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第三章 ホオズキの街
第82話 万能薬の原料『パナシーアタケ』④
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「……えっと、脱がしてどうするの?」
そう尋ねると、ナビさんが視界に文字を浮かべてくる。
<当然、燃やします。正直、このまま火だるまにしても良いのですが、それだとノース様達の気が咎めるでしょう?>
「う、うん。まあ、そうだね……」
目の前で人が火だるまになる所は見たくない。
「そ、そっか……」
そう呟きながら、男に視線を向ける。
男の目がバタフライしていることから隠し武器を持っていることに間違いなさそうだ。
<その通りです。それでは、納得して頂けた所で隠し武器ごと衣服を剥ぎ取ると致しましょう>
ナビさんが視界にそう文字を浮かべると、一体のマッシュルーム・アサシンが男を抑え、もう一体が男の衣服を隠し武器ごと剥ぎ取っていく。
どうやらこの男、本当に隠し武器を所持していたようだ。
剥ぎ取られた衣服の中から数本ナイフが出てきた。履いていた靴にも刃が飛び出す仕掛けがしてあった。
用意周到なことだ。
マッシュルーム・アサシンは男から衣服と隠し武器を剥ぎ取ると、そこにハッカタケを置き、衣服に火を灯した。
「ぎゃああああっ! 俺の服がぁぁぁぁ!」
男がそう叫び声をあげる。
いまの男の姿は真っ裸だ。叫びたくなる気持ちもよくわかる。
男は勢いよく燃え盛る衣服から視線を落とすとガックリと項垂れた。
ガックリ項垂れるのはいいんだけど、隠すモノは隠してほしい。
アメリアさんとクロユリさんがこの場にいるというのに、この男には露出狂の気でもあるのだろうか?
なんだか可哀想になってきたので、男に服代わりのクロウズ・マッシュルームを提供することにした。
ギフトポイントを使って、クロウズ・マッシュルームを作ってもらうと、ピンク色の可愛らしい刺繍の入ったフリッフリのバスローブが目の前に現れる。
「ナ、ナビさん? こ、これは……?」
<これはクロウズ・マッシュルームです。折角なので、フリルとハートの刺繍を付け作成してみました>
「えっ、ああ、そうなんだ……」
バスローブタイプの衣服だからか森の中で着るのは違和感がとてつもない。
まあ、服が着れるだけありがたいと思ってもらうことにしよう。
「くっ、俺にこんなことをして、タダで済むと思うなよ!」
笑ってはいけない。
クロウズ・マッシュルームを着用した男がそんなことを言い出した。
「ノース様、この男の処遇はどう致しますか? 街に連行するにしてもこう騒がれては……」
確かに、アメリアさんの言う通りだ。
<それでは、街に連行する前に尋問してはいかがでしょうか?>
ええっ、尋問!?
<はい。まだこの男からはなにも聞き出せてはおりません。ここは、催眠効果のあるマニピュレイトタケを食べさせ、尋問するべきです。ノース様が手を汚したくないというのであれば、ナビがこの男を尋問しますが、それでもよろしいですか?>
う、うん。それじゃあ、お願い。
<わかりました。それでは……>
ナビさんがそう文字を浮かべると、マッシュルーム・アサシンが動き出す。
マッシュルーム・アサシンの手にはマニピュレイトタケが握られていた。
「えっ? お、おい。なんだ……なぜ、俺の下に近付いてくる……お、お前らも見ていないで俺を助けろっ!」
しかし、アメリアさんもクロユリさんも、マッシュルーム・アサシンと男の動向を見守るだけで動こうとしない。
考えて見れば、当たり前のことだ。
「ち、ちょっ! だ、誰か助け……もがっ!?」
マッシュルーム・アサシンは男の口にマニピュレイトタケを含ませると、無理やり咀嚼させ飲み込ませる。
すると、男の頭からキノコが生えてきた。
<さて、これで問題ありませんね。精一杯、自白して貰いましょう>
ナビさんがそう視界に文字を浮かべると、なにも質問していないにも係わらず、頭に生えたキノコが光り出し、男が勝手に自白を始める。
「……俺はストレリチア王国の諜報員。名をザウラクという。ストレリチア王国の辺境に位置するアルファ・インディ辺境伯の命令により、オーダー・インベーションの領地の一つ『ホオズキの街』を実効支配するために派遣された」
「ザウラクさんは、なんでホオズキの街に病を流行らせたんですか?」
そう問いかけると、ザウラクは頭に生えたキノコをピカピカと光らせ、話始める。
「……病を流行らせたのは俺ではない。ホオズキの街にいるもう一人の諜報員だ。残念ながら名前も顔も知らない。俺に下された命令はただ一つ。邪魔者の排除だけだからな」
なるほど……、ということはもしかしたら、ホオズキの街に来る途中遭遇した盗賊はこの人の仲間だったのかもしれない。
いまは仲良くワーウルフの下で、セカンドライフを満喫している最中かも知れないけど……。
「ということは、ホオズキの街にもう一人、諜報員が紛れ込んでいるということですね」
「ああ、その通りだ」
アメリアさんの問いかけにザウラクは肯定の意を示す。
「まあ、街に帰ればわかることです。それにパナシーアタケがあれば、街の人々を治すことができます。その過程で、それを邪魔する人がいたとすれば、それが諜報員と見て間違いないでしょう」
「確かにノース様の言う通りですね。とりあえず、街に帰ると致しましょう」
そう言うと、俺達はピンク色のバスローブを羽織ったザウラクと共に、ホオズキの街に戻ることにした。
そう尋ねると、ナビさんが視界に文字を浮かべてくる。
<当然、燃やします。正直、このまま火だるまにしても良いのですが、それだとノース様達の気が咎めるでしょう?>
「う、うん。まあ、そうだね……」
目の前で人が火だるまになる所は見たくない。
「そ、そっか……」
そう呟きながら、男に視線を向ける。
男の目がバタフライしていることから隠し武器を持っていることに間違いなさそうだ。
<その通りです。それでは、納得して頂けた所で隠し武器ごと衣服を剥ぎ取ると致しましょう>
ナビさんが視界にそう文字を浮かべると、一体のマッシュルーム・アサシンが男を抑え、もう一体が男の衣服を隠し武器ごと剥ぎ取っていく。
どうやらこの男、本当に隠し武器を所持していたようだ。
剥ぎ取られた衣服の中から数本ナイフが出てきた。履いていた靴にも刃が飛び出す仕掛けがしてあった。
用意周到なことだ。
マッシュルーム・アサシンは男から衣服と隠し武器を剥ぎ取ると、そこにハッカタケを置き、衣服に火を灯した。
「ぎゃああああっ! 俺の服がぁぁぁぁ!」
男がそう叫び声をあげる。
いまの男の姿は真っ裸だ。叫びたくなる気持ちもよくわかる。
男は勢いよく燃え盛る衣服から視線を落とすとガックリと項垂れた。
ガックリ項垂れるのはいいんだけど、隠すモノは隠してほしい。
アメリアさんとクロユリさんがこの場にいるというのに、この男には露出狂の気でもあるのだろうか?
なんだか可哀想になってきたので、男に服代わりのクロウズ・マッシュルームを提供することにした。
ギフトポイントを使って、クロウズ・マッシュルームを作ってもらうと、ピンク色の可愛らしい刺繍の入ったフリッフリのバスローブが目の前に現れる。
「ナ、ナビさん? こ、これは……?」
<これはクロウズ・マッシュルームです。折角なので、フリルとハートの刺繍を付け作成してみました>
「えっ、ああ、そうなんだ……」
バスローブタイプの衣服だからか森の中で着るのは違和感がとてつもない。
まあ、服が着れるだけありがたいと思ってもらうことにしよう。
「くっ、俺にこんなことをして、タダで済むと思うなよ!」
笑ってはいけない。
クロウズ・マッシュルームを着用した男がそんなことを言い出した。
「ノース様、この男の処遇はどう致しますか? 街に連行するにしてもこう騒がれては……」
確かに、アメリアさんの言う通りだ。
<それでは、街に連行する前に尋問してはいかがでしょうか?>
ええっ、尋問!?
<はい。まだこの男からはなにも聞き出せてはおりません。ここは、催眠効果のあるマニピュレイトタケを食べさせ、尋問するべきです。ノース様が手を汚したくないというのであれば、ナビがこの男を尋問しますが、それでもよろしいですか?>
う、うん。それじゃあ、お願い。
<わかりました。それでは……>
ナビさんがそう文字を浮かべると、マッシュルーム・アサシンが動き出す。
マッシュルーム・アサシンの手にはマニピュレイトタケが握られていた。
「えっ? お、おい。なんだ……なぜ、俺の下に近付いてくる……お、お前らも見ていないで俺を助けろっ!」
しかし、アメリアさんもクロユリさんも、マッシュルーム・アサシンと男の動向を見守るだけで動こうとしない。
考えて見れば、当たり前のことだ。
「ち、ちょっ! だ、誰か助け……もがっ!?」
マッシュルーム・アサシンは男の口にマニピュレイトタケを含ませると、無理やり咀嚼させ飲み込ませる。
すると、男の頭からキノコが生えてきた。
<さて、これで問題ありませんね。精一杯、自白して貰いましょう>
ナビさんがそう視界に文字を浮かべると、なにも質問していないにも係わらず、頭に生えたキノコが光り出し、男が勝手に自白を始める。
「……俺はストレリチア王国の諜報員。名をザウラクという。ストレリチア王国の辺境に位置するアルファ・インディ辺境伯の命令により、オーダー・インベーションの領地の一つ『ホオズキの街』を実効支配するために派遣された」
「ザウラクさんは、なんでホオズキの街に病を流行らせたんですか?」
そう問いかけると、ザウラクは頭に生えたキノコをピカピカと光らせ、話始める。
「……病を流行らせたのは俺ではない。ホオズキの街にいるもう一人の諜報員だ。残念ながら名前も顔も知らない。俺に下された命令はただ一つ。邪魔者の排除だけだからな」
なるほど……、ということはもしかしたら、ホオズキの街に来る途中遭遇した盗賊はこの人の仲間だったのかもしれない。
いまは仲良くワーウルフの下で、セカンドライフを満喫している最中かも知れないけど……。
「ということは、ホオズキの街にもう一人、諜報員が紛れ込んでいるということですね」
「ああ、その通りだ」
アメリアさんの問いかけにザウラクは肯定の意を示す。
「まあ、街に帰ればわかることです。それにパナシーアタケがあれば、街の人々を治すことができます。その過程で、それを邪魔する人がいたとすれば、それが諜報員と見て間違いないでしょう」
「確かにノース様の言う通りですね。とりあえず、街に帰ると致しましょう」
そう言うと、俺達はピンク色のバスローブを羽織ったザウラクと共に、ホオズキの街に戻ることにした。
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