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第二章 アベコベの街
第41話 奴隷商人スレイブ②
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「私はスレイブ・バイヤー。こう見えても隣国の貴族でね。貴族として国に仕える一方で君のような逸材を探し求めてこの街まできたんだよ」
「逸材ですか?」
馬車の荷台に乗り込んですぐ、商人のスレイブさんが話しかけてきた。
どうやらこの人、貴族らしい。
完全にやってしまった。
貴族と極力関わるなとあれほどナビさんに教えられたのに……。
「そう。逸材だよ……見た所によると、君は十になったばかりだろう? 身寄りはあるのかい?」
「えっ? 確かに十歳で身寄りもありませんが……それがどうかしたんですか?」
そう言うと、スレイブさんがもの凄くいい笑みを浮かべた。
「いや、やはり私の目に狂いはなかったと思ってね」
なんだかもの凄く嫌な予感がする。
布が掛けられた四角い箱からは、なんだか人の声が聞こえるし、荷台に乗っている護衛の人はニヤニヤとした笑みを絶やさない。
<ああ、ノース様。これはやってしまいましたね。だからあれほど貴族には関わるなと言ったのに……>
ええっ……だって仕方がないじゃん!
折角の厚意を無碍にはできないよー!
<そうは言っても、この人達。どう考えても人攫いですよね? 絶対、奴隷商人ですよ? そうじゃなきゃノース様を一目見て逸材なんて言うはずがないじゃないですか>
いや、それどういう意味!?
<えっ? どういう意味もなにも対外的に見てノース様は、教会でギフトを授けて貰うも、大したギフトが発現しなかったから仕官することもできず、とりあえず、生活するにもお金は必要だから冒険者になった十歳になりたての身寄りのない子供ですよ? 気付かなかったんですか?>
いや、言い方!?
側から見たら、そうかもしれないけど、もう少しマイルドな言い方で言ってほしい。
<まあ、この街は辺境にありますからね。隣国も近いですし、冒険者であれば、ダンジョンに潜ったまま帰らぬ者になる人も多い。冒険者になりたての右も左もわからない新人冒険者は彼等にとって正しく逸材なのでしょう>
「へ、へぇ……そうなんですか……」
とりあえず、相手を刺激しないように、平静を装うとスレイブさんが声をかけてきた。
「ふふふっ、まあすぐに、いま言った意味がわかるさ……。そういえば、この街の初級ダンジョンでは、『蒼い宝石:ブルースライム』という鉱石が取れるみたいだね」
「は、はい……。初級ダンジョン、スライムの洞窟で採取することができるみたいですよ?」
一階層にあるブルースライムは取り尽くしてしまったので、当分の間、二階層に行かないと採取することはできないだろうけど……。
そう呟くと、スレイブさんは残念そうな表情を浮かべた。
「ふむ。いまの返事からするに、ブルースライムを持ってはいないようだね。それはとても残念だ……実は私の住む国では、この街の初級ダンジョンの一階層でのみ採ることのできるブルースライムが大人気でね。私はそのブルースライムを仕入れに来たのだよ」
「へ、へぇ……そうなんですか……」
「そうなのだよ。すでに大量の予約が前金と共に入ってきている。もしこの街で、ブルースライムが手に入らなければ、私は破産だよ。あははははっ! まあ君には関係のないことだがね」
「そ、そうですか、あははははっ……」
い、いま、一階層でのみ採ることのできるブルースライムと言わなかっただろうか?
<間違いなく言いましたね。ということは……ノース様。やってしまいましたね>
やっぱり!?
ヤバい。どうしよう……。
「ち、ちなみに、二階層ではどんな鉱石が採取できるんですか?」
「うん、知らないのか? 聞いた話によると二階層では、翠の宝石:エメラルドスライムが手に入るらしい。しかし、このエメラルドスライムは一階層にあるブルースライムより硬くてな、中々、出回らないようだ」
「へ、へえーそうなんですか……」
<翠の宝石:エメラルドスライムですか、いい話を聞きました。今度、ダンジョン攻略をする時にでも採取するとしましょう>
いや、いまはそれ所じゃないんだけど!?
