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第二章 アベコベの街
第35話 冒険者協会③
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「それではノース様。こちらの鍵と地図をお受け取り下さい」
「鍵と地図ですか?」
協会証と共に鍵と地図を渡された僕はポカンとした表情を浮かべた。
「はい。この街を治める領主様のご厚意により、当冒険者協会で登録した冒険者の皆様には、拠点となる家を丸ごと一軒プレゼントしております。そちらの地図に場所が示されておりますので、どうぞご利用下さい」
「えっ、家を丸々一軒貰えるんですか!?」
今日泊まる宿を探さなきゃいけないなと思っていたけど、冒険者協会に登録するだけで拠点となる家が貰えるとは思いもしなかった。
地図に目を通すと、ダンジョンに近い場所に家があるようだ。
<なるほど、街の中にダンジョンがあるんですね。ダンジョン内のモンスターは定期的に間引かないとスタンピードを引き起こします。それを防ぐために、ダンジョン近くに冒険者が住む家を設け、無料で住まわしているのでしょう>
なるほど、そういうことか……。
「はい。その通りです。それと、これから冒険者協会についてお話しさせて頂きたいと思うのですが、お時間は大丈夫ですか?」
冒険者協会内にある魔力時計を見ると、正午前を指している。
全然問題ない。それどころか、これからダンジョンに向かいたいと思っているくらいだ。
「はい。大丈夫です」
「そうですか。それでは、冒険者協会についてお話いたします」
冒険者協会の受付員ユノさんは、『冒険者協会のしおり』を取り出すと、それを僕に渡してくる。
「よろしくお願い致します」
「冒険者協会では主に、モンスターの討伐や素材・魔石の採取を始めとした各種依頼による仕事の斡旋、素材の買取を主な業務としております」
うん。それについては知っている。
冒険者協会のしおりをパラ読みすると、中に、街の地図やダンジョンで採れる素材、出現するモンスターなんかに関する情報も掲載されていた。
「また冒険者協会ではランク制を設けており、ランクに応じて報酬が増減します。ノース様の場合、一番下のGランクからスタートとなりますが、Gランクは特別なことがなければ皆さん一度は通る道です。依頼をこなし実績を作ることで着実にランクを上げることができます」
ランク制について記載されているページを見ると、ランクはGからSまでの八段階に分かれていた。
「Sランクになるためには、どうしたらいいんですか?」
ちょっとした興味本位で聞いてみると、ユノさんは笑顔を浮かべ表情を綻ばせた。
「そうですね。明確な基準がある訳ではございませんが、Sランクになるためには、たった一人でダンジョンを踏破できる位の力が必要となります。もしSランクを目指すのであれば、冒険者協会の依頼を受け実績を積み、ダンジョン踏破に必要な実力を付けていくのが一番の早道です」
なるほど……ダンジョンを一人で踏破するだけの力か……。
うん。無理だなそれは……。
<いえ、ノース様がパワーアップ系のキノコを三食毎日食べ続ければ、簡単にダンジョンを踏破することができますよ? ノース様の体調を考慮せず、キノコを食べさせてもよろしいのであれば、今日にでも可能です>
「…………」
うん。ナビさんが視界に浮かべた文字は見なかったことにしよう。
僕はナビさんの文字をスルーするとユノさんに向かい「そうですか」と相槌を打つ。
「はい。最後にダンジョンについてですが、冒険者協会発行の協会証があれば、大抵のダンジョンに入ることができます。しかし、危険度の高い特定のダンジョンはAランク以上の協会証を持つ冒険者しか入ることはできません。ここまでの話で、なにか質問はございますか?」
「いえ。特にはありません。説明頂きありがとうございます」
「どういたしまして、それでは、説明はこれで以上となります。お疲れ様でした」
そういうと、ユノさんがペコリと頭を下げる。
「ありがとうございました」
僕もユノさんに合わせてペコリと頭を下げると協会証を片手に冒険者協会を後にした。
<それで、ノース様はこれからどこに向かうつもりなんですか?>
そんなことは決まっている。
「ダンジョンに決まっているじゃん! ダンジョンだよ。ダンジョン! うわぁ、凄く楽しみだなぁ!」
孤児院で見た冒険者の絵本。
絵本には、ダンジョンに潜りモンスターと果敢に戦う冒険者の姿が描かれていた。
<モンスターと戦うのが怖くないのかと言われれば怖い。しかし、ナビさんのチュートリアルを受け自信が付いた。これもナビさんが心を鬼にして僕をボコボコにしてくれたお陰だ。いまは僕のことをボコボコにしてくれたナビさんに感謝の念しかない。ありがとうナビさん>
「って、なんで僕の気持ちをナビさんが文字に起こしてるの!? そんなこと全然思ってないよ!」
そういうとナビさんは愕然とした顔文字を浮かべた。
<……!?∑(OωO; ) な、なんだって! そ、そんな馬鹿な……ナビはノース様のことを思って……>
