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第二章 アベコベの街
第39話 傲慢な冒険者ハブリス②
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「ああ? なんだお前……まさか、この俺様に騙されたとでも思っているんじゃないだろうな?」
「い、いえ……そんなことは……」
正直、騙されたと思っている。
しかし、ここは中級ダンジョン、魔狼の巣窟。
僕一人でこの中級ダンジョンを抜けるのは難しい。
結局の所、このハブリスさんの言う通りにするしかないのだ。
<えっ? この男の言う通りにするんですか? いまのノース様なら……>
ナビさん、いまは黙ってて……。
いまは生きるか死ぬかの瀬戸際だ。
僕は生き残ることに必死だ。茶々を入れないでほしい。
<……わかりました。それでは、ノース様の動向を少しだけ見守ることにします>
そうしてくれるとありがたい。
早速、瓶の蓋を開けると、透明な液体が入っていた。
その液体は、瓶の蓋を開けると揮発を始める。
本当に効果があるのだろうかと心配そうな表情を浮かべていると、ハブリスさんから声がかかった。
「ノース。頑張れよ! その毒が無くなりそうになったら助けにきてやるよ!」
「えっ! ハブリスさん、どこに行くんですか!」
「ああっ? 決まっているだろ? その毒の検証だよ。実はその毒、俺が作った物なんだ。ワーウルフに効果があることは実証済みだが、どれほど広範囲に渡り効果がある毒なのかはまだ未検証だからな! 近くで観察して実証研究をするんだよ!」
「なっ!」
なんだって!?
いまから検証を行うの!?
そんなの聞いてない!
「そんなことを言っている場合か? ほら、見ろよ! 腹を空かせたワーウルフが寄ってきたぜ!」
「えっ!?」
ハブリスさんの言葉に周囲を見渡すと、ワーウルフがこちらに向かってくる姿が見えてきた。
急いで逃げ出そうとすると、ナビさんからストップが入る。
<まあまあ、ノース様。落ち着いて下さい。ノース様には、マッシュルーム・アサシンがついております。ワーウルフ位であれば問題ありません。あの男が言うには、その揮発性の毒がなくなれば助けにきてくれるようですし、まずは落ち着いて下さい>
「ええっ!? で、でも……」
<安心して下さい。ノース様にはマッシュルーム・エクスカリバーもあります。絶対に、ノース様の半径五メートル以内にワーウルフを近付けさせません>
「そ、そう?」
ナビさんが珍しく頼もしい言葉を浮かべてくれる。
<はい。それにナビはノース様と一心同体。ノース様が死ぬ時、ナビも死ぬのです。ナビのことを信じて下さい>
「う、うん。わかったよ」
ナビさんが滅茶苦茶頼もしい。
一体どうしたというのだろうか?
瓶を目の前に置いて座っていると、ワーウルフが僕の半径五メートル以内に入ったと同時に倒れ積み重なっていく。
「おお、本当に効果があったんだ……」
瓶に視線を向けると、ナビさんが視界に訂正の文字を浮かべた。
<いえ、その瓶に入っている揮発性の液体ですが、直接、ワーウルフに飲ませるのであればともかく、まったく効果はありません。いま、ワーウルフが倒れたのは、マッシュルーム・アサシンの毒によるものです>
「そ、そうなんだ……」
視線をハブリスさんに向けると、大喜びしている姿が目に映る。
耳を澄ませると「成功だ!」「これなら楽に大儲けができる!」といった声も聞こえてきた。
だ、大丈夫だろうか?
ハブリスさんにこの液体、全然、効果ありませんよ。と教えてあげた方がいいような……。
<まあ、ハブリスの声を聞くに、まずはご自分で実証実験を行うようですし問題ないのではありませんか? 身をもってその効果を実感して頂きましょう。それにそんなことを指摘したら、ハブリスのことです。絶対に激昂しますよ?>
「そ、それもそうだね……」
まあ、自分自身で実証実験を行う分には問題ないか……。
ワーウルフがバタバタ倒れる中、そう呟くと丁度、瓶の中が空になった。
他のワーウルフも、倒れ積み上がっていく同胞の姿を見て及び腰だ。
僕に視線を向けてくるものの、全然、近寄ってくる気配がない。
すると、しばらくしてハブリスさんがこちらにやってきた。
その表情は上機嫌そのもの。笑顔を浮かべながら近付いてくる。
「ふふふっ! 俺の作った猛毒は凄かっただろう? 見たまえ、この効果を! これすべてが俺の成果だ!」
「そ、そうですね……」
この猛毒にワーウルフを倒すほどの効果はない。
愛想笑いを浮かべていると、ハブリスさんが積み上げられたワーウルフに視線を向ける。
「しかし、これほど効果があるとは……自分の才能が怖い位だよ。しかし、これだけのワーウルフとなると持って帰るのは流石に無理そうだな……よし! おい、お前。報酬として、私が倒したワーウルフをくれてやる。ありがたいと思えよ! まあ、その貧相な身体じゃ持って帰ることなんてできないとは思うがな」
「あ、ありがとうございます……」
そうお礼の言葉を呟くと、ハブリスさんは大声を上げて笑い出す。
<折角、許可が出たことですし、ワーウルフの牙と体内の魔石だけ手に入れると致しましょう>
うん。そうだね。ナビさん、お願いできるかな?
