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第三章 ホオズキの街
第80話 万能薬の原料『パナシーアタケ』②
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「さて、それでは早速、万能薬の原料『パナシーアタケ』を探すと致しましょう」
森に入って早々、アメリアさんが「鑑定」と呟きながら周囲を見渡していく。
<ほう。『鑑定』が使えるということは、彼女は『鑑定士』のギフトホルダーですね。とても珍しいギフトです。『鑑定』が使えるなら簡単に『パナシーアタケ』を手に入れることができるかもしれません>
そうなんだ。
流石はお父さんの側近。有能なギフトホルダーが揃っている。
「それで、『パナシーアタケ』はありそうですか?」
周囲を見渡し終えたアメリアさんにそう尋ねると、アメリアさんは残念そうな表情を浮かべ首を振った。
「見つからないわね。ガラスケースに入っていたキノコと似たものを見つけたけど、効能がまったく違うし……仕方がないわ。他の場所に移りましょう。オーダー様とフォーリッシュ様のためにも街の人達を死なせる訳には行かないわ」
「そうですね」
そう。街の人達も僕達が『パナシーアタケ』を持って帰ることを願っているはずだ。
『パナシーアタケ』を見つけるため、次の場所を移すも、アメリアさんは首を振るだけでまったく『パナシーアタケ』が見当たらない。
十二ヶ所ほど回った所で、アメリアさんが舌打ちをした。
「……本当にこの辺りに生えているんでしょうね?」
「ま、まあまあ、万能薬の原料となる凄いキノコですし、量が少ないだけで、きっと生えていますよ。デネブさんを信じましょう」
「そうです。ノース様の言う通りです」
そう言うと、アメリアさんはジト目でこちらに視線を向けてくる。
「そういえば、ノース様のギフトは『キノコマスター』でしたよね? ギフトで『パナシーアタケ』を出すことはできないのですか?」
「えっ?」
言われてみれば……完全に盲点だった。
もしギフトの力で『パナシーアタケ』が出せるなら、それに越したことはない。
ナビさんに話を聞いてみる。
ナビさん。ギフトの力で『パナシーアタケ』を出すことってできる?
そう問いかけると、ナビさんは僕の視界に文字を浮かべてくる。
<『パナシーアタケ』ですか……もちろん、出すことはできます。しかし、ギフトレベルが上がらないことには難しいですね>
そっか……。
まあそうだろうとは思っていた。
ギフトレベル10に到達したからというものの、ギフトレベルがだんだんと上がりにくくなっている。
どこかでスタンピードでも起こってくれれば大量の魔石を手に入れることができるんだけど……いや、スタンピードが起こればというのは流石に不謹慎か。
「ギフトレベルが上がらないことには無理そうです」
そう言うと、アメリアさんは残念そうな表情を浮かべた。
結構、期待していたらしい。
「そうね……。そんな簡単に万能薬の原料が手に入る訳ないものね。仕方がありません。地道に探すと致しましょう」
この場所を後にしようとすると、クロユリさんが袖を引いてくる。
「どうしたの、クロユリさん?」
「あの、私のギフトを使えばなんとかなるかも知れません」
クロユリさんの肩で、森の精霊ドライアドがキュイキュイと鳴いている。
ドライアドもやる気のようだ。
リスが胸をドンと叩きドヤっている姿。
なんだか可愛い。
そんなドライアドの姿にホッコリしていると、アメリアさんがクロユリさんの言葉に喰い付いた。
「その話、本当ですか!?」
「え、ええっ、私のギフト『フォレストマスター』は森を操る力。その力を利用すれば森にパナシーアタケを生み出すこともできるはずです。ドラちゃん。この場所にパナシーアタケを生やせる?」
ドライアドがコクリと頷くと、目の前に横たわる倒木が翠色に光り出す。
すると、倒木の脇からニョキニョキと、まるで白い鳥が翼を広げたかのようなキノコが生えてきた。
「うわぁ~! 凄いよ。クロユリさん!」
「ええっ、ノース様の仰る通りです! 鑑定して見ましたが、確かにこれはパナシーアタケに間違いありません!」
「ほ、本当ですか? お役に立てたようでよかったです」
クロユリさんが気恥ずかしそうに、ポリポリと頬をかいた。
「でも、これで足りるでしょうか?」
「うーん。そうだね……」
パナシーアタケに視線を向けるも、一体、どれ程の量があれば、足りるのかわからない。
デネブから渡された籠の大きさからするに、最低でもこの籠一杯ないと話にならないのだろうと推察される。
「籠を二つ渡されたし、籠二つ分が埋まる位のパナシーアタケを用意すれば問題ないんじゃないかな?」
「そうですね。街にいる人全員分ともなると、これ位の量が必要になるからこそデネブも籠を二つも渡したのでしょうし……」
「私もノース様の言う通りだと思います。それに万が一足りないようであれば、また森に取りに来ればいいんです!」
まったくもってその通りだ。
その方向性でいこう。
「それじゃあ、籠一杯のパナシーアタケを生やしますね!」
『キュイ!』
ドライアドも乗り気のようだ。
僕達はクロユリさんとドライアドの力を借りて籠一杯のパナシーアタケを量産すると笑顔を浮かべながら籠にパナシーアタケを詰め込んだ。
森に入って早々、アメリアさんが「鑑定」と呟きながら周囲を見渡していく。
<ほう。『鑑定』が使えるということは、彼女は『鑑定士』のギフトホルダーですね。とても珍しいギフトです。『鑑定』が使えるなら簡単に『パナシーアタケ』を手に入れることができるかもしれません>
そうなんだ。
流石はお父さんの側近。有能なギフトホルダーが揃っている。
「それで、『パナシーアタケ』はありそうですか?」
周囲を見渡し終えたアメリアさんにそう尋ねると、アメリアさんは残念そうな表情を浮かべ首を振った。
「見つからないわね。ガラスケースに入っていたキノコと似たものを見つけたけど、効能がまったく違うし……仕方がないわ。他の場所に移りましょう。オーダー様とフォーリッシュ様のためにも街の人達を死なせる訳には行かないわ」
「そうですね」
そう。街の人達も僕達が『パナシーアタケ』を持って帰ることを願っているはずだ。
『パナシーアタケ』を見つけるため、次の場所を移すも、アメリアさんは首を振るだけでまったく『パナシーアタケ』が見当たらない。
十二ヶ所ほど回った所で、アメリアさんが舌打ちをした。
「……本当にこの辺りに生えているんでしょうね?」
「ま、まあまあ、万能薬の原料となる凄いキノコですし、量が少ないだけで、きっと生えていますよ。デネブさんを信じましょう」
「そうです。ノース様の言う通りです」
そう言うと、アメリアさんはジト目でこちらに視線を向けてくる。
「そういえば、ノース様のギフトは『キノコマスター』でしたよね? ギフトで『パナシーアタケ』を出すことはできないのですか?」
「えっ?」
言われてみれば……完全に盲点だった。
もしギフトの力で『パナシーアタケ』が出せるなら、それに越したことはない。
ナビさんに話を聞いてみる。
ナビさん。ギフトの力で『パナシーアタケ』を出すことってできる?
そう問いかけると、ナビさんは僕の視界に文字を浮かべてくる。
<『パナシーアタケ』ですか……もちろん、出すことはできます。しかし、ギフトレベルが上がらないことには難しいですね>
そっか……。
まあそうだろうとは思っていた。
ギフトレベル10に到達したからというものの、ギフトレベルがだんだんと上がりにくくなっている。
どこかでスタンピードでも起こってくれれば大量の魔石を手に入れることができるんだけど……いや、スタンピードが起こればというのは流石に不謹慎か。
「ギフトレベルが上がらないことには無理そうです」
そう言うと、アメリアさんは残念そうな表情を浮かべた。
結構、期待していたらしい。
「そうね……。そんな簡単に万能薬の原料が手に入る訳ないものね。仕方がありません。地道に探すと致しましょう」
この場所を後にしようとすると、クロユリさんが袖を引いてくる。
「どうしたの、クロユリさん?」
「あの、私のギフトを使えばなんとかなるかも知れません」
クロユリさんの肩で、森の精霊ドライアドがキュイキュイと鳴いている。
ドライアドもやる気のようだ。
リスが胸をドンと叩きドヤっている姿。
なんだか可愛い。
そんなドライアドの姿にホッコリしていると、アメリアさんがクロユリさんの言葉に喰い付いた。
「その話、本当ですか!?」
「え、ええっ、私のギフト『フォレストマスター』は森を操る力。その力を利用すれば森にパナシーアタケを生み出すこともできるはずです。ドラちゃん。この場所にパナシーアタケを生やせる?」
ドライアドがコクリと頷くと、目の前に横たわる倒木が翠色に光り出す。
すると、倒木の脇からニョキニョキと、まるで白い鳥が翼を広げたかのようなキノコが生えてきた。
「うわぁ~! 凄いよ。クロユリさん!」
「ええっ、ノース様の仰る通りです! 鑑定して見ましたが、確かにこれはパナシーアタケに間違いありません!」
「ほ、本当ですか? お役に立てたようでよかったです」
クロユリさんが気恥ずかしそうに、ポリポリと頬をかいた。
「でも、これで足りるでしょうか?」
「うーん。そうだね……」
パナシーアタケに視線を向けるも、一体、どれ程の量があれば、足りるのかわからない。
デネブから渡された籠の大きさからするに、最低でもこの籠一杯ないと話にならないのだろうと推察される。
「籠を二つ渡されたし、籠二つ分が埋まる位のパナシーアタケを用意すれば問題ないんじゃないかな?」
「そうですね。街にいる人全員分ともなると、これ位の量が必要になるからこそデネブも籠を二つも渡したのでしょうし……」
「私もノース様の言う通りだと思います。それに万が一足りないようであれば、また森に取りに来ればいいんです!」
まったくもってその通りだ。
その方向性でいこう。
「それじゃあ、籠一杯のパナシーアタケを生やしますね!」
『キュイ!』
ドライアドも乗り気のようだ。
僕達はクロユリさんとドライアドの力を借りて籠一杯のパナシーアタケを量産すると笑顔を浮かべながら籠にパナシーアタケを詰め込んだ。
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