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第二章 アベコベの街
第53話 森の精霊ドライアド
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精霊石が緑色の光を帯びると、その光がまるでリスのような小動物に変わっていく。
「ノース様。紹介しますわ。この子が森の精霊ドライアドのドラちゃんです」
ドライアドは、クロユリさんの肩に乗ると、ペコリとお辞儀をした。
なんだかとても可愛い。
僕もつられてお辞儀する。
<ノース様。そんなことをしている場合ではありません。ドライアドに森に住むモンスターを鎮静化してもらわないと!>
そ、そうだった。
「ドライアド様。早速で申し訳ございませんが、森に住むモンスターを鎮静化して頂けませんか?」
モンスターを鎮静化させることができるか尋ねると、ドライアドがコクリと頷いた。
ドライアドの身体に翠色の光が宿ると、その光はドライアドの身体を離れ、森中に散っていく。
その光景は、まるで柔らかく翠色の霧が森を包んでいくようだった。
ナビさんの解放したキノコマスターレベル10の力で、マキシマム・マッシュルーム・カイザーと化したキノコ・キャッスルの中から外を覗くと、モンスターの勢いが沈静化しているのが見て取れる。
<なんとか間に合いましたね。キノコ・キャッスルに対する被害は最小限に抑えることができました。まあ、だいぶ地形は変わってしまいましたが、辺境なのでよしとしましょう>
「いや、全然よくないよ!?」
見てほしい。この外の惨状を……。
マッシュルーム・エクスカリバーにより隆起した大地に、死屍累々となったモンスターの姿。どう考えてもアウトだろう。
というより、大丈夫なのだろうか?
街からキノコ・キャッスルが見えるということは、当然、マキシマム・マッシュルーム・カイザーの姿も見られていたはず……。
<まあまあ、その件については後程考えることに致しましょう>
そ、そうだね。
もう手遅れなような気がしてならないけど……。
とりあえず、僕はモンスターを鎮静化してくれたドライアドにお礼の言葉を告げる。
「ありがとうございます。ドライアド様」
そう言うと、ドライアドは『ピヨッ』と鳴き声を発した。
「ドライアドは、『このくらいのことお安い御用さ』と言っています。『新しい精霊石をありがとう』『クロユリのことも末永く頼む』とも……」
<ノース様、騙されてはいけません。森の精霊ドライアドがそんなことを言うはずがありません。最後の一文はハーフエルフが付け加えた虚言に決まっています>
「う、うん。そうだね……」
なんていうか、ナビさんとクロユリさんの相手をするのは酷く疲れる。
なんでだろう?
もっと話半分に聞いた方がいいのかな?
「ま、まあ、まずは今後について話をしようか……僕達には話し合わなくちゃいけないことが沢山あると思うんだ……」
僕がそう言うと、なぜかは分からないがクロユリさんが顔を赤らめた。
「ええっ、ぜひ私達の今後について、お話し合いを致しましょう!」
なぜ、こんなにも乗り気なのかよく分からない。しかし、好都合だ。
ナビさんにマキシマム・マッシュルーム・カイザーと化したキノコ・キャッスルを元に戻して貰うとテーブルに付きクロユリさんと今後の話をすることにした。
「クロユリさんは、これからどうしたい? 森に帰りたいなら手助けするけど……」
そう質問すると、クロユリさんは顔を赤らめながら回答してくる。
「私が帰る場所は元よりありません。あの場所は愛するお父様とお母様が共に眠る地ですから……」
クロユリさんがそう回答するとナビさんは僕の視界にそう文字を浮かべた。
<まあ、ハーフエルフのお母様が浮気性のお父様を強制的に眠らせた地ですからね。そんな場所に戻りたくはないのでしょう>
気が散るからナビさんには、ちょっとの間、黙っていてほしい。
「うん。それで?」
「はい。お邪魔でなければ、ノース様の下に……い、いえ、このキノコ・キャッスルに住まわせて頂けないでしょうか?」
<ふむ。まあ、キノコ・キャッスルに住む位なら問題ないのではないでしょうか? それにあのハーフエルフの持つギフトは強力です。目の届く場所に置いておいた方がいいかもしれません>
確かにその通りだ。
目を離してスタンピードを起こされては堪らない。
「うん。わかった。それじゃあ、これからよろしくね」
「は、はい! ありがとうございます!」
そう言うとクロユリさんが満面の笑みを浮かべる。
<こちらとしても、トラブルメーカーを事前に確保することができて万々歳ですね>
まったくだ。
まあマッシュルーム・アサシンが助けたと知った時からなにかしらの助けにはなるつもりだったけど、クロユリさんの持つ力を知った以上、一番無難な落とし所に持っていくことができて本当によかった。
<しかし、奴隷商人がいる以上、ハーフエルフを連れてあの街に行くのは危険ですね。それにハーフエルフのギフトは森にいる時、一番強い力を発揮します。ハーフエルフには、基本的にキノコ・キャッスルの守護を命じましょう。多分、ノース様が甘い声でそう囁けば簡単に言うことを聞いてくれるはずです>
ええっ……。
それはそれでなんだか微妙な気分だ。
ナビさんの言う通り、キノコ・キャッスルの守護をお願いすると、クロユリさんは笑顔を浮かべながら頷いてくれた。
「ノース様。紹介しますわ。この子が森の精霊ドライアドのドラちゃんです」
ドライアドは、クロユリさんの肩に乗ると、ペコリとお辞儀をした。
なんだかとても可愛い。
僕もつられてお辞儀する。
<ノース様。そんなことをしている場合ではありません。ドライアドに森に住むモンスターを鎮静化してもらわないと!>
そ、そうだった。
「ドライアド様。早速で申し訳ございませんが、森に住むモンスターを鎮静化して頂けませんか?」
モンスターを鎮静化させることができるか尋ねると、ドライアドがコクリと頷いた。
ドライアドの身体に翠色の光が宿ると、その光はドライアドの身体を離れ、森中に散っていく。
その光景は、まるで柔らかく翠色の霧が森を包んでいくようだった。
ナビさんの解放したキノコマスターレベル10の力で、マキシマム・マッシュルーム・カイザーと化したキノコ・キャッスルの中から外を覗くと、モンスターの勢いが沈静化しているのが見て取れる。
<なんとか間に合いましたね。キノコ・キャッスルに対する被害は最小限に抑えることができました。まあ、だいぶ地形は変わってしまいましたが、辺境なのでよしとしましょう>
「いや、全然よくないよ!?」
見てほしい。この外の惨状を……。
マッシュルーム・エクスカリバーにより隆起した大地に、死屍累々となったモンスターの姿。どう考えてもアウトだろう。
というより、大丈夫なのだろうか?
