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第二章 アベコベの街

第40話 奴隷商人スレイブ①

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「ふははははっ! それじゃあな! あっ、そうだ……」

 ハブリスさんはそう言うと、僕の胸ぐらを掴み持ち上げる。

「な、なにをっ……」

 突然のことに驚きの表情を浮かべると、ハブリスさんが恫喝するかのように声を上げてきた。

「俺様はお前に前金として千コル紙幣と、ワーウルフの素材をくれてやると言ったよな?」
「は、はい。そうですね……」
「まあ、お前はワーウルフから素材を取らなかったようだが、それはお前が自分で判断したことだ。それに俺はお前をポーターとして雇った訳ではない。安全は保証されていたし、くれぐれも冒険者協会で実験台にされたなどと、根も葉もない噂を流さないように……わかったな? ああっ!?」
「は、はい。わかりました……」

 そう呟くと、ハブリスさんは僕のことを乱暴に突き放す。

「はははっ、わかっていればいいんだよ! ほら、これが依頼達成証だ。それじゃあなぁ! もう会うこともないだろうがよ!」

 ハブリスさんは高笑いを上げると、そのまま街の方向に消えていった。

「ふう。酷い目にあった……」

 <まったくですね。次にあいつがノース様の前に姿を現すようであれば、奴の食事にツルピカタケでも盛って、奴の頭をツルピカにしてやりましょう>

「う、うん。程々にね……」

 そう呟くと、依頼達成証を手に取り、お尻に着いた砂を払いながら立ち上がる。
 すると、ナビさんが視界に文字を浮かべてきた。

 <まあ、あの男のことは置いておくとして、折角、ワーウルフの魔石を手に入れたのです。早速、ギフトレベルを上げましょう>

「う、うん」

 そう呟くと、視界の端にナビさんの言葉が表示される。

 <魔石を使用しますか?>

 当然、イエスである。

「それじゃあ、お願い」

 <わかりました。それでは次元収納内にあるワーウルフの魔石を使用します>

 すると、視界の両端から不思議な円錐状の物が姿を表すと、突然爆発し、円錐状の物からなにかが射出された。

 <トゥットゥルー♪ おめでとうございます! ギフトレベルが11となりました。次のキノコが一覧に追加されます>

 <ギフト>
 キノコマスター
 レベル:11
 ギフトポイント:1320(1100+20×11)
 ※毎日、正午にレベルに応じてポイントが加算

 <キノコ②>
 マニピュレイトタケ(10)

 <キノコ⑥>
 マッシュルーム・メイド(100)
 マッシュルーム・ロード(100)

 <また、ギフトレベルが11になったことにより、次のスキルを取得しました>

 <スキル>
 領主

「えっ、なにこのスキル?」

『領主』……聞いたことのないスキルだ。

 <ほう。中々、いいスキルが手に入りましたね。このスキルは、マッシュルーム・ロードが追加されたことにより生えてきたスキルでしょう。スキルを鑑定してみると、中々、凄い効果を持っているようですよ?>

「どんな効果を持っているの?」

 興味本位でナビさんに問いかける。
 すると、ナビさんは『領主』の持つとんでもない効果を視界に浮かべた。

 <鑑定によると、ノース様が新しく手に入れたスキル『領主』は、自分が支配している土地に住むすべてのものを支配するスキルのようです>

「すべてのものを支配するスキル……なんだか凄い効果を持ったスキルだね」

 <はい。この『領主』はとても強い力を持つ反面、同じく『領主』の力を持つ者には効果が薄く。『王』を持つ者には、絶対服従というデメリットもあるようです>

「そ、そうなんだ……」

 ということは『領主』のスキルを手にした、いまの僕は、『王』のスキル又はギフトを持つ者に絶対服従……。なんだか、ヤバいスキルを手に入れてしまった気分だ。

 <なにを仰るんですか。どの道、ただのGランク冒険者であるノース様が『王』に逆らうことなんてできる訳がないんですから、いまとあまり変わりませんよ。むしろ、『領主』に対するスキルを手に入れたことを喜ぶべきです。このスキルがある限り『領主』に操られる心配がなくなったのですから>

 確かに、言われてみればその通りだ。
 まあ、そんなスキルやギフトを持っている人はそうはいないだろうけど……。

 <さて、ギフトレベルも上がりましたし、冒険者協会に向かいましょう。折角、ハブリスから依頼達成証を貰ったんです。蒼い宝石:ブルースライムもありますし、もしかしたら冒険者ランクが上がるかもしれませんよ?>

「えっ!? 本当にっ!?」

『次元収納』の中には初級ダンジョン、スライムの洞窟で手に入れた蒼い宝石:ブルースライムが大量に入っている。
 冒険者協会でも回収を推奨されていたし、確かにランクが上がるかもしれない。

 <ええ、その通りです。それでは、冒険者協会に向かいましょう>

「うん!」

 そう呟くと、僕は早速、冒険者協会に向かった。
 冒険者協会に向かう途中、馬車に乗った恰幅の良い商人から声がかかる。

「そこの君、ちょっといいかい?」
「はい。なんでしょう?」

 僕がそう返事をすると商人は馬車を横に止めた。

「いや、実はこの街に来たのは初めてでね。この街に商業協会があると思うんだが、どこにあるか教えてくれないか?」
「商業協会ですか?」

 僕は『冒険者協会のしおり』を手に取ると、商業協会のある場所を探していく。

「ああ、ここにあるみたいですよ」

『冒険者協会のしおり』を開いて見せると、商人は笑顔を浮かべた。

「そうか、この道をまっすぐ進めばいいんだな。ありがとう。助かったよ。そうだ! もし良ければ、途中まで乗っていかないかい?」
「えっ? いいんですか?」
「ああ、もちろんだよ」

 冒険者協会も同じ方向にある。
 折角なので、商人さんの厚意に甘えさせて貰うことにした。
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