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第三章 ホオズキの街
第81話 万能薬の原料『パナシーアタケ』③
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「これだけあればいいかな?」
「ええっ、これだけあれば問題ないでしょう」
「ノース様のお役に立ててなによりです♪」
『キュイ!』
籠一杯のパナシーアタケを前に、皆、満足そうな表情を浮かべる。
アメリアさんの言う通りこれだけあれば、問題ないだろう。
「うん。クロユリさん、ありがとう。それじゃあ、街に戻ろうか! きっと、籠一杯のパナシーアタケを見たらデネブさんも驚くと思うよ」
「そうですね。希少な万能薬の原料がこれだけあるのです。クロユリ様のお手柄ですね」
「いえいえ、私はノース様のお役に立てればと思っただけで……褒めるなら、このドラちゃんを褒めてあげて下さい」
クロユリさんがそう言うと、森の精霊ドライアドが胸を張り『キュイ!』と鳴いた。
なんだか見ていてホッコリする。
「そうだね。ドライアド様、お力添え頂きありがとうございます。クロユリさんもありがとう」
そう言いながら、ドライアドの顎の下を指で軽くさすると、ドライアドは気持ち良さそうな表情を浮かべた。
ドライアド様の見た目は完全にリスそのもの。気持ち良さそうな表情もまた可愛い。
一頻りドライアドをみんなで愛でると、そろそろ街に向おうと提案する。
「それじゃあ、そろそろ、街に向かおうか」
そして、パナシーアタケが一杯に入った籠を担いで立ち上がると、どこからともなく声が聞こえてきた。
『それじゃあ困るんだよ』
「えっ?」
振り返ると、そこには、頭を掻きながら、パナシーアタケを睨み付ける男の姿があった。
「まさか、パナシーアタケを作り出すとはなぁ……見張っていて正解だったぜ」
「あなたは……」
知らない顔の人だ。
誰だろうか?
「んん? 俺の名を知りたいのか? その必要はないだろ。なぜなら、お前達はここで死ぬんだからな……俺は無駄なことはしない主義なんでね」
そう言うと、男は腰に差していた剣を抜き、こちらに近付いてくる。
すると、なぜかクロユリさんが前に出た。
手にはいつの間にか、棘付きのメイスが握られている。
「うん? どういうつもりだ。まさか、この俺と闘おうなんて考えてるんじゃないだろうな?」
男が警戒心を帯びた表情を浮かべる。
「ク、クロユリさん?」
クロユリさんを呼び止めるために声をかける。すると、クロユリさんは全てを見透かしたかのような視線を浮かべ呟いた。
「ノース様、私、わかっちゃいました」
「ええっ……? な、なにが、わかったの?」
ちょっとなにを言っているのか理解できない。
クロユリさんはなにがわかったというのだろうか?
「この人があの街に病を撒き散らした犯人です」
「ええっ! この人が!?」
視線を向けると、男は笑みを浮かべた。
しかし、笑みを浮かべるだけで、それ以上、なにも話そうとしない。
「た、確かに……いま、万能薬の原料となるパナシーアタケを街に持って行き困るのは、街に病を振り撒いた犯人だけです。そう考えればクロユリさんの言うこともあながち間違いではないかも知れません」
アメリアさんがそう言うと、男はクスリと笑う。
「だから、どうしたと言うんだ。どちらにしろお前達が死ぬのは確定して……って、うわっ!? な、なにをする!」
話をしている最中に、クロユリさんがメイスをぶん投げた。
男はクロユリさんによって投げられたメイスをギリギリの所で躱し、文句を言う。
メイスに当たって気絶していれば、話はそれで終わったのに運のいい男である。
とはいえ、街に病を撒き散らした犯人を見つけた以上、逃す訳にはいかない。
「マッシュルーム・アサシン! あの男を捕まえて!」
僕がそう言うと、男の周囲を囲うように五十を超えるマッシュルーム・アサシンが姿を現した。
「な、なんだっ!? こいつらは一体……!」
突然、マッシュルーム・アサシンに包囲されたことで男は冷静さを失っているようだ。剣を片手に後退りする。
「ノース様。これは一体……」
「アメリアさん。その話は後にして下さい。いまは犯人を捕まえることだけに集中しましょう」
「そ、そうですね。し、しかし、これほどの護衛……一体、どこに潜んで……」
それは僕も気になる所だ。
しかし、何度でも言うがそんな場合ではない。
「僕も手荒な真似はしたくありません。どうします。降参しますか? 降参して捕まるというのであれば、痛い目を見なくて済むかもしれませんよ?」
「ぐっ! くそがぁぁぁぁ!」
男はそう叫ぶと、手に持っていた剣を地面に置いた。
「こ、これでいいか……」
「ええ、そうですね。これで十分です」と呟こうとすると、ナビさんが視界に文字を浮かべてくる。
<ノース様は甘いですね。甘々の激甘です。いいですか? こういった諜報に優れた輩は須らく隠し武器を持っているはずです>
「か、隠し武器をっ!?」
<ええ、隠し武器とは、一見すると武器とは見えない形状をしていたり、身体や衣服の中に隠したり、不意打ちで相手を攻撃することを目的とした武器のことをいいます。あの男、あのように悔しがっている素振りを見せておりますが、その実、虎視眈々と反撃のチャンスを伺っていると見るべきです>
「ええっ! 反撃の機会をっ!?」
そう言うと、男はびくりと身体を震わせる。
<いまの反応、どうやら図星のようですね>
「で、でも、どうしたらいいの!?」
隠し武器で反撃されてはこちらの身が危ない。
ナビさんに教えを乞うと、ナビさんは視界に顔文字を浮かべてきた。
