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第三章 ホオズキの街
第74話 一見兵士に見えますが、どうやら盗賊のようです①
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オーダーさん、ことお父さんからのお願いを受けた僕は、クロユリさんと共に、ホオズキの街へと出発した。ちなみに馬車の御者は、お父さんの側近アメリアさんだ。
「ノース様にクロユリ様、これより隣国、ストレリチア王国に入ります」
「えっ? ストレリチア王国に入るんですか? いまから向かう『ホオズキの街』は、お父さんの息子であるフォーリッシュ兄様が統治しているはずじゃ……」
僕がそう疑問符を浮かべていると、アメリアさんはすぐに発言を訂正してくれた。
「……間違えました。いまのは忘れて下さい」
「あっ、はい……」
一体、なにを間違えたのだろうか?
そんなことを考えていると、クロユリさんが僕の顔を凝視していることに気付く。
「……えっと、クロユリさん、どうかしたのかな?」
「いえいえ、なんでもありません。ただノース様の昼顔に見惚れていただけです」
「そ、そう……」
はやり、クロユリさんはキノコ・キャッスルに置いてくるべきだったかもしれない。早まった真似をしてしまった。
クロユリさんを連れて来てしまったことに後悔の念を覚えていると、突然、馬車が大きく揺れる。
「ノース様にクロユリ様! 盗賊です! しっかり捕まっていて下さい!」
「ええっ、盗賊っ!?」
馬車から外を覗くと、銀色の甲冑に身を包んだ男達が馬に乗り、剣を掲げてこちらに向かってくる姿が見える。
「えっ? あれ、本当に盗賊ですか? 僕には国か街に仕える兵士に見えるんですけど……」
「はい。盗賊です! 最近の盗賊は皆、盗賊だとわからぬように兵士の格好をしているものなのです! 間違いありません!」
「そ、そうなんですか……」
しかし、後ろを見るも、盗賊らしさはどこにもない。
とはいえ、アメリアさんが盗賊だと言うのだ。
きっと盗賊なのだろう。
「ノース様! 私は馬車の操縦で手が離せません! もし、よろしければ、あの盗賊達を撃退しては頂けますか!?」
「うん。わかった……って、ええっ? 護衛いないの!?」
そういえば、この馬車には護衛が乗っていなかった。
驚きの声を上げていると、なぜかクロユリさんが立ち上がる。
「クロユリさん? ねえ、なにやってるのクロユリさん?」
「ノース様。盗賊の撃退は私にお任せ下さい! 私にはこれがあります!」
そう言うと、クロユリさんが懐から精霊石を取り出した。
あれから、キングスライムが出現する度に、マッシュルーム・アサシンに倒してもらったため、精霊石の在庫は沢山ある。
それにクロユリさんには、森の精霊ドライアドが付いている。
おそらく、森の精霊ドライアドの力を使い、盗賊を撃退する気なのだろう。
森の精霊が盗賊を排除してくれるなら危険性も少ないかな?
「う、うん! それじゃあ、よろしく頼むね!」
「わかりました!」
そうお願いすると、クロユリさんが精霊石に精霊の力を込め出した。
精霊石が光り輝き形状を変えていく。
<おお、あのハーフエルフ、森の精霊の力を精霊石に込め、モンスターを操って盗賊を撃退する気ですね!>
なるほど、確かにいま通っている馬車道は、森の中にある。
『フォレストマスター』であるクロユリさんの独壇場だ。
「クロユリさん、頑張って!」
「はい。ノース様の期待に沿えるよう頑張りますね!」
クロユリさんに向かってそう言うと、クロユリさんはなぜか、殺傷力の高そうなメイスを肩に担ぎながらそう言った。
あれ、目の錯覚だろうか?
クロユリさんが担いでいる武器がメイスに見える。
「それじゃあ、行きますよ~!」
クロユリさんはそう言うと、そのメイスを盗賊達に対してぶん投げた。
盗賊達は馬に乗り、この馬車を追いかけて来ている。
そして、いま通っている馬車道は一本道。
そんな場所にメイスをぶん投げたらどうなるか……。
「よ、避けろぉぉぉぉ! ぎゃっ!」
「む、無理です! うわぁぁぁぁ!」
「う、馬がいうことをきかな……あぁぁぁぁ!」
先頭を走っていた盗賊は落馬し、馬と馬が追突事故を引き起こす。
後ろを走っていた盗賊の馬はそれに驚き、馬車道を外れて森の中に突っ込んで行ってしまった。
「ノース様。やりました!」
「う、うわー。流石はクロユリさん。盗賊に向かってメイスをぶん投げるなんて思いもしなかったよー(棒読み)」
貴重な精霊石をメイスに形状変化してぶん投げるとは思いもしなかった。
まだまだ沢山、精霊石があるとはいえ、もう少し大切に使って欲しい。
「ええ、クロユリ様。盗賊を撃退して頂き、ありが……いえ! まだです!」
「ええっ!?」
後ろを振り向くと、そこには、先程、クロユリさんがメイスを投げた際、森の中に突っ込んでいった盗賊が多くのワーウルフを引き連れ、この馬車を追いかけていた。
「よ、よくも仲間をっ! こうなったらヤケだ! お前達も巻き添えにしてやる!」
ワーウルフと共に馬車を追いかけてくる盗賊がそう言った。
どうやら、自棄っぱちになっているようだ。
どんどん馬車に近付いてくる。
すると、クロユリさんが再び懐に手を入れ、精霊石をトゲ付きのメイスに変えていく。
「ねえ、クロユリさん? なにをやろうとしているのクロユリさん? その精霊石、そうホイホイ手に入る物じゃないんだよ?」
「ええ、わかっております。なので今度はこうするだけです!」
盗賊が馬車と並走したタイミングで、クロユリさんがメイスを大きく振った。
「ぐぼっ!?」
メイスは盗賊の頭にヒットするも、落馬するには至らない。
「あれ? 中々、しぶといですね?」
すると、クロユリさんが恐ろしいことを呟いた。
「ノース様にクロユリ様、これより隣国、ストレリチア王国に入ります」
「えっ? ストレリチア王国に入るんですか? いまから向かう『ホオズキの街』は、お父さんの息子であるフォーリッシュ兄様が統治しているはずじゃ……」
僕がそう疑問符を浮かべていると、アメリアさんはすぐに発言を訂正してくれた。
「……間違えました。いまのは忘れて下さい」
「あっ、はい……」
一体、なにを間違えたのだろうか?
そんなことを考えていると、クロユリさんが僕の顔を凝視していることに気付く。
「……えっと、クロユリさん、どうかしたのかな?」
「いえいえ、なんでもありません。ただノース様の昼顔に見惚れていただけです」
「そ、そう……」
はやり、クロユリさんはキノコ・キャッスルに置いてくるべきだったかもしれない。早まった真似をしてしまった。
クロユリさんを連れて来てしまったことに後悔の念を覚えていると、突然、馬車が大きく揺れる。
「ノース様にクロユリ様! 盗賊です! しっかり捕まっていて下さい!」
「ええっ、盗賊っ!?」
馬車から外を覗くと、銀色の甲冑に身を包んだ男達が馬に乗り、剣を掲げてこちらに向かってくる姿が見える。
「えっ? あれ、本当に盗賊ですか? 僕には国か街に仕える兵士に見えるんですけど……」
「はい。盗賊です! 最近の盗賊は皆、盗賊だとわからぬように兵士の格好をしているものなのです! 間違いありません!」
「そ、そうなんですか……」
しかし、後ろを見るも、盗賊らしさはどこにもない。
とはいえ、アメリアさんが盗賊だと言うのだ。
きっと盗賊なのだろう。
「ノース様! 私は馬車の操縦で手が離せません! もし、よろしければ、あの盗賊達を撃退しては頂けますか!?」
「うん。わかった……って、ええっ? 護衛いないの!?」
そういえば、この馬車には護衛が乗っていなかった。
驚きの声を上げていると、なぜかクロユリさんが立ち上がる。
「クロユリさん? ねえ、なにやってるのクロユリさん?」
「ノース様。盗賊の撃退は私にお任せ下さい! 私にはこれがあります!」
そう言うと、クロユリさんが懐から精霊石を取り出した。
あれから、キングスライムが出現する度に、マッシュルーム・アサシンに倒してもらったため、精霊石の在庫は沢山ある。
それにクロユリさんには、森の精霊ドライアドが付いている。
おそらく、森の精霊ドライアドの力を使い、盗賊を撃退する気なのだろう。
森の精霊が盗賊を排除してくれるなら危険性も少ないかな?
「う、うん! それじゃあ、よろしく頼むね!」
「わかりました!」
そうお願いすると、クロユリさんが精霊石に精霊の力を込め出した。
精霊石が光り輝き形状を変えていく。
<おお、あのハーフエルフ、森の精霊の力を精霊石に込め、モンスターを操って盗賊を撃退する気ですね!>
なるほど、確かにいま通っている馬車道は、森の中にある。
『フォレストマスター』であるクロユリさんの独壇場だ。
「クロユリさん、頑張って!」
「はい。ノース様の期待に沿えるよう頑張りますね!」
クロユリさんに向かってそう言うと、クロユリさんはなぜか、殺傷力の高そうなメイスを肩に担ぎながらそう言った。
あれ、目の錯覚だろうか?
クロユリさんが担いでいる武器がメイスに見える。
「それじゃあ、行きますよ~!」
クロユリさんはそう言うと、そのメイスを盗賊達に対してぶん投げた。
盗賊達は馬に乗り、この馬車を追いかけて来ている。
そして、いま通っている馬車道は一本道。
そんな場所にメイスをぶん投げたらどうなるか……。
「よ、避けろぉぉぉぉ! ぎゃっ!」
「む、無理です! うわぁぁぁぁ!」
「う、馬がいうことをきかな……あぁぁぁぁ!」
先頭を走っていた盗賊は落馬し、馬と馬が追突事故を引き起こす。
後ろを走っていた盗賊の馬はそれに驚き、馬車道を外れて森の中に突っ込んで行ってしまった。
「ノース様。やりました!」
「う、うわー。流石はクロユリさん。盗賊に向かってメイスをぶん投げるなんて思いもしなかったよー(棒読み)」
貴重な精霊石をメイスに形状変化してぶん投げるとは思いもしなかった。
まだまだ沢山、精霊石があるとはいえ、もう少し大切に使って欲しい。
「ええ、クロユリ様。盗賊を撃退して頂き、ありが……いえ! まだです!」
「ええっ!?」
後ろを振り向くと、そこには、先程、クロユリさんがメイスを投げた際、森の中に突っ込んでいった盗賊が多くのワーウルフを引き連れ、この馬車を追いかけていた。
「よ、よくも仲間をっ! こうなったらヤケだ! お前達も巻き添えにしてやる!」
ワーウルフと共に馬車を追いかけてくる盗賊がそう言った。
どうやら、自棄っぱちになっているようだ。
どんどん馬車に近付いてくる。
すると、クロユリさんが再び懐に手を入れ、精霊石をトゲ付きのメイスに変えていく。
「ねえ、クロユリさん? なにをやろうとしているのクロユリさん? その精霊石、そうホイホイ手に入る物じゃないんだよ?」
「ええ、わかっております。なので今度はこうするだけです!」
盗賊が馬車と並走したタイミングで、クロユリさんがメイスを大きく振った。
「ぐぼっ!?」
メイスは盗賊の頭にヒットするも、落馬するには至らない。
「あれ? 中々、しぶといですね?」
すると、クロユリさんが恐ろしいことを呟いた。
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