19 / 121
第一章 キノコマスター
第19話 教えてナビさん③
しおりを挟む
『でもね。貴族が惰民から毟り取った税金で整備した水路や道路、土地を惰民のみんなに使わせるのにはちゃんと理由があるんだよー』
『理由ー?』
『そうだよー。貴族は毟り取った税金で整備した場所に惰民を住まわせ、更なる税金を毟り取りたいんだ。自分の生活をより良くするために、貴族も必死なんだよ。ほら、それに貴族は自分より身分の低い者を置いて優越感に浸りたい願望も持っているからさ。まあ結局、回り回ってウィンウィンの状態になっている訳だけど……』
『へーそうなんだ! 貴族って本当に強欲で傲慢なんだねー』
そんなことをキノコ君が呟く。
いや、本当にディスり過ぎだろう。
どんだけ貴族のことをディスったら気が済むのっ!?
『まあ、なにがいいたかったかと言えば、街に入る時と出る時、そして物を購入したり、登録したりする際には、税金が掛かるよってことが言いたかったのさ』
えっ、たったそれだけっ!?
貴族のことをディスっていた部分、丸々関係ないじゃん!
『次に街に滞在するなら身分証が必要なんだよー。キノコ君は身分証を知っているかい?』
『なんのことかわかんないやー。なにしろボク、キノコだしー』
『そうだねー。キノコ君に身分証は不要だからねー。身分証というのは、その名の通り身分のを証明するために必要なものさ』
『その身分証はどこで作るのー?』
『おや、キノコ君も身分証に興味が湧いてきたのかな? 身分証は街に居住を構えるか、冒険者協会、商業協会に登録することで作ることができるんだ』
なるほど、街に住むか冒険者協会、商業協会に登録することで作ることができるのか。
『街に泊まるにも、冒険者協会で依頼を受けるにも、冒険者協会が管理するダンジョンに入るにも身分証が必要になるからね。街に行ったら必ず作らなきゃいけないよ』
『うん。わかったー!』
ナビさんはそう元気に返事をするキノコ君の頭を撫でる。
『よしよし、キノコ君は偉いねー。最後にモンスターの強さについて説明するね』
『モンスター?』
『そうだよー。この世界にはモンスターが一杯生息しているんだ。モンスターの体内には魔石と呼ばれる魔力の塊が必ず存在し、体内に宿している魔石の大きさや純度により強さが違うんだよー』
へえ、それは知らなかった。
しかし、街とモンスターの強さ、なにか関係があるのだろうか?
『それはですね……』
うわ、思考を読まれた……。
『街にはモンスターが入り込まないようにと、高い塀が四方に建てられているんだ』
『うんうん。それでー?』
『街には、強い冒険者が存在しているし、高い塀で守られているからね。空気の読める普通のモンスターは、強い冒険者の気配や、柄の高さを見て、諦めるのさ。中に入ることをね』
『へーそうなんだー。それは知らなかったなー』
『でもねー中には空気が読めないモンスターや、街の中にいる冒険者達より強いモンスターが、簡単に塀を上がって入ってくるんだよー』
『ふーん。モンスターって凄いんだね!』
『そうなんだ。モンスターって、空気が読めない馬鹿に見えて凄く頭がいいんだ。それなのに、街に住む貴族といったら、そのことをまったく考慮せず、高いだけの壁を築くんだよ。発注する業者からリベートを貰うために、高いだけで強度のまったくない壁を一生懸命お金をかけて築いているのさ。本当に愚かだよね?』
『本当に貴族って愚かなんだねー』
キノコ君の純朴な視線がナビさんに向かう
『そうそう。貴族というのは、私腹を肥やすために表では民衆にいい顔をし、裏ではそんな民衆をあざ笑いながら、多額の税金をポケットの内に収める愚かな生き物なのさ。ほら、あれを見てごらん。街にモンスターの大群が押し寄せてきているよ』
「えっ!?」
街にモンスターの大群が押し寄せてきているの!?
街に仕官したウエスト達は大丈夫だろうか。もの凄く心配だ。
僕の心配をよそに、キノコ君が元気にこう言った。
『うわー本当だ! あの様子だと、一日持たずに壁が崩壊しちゃうね♪』
『うん。あの街に住む貴族が無能ならそうなるね。これもすべて、自分の懐に金を入れるだけ入れて、頑強そうな壁を築き上げた貴族様が悪いんだよ』
ほ、本当に大丈夫だろうか?
