないか……」
「まあまあ、そういうな。デネブによると、あの街の付近には最近見つかったばかりの塔型ダンジョンがあるらしい。なんでも、希少な金属が採れる可能性があるとのことだ。そのためには、どうしてもあの街を抑えなければならない。お前ならわかるだろう?」
「ああ、わかっているよ。俺はただ、あのデネブの野郎が偉そうに指示を飛ばしてくるのが気に食わないだけだ」
「ホオズキの街を占拠しちまえば、デネブの野郎は不要だ。切り捨てちまえばいいんだよ。それよりも道が悪いな……。辺境とはいえ、ここはオーダー辺境伯領のはずだろ? なぜ、道を整備されていないんだ?」
「知らねぇよ! おらっ、さっさと行くぞ!」
ストレリチア王国辺境にある街から移動すること三日間。
ひたすら悪路を走らされ、兵士達は苛立ちを覚えていた。
「……デネブの野郎。ちゃんと、やることをやっているんだろうな?」
ぼそりと呟いた言葉を、隣を走っていた兵士が拾う。
「まあ、大丈夫でしょう。おや、どうやら見えてきたようですね」
「なにっ?」
兵士が指さす方向に視線を向けると、そこには街がある。
「おいおい、俺達はいまからあんな場所を占拠しに行くのかよ!?」
「ああ、そうみたいだな」
それにしても、街の様子がおかしい。
その風貌もあってか、街を護る壁と、その周りに建っている巨大キノコが際立って見える。
「……ちっ、デネブの野郎。なにがボロボロの防壁だ。新品そのものじゃねーか。門もどこにも見当たらねぇ……まあいい」
見た所、街を護る防壁も木製のようだ。
一体、どうするべきかと考えを巡らしている内に、ホオズキの街近くに来ていた。
馬を降りると、そこには大きな防壁がそびえ立っている。
「おいおいおいおい……。やっぱり話と全然違うじゃねーか! 防壁はボロボロのはずだろ!?」
「た、確かに、これでは防壁を壊して中に入るほかありませんな……」
「ちっ、仕方がねーなぁ! おい!」
そう言うと、部下が攻城兵器を持ってくる。
「俺様はここでゆっくりしているからよぉ。お前達はその間にそれで壁をぶち壊せ。わかったな?」
部下がコクリと頷くのを確認すると、俺はスリープタイムに突入するため、馬から降りて目を瞑ろうとする。
すると、突然、攻城兵器片手に防壁を壊そうとした部下がぶっ飛んできた。
「お、おい! 大丈夫かっ!」
突然の出来事に、唖然とした表情を浮かべる。
前を向くとそこには、大量のキノコ型モンスターの姿があった。
「な、なんだコイツ! どこから現れたっ!?」
さっきまでこんな奴いなかっただろうがっ!?
というよりなんだこのキノコ?
新種のモンスターか?
そんなことを考えていると、ボコボコと地面から音が鳴り出し、剣と盾を持ったキノコ型モンスターが姿を現していく。
「くっ! 総員戦闘用意! かかれぇぇぇぇ!」
そう声を上げると、剣と盾を構えながらキノコ型モンスターに向かっていく。
「せいっ!」
掛け声と共にモンスターに一閃。
しかし、その一閃は無情にも剣を折られる結果に終わることとなる。
バキッ!
という小気味いい音と共に国に支給された大切な剣が根元から折れ、折れた剣が宙を舞う。
「な、なにぃ!?」
まさかモンスター如きに剣を折られると思っておらず、唖然とした表情を浮かべながら宙に舞った剣に視線を向けると、モンスターが目の前まで来ていることに気付いた。
「なぁ? ま、待てっ!?」
しかし、そんな言葉を発した所でモンスターは止まらない。
「ううっ……ぐぶぉえっ?」
そのまま、盾で殴られると気を失ってしまう。
「うっ……ここは……なあっ!?」
目を覚ますと、そこには多くの兵士達がキノコ型モンスターに縛り上げられていた。
ど、どういうことだ……俺はどの位の時間、寝ていた。いや、あのモンスターにやられたのか?
おいおいおいおい!
なんだ? コイツらはなにを……俺達になにをしてるんだぁぁぁぁ!?
見れば俺達と共にホオズキの街を占領にきた兵士達の頭にキノコが生えていた。
キノコ型モンスターは兵士達の頭に生えたキノコを毟り取ると、毟り取ったキノコをそのまま、頭にキノコが生えていない兵士の口に無理矢理捩じ込んでいく。
唖然とした表情を浮かべことの推移を見ていると、キノコをむしられた兵士の頭から、またキノコが生えてきた。
あまりの恐怖に「なんだこれはぁぁぁぁ!」と絶叫を上げると、キノコ型モンスターがこちらに視線を向けてくる。
ヤバいと思い口を閉じた時にはもう遅かった。キノコ型モンスターは、兵士の頭に生えているキノコを毟ると俺に近付いてくる。
「な、なにを? やめっ! ぐぽぁ!」
無理矢理口にキノコを捩じ込まれると、頭の先がムズムズ痒くなってきた。
同時に頭の中に霧がかかったかのように、考えが纏まらなくなっていく。
気付けば、俺達はなんでこんな所にいるのかさえわからなくなった。
0
お気に入りに追加
1,053
あなたにおすすめの小説

