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第一章 キノコマスター
第26話 ナビの教育学習実践編
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「ええっ! ちょ、ちょっと、なにしてくれてるのー!」
いきなり全ポイント使うなんて聞いてないよ?
僕がそう叫ぶと、ナビさんが視界に文字を浮かべてくる。
<いえいえ、マッシュルーム・ナイトも、マッシュルーム・マジシャンもノース様が手に入れたスキルを十全に使いこなすための指南役として必要不可欠です。ノース様はこれから街に向かうのでしょう?>
「う、うん。まあ、そうだけど……」
<そうですよね? 森の外は危険で満ち溢れております。いまのノース様は、いわば、カモネギ。このままの状態で街に向かえば、モンスターの格好の餌食です。たとえ、街にたどり着いたとしても、騙され奴隷として売られるのが目に見えています>
な、なんて酷いことを言うんだ……。
でも……。
「う、うん……でもカモネギってなに?」
<カモネギは、鴨がネギを背負って食べられにやってくるというシュールな状況を描いたことわざです。つまり、ノース様のことです。ナビはそんなノース様のたどる不幸な未来を回避するために全力を尽くしているに過ぎません>
「ナ、ナビさん……」
なんだか一瞬、馬鹿にされたように聞こえたけど、もしかしたら気のせいかもしれない。そんなに僕の未来のことを案じてくれているなんて……。
「よし! じゃあ、僕やるよ! 街に行く前に魔術や剣術をマスターして見せる!」
<流石はノース様、その意気です。その言葉をお待ちしておりました。それでは、早速、チュートリアルを始めます。準備はよろしいですね?>
「えっ、どういうこと? いまからまたチュートリアルを始めるの?」
マッシュルーム・アサシンが帰ってくるまでの間、ずっとチュートリアルを受けさせられていたのに、またチュートリアルを受けなきゃいけないの!?
聞いてないよ!?
及び腰になった僕がその場から離れようとすると、マッシュルーム・アサシンが魔石を抜き取り終わったモンスターをどこかに消していく。
そして、マッシュルーム・ナイトとマッシュルーム・マジシャンが周囲を囲み逃げ場を封じてきた。
ま、まさか、いまからこの場所でチュートリアルを始めようというのだろうか……。
<その通りです。それでは、いきますよ>
ナビさんがそう視界に文字を浮かべると同時に逃走を計った。
しかし、突然、視界がブラックアウトしてしまい逃げることができない。
<チュートリアル:ナビの教育学習実践編① ~剣術・魔術(上級編)~ を開始します>
「せ、せめて基本から教えてぇぇぇぇ!」
僕がそう言いかけた時には、もう遅く。頭の中に謎の音楽と映像が流れ込んできた。
◇
「はあっ、はあっ……」
<『チュートリアル:ナビの教育学習実践編① ~剣術・魔術(上級編)~』が終了しました。ノース様、お疲れ様です>
チュートリアル終了のお知らせが視界に映ると共に、僕は意識を手放した。
「う、う~ん」
朝日が眩しい。心なしか身体の至る所が痛んでいる気がする。
「こ、ここは……」
ゆっくりと目を開き、上半身を起き上がらせると、ベッドの上にいた。
<ようやく起きましたか。ノース様に課したチュートリアルは基本をすっ飛ばしての上級編でしたからね。さぞかし大変な思いをしたことでしょう>
チュートリアルの中で僕は、マッシュルーム・マジシャンに何度となく魔法をぶつけられ、マッシュルーム・ナイトには斬りかかられた。あれが現実だったら、僕は死んでいたかもしれない。それくらいキツいものだった。
でも、あの死線を潜ったことで、魔術も剣術もかなり上達したはずだ。
あのチュートリアル。
いま思い出しただけでも、口から虹色のキラキラが出そうになる。
<チュートリアルでは、マッシュルーム兵に何度も死線を潜らされていましたからね。ナビは一応止めたんですよ? ノース様が精神的に死んでしまうって>
「うん。でもその後すぐに、『でもまあ仕方がないか、これチュートリアルだし、一度発動させたらナビでも止めることができないし』って、言ってたよね?」
僕が闇堕ちしそうな瞳でそう言うと、ナビさんは悪気もなく視界に文字を表示させた。
<まあまあ、結果オーライということで。死線を潜り様々な知識を身に付けたノース様に死角なしですね。明日から街に行ってもいいですよ>
「えっ、本当に!? 本当にいいの?」
そう言えば、ギフトレベルを2上げれば街に行ってもいいとナビさんが言っていたことを思い出す。
<はい。もちろんです。ナビもノース様についていきますし、折角ですので街を楽しみましょう>
「うん!」
<しかし、なぜ、ノース様は街に向かいたいんですか?>
「えっ? もちろん、人と交流を持つためだよ? あっ、冒険者にもなりたいかも!」
優遇ギフトを得ることができなかった僕は、孤児院を出る日、フラナガン院長に、次会う時は立派な冒険者になった時ですと約束した。
先日、ナビさんに言い含められ、無職でも生活できるならいいじゃない的なことを言われたが、やはり、人と最低限の交流は持ちたい。
というより、このままでは孤独死してしまう。
--------------------------------------------------------------------------------------
そろそろ、次の章に行きたいので、今回は6話投稿しますw
次の章では、様々な常識を教わったナビから教わったノースが、アベコベの街でドタバタする話となる予定ですw
いきなり全ポイント使うなんて聞いてないよ?