『あっ、ゴブリンが壁の綻びを見つけたみたい。ただ石を積み上げただけで補強したつもりになってるのかな? あんなの石をどければ簡単に入り込むことができるのに。貴族様って本当に馬鹿なんだね』
『うん。そうだよ。貴族様は街に住む人のことより自分の財産が目減りしないかの方が重要と考えているからね。街に住む人はいわば肉壁。肉壁が襲われている間に高貴な血筋の貴族様達は逃げると。とっても面白いよね』
いや、全然面白くないんですけど……。
『まあ、今回なにが言いたかったかといえば、モンスターは頭がいいから、いくら街のまわりを強固そうに見える壁で囲ったとしても、馬鹿な貴族の甘い考えなんて看破して、どんどん進んでくるよと、そんなことが言いたかったのさ』
うん。なんだかとってもためになった気がする。
その一方で、僕は街にいるウエスト達は大丈夫なのかと、頭を悩ませた。
『理由ー?』
『そうだよー。貴族は毟り取った税金で整備した場所に惰民を住まわせ、更なる税金を毟り取りたいんだ。自分の生活をより良くするために、貴族も必死なんだよ。ほら、それに貴族は自分より身分の低い者を置いて優越感に浸りたい願望も持っているからさ。まあ結局、回り回ってウィンウィンの状態になっている訳だけど……』
『へーそうなんだ! 貴族って本当に強欲で傲慢なんだねー』
そんなことをキノコ君が呟く。
いや、本当にディスり過ぎだろう。
どんだけ貴族のことをディスったら気が済むのっ!?
『まあ、なにがいいたかったかと言えば、街に入る時と出る時、そして物を購入したり、登録したりする際には、税金が掛かるよってことが言いたかったのさ』
えっ、たったそれだけっ!?
貴族のことをディスっていた部分、丸々関係ないじゃん!
『次に街に滞在するなら身分証が必要なんだよー。キノコ君は身分証を知っているかい?』
『なんのことかわかんないやー。なにしろボク、キノコだしー』
『そうだねー。キノコ君に身分証は不要だからねー。身分証というのは、その名の通り身分のを証明するために必要なものさ』
『その身分証はどこで作るのー?』
『おや、キノコ君も身分証に興味が湧いてきたのかな? 身分証は街に居住を構えるか、冒険者協会、商業協会に登録することで作ることができるんだ』
なるほど、街に住むか冒険者協会、商業協会に登録することで作ることができるのか。
『街に泊まるにも、冒険者協会で依頼を受けるにも、冒険者協会が管理するダンジョンに入るにも身分証が必要になるからね。街に行ったら必ず作らなきゃいけないよ』
『うん。わかったー!』
ナビさんはそう元気に返事をするキノコ君の頭を撫でる。
『よしよし、キノコ君は偉いねー。最後にモンスターの強さについて説明するね』
『モンスター?』
『そうだよー。この世界にはモンスターが一杯生息しているんだ。モンスターの体内には魔石と呼ばれる魔力の塊が必ず存在し、体内に宿している魔石の大きさや純度により強さが違うんだよー』
へえ、それは知らなかった。
しかし、街とモンスターの強さ、なにか関係があるのだろうか?
『それはですね……』
うわ、思考を読まれた……。
『街にはモンスターが入り込まないようにと、高い塀が四方に建てられているんだ』
『うんうん。それでー?』
『街には、強い冒険者が存在しているし、高い塀で守られているからね。空気の読める普通のモンスターは、強い冒険者の気配や、柄の高さを見て、諦めるのさ。中に入ることをね』
『へーそうなんだー。それは知らなかったなー』
『でもねー中には空気が読めないモンスターや、街の中にいる冒険者達より強いモンスターが、簡単に塀を上がって入ってくるんだよー』
『ふーん。モンスターって凄いんだね!』
『そうなんだ。モンスターって、空気が読めない馬鹿に見えて凄く頭がいいんだ。それなのに、街に住む貴族といったら、そのことをまったく考慮せず、高いだけの壁を築くんだよ。発注する業者からリベートを貰うために、高いだけで強度のまったくない壁を一生懸命お金をかけて築いているのさ。本当に愚かだよね?』
『本当に貴族って愚かなんだねー』
キノコ君の純朴な視線がナビさんに向かう
『そうそう。貴族というのは、私腹を肥やすために表では民衆にいい顔をし、裏ではそんな民衆をあざ笑いながら、多額の税金をポケットの内に収める愚かな生き物なのさ。ほら、あれを見てごらん。街にモンスターの大群が押し寄せてきているよ』
「えっ!?」
街にモンスターの大群が押し寄せてきているの!?