ま、まずはここから離れないと……。
「まあ、私には頼りになる護衛が就いている。それにこの日のために蒼い宝石:ブルースライムを採掘する道具も揃えた。この私に抜かりはないさ……そんなことよりも、そろそろいいかな?」
スレイブさんがそう言うと、馬車が路地裏に入っていく。
「えーっと、商業協会は表通りを行った所ですよ? なんで路地裏に?」
頬に汗を浮かべながらそう呟くと、スレイブさんが満面の笑みを浮かべる。
「……実は私、本業の他に副業で奴隷商人をしていてね。この街には、ブルースライムを手に入れる他に、奴隷の買い付けにも訪れているんだよ」
「そ、そうなんですか……」
スレイブさんがそう言うと、護衛の人達が立ち上がる。
「馬車で人を物色していたら、私が求める条件に合致する逸材を見つけてね……誰のことかわかるかい?」
「い、いえ、誰のことなんでしょうね……検討もつきません。あははははっ……」
<どう考えてもノース様のことですよ>
そんなことはわかっている。
この状況で茶々を入れないでほしい。
「逸材ですか?」
馬車の荷台に乗り込んですぐ、商人のスレイブさんが話しかけてきた。
どうやらこの人、貴族らしい。
完全にやってしまった。
貴族と極力関わるなとあれほどナビさんに教えられたのに……。
「そう。逸材だよ……見た所によると、君は十になったばかりだろう? 身寄りはあるのかい?」
「えっ? 確かに十歳で身寄りもありませんが……それがどうかしたんですか?」
そう言うと、スレイブさんがもの凄くいい笑みを浮かべた。
「いや、やはり私の目に狂いはなかったと思ってね」
なんだかもの凄く嫌な予感がする。
布が掛けられた四角い箱からは、なんだか人の声が聞こえるし、荷台に乗っている護衛の人はニヤニヤとした笑みを絶やさない。
<ああ、ノース様。これはやってしまいましたね。だからあれほど貴族には関わるなと言ったのに……>
ええっ……だって仕方がないじゃん!
折角の厚意を無碍にはできないよー!
<そうは言っても、この人達。どう考えても人攫いですよね? 絶対、奴隷商人ですよ? そうじゃなきゃノース様を一目見て逸材なんて言うはずがないじゃないですか>
いや、それどういう意味!?
<えっ? どういう意味もなにも対外的に見てノース様は、教会でギフトを授けて貰うも、大したギフトが発現しなかったから仕官することもできず、とりあえず、生活するにもお金は必要だから冒険者になった十歳になりたての身寄りのない子供ですよ? 気付かなかったんですか?>
いや、言い方!?
側から見たら、そうかもしれないけど、もう少しマイルドな言い方で言ってほしい。
<まあ、この街は辺境にありますからね。隣国も近いですし、冒険者であれば、ダンジョンに潜ったまま帰らぬ者になる人も多い。冒険者になりたての右も左もわからない新人冒険者は彼等にとって正しく逸材なのでしょう>
「へ、へぇ……そうなんですか……」
とりあえず、相手を刺激しないように、平静を装うとスレイブさんが声をかけてきた。
「ふふふっ、まあすぐに、いま言った意味がわかるさ……。そういえば、この街の初級ダンジョンでは、『蒼い宝石:ブルースライム』という鉱石が取れるみたいだね」
「は、はい……。初級ダンジョン、スライムの洞窟で採取することができるみたいですよ?」
一階層にあるブルースライムは取り尽くしてしまったので、当分の間、二階層に行かないと採取することはできないだろうけど……。
そう呟くと、スレイブさんは残念そうな表情を浮かべた。
「ふむ。いまの返事からするに、ブルースライムを持ってはいないようだね。それはとても残念だ……実は私の住む国では、この街の初級ダンジョンの一階層でのみ採ることのできるブルースライムが大人気でね。私はそのブルースライムを仕入れに来たのだよ」
「へ、へぇ……そうなんですか……」
「そうなのだよ。すでに大量の予約が前金と共に入ってきている。もしこの街で、ブルースライムが手に入らなければ、私は破産だよ。あははははっ! まあ君には関係のないことだがね」
「そ、そうですか、あははははっ……」
い、いま、一階層でのみ採ることのできるブルースライムと言わなかっただろうか?
<間違いなく言いましたね。ということは……ノース様。やってしまいましたね>
やっぱり!?
ヤバい。どうしよう……。
「ち、ちなみに、二階層ではどんな鉱石が採取できるんですか?」
「うん、知らないのか? 聞いた話によると二階層では、翠の宝石:エメラルドスライムが手に入るらしい。しかし、このエメラルドスライムは一階層にあるブルースライムより硬くてな、中々、出回らないようだ」
「へ、へえーそうなんですか……」
<翠の宝石:エメラルドスライムですか、いい話を聞きました。今度、ダンジョン攻略をする時にでも採取するとしましょう>
いや、いまはそれ所じゃないんだけど!?
ま、まずはここから離れないと……。
「まあ、私には頼りになる護衛が就いている。それにこの日のために蒼い宝石:ブルースライムを採掘する道具も揃えた。この私に抜かりはないさ……そんなことよりも、そろそろいいかな?」
スレイブさんがそう言うと、馬車が路地裏に入っていく。
「えーっと、商業協会は表通りを行った所ですよ? なんで路地裏に?」
頬に汗を浮かべながらそう呟くと、スレイブさんが満面の笑みを浮かべる。
「……実は私、本業の他に副業で奴隷商人をしていてね。この街には、ブルースライムを手に入れる他に、奴隷の買い付けにも訪れているんだよ」
「そ、そうなんですか……」
スレイブさんがそう言うと、護衛の人達が立ち上がる。
「馬車で人を物色していたら、私が求める条件に合致する逸材を見つけてね……誰のことかわかるかい?」
「い、いえ、誰のことなんでしょうね……検討もつきません。あははははっ……」
<どう考えてもノース様のことですよ>
そんなことはわかっている。
この状況で茶々を入れないでほしい。
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