僕がそう叫ぶと、ナビさんが視界に文字を浮かべてくる。
<いえいえ、マッシュルーム・ナイトも、マッシュルーム・マジシャンもノース様が手に入れたスキルを十全に使いこなすための指南役として必要不可欠です。ノース様はこれから街に向かうのでしょう?>
「う、うん。まあ、そうだけど……」
<そうですよね? 森の外は危険で満ち溢れております。いまのノース様は、いわば、カモネギ。このままの状態で街に向かえば、モンスターの格好の餌食です。たとえ、街にたどり着いたとしても、騙され奴隷として売られるのが目に見えています>
な、なんて酷いことを言うんだ……。
でも……。
「う、うん……でもカモネギってなに?」
<カモネギは、鴨がネギを背負って食べられにやってくるというシュールな状況を描いたことわざです。つまり、ノース様のことです。ナビはそんなノース様のたどる不幸な未来を回避するために全力を尽くしているに過ぎません>
「ナ、ナビさん……」
なんだか一瞬、馬鹿にされたように聞こえたけど、もしかしたら気のせいかもしれない。そんなに僕の未来のことを案じてくれているなんて……。
「よし! じゃあ、僕やるよ! 街に行く前に魔術や剣術をマスターして見せる!」
<流石はノース様、その意気です。その言葉をお待ちしておりました。それでは、早速、チュートリアルを始めます。準備はよろしいですね?>
「えっ、どういうこと? いまからまたチュートリアルを始めるの?」
マッシュルーム・アサシンが帰ってくるまでの間、ずっとチュートリアルを受けさせられていたのに、またチュートリアルを受けなきゃいけないの!?
聞いてないよ!?
及び腰になった僕がその場から離れようとすると、マッシュルーム・アサシンが魔石を抜き取り終わったモンスターをどこかに消していく。
そして、マッシュルーム・ナイトとマッシュルーム・マジシャンが周囲を囲み逃げ場を封じてきた。
ま、まさか、いまからこの場所でチュートリアルを始めようというのだろうか……。
<その通りです。それでは、いきますよ>
ナビさんがそう視界に文字を浮かべると同時に逃走を計った。
しかし、突然、視界がブラックアウトしてしまい逃げることができない。
<チュートリアル:ナビの教育学習実践編① ~剣術・魔術(上級編)~ を開始します>
「せ、せめて基本から教えてぇぇぇぇ!」
僕がそう言いかけた時には、もう遅く。頭の中に謎の音楽と映像が流れ込んできた。
◇
「はあっ、はあっ……」
<『チュートリアル:ナビの教育学習実践編① ~剣術・魔術(上級編)~』が終了しました。ノース様、お疲れ様です>
チュートリアル終了のお知らせが視界に映ると共に、僕は意識を手放した。
「う、う~ん」
朝日が眩しい。心なしか身体の至る所が痛んでいる気がする。
「こ、ここは……」
ゆっくりと目を開き、上半身を起き上がらせると、ベッドの上にいた。
<ようやく起きましたか。ノース様に課したチュートリアルは基本をすっ飛ばしての上級編でしたからね。さぞかし大変な思いをしたことでしょう>
チュートリアルの中で僕は、マッシュルーム・マジシャンに何度となく魔法をぶつけられ、マッシュルーム・ナイトには斬りかかられた。あれが現実だったら、僕は死んでいたかもしれない。それくらいキツいものだった。
でも、あの死線を潜ったことで、魔術も剣術もかなり上達したはずだ。
あのチュートリアル。
いま思い出しただけでも、口から虹色のキラキラが出そうになる。
<チュートリアルでは、マッシュルーム兵に何度も死線を潜らされていましたからね。ナビは一応止めたんですよ? ノース様が精神的に死んでしまうって>
「うん。でもその後すぐに、『でもまあ仕方がないか、これチュートリアルだし、一度発動させたらナビでも止めることができないし』って、言ってたよね?」
僕が闇堕ちしそうな瞳でそう言うと、ナビさんは悪気もなく視界に文字を表示させた。
<まあまあ、結果オーライということで。死線を潜り様々な知識を身に付けたノース様に死角なしですね。明日から街に行ってもいいですよ>
「えっ、本当に!? 本当にいいの?」
そう言えば、ギフトレベルを2上げれば街に行ってもいいとナビさんが言っていたことを思い出す。
<はい。もちろんです。ナビもノース様についていきますし、折角ですので街を楽しみましょう>
「うん!」
<しかし、なぜ、ノース様は街に向かいたいんですか?>
「えっ? もちろん、人と交流を持つためだよ? あっ、冒険者にもなりたいかも!」
優遇ギフトを得ることができなかった僕は、孤児院を出る日、フラナガン院長に、次会う時は立派な冒険者になった時ですと約束した。
先日、ナビさんに言い含められ、無職でも生活できるならいいじゃない的なことを言われたが、やはり、人と最低限の交流は持ちたい。
というより、このままでは孤独死してしまう。
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そろそろ、次の章に行きたいので、今回は6話投稿しますw
次の章では、様々な常識を教わったナビから教わったノースが、アベコベの街でドタバタする話となる予定ですw
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