なんだってじゃない。
ナビさんのチュートリアルは本当に過酷だった。もう二度と受けたくはない。
「鍵と地図ですか?」
協会証と共に鍵と地図を渡された僕はポカンとした表情を浮かべた。
「はい。この街を治める領主様のご厚意により、当冒険者協会で登録した冒険者の皆様には、拠点となる家を丸ごと一軒プレゼントしております。そちらの地図に場所が示されておりますので、どうぞご利用下さい」
「えっ、家を丸々一軒貰えるんですか!?」
今日泊まる宿を探さなきゃいけないなと思っていたけど、冒険者協会に登録するだけで拠点となる家が貰えるとは思いもしなかった。
地図に目を通すと、ダンジョンに近い場所に家があるようだ。
<なるほど、街の中にダンジョンがあるんですね。ダンジョン内のモンスターは定期的に間引かないとスタンピードを引き起こします。それを防ぐために、ダンジョン近くに冒険者が住む家を設け、無料で住まわしているのでしょう>
なるほど、そういうことか……。
「はい。その通りです。それと、これから冒険者協会についてお話しさせて頂きたいと思うのですが、お時間は大丈夫ですか?」
冒険者協会内にある魔力時計を見ると、正午前を指している。
全然問題ない。それどころか、これからダンジョンに向かいたいと思っているくらいだ。
「はい。大丈夫です」
「そうですか。それでは、冒険者協会についてお話いたします」
冒険者協会の受付員ユノさんは、『冒険者協会のしおり』を取り出すと、それを僕に渡してくる。
「よろしくお願い致します」
「冒険者協会では主に、モンスターの討伐や素材・魔石の採取を始めとした各種依頼による仕事の斡旋、素材の買取を主な業務としております」
うん。それについては知っている。
冒険者協会のしおりをパラ読みすると、中に、街の地図やダンジョンで採れる素材、出現するモンスターなんかに関する情報も掲載されていた。
「また冒険者協会ではランク制を設けており、ランクに応じて報酬が増減します。ノース様の場合、一番下のGランクからスタートとなりますが、Gランクは特別なことがなければ皆さん一度は通る道です。依頼をこなし実績を作ることで着実にランクを上げることができます」
ランク制について記載されているページを見ると、ランクはGからSまでの八段階に分かれていた。
「Sランクになるためには、どうしたらいいんですか?」
ちょっとした興味本位で聞いてみると、ユノさんは笑顔を浮かべ表情を綻ばせた。
「そうですね。明確な基準がある訳ではございませんが、Sランクになるためには、たった一人でダンジョンを踏破できる位の力が必要となります。もしSランクを目指すのであれば、冒険者協会の依頼を受け実績を積み、ダンジョン踏破に必要な実力を付けていくのが一番の早道です」
なるほど……ダンジョンを一人で踏破するだけの力か……。
うん。無理だなそれは……。
<いえ、ノース様がパワーアップ系のキノコを三食毎日食べ続ければ、簡単にダンジョンを踏破することができますよ? ノース様の体調を考慮せず、キノコを食べさせてもよろしいのであれば、今日にでも可能です>
「…………」
うん。ナビさんが視界に浮かべた文字は見なかったことにしよう。
僕はナビさんの文字をスルーするとユノさんに向かい「そうですか」と相槌を打つ。
「はい。最後にダンジョンについてですが、冒険者協会発行の協会証があれば、大抵のダンジョンに入ることができます。しかし、危険度の高い特定のダンジョンはAランク以上の協会証を持つ冒険者しか入ることはできません。ここまでの話で、なにか質問はございますか?」
「いえ。特にはありません。説明頂きありがとうございます」
「どういたしまして、それでは、説明はこれで以上となります。お疲れ様でした」
そういうと、ユノさんがペコリと頭を下げる。
「ありがとうございました」
僕もユノさんに合わせてペコリと頭を下げると協会証を片手に冒険者協会を後にした。
<それで、ノース様はこれからどこに向かうつもりなんですか?>
そんなことは決まっている。
「ダンジョンに決まっているじゃん! ダンジョンだよ。ダンジョン! うわぁ、凄く楽しみだなぁ!」
孤児院で見た冒険者の絵本。
絵本には、ダンジョンに潜りモンスターと果敢に戦う冒険者の姿が描かれていた。
<モンスターと戦うのが怖くないのかと言われれば怖い。しかし、ナビさんのチュートリアルを受け自信が付いた。これもナビさんが心を鬼にして僕をボコボコにしてくれたお陰だ。いまは僕のことをボコボコにしてくれたナビさんに感謝の念しかない。ありがとうナビさん>
「って、なんで僕の気持ちをナビさんが文字に起こしてるの!? そんなこと全然思ってないよ!」
そういうとナビさんは愕然とした顔文字を浮かべた。
<……!?∑(OωO; ) な、なんだって! そ、そんな馬鹿な……ナビはノース様のことを思って……>
なんだってじゃない。
ナビさんのチュートリアルは本当に過酷だった。もう二度と受けたくはない。
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