街からキノコ・キャッスルが見えるということは、当然、マキシマム・マッシュルーム・カイザーの姿も見られていたはず……。
<まあまあ、その件については後程考えることに致しましょう>
そ、そうだね。
もう手遅れなような気がしてならないけど……。
とりあえず、僕はモンスターを鎮静化してくれたドライアドにお礼の言葉を告げる。
「ありがとうございます。ドライアド様」
そう言うと、ドライアドは『ピヨッ』と鳴き声を発した。
「ドライアドは、『このくらいのことお安い御用さ』と言っています。『新しい精霊石をありがとう』『クロユリのことも末永く頼む』とも……」
<ノース様、騙されてはいけません。森の精霊ドライアドがそんなことを言うはずがありません。最後の一文はハーフエルフが付け加えた虚言に決まっています>
「う、うん。そうだね……」
なんていうか、ナビさんとクロユリさんの相手をするのは酷く疲れる。
なんでだろう?
もっと話半分に聞いた方がいいのかな?
「ま、まあ、まずは今後について話をしようか……僕達には話し合わなくちゃいけないことが沢山あると思うんだ……」
僕がそう言うと、なぜかは分からないがクロユリさんが顔を赤らめた。
「ええっ、ぜひ私達の今後について、お話し合いを致しましょう!」
なぜ、こんなにも乗り気なのかよく分からない。しかし、好都合だ。
ナビさんにマキシマム・マッシュルーム・カイザーと化したキノコ・キャッスルを元に戻して貰うとテーブルに付きクロユリさんと今後の話をすることにした。
「クロユリさんは、これからどうしたい? 森に帰りたいなら手助けするけど……」
そう質問すると、クロユリさんは顔を赤らめながら回答してくる。
「私が帰る場所は元よりありません。あの場所は愛するお父様とお母様が共に眠る地ですから……」
クロユリさんがそう回答するとナビさんは僕の視界にそう文字を浮かべた。
<まあ、ハーフエルフのお母様が浮気性のお父様を強制的に眠らせた地ですからね。そんな場所に戻りたくはないのでしょう>
気が散るからナビさんには、ちょっとの間、黙っていてほしい。
「うん。それで?」
「はい。お邪魔でなければ、ノース様の下に……い、いえ、このキノコ・キャッスルに住まわせて頂けないでしょうか?」
<ふむ。まあ、キノコ・キャッスルに住む位なら問題ないのではないでしょうか? それにあのハーフエルフの持つギフトは強力です。目の届く場所に置いておいた方がいいかもしれません>
確かにその通りだ。
目を離してスタンピードを起こされては堪らない。
「うん。わかった。それじゃあ、これからよろしくね」
「は、はい! ありがとうございます!」
そう言うとクロユリさんが満面の笑みを浮かべる。
<こちらとしても、トラブルメーカーを事前に確保することができて万々歳ですね>
まったくだ。
まあマッシュルーム・アサシンが助けたと知った時からなにかしらの助けにはなるつもりだったけど、クロユリさんの持つ力を知った以上、一番無難な落とし所に持っていくことができて本当によかった。
<しかし、奴隷商人がいる以上、ハーフエルフを連れてあの街に行くのは危険ですね。それにハーフエルフのギフトは森にいる時、一番強い力を発揮します。ハーフエルフには、基本的にキノコ・キャッスルの守護を命じましょう。多分、ノース様が甘い声でそう囁けば簡単に言うことを聞いてくれるはずです>
ええっ……。
それはそれでなんだか微妙な気分だ。
ナビさんの言う通り、キノコ・キャッスルの守護をお願いすると、クロユリさんは笑顔を浮かべながら頷いてくれた。
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