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第二章 アベコベの街
第33話 冒険者協会①
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「冒険者協会に向かうなら、そこの道をまっすぐだ。まあ案内板もあるし、わかるだろ」
「はい。この道をまっすぐですね! ありがとうございます! 門番さんもお仕事頑張って下さい!」
「ああ、それじゃあな」
冒険者協会のある場所まで教えてくれるなんて、門番さんとてもいい人のようだ。
門番さんに手を振りながら、道なりをまっすぐ進んでいく。
<ああっ、ノース様。そっちは……>
途中、ナビさんが視界に文字を浮かべてくるが、なにをいっているのかよく分らなかったのでスルーした。
「それにしても、街って凄いところだね。前に来た時は気付かなかったけど、こんなに人で溢れているなんて……」
街の中は人で一杯だ。道には屋台も立ち並んでいる。
孤児院生活が長かったから、こんな大勢の人が街に住んでいるなんて知らなかった。
<確かに、辺境にある街にしてはかなり発展していますね。しかし、よろしいんですか?>
「えっ? なんのこと?」
僕がそう呟くと、ナビさんが視界に文字を浮かべてくる。
<いえ、先ほど門番さんが教えてくれた道からかなり外れているようですが……>
「ええっ!?」
ナビさんの一言に思わず足を止める。
「な、なんで教えてくれなかったの!?」
<いえ、一応呟きはしましたよ? 『あっ、ノース様。そっちは……』って……>
そんなんじゃわからないよ!
「と、とにかく戻らないと……あ、あれっ?」
冒険者協会に向かうため元来た道を戻ろうとするも、どの道に戻ればいいのかわからなくなってきた。
「ど、どっちの道から来たんだっけ……」
これは拙い。見知らぬ街で迷子になるなんて……僕は一体どうしたらいいんだ……。
完全に迷子になった僕が呆然と立ち尽くしていると、パイプを口に加えたおじさんが話しかけてきた。
「おやおや、どうしたんだい。もしかして迷子かな?」
フラナガン院長からは、突然、見知らぬ大人に話しかけられたら警戒心を持って対応するようにと言われている。知らない人に着いていかないようにとも……。
「ぼ、冒険者協会に向かいたいんですけど、迷子になっちゃって……」
しかし、いまはそんな時ではない。
そんなことを言っている場合でもない。
泣きそうな表情を浮かべながらそう呟くと、おじさんが頭を撫でてきた。
「そうか……それなら、私が冒険者協会まで案内してあげよう。私の名前はオーダー。君の名前を教えてくれるかな?」
「う、うん。僕の名前はノース。森にある孤児院から来ました」
「ほう。ノース君か……それでは、私が冒険者協会に案内してあげよう」
「は、はい。よろしくお願いします!」
僕がそういうと、ナビさんが視界に文字を浮かべてくる。
<えっ? ノース様、大丈夫ですか? フラナガン院長から知らない人に着いていかないよう言われてるんですよね? 知らない人に着いていっちゃうんですか?>
ナビさん。少し黙ってて!
いまの僕は迷子。それに周りにはこれだけ大勢の大人がいる。
多分、大丈夫だから!
僕の感がそう言っている。
<……どうなっても知りませんよ? まあ護衛のマッシュルーム・アサシンが行動を起こす様子がないので大丈夫だとは思いますが……>
えっ?
マッシュルーム・アサシンが護衛についてるの!?
全然気付かなかった。
<まあ、アサシンですから。気付かれたらマッシュルーム・アサシン失格ですよ>
それもそうか。
ナビさんと頭の中で会話をしていると、オーダーさんが怪訝な表情を浮かべ話しかけてきた。
「ノース君? 随分、コロコロと表情が変わっているようだが、一体どうしたんだい?」
「えっ?」
どうやらナビさんとの頭の中の会話がすべて表情に出ていたようだ。
変な子供だと思われたらどうしよう。
するとナビさんが茶々を入れてくる。
<ノース様。安心して下さい。ノース様は最初から変な子供です>
うるさいよ!