街に仕官したウエスト達は大丈夫だろうか。もの凄く心配だ。
僕の心配をよそに、キノコ君が元気にこう言った。
『うわー本当だ! あの様子だと、一日持たずに壁が崩壊しちゃうね♪』
『うん。あの街に住む貴族が無能ならそうなるね。これもすべて、自分の懐に金を入れるだけ入れて、頑強そうな壁を築き上げた貴族様が悪いんだよ』
ほ、本当に大丈夫だろうか?
『あっ、ゴブリンが壁の綻びを見つけたみたい。ただ石を積み上げただけで補強したつもりになってるのかな? あんなの石をどければ簡単に入り込むことができるのに。貴族様って本当に馬鹿なんだね』
『うん。そうだよ。貴族様は街に住む人のことより自分の財産が目減りしないかの方が重要と考えているからね。街に住む人はいわば肉壁。肉壁が襲われている間に高貴な血筋の貴族様達は逃げると。とっても面白いよね』
いや、全然面白くないんですけど……。
『まあ、今回なにが言いたかったかといえば、モンスターは頭がいいから、いくら街のまわりを強固そうに見える壁で囲ったとしても、馬鹿な貴族の甘い考えなんて看破して、どんどん進んでくるよと、そんなことが言いたかったのさ』
うん。なんだかとってもためになった気がする。
その一方で、僕は街にいるウエスト達は大丈夫なのかと、頭を悩ませた。
0
お気に入りに追加
1,053
あなたにおすすめの小説
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
家ごと異世界ライフ
ねむたん
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!
うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します
有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。
妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。
さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。
そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。
そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。
現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!
大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる
遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」
「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」
S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。
村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。
しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。
とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。
勘当貴族なオレのクズギフトが強すぎる! ×ランクだと思ってたギフトは、オレだけ使える無敵の能力でした
赤白玉ゆずる
ファンタジー
【10/23コミカライズ開始!】
『勘当貴族なオレのクズギフトが強すぎる!』のコミカライズが連載開始されました!
颯希先生が描いてくださるリュークやアニスたちが本当に素敵なので、是非ご覧になってくださいませ。
【第2巻が発売されました!】
今回も改稿や修正を頑張りましたので、皆様どうぞよろしくお願いいたします。
イラストは蓮禾先生が担当してくださいました。サクヤとポンタ超可愛いですよ。ゾンダールもシブカッコイイです!
素晴らしいイラストの数々が載っておりますので、是非見ていただけたら嬉しいです。
【ストーリー紹介】
幼い頃、孤児院から引き取られた主人公リュークは、養父となった侯爵から酷い扱いを受けていた。
そんなある日、リュークは『スマホ』という史上初の『Xランク』スキルを授かる。
養父は『Xランク』をただの『バツランク』だと馬鹿にし、リュークをきつくぶん殴ったうえ、親子の縁を切って家から追い出す。
だが本当は『Extraランク』という意味で、超絶ぶっちぎりの能力を持っていた。
『スマホ』の能力――それは鑑定、検索、マップ機能、動物の言葉が翻訳ができるほか、他人やモンスターの持つスキル・魔法などをコピーして取得が可能なうえ、写真に撮ったものを現物として出せたり、合成することで強力な魔導装備すら製作できる最凶のものだった。
貴族家から放り出されたリュークは、朱鷺色の髪をした天才美少女剣士アニスと出会う。
『剣姫』の二つ名を持つアニスは雲の上の存在だったが、『スマホ』の力でリュークは成り上がり、徐々にその関係は接近していく。
『スマホ』はリュークの成長とともにさらに進化し、最弱の男はいつしか世界最強の存在へ……。
どん底だった主人公が一発逆転する物語です。
※別小説『ぶっ壊れ錬金術師(チート・アルケミスト)はいつか本気を出してみたい 魔導と科学を極めたら異世界最強になったので、自由気ままに生きていきます』も書いてますので、そちらもどうぞよろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる