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第一章 キノコマスター

第24話 マッシュルーム・アサシン出撃

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「……ウエスト達、大丈夫かな?」

 チュートリアルから解放された僕は街の方角に視線を向ける。
 街は現在進行形でモンスターに襲われている真っ最中、ナビさんによると、街を護る防壁は手抜き工事の影響により危険な状態にあるらしい。
 酷く心配だ……。

 すると、ナビさんが視界に文字を浮かべてくる。

 <まあまあ、ノース様。そんなことを気にしても仕方がないですよ。先ほどのチュートリアルで言ったことは、あくまでもナビの知る一般論です。あの街がそれに当てはまるとは限りません>

「えっ? そうなの?」

 <はい。その通りです>

 そういうことは早く言って欲しい。

「そっか、よかったぁ~!」

 <いえ、よくはありません。あの街がモンスターに襲われているのは事実ですから>

 そ、そういえば、そうだった!

「ど、どうしようナビさん! 街が……ウエスト達が死んじゃうよ!」

 すると、ナビさんが視界に文字を浮かべてくる。

 <まったく……ノース様は仕方がありませんね。安心してください。チュートリアル中、マッシュルーム・アサシンを街に向かわせました>

「マッシュルーム・アサシンを!?」

 <はい>

 それなら安心だ。
 マッシュルーム・アサシンであれば、街を防衛する兵士や冒険者達に気付かれることなくモンスターを倒し帰ってくることができる。

 <さて、マッシュルーム・アサシンがモンスターを屠っている間、ノース様には『チュートリアル:ナビの教育学習② ~ナビの知ってる一般常識編~』を受けて頂きます>

「えっ? またやるの!?」

 <はい。ノース様には、まだまだ多くの一般常識を学んで頂く必要があります。最低でも、マッシュルーム・アサシンがモンスターを屠り戻ってくるまでは、チュートリアルを受けて頂きます。それでは、準備はいいですね?>

「ち、ちょっと待って!」

 僕がそう呟くと、ピコンという音が頭の中に鳴り響く。
 そして、視界に文字が浮かび上がってきた。

 <チュートリアル:ナビの教育学習② ~ナビの知ってる一般常識編~ を開始します>

 僕がそう言いかけた時には、もう遅く。視界がブラックアウトすると、頭の中に謎の音楽と映像が流れ込んできた。

 ◆

 ノースがナビのチュートリアルを受けている頃、森の中を颯爽と駆け抜ける影があった。
 そのキノコの名は、マッシュルーム・アサシン。
 キノコ界最強のアサシンだ。

 街の外壁に辿り着いたマッシュルーム・アサシンがまず見たのは、街の中に入らせまいともがく兵士と冒険者。
 そして、外壁を崩し街を蹂躙しようとするモンスターの姿。

 側から見ても、兵士と冒険者の方が劣勢だ。
 とはいえ、加勢があればなんとか持ち直すことができそうな様子ではある。

 マッシュルーム・アサシン達は、互いに顔を見合わせると、コクリと頷き散開した。

 四方に散開したマッシュルーム・アサシンが最初にやったこと。
 それはスリープキノコの胞子をモンスターに散布することだった。
 スタンピードは、家畜などの集団暴走や人間の群集事故を意味する言葉。

 暴走状態にあるモンスターを止めることは容易ではない。しかし、それならすべてを眠らせてしまえばいい。
 眠りについたモンスターであれば、兵士や冒険者達でも簡単に倒すことができる。

 風向きとキノコの特性を熟知したアサシンにとって、兵士や冒険者に危害を加えずスリープキノコの胞子を散布することは容易なことだ。

 まず兵士と冒険者に気付かれないようスリープキノコの胞子散布を始めると、モンスターの動きが鈍り、一匹、また一匹と眠りについていく。

 当初、ポイズンキノコの胞子をばら撒き仕留めようとしたが、それはマスター代行のナビ様により却下された。

 人間はモンスターの屍肉を糧にする生き物。ポイズンキノコの胞子に侵されたモンスターの肉は食べることはできない。
 街の人間に我々の存在が気取られる可能性もある。
 それ故の却下だった。

 そのため、我々は兵士と冒険者のサポートに行動を切り替えることにした。

 木の陰から様子を探ると、スリープキノコの影響下に置かれたモンスター達が兵士と冒険者により次々と狩られていくのが見える。

 これならもう問題ないだろう。
 外壁周辺のモンスターの処理は兵士と冒険者に任せ、我々はそれ以外を狩るとしよう。

 アサシンは顔を見合わせると、コクリと頷き散開する。
 そして、スリープキノコの影響下に置かれたモンスター、一匹一匹を仕留め、アサシンの持つ固有スキル『次元収納』に格納すると、もう一度、街の様子を確認し、その場所を後にした。

「ぐるる……ぐるるるる……ぐるる……(=_=)」

 マスターへのお土産を『ディメンジョン・ストレージ』に格納した我々がホクホク顔で帰路に就くと、一匹の巨大なモンスターが道を塞いでいた。
 そういえば、スリープキノコの胞子を散布した時、こんな感じのモンスターが四体いた気がする。

 どうやら、このモンスター、スリープキノコの影響下にあるようだ。
 折角なので、心臓を一刺しで貫き、『次元収納』に格納すると、四方に散らばり残り三体の巨大なモンスターも同様に確保し、マスターの下へ戻ることにした。
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