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第一章 キノコマスター

第19話 教えてナビさん③

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『でもね。貴族が惰民から毟り取った税金で整備した水路や道路、土地を惰民のみんなに使わせるのにはちゃんと理由があるんだよー』
『理由ー?』
『そうだよー。貴族は毟り取った税金で整備した場所に惰民を住まわせ、更なる税金を毟り取りたいんだ。自分の生活をより良くするために、貴族も必死なんだよ。ほら、それに貴族は自分より身分の低い者を置いて優越感に浸りたい願望も持っているからさ。まあ結局、回り回ってウィンウィンの状態になっている訳だけど……』
『へーそうなんだ! 貴族って本当に強欲で傲慢なんだねー』

 そんなことをキノコ君が呟く。

 いや、本当にディスり過ぎだろう。
 どんだけ貴族のことをディスったら気が済むのっ!?

『まあ、なにがいいたかったかと言えば、街に入る時と出る時、そして物を購入したり、登録したりする際には、税金が掛かるよってことが言いたかったのさ』

 えっ、たったそれだけっ!?
 貴族のことをディスっていた部分、丸々関係ないじゃん!

『次に街に滞在するなら身分証が必要なんだよー。キノコ君は身分証を知っているかい?』
『なんのことかわかんないやー。なにしろボク、キノコだしー』
『そうだねー。キノコ君に身分証は不要だからねー。身分証というのは、その名の通り身分のを証明するために必要なものさ』
『その身分証はどこで作るのー?』
『おや、キノコ君も身分証に興味が湧いてきたのかな? 身分証は街に居住を構えるか、冒険者協会、商業協会に登録することで作ることができるんだ』

 なるほど、街に住むか冒険者協会、商業協会に登録することで作ることができるのか。

『街に泊まるにも、冒険者協会で依頼を受けるにも、冒険者協会が管理するダンジョンに入るにも身分証が必要になるからね。街に行ったら必ず作らなきゃいけないよ』
『うん。わかったー!』

 ナビさんはそう元気に返事をするキノコ君の頭を撫でる。

『よしよし、キノコ君は偉いねー。最後にモンスターの強さについて説明するね』
『モンスター?』
『そうだよー。この世界にはモンスターが一杯生息しているんだ。モンスターの体内には魔石と呼ばれる魔力の塊が必ず存在し、体内に宿している魔石の大きさや純度により強さが違うんだよー』

 へえ、それは知らなかった。
 しかし、街とモンスターの強さ、なにか関係があるのだろうか?

『それはですね……』

 うわ、思考を読まれた……。

『街にはモンスターが入り込まないようにと、高い塀が四方に建てられているんだ』
『うんうん。それでー?』
『街には、強い冒険者が存在しているし、高い塀で守られているからね。空気の読める普通のモンスターは、強い冒険者の気配や、柄の高さを見て、諦めるのさ。中に入ることをね』
『へーそうなんだー。それは知らなかったなー』
『でもねー中には空気が読めないモンスターや、街の中にいる冒険者達より強いモンスターが、簡単に塀を上がって入ってくるんだよー』
『ふーん。モンスターって凄いんだね!』
『そうなんだ。モンスターって、空気が読めない馬鹿に見えて凄く頭がいいんだ。それなのに、街に住む貴族といったら、そのことをまったく考慮せず、高いだけの壁を築くんだよ。発注する業者からリベートを貰うために、高いだけで強度のまったくない壁を一生懸命お金をかけて築いているのさ。本当に愚かだよね?』
『本当に貴族って愚かなんだねー』

 キノコ君の純朴な視線がナビさんに向かう

『そうそう。貴族というのは、私腹を肥やすために表では民衆にいい顔をし、裏ではそんな民衆をあざ笑いながら、多額の税金をポケットの内に収める愚かな生き物なのさ。ほら、あれを見てごらん。街にモンスターの大群が押し寄せてきているよ』
「えっ!?」

 街にモンスターの大群が押し寄せてきているの!?
 街に仕官したウエスト達は大丈夫だろうか。もの凄く心配だ。
 僕の心配をよそに、キノコ君が元気にこう言った。

『うわー本当だ! あの様子だと、一日持たずに壁が崩壊しちゃうね♪』
『うん。あの街に住む貴族が無能ならそうなるね。これもすべて、自分の懐に金を入れるだけ入れて、頑強そうな壁を築き上げた貴族様が悪いんだよ』

 ほ、本当に大丈夫だろうか?

『あっ、ゴブリンが壁の綻びを見つけたみたい。ただ石を積み上げただけで補強したつもりになってるのかな? あんなの石をどければ簡単に入り込むことができるのに。貴族様って本当に馬鹿なんだね』
『うん。そうだよ。貴族様は街に住む人のことより自分の財産が目減りしないかの方が重要と考えているからね。街に住む人はいわば肉壁。肉壁が襲われている間に高貴な血筋の貴族様達は逃げると。とっても面白いよね』

 いや、全然面白くないんですけど……。

『まあ、今回なにが言いたかったかといえば、モンスターは頭がいいから、いくら街のまわりを強固そうに見える壁で囲ったとしても、馬鹿な貴族の甘い考えなんて看破して、どんどん進んでくるよと、そんなことが言いたかったのさ』

 うん。なんだかとってもためになった気がする。
 その一方で、僕は街にいるウエスト達は大丈夫なのかと、頭を悩ませた。
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