<簡単なことです。脱がしましょう! ⊂(`・ω・´)⊃バッ!>
ナビさんの回答に僕は、嫌そうな表情を浮かべた。
「ええっ、これだけあれば問題ないでしょう」
「ノース様のお役に立ててなによりです♪」
『キュイ!』
籠一杯のパナシーアタケを前に、皆、満足そうな表情を浮かべる。
アメリアさんの言う通りこれだけあれば、問題ないだろう。
「うん。クロユリさん、ありがとう。それじゃあ、街に戻ろうか! きっと、籠一杯のパナシーアタケを見たらデネブさんも驚くと思うよ」
「そうですね。希少な万能薬の原料がこれだけあるのです。クロユリ様のお手柄ですね」
「いえいえ、私はノース様のお役に立てればと思っただけで……褒めるなら、このドラちゃんを褒めてあげて下さい」
クロユリさんがそう言うと、森の精霊ドライアドが胸を張り『キュイ!』と鳴いた。
なんだか見ていてホッコリする。
「そうだね。ドライアド様、お力添え頂きありがとうございます。クロユリさんもありがとう」
そう言いながら、ドライアドの顎の下を指で軽くさすると、ドライアドは気持ち良さそうな表情を浮かべた。
ドライアド様の見た目は完全にリスそのもの。気持ち良さそうな表情もまた可愛い。
一頻りドライアドをみんなで愛でると、そろそろ街に向おうと提案する。
「それじゃあ、そろそろ、街に向かおうか」
そして、パナシーアタケが一杯に入った籠を担いで立ち上がると、どこからともなく声が聞こえてきた。
『それじゃあ困るんだよ』
「えっ?」
振り返ると、そこには、頭を掻きながら、パナシーアタケを睨み付ける男の姿があった。
「まさか、パナシーアタケを作り出すとはなぁ……見張っていて正解だったぜ」
「あなたは……」
知らない顔の人だ。
誰だろうか?
「んん? 俺の名を知りたいのか? その必要はないだろ。なぜなら、お前達はここで死ぬんだからな……俺は無駄なことはしない主義なんでね」
そう言うと、男は腰に差していた剣を抜き、こちらに近付いてくる。
すると、なぜかクロユリさんが前に出た。
手にはいつの間にか、棘付きのメイスが握られている。
「うん? どういうつもりだ。まさか、この俺と闘おうなんて考えてるんじゃないだろうな?」
男が警戒心を帯びた表情を浮かべる。
「ク、クロユリさん?」
クロユリさんを呼び止めるために声をかける。すると、クロユリさんは全てを見透かしたかのような視線を浮かべ呟いた。
「ノース様、私、わかっちゃいました」
「ええっ……? な、なにが、わかったの?」
ちょっとなにを言っているのか理解できない。
クロユリさんはなにがわかったというのだろうか?
「この人があの街に病を撒き散らした犯人です」
「ええっ! この人が!?」
視線を向けると、男は笑みを浮かべた。
しかし、笑みを浮かべるだけで、それ以上、なにも話そうとしない。
「た、確かに……いま、万能薬の原料となるパナシーアタケを街に持って行き困るのは、街に病を振り撒いた犯人だけです。そう考えればクロユリさんの言うこともあながち間違いではないかも知れません」
アメリアさんがそう言うと、男はクスリと笑う。
「だから、どうしたと言うんだ。どちらにしろお前達が死ぬのは確定して……って、うわっ!? な、なにをする!」
話をしている最中に、クロユリさんがメイスをぶん投げた。
男はクロユリさんによって投げられたメイスをギリギリの所で躱し、文句を言う。
メイスに当たって気絶していれば、話はそれで終わったのに運のいい男である。
とはいえ、街に病を撒き散らした犯人を見つけた以上、逃す訳にはいかない。
「マッシュルーム・アサシン! あの男を捕まえて!」
僕がそう言うと、男の周囲を囲うように五十を超えるマッシュルーム・アサシンが姿を現した。
「な、なんだっ!? こいつらは一体……!」
突然、マッシュルーム・アサシンに包囲されたことで男は冷静さを失っているようだ。剣を片手に後退りする。
「ノース様。これは一体……」
「アメリアさん。その話は後にして下さい。いまは犯人を捕まえることだけに集中しましょう」
「そ、そうですね。し、しかし、これほどの護衛……一体、どこに潜んで……」
それは僕も気になる所だ。
しかし、何度でも言うがそんな場合ではない。
「僕も手荒な真似はしたくありません。どうします。降参しますか? 降参して捕まるというのであれば、痛い目を見なくて済むかもしれませんよ?」
「ぐっ! くそがぁぁぁぁ!」
男はそう叫ぶと、手に持っていた剣を地面に置いた。
「こ、これでいいか……」
「ええ、そうですね。これで十分です」と呟こうとすると、ナビさんが視界に文字を浮かべてくる。
<ノース様は甘いですね。甘々の激甘です。いいですか? こういった諜報に優れた輩は須らく隠し武器を持っているはずです>
「か、隠し武器をっ!?」
<ええ、隠し武器とは、一見すると武器とは見えない形状をしていたり、身体や衣服の中に隠したり、不意打ちで相手を攻撃することを目的とした武器のことをいいます。あの男、あのように悔しがっている素振りを見せておりますが、その実、虎視眈々と反撃のチャンスを伺っていると見るべきです>
「ええっ! 反撃の機会をっ!?」
そう言うと、男はびくりと身体を震わせる。
<いまの反応、どうやら図星のようですね>
「で、でも、どうしたらいいの!?」
隠し武器で反撃されてはこちらの身が危ない。
ナビさんに教えを乞うと、ナビさんは視界に顔文字を浮かべてきた。
<簡単なことです。脱がしましょう! ⊂(`・ω・´)⊃バッ!>
ナビさんの回答に僕は、嫌そうな表情を浮かべた。
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