もう、終わった話ですし
志位斗 茂家波
ファンタジー
一国が滅びた。
その知らせを聞いても、私には関係の無い事。
だってね、もう分っていたことなのよね‥‥‥
‥‥‥たまにやりたくなる、ありきたりな婚約破棄ざまぁ(?)もの
少々物足りないような気がするので、気が向いたらオマケ書こうかな?

もしかして寝てる間にざまぁしました?
ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。
内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。
しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。
私、寝てる間に何かしました?


【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。
アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。
両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。
両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。
テッドには、妹が3人いる。
両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。
このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。
そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。
その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。
両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。
両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…
両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが…
母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。
今日も依頼をこなして、家に帰るんだ!
この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。
お楽しみくださいね!
HOTランキング20位になりました。
皆さん、有り難う御座います。

【完結】義妹とやらが現れましたが認めません。〜断罪劇の次世代たち〜
福田 杜季
ファンタジー
侯爵令嬢のセシリアのもとに、ある日突然、義妹だという少女が現れた。
彼女はメリル。父親の友人であった彼女の父が不幸に見舞われ、親族に虐げられていたところを父が引き取ったらしい。
だがこの女、セシリアの父に欲しいものを買わせまくったり、人の婚約者に媚を打ったり、夜会で非常識な言動をくり返して顰蹙を買ったりと、どうしようもない。
「お義姉さま!」 . .
「姉などと呼ばないでください、メリルさん」
しかし、今はまだ辛抱のとき。
セシリアは来たるべき時へ向け、画策する。
──これは、20年前の断罪劇の続き。
喜劇がくり返されたとき、いま一度鉄槌は振り下ろされるのだ。
※ご指摘を受けて題名を変更しました。作者の見通しが甘くてご迷惑をおかけいたします。
旧題『義妹ができましたが大嫌いです。〜断罪劇の次世代たち〜』
※初投稿です。話に粗やご都合主義的な部分があるかもしれません。生あたたかい目で見守ってください。
※本編完結済みで、毎日1話ずつ投稿していきます。

どうでもいいですけどね
志位斗 茂家波
恋愛
「ミラージュ令嬢!!貴女との婚約を破棄する!!」
‥‥と、かつての婚約者に婚約破棄されてから数年が経ちました。
まぁ、あの方がどうなったのかは別にどうでもいいですけれどね。過去は過去ですから、変えようがないです。
思いついたよくある婚約破棄テンプレ(?)もの。気になる方は是非どうぞ。

〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。
江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。
だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。
十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。
ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。
元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。
そして更に二年、とうとうその日が来た……

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる