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第二章 アベコベの街
第54話 ぼったくられる奴隷商人①
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奴隷商人スレイブが護衛と共に宿泊した宿泊施設『名ばかり平民御用達 宿屋ぼったくり』。
平民御用達とあったため期待はしていなかったが、意外なことにサービスが充実していた。
酒を持ってこいと命じると、酒と共につまみまで運んできてくれる。
身体を清めるための水と布を用意しろと命じると、風呂と呼ばれる身体の洗浄や温浴のための設備に案内してくれるなど、いたせり尽せりだ。
これには護衛達もニッコリ笑顔。
つまみを食べながら、ガンガン酒を煽っている。
御者もいい宿を見つけたものだと、この宿を出立する時までは思っていた。
そう……出立する時までは……。
「それにしても、快適な宿でしたね。スレイブ様、今日もここに宿泊致しませんか?」
「ふむ。そうだな」
確かに平民御用達とは思えないほどに快適な宿屋だった。キングスライム討伐には時間もかかるだろうし、『蒼い宝石:ブルースライム』を十キログラム集めるにはまだ時間がかかる。
もう数泊するのもいいかもしれない。
そんなことを考えながら、宿を出る準備をしていると、店主が一枚の請求書を持ってやってきた。
「おはようございます。スレイブ様。当宿屋はいかがでしたでしょうか」
「うむ。中々、良い宿屋であった。また利用させて貰うとしよう」
「それは、ありがとうございます。宿泊の予約はいかが致しますか?」
「そうだな。それでは一週間分の予約をさせて貰おう」
私がそう言うと、店主は笑顔を浮かべた。
「ありがとうございます。しかし、一度予約をしてしまいますと、予約取り止め時、キャンセル料が発生してしまいますが……、それでもよろしいでしょうか?」
「キャンセル料? まあその位いいだろう。なんといっても、ここは平民御用達の宿屋だからな」
平民が使うにしては上質な宿であった。
しかし、平民御用達を謳う以上、価格はリーズナブルに違いない。
「それでは一週間分の予約を承ります。それとこちらが昨日の宿泊料金にございます」
「ふむ、どれどれ……って、なにぃぃぃぃ!」
そう言って、店主から請求書を受け取ると、金額を見て絶叫をあげた。
請求書の内訳を見ると宿泊料金百万コル、食事代百万コル、サービス代百万コル、合計三百万コルと書かれている。
「さ、三百万コルなんて払える訳がないだろ! ふざけるなっ!」
そう叫び声を上げるも、店主はまったく動じない。
「そう言われましても、こちらも商売ですからね。宿泊された以上、お支払い頂かないことには困ります。三百万コル、お支払い頂けますか?」
「何度も言わせるな! こんな金額払える訳がないだろ! 予約もキャンセルだ! ふざけるんじゃない!」
「しかし、よろしいのですか? キャンセル料がかかってしまいますが……」
「な、なにっ!?」
そもそも、こんな法外な金額を請求されるのであれば予約なんてしなかった。
当然、キャンセル料は無料になって然るべきだろう。
そう抗議の声を上げようとすると、店主は請求書にキャンセル代七百万コルを書き足し、手渡してきた。
おそらく一日百万コル。
おそろしく法外な金額だ。
「それでは、改めましてキャンセル料金を含めた一千万コルの支払いをお願いします」
「ふ、ふざけるんじゃない! なにが一千万コルだ! おい、お前達! 行くぞ」
宿泊料金一千万コルを踏み倒し、宿屋から出ようとする。
すると、出入り口を塞ぐようにして兵士が現れた。
「な、なんだお前達は……」
突然現れた兵士達に驚きの表情を浮かべる。
「いえ、お客様の中には宿泊サービスを受けたにも関わらず、踏み倒そうという不届な方もいらっしゃいますので、事前に兵士を呼ばせて頂きました。もしお支払い頂けない場合、犯罪者として兵士に引き渡すことになりますがいかがいたしますか? もちろん、借金も課しますので、兵士から解放される時にはめでたく借金奴隷になっていると思いますが……」
「な、なんだと!?」
奴隷商人を借金奴隷に落とそうだなんて、なんてことを考えるんだ。
しかし、これはチャンスかもしれない。
いくらなんでも、この請求はおかしい。第三者視点から冷静に判断して貰えば、どちらがおかしなことを言っているかわかるはずだ。
そっちがその気なら、こちらもこのふざけた請求書を兵士達に見せ判断して貰おう。
「ふん。ならば、ここにいる兵士に判断して貰おうではないか! 元々、私は料金を支払うつもりであった。こんなふざけた金額でなければなぁ!」
そう声を出して兵士達向かって請求書を掲げる。
しかし、兵士達に反応はない。
むしろ、なにやってるんだコイツと言わんばかりの表情を浮かべている。
この街に住む兵士の頭は大丈夫だろうか?
こんなふざけた金額の請求書を見れば、どちらが荒唐無稽なことを言っているか気付きそうなものだが……。
「ふむ。反応はないようですね。それでは一千万コルを支払うか、支払いを拒否して借金奴隷になるか決めて頂けますか?」
「ぐっ……クソがぁぁぁぁ!」
私は叫び声を上げると仕方がなく協会証を取り出した。
平民御用達とあったため期待はしていなかったが、意外なことにサービスが充実していた。
酒を持ってこいと命じると、酒と共につまみまで運んできてくれる。
身体を清めるための水と布を用意しろと命じると、風呂と呼ばれる身体の洗浄や温浴のための設備に案内してくれるなど、いたせり尽せりだ。
これには護衛達もニッコリ笑顔。
つまみを食べながら、ガンガン酒を煽っている。
御者もいい宿を見つけたものだと、この宿を出立する時までは思っていた。
そう……出立する時までは……。
「それにしても、快適な宿でしたね。スレイブ様、今日もここに宿泊致しませんか?」
「ふむ。そうだな」
確かに平民御用達とは思えないほどに快適な宿屋だった。キングスライム討伐には時間もかかるだろうし、『蒼い宝石:ブルースライム』を十キログラム集めるにはまだ時間がかかる。
もう数泊するのもいいかもしれない。
そんなことを考えながら、宿を出る準備をしていると、店主が一枚の請求書を持ってやってきた。
「おはようございます。スレイブ様。当宿屋はいかがでしたでしょうか」
「うむ。中々、良い宿屋であった。また利用させて貰うとしよう」
「それは、ありがとうございます。宿泊の予約はいかが致しますか?」
「そうだな。それでは一週間分の予約をさせて貰おう」
私がそう言うと、店主は笑顔を浮かべた。
「ありがとうございます。しかし、一度予約をしてしまいますと、予約取り止め時、キャンセル料が発生してしまいますが……、それでもよろしいでしょうか?」
「キャンセル料? まあその位いいだろう。なんといっても、ここは平民御用達の宿屋だからな」
平民が使うにしては上質な宿であった。
しかし、平民御用達を謳う以上、価格はリーズナブルに違いない。
「それでは一週間分の予約を承ります。それとこちらが昨日の宿泊料金にございます」
「ふむ、どれどれ……って、なにぃぃぃぃ!」
そう言って、店主から請求書を受け取ると、金額を見て絶叫をあげた。
請求書の内訳を見ると宿泊料金百万コル、食事代百万コル、サービス代百万コル、合計三百万コルと書かれている。
「さ、三百万コルなんて払える訳がないだろ! ふざけるなっ!」
そう叫び声を上げるも、店主はまったく動じない。
「そう言われましても、こちらも商売ですからね。宿泊された以上、お支払い頂かないことには困ります。三百万コル、お支払い頂けますか?」
「何度も言わせるな! こんな金額払える訳がないだろ! 予約もキャンセルだ! ふざけるんじゃない!」
「しかし、よろしいのですか? キャンセル料がかかってしまいますが……」
「な、なにっ!?」
そもそも、こんな法外な金額を請求されるのであれば予約なんてしなかった。
当然、キャンセル料は無料になって然るべきだろう。
そう抗議の声を上げようとすると、店主は請求書にキャンセル代七百万コルを書き足し、手渡してきた。
おそらく一日百万コル。
おそろしく法外な金額だ。
「それでは、改めましてキャンセル料金を含めた一千万コルの支払いをお願いします」
「ふ、ふざけるんじゃない! なにが一千万コルだ! おい、お前達! 行くぞ」
宿泊料金一千万コルを踏み倒し、宿屋から出ようとする。
すると、出入り口を塞ぐようにして兵士が現れた。
「な、なんだお前達は……」
突然現れた兵士達に驚きの表情を浮かべる。
「いえ、お客様の中には宿泊サービスを受けたにも関わらず、踏み倒そうという不届な方もいらっしゃいますので、事前に兵士を呼ばせて頂きました。もしお支払い頂けない場合、犯罪者として兵士に引き渡すことになりますがいかがいたしますか? もちろん、借金も課しますので、兵士から解放される時にはめでたく借金奴隷になっていると思いますが……」
「な、なんだと!?」
奴隷商人を借金奴隷に落とそうだなんて、なんてことを考えるんだ。
しかし、これはチャンスかもしれない。
いくらなんでも、この請求はおかしい。第三者視点から冷静に判断して貰えば、どちらがおかしなことを言っているかわかるはずだ。
そっちがその気なら、こちらもこのふざけた請求書を兵士達に見せ判断して貰おう。
「ふん。ならば、ここにいる兵士に判断して貰おうではないか! 元々、私は料金を支払うつもりであった。こんなふざけた金額でなければなぁ!」
そう声を出して兵士達向かって請求書を掲げる。
しかし、兵士達に反応はない。
むしろ、なにやってるんだコイツと言わんばかりの表情を浮かべている。
この街に住む兵士の頭は大丈夫だろうか?
こんなふざけた金額の請求書を見れば、どちらが荒唐無稽なことを言っているか気付きそうなものだが……。
「ふむ。反応はないようですね。それでは一千万コルを支払うか、支払いを拒否して借金奴隷になるか決めて頂けますか?」
「ぐっ……クソがぁぁぁぁ!」
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