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第二章 アベコベの街

第36話 初級ダンジョン、スライムの洞窟

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 冒険者協会を後にした僕は『冒険者協会のしおり』を頼りにダンジョンに向かうことにした。
 ダンジョンとは、モンスターの住む迷路ににた構造を持つ空間。その内部は、外側から見ただけでは判断がつかないほど広く。様々な資源が眠っている。

 一説によると、ダンジョンは龍脈と呼ばれる地中を流れる不思議エネルギーの出口、龍穴にできるものとされ、最下層に行けば行くほど、強力なモンスターが出現すると言われている。

 アベコベの街の中にあるダンジョンは三つ。
 初級ダンジョン、スライムの洞窟。
 中級ダンジョン、魔狼の巣窟。
 そして、Aランク以上しか入ることの許されない上級ダンジョン、龍の谷。

 Gランクである僕は『冒険者のしおり』を頼りに初級ダンジョンであるスライムの洞窟に向かうことにした。

「ここが初級ダンジョン、スライムの洞窟か……」

 初級ダンジョン、スライムの洞窟。
 別名、蒼の洞窟とも呼ばれており、洞窟内の壁はスライムの粘液により蒼く染まり、洞窟内を照らす光と相まって幻想的な空間を作り出しているらしい。

 余談だが、スライムの粘液に晒され変質した洞窟の壁はとても固く、通常の手段では破壊することはできない。『冒険者協会のしおり』によると、壁の破片は『蒼い宝石:ブルースライム』として高値で取引されているようだ。もちろん、冒険者協会でも買い取ってくれる。

 最下層には、キングスライムと呼ばれるボスモンスターが存在しており、このキングスライム討伐が一人前の冒険者になるための一つの登竜門となっている。

 ちなみにボスモンスターは何度倒しても、しばらく期間をあければ復活するらしい。
 しかも、定期的に間引かなければ、ダンジョン内でモンスターが増殖し、スタンピードに繋がる。

 ダンジョンは、国や街を発展させる豊かな資源の一つであるのと同時に、一歩間違えばスタンピードの危険性のある危険な場所。
 だからこそ、冒険者協会がダンジョンを管理しているのだろう。

 <ノース様、ダンジョンに入らないのですか?>

「いや、ダンジョンに入るのは初めてだから緊張しちゃって……」

 そう呟くと、手元にマッシュルーム・エクスカリバーが現れる。

 <それでは、万全の体制で臨みましょう>

「うん。ありがとう」

 ナビさんが出してくれたマッシュルーム・エクスカリバーを手に取ると、初級ダンジョン、スライムの洞窟に向かって歩き出した。

 洞窟前にいる冒険者協会職員に協会証を提示すると、スライムの洞窟の中に入っていく。

 しばらく道なりに進んで行くと、青く丸いフォルムが特徴的なスライムの姿が見えてきた。

「ス、スライムだ。ナビさん、スライムがいるよ!?」

 <ええ、そうですね。それでは、折角なのでマッシュルーム・エクスカリバーの力を試してみましょう>

「う、うん」

 スライムを倒すのにマッシュルーム・エクスカリバーの力を使うのはなんだかオーバーキルのような気がするけど、まあいいか。

 スライムは核となる魔石を体内から取り除くか壊すことで倒すことができる。

 スライムに対峙した僕が勢いよくマッシュルーム・エクスカリバーを振るうと、突然、エクスカリバーが光を放ち、ズドーンという重低音を響かせながらスライムを消し飛ばしてしまった。

「えっ……ええっ!?」
 
 軽く振っただけでこの威力……。
 スライムがいた場所に視線を向けると、洞窟内に大きな亀裂が走り、瓦礫の山が積み上がっていた。

 <流石はノース様。やりましたね! スライムは消し飛んでしまいましたが、代わりに蒼い宝石:ブルースライムを手に入れることができました。この調子で壁を削りまくりましょう>

「え、ええっ? そんなことをしてもいいの?」

 確かに蒼い宝石:ブルースライムは冒険者協会でも買い取ってくれるみたいだけど……。

 <はい。問題ありません。それに『冒険者協会のしおり』でも回収が推奨されているではありませんか。それに持ちきれないブルースライムは、ノース様のスキル『次元収納』に入れておけばいいのです。近くに冒険者もいないようですし、どんどん壁を破壊しましょう>

 なるほど……。
『冒険者協会のしおり』に回収を推奨されているということは、冒険者協会もこの蒼い宝石:ブルースライムを必要としているということだろう。
 それにここはダンジョン。壁もスライムがいればすぐに直るはずだ。

「う、うん。そうだね」

 そういうと僕はマッシュルーム・エクスカリバーを振り上げ壁を破壊すると、蒼い宝石:ブルースライムを量産していく。

「……ふう。こんなもんでいいかな?」

 途中、ボクに向かって攻撃を仕掛けてきたスライムをマッシュルーム・エクスカリバーで消し飛ばしながら壁を破壊していくと、段々、壁の地肌が見えてきた。
 これだけブルースライムがあれば問題ないだろう。
 きっと、冒険者協会の職員さん達も喜んでくれるはずだ。

 <いや~流石ですね。一階層だけとはいえ、別名:蒼の洞窟と呼ばれていた初級ダンジョン、スライムの洞窟の壁を蒼から茶色に変えるなんて>

「えっ?」

 蒼い宝石:ブルースライムを『次元収納』に収めると、壊してきた通路に視線を向ける。すると、そこは蒼い洞窟と呼ばれていた時の幻想的な風景は消え、ただの明るい洞窟と化していた。
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