<はい。任せて下さい>
頭の中でそう伝えると、ナビさんは倒したワーウルフから牙と魔石を抜いていく。
本当はワーウルフの身体すべてを持ち帰ることも可能だけど、そんなことをして変に目立ちたくはない。
「おや? ワーウルフの素材はいらないのか? まったく無欲な奴だな。それじゃあ、帰るぞ!」
「は、はい!」
高笑いを浮かべるハブリスさんに着いていくと、僕達は中級ダンジョン、魔狼の巣窟を後にした。
「い、いえ……そんなことは……」
正直、騙されたと思っている。
しかし、ここは中級ダンジョン、魔狼の巣窟。
僕一人でこの中級ダンジョンを抜けるのは難しい。
結局の所、このハブリスさんの言う通りにするしかないのだ。
<えっ? この男の言う通りにするんですか? いまのノース様なら……>
ナビさん、いまは黙ってて……。
いまは生きるか死ぬかの瀬戸際だ。
僕は生き残ることに必死だ。茶々を入れないでほしい。
<……わかりました。それでは、ノース様の動向を少しだけ見守ることにします>
そうしてくれるとありがたい。
早速、瓶の蓋を開けると、透明な液体が入っていた。
その液体は、瓶の蓋を開けると揮発を始める。
本当に効果があるのだろうかと心配そうな表情を浮かべていると、ハブリスさんから声がかかった。
「ノース。頑張れよ! その毒が無くなりそうになったら助けにきてやるよ!」
「えっ! ハブリスさん、どこに行くんですか!」
「ああっ? 決まっているだろ? その毒の検証だよ。実はその毒、俺が作った物なんだ。ワーウルフに効果があることは実証済みだが、どれほど広範囲に渡り効果がある毒なのかはまだ未検証だからな! 近くで観察して実証研究をするんだよ!」
「なっ!」
なんだって!?
いまから検証を行うの!?
そんなの聞いてない!
「そんなことを言っている場合か? ほら、見ろよ! 腹を空かせたワーウルフが寄ってきたぜ!」
「えっ!?」
ハブリスさんの言葉に周囲を見渡すと、ワーウルフがこちらに向かってくる姿が見えてきた。
急いで逃げ出そうとすると、ナビさんからストップが入る。
<まあまあ、ノース様。落ち着いて下さい。ノース様には、マッシュルーム・アサシンがついております。ワーウルフ位であれば問題ありません。あの男が言うには、その揮発性の毒がなくなれば助けにきてくれるようですし、まずは落ち着いて下さい>
「ええっ!? で、でも……」
<安心して下さい。ノース様にはマッシュルーム・エクスカリバーもあります。絶対に、ノース様の半径五メートル以内にワーウルフを近付けさせません>
「そ、そう?」
ナビさんが珍しく頼もしい言葉を浮かべてくれる。
<はい。それにナビはノース様と一心同体。ノース様が死ぬ時、ナビも死ぬのです。ナビのことを信じて下さい>
「う、うん。わかったよ」
ナビさんが滅茶苦茶頼もしい。
一体どうしたというのだろうか?
瓶を目の前に置いて座っていると、ワーウルフが僕の半径五メートル以内に入ったと同時に倒れ積み重なっていく。
「おお、本当に効果があったんだ……」
瓶に視線を向けると、ナビさんが視界に訂正の文字を浮かべた。
<いえ、その瓶に入っている揮発性の液体ですが、直接、ワーウルフに飲ませるのであればともかく、まったく効果はありません。いま、ワーウルフが倒れたのは、マッシュルーム・アサシンの毒によるものです>
「そ、そうなんだ……」
視線をハブリスさんに向けると、大喜びしている姿が目に映る。
耳を澄ませると「成功だ!」「これなら楽に大儲けができる!」といった声も聞こえてきた。
だ、大丈夫だろうか?
ハブリスさんにこの液体、全然、効果ありませんよ。と教えてあげた方がいいような……。
<まあ、ハブリスの声を聞くに、まずはご自分で実証実験を行うようですし問題ないのではありませんか? 身をもってその効果を実感して頂きましょう。それにそんなことを指摘したら、ハブリスのことです。絶対に激昂しますよ?>
「そ、それもそうだね……」
まあ、自分自身で実証実験を行う分には問題ないか……。
ワーウルフがバタバタ倒れる中、そう呟くと丁度、瓶の中が空になった。
他のワーウルフも、倒れ積み上がっていく同胞の姿を見て及び腰だ。
僕に視線を向けてくるものの、全然、近寄ってくる気配がない。
すると、しばらくしてハブリスさんがこちらにやってきた。
その表情は上機嫌そのもの。笑顔を浮かべながら近付いてくる。
「ふふふっ! 俺の作った猛毒は凄かっただろう? 見たまえ、この効果を! これすべてが俺の成果だ!」
「そ、そうですね……」
この猛毒にワーウルフを倒すほどの効果はない。
愛想笑いを浮かべていると、ハブリスさんが積み上げられたワーウルフに視線を向ける。
「しかし、これほど効果があるとは……自分の才能が怖い位だよ。しかし、これだけのワーウルフとなると持って帰るのは流石に無理そうだな……よし! おい、お前。報酬として、私が倒したワーウルフをくれてやる。ありがたいと思えよ! まあ、その貧相な身体じゃ持って帰ることなんてできないとは思うがな」
「あ、ありがとうございます……」
そうお礼の言葉を呟くと、ハブリスさんは大声を上げて笑い出す。
<折角、許可が出たことですし、ワーウルフの牙と体内の魔石だけ手に入れると致しましょう>
うん。そうだね。ナビさん、お願いできるかな?
<はい。任せて下さい>
頭の中でそう伝えると、ナビさんは倒したワーウルフから牙と魔石を抜いていく。
本当はワーウルフの身体すべてを持ち帰ることも可能だけど、そんなことをして変に目立ちたくはない。
「おや? ワーウルフの素材はいらないのか? まったく無欲な奴だな。それじゃあ、帰るぞ!」
「は、はい!」
高笑いを浮かべるハブリスさんに着いていくと、僕達は中級ダンジョン、魔狼の巣窟を後にした。
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