まったく、ナビさんは本当に失礼な人?だ。
「い、いえ、なんといいますか……オ、オーダーさんが親切にしてくれたのが嬉しくてつい……」
「そうかい? それならまあ、いいんだが……それより見えてきたよ。あれが冒険者協会だ」
「えっ! うわああああ!」
オーダーさんの指さす方向に視線を向けると、そこにはまるで要塞のような立派な造りの建物があった。
どうやらあの建物が冒険者協会のようだ。
「それじゃあ、私はこれで……今度は迷子にならないよう気を付けるんだよ」
「はい! オーダーさん、ありがとうございます!」
俺を冒険者協会まで案内してくれたオーダーさんにお礼を言い頭を下げる。
そして、オーダーさんに手を振りながら前を向くと、冒険者協会に向かって一歩足を踏み出した。
<ようやく冒険者協会に到着ですね。それにしても、ノース様がこんなにも方向音痴だったとは思いませんでしたよ>
うん。僕もそう思った。
まさか、一本道で迷子になるなんて思いもしなかった。
しかし、オーダーさんのお蔭で冒険者協会にたどり着くことができたし万々歳だ。
早速、冒険者協会の扉を開けると、中は多くの冒険者で賑わいを見せていた。
「はい。この道をまっすぐですね! ありがとうございます! 門番さんもお仕事頑張って下さい!」
「ああ、それじゃあな」
冒険者協会のある場所まで教えてくれるなんて、門番さんとてもいい人のようだ。
門番さんに手を振りながら、道なりをまっすぐ進んでいく。
<ああっ、ノース様。そっちは……>
途中、ナビさんが視界に文字を浮かべてくるが、なにをいっているのかよく分らなかったのでスルーした。
「それにしても、街って凄いところだね。前に来た時は気付かなかったけど、こんなに人で溢れているなんて……」
街の中は人で一杯だ。道には屋台も立ち並んでいる。
孤児院生活が長かったから、こんな大勢の人が街に住んでいるなんて知らなかった。
<確かに、辺境にある街にしてはかなり発展していますね。しかし、よろしいんですか?>
「えっ? なんのこと?」
僕がそう呟くと、ナビさんが視界に文字を浮かべてくる。
<いえ、先ほど門番さんが教えてくれた道からかなり外れているようですが……>
「ええっ!?」
ナビさんの一言に思わず足を止める。
「な、なんで教えてくれなかったの!?」
<いえ、一応呟きはしましたよ? 『あっ、ノース様。そっちは……』って……>
そんなんじゃわからないよ!
「と、とにかく戻らないと……あ、あれっ?」
冒険者協会に向かうため元来た道を戻ろうとするも、どの道に戻ればいいのかわからなくなってきた。
「ど、どっちの道から来たんだっけ……」
これは拙い。見知らぬ街で迷子になるなんて……僕は一体どうしたらいいんだ……。
完全に迷子になった僕が呆然と立ち尽くしていると、パイプを口に加えたおじさんが話しかけてきた。
「おやおや、どうしたんだい。もしかして迷子かな?」
フラナガン院長からは、突然、見知らぬ大人に話しかけられたら警戒心を持って対応するようにと言われている。知らない人に着いていかないようにとも……。
「ぼ、冒険者協会に向かいたいんですけど、迷子になっちゃって……」
しかし、いまはそんな時ではない。
そんなことを言っている場合でもない。
泣きそうな表情を浮かべながらそう呟くと、おじさんが頭を撫でてきた。
「そうか……それなら、私が冒険者協会まで案内してあげよう。私の名前はオーダー。君の名前を教えてくれるかな?」
「う、うん。僕の名前はノース。森にある孤児院から来ました」
「ほう。ノース君か……それでは、私が冒険者協会に案内してあげよう」
「は、はい。よろしくお願いします!」
僕がそういうと、ナビさんが視界に文字を浮かべてくる。
<えっ? ノース様、大丈夫ですか? フラナガン院長から知らない人に着いていかないよう言われてるんですよね? 知らない人に着いていっちゃうんですか?>
ナビさん。少し黙ってて!
いまの僕は迷子。それに周りにはこれだけ大勢の大人がいる。
多分、大丈夫だから!
僕の感がそう言っている。
<……どうなっても知りませんよ? まあ護衛のマッシュルーム・アサシンが行動を起こす様子がないので大丈夫だとは思いますが……>
えっ?
マッシュルーム・アサシンが護衛についてるの!?
全然気付かなかった。
<まあ、アサシンですから。気付かれたらマッシュルーム・アサシン失格ですよ>
それもそうか。
ナビさんと頭の中で会話をしていると、オーダーさんが怪訝な表情を浮かべ話しかけてきた。
「ノース君? 随分、コロコロと表情が変わっているようだが、一体どうしたんだい?」
「えっ?」
どうやらナビさんとの頭の中の会話がすべて表情に出ていたようだ。
変な子供だと思われたらどうしよう。
するとナビさんが茶々を入れてくる。
<ノース様。安心して下さい。ノース様は最初から変な子供です>
うるさいよ!
まったく、ナビさんは本当に失礼な人?だ。
「い、いえ、なんといいますか……オ、オーダーさんが親切にしてくれたのが嬉しくてつい……」
「そうかい? それならまあ、いいんだが……それより見えてきたよ。あれが冒険者協会だ」
「えっ! うわああああ!」
オーダーさんの指さす方向に視線を向けると、そこにはまるで要塞のような立派な造りの建物があった。
どうやらあの建物が冒険者協会のようだ。
「それじゃあ、私はこれで……今度は迷子にならないよう気を付けるんだよ」
「はい! オーダーさん、ありがとうございます!」
俺を冒険者協会まで案内してくれたオーダーさんにお礼を言い頭を下げる。
そして、オーダーさんに手を振りながら前を向くと、冒険者協会に向かって一歩足を踏み出した。
<ようやく冒険者協会に到着ですね。それにしても、ノース様がこんなにも方向音痴だったとは思いませんでしたよ>
うん。僕もそう思った。
まさか、一本道で迷子になるなんて思いもしなかった。
しかし、オーダーさんのお蔭で冒険者協会にたどり着くことができたし万々歳だ。
早速、冒険者協会の扉を開けると、中は多くの冒険者で賑わいを見せていた。
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