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第一章 キノコマスター
第10話 キノコ・キャッスルでの優雅なひと時~豚殲滅~
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<さて、ノース様はここでキノコ茶でも飲みながら、豚共がマッシュルーム・ソルジャーに蹂躙されるさまを見て楽しみましょう>
「いや、それどんな楽しみ方っ!?」
オークの軍勢がマッシュルーム・ソルジャーに倒されていくさまを、キノコ茶を飲みながら特等席で眺めるなんて、どこの貴族の楽しみ方なのだろうか。
悪趣味過ぎる。
僕がナビさんにツッコミを入れていると、執事服となったマッシュルーム・バトラーがキノコ茶を運んできた。
マッシュルーム・バトラーは行儀よくキノコ茶をティーカップに注ぐと、テーブルの上に置いてくれる。
「……あ、ありがとう」
僕がそう声をかけると、マッシュルーム・バトラーは、僕の右後ろに立ち、直立姿勢を保ったまま、動かなくなってしまった。
<ノース様。マッシュルーム・バトラーが煎れてくれたキノコ茶です。折角ですので、頂きましょう>
「う、うん。そうだね」
マッシュルーム・バトラーが煎れてくれたキノコ茶をすすると、お茶とは思えない豊潤な味がした。これはもはや、お茶ではない。お吸い物の域だ。
それにしても……。
僕はマッシュルーム・バトラーの煎れてくれたキノコ茶とティーカップに視線を向ける。
食器やキノコ茶なんて作成した覚えがないけど、一体どうやって作ったのだろうか?
それに、マッシュルーム・バトラーがキノコ茶を煎じるってどういう気分なのだろう……。
なんだか非道なことをやっている気分になってきた。
<ノース様。大丈夫ですよ>
「えっ? 大丈夫って一体なにが?」
<心優しいノース様は、キノコがキノコ茶を煎じたことに心を痛めているのでしょうけれども、人間はそれ以上のことをしています。ほら、あそこに見える街を見て下さい>
ナビさんはボクの視界にそう文字を浮かべながら矢印(↓)で街を指した。
<あの街があった場所は、元は動物達やモンスターが暮らす自然豊かな森でした。しかし、人間達はその森を破壊し、街を造り上げたのです。それだけではありません。人間は生きるために、動物を殺し食べるだけでは飽き足らず、狩りをして楽しみ、動物達の親をその子供達の目の前で、矢を射たり、惨殺したり、持ち運べないからといって死体をそのまま放置するなど、やりたい放題やっているではありませんか。それに比べたら、ノース様がキノコにキノコ茶を煎じさせたくらい大したことではありませんよ>
「ず、随分と熱がこもっていたようだけど、なにか人間に恨みでもあるの?」
<いいえ、恨みなんて一切ありません。それより見て下さい。戦いが終わったみたいですよ?>
「えっ?」
僕が下を眺めると、マッシュルーム・ソルジャーが最後に一体残ったオークを斬り倒すところだった。
マッシュルーム・ソルジャーは大量のオークを積み上げると、剣を上に突き上げる。
どうやら、オークによるキノコ・キャッスルの占領は失敗に終わったようだ。
マッシュルーム・ソルジャー達はオークをキノコまみれにすると、カエンタケで着火し、火葬し始めた。
「…………」
と、とりあえず、住処を奪われなくてよかった。
僕がホッとした表情を浮かべていると、ナビさんが視界に文字を浮かべてくる。
<おやおや、次はゴブリンの群れがこちらに向かっているみたいですよ? 果たして、悪臭を漂わせ臭いで敵を怯ませることしかできない緑色の悪鬼ごときが、ノース様の作成したマッシュルーム・ソルジャーに敵うでしょうか?>
「いや、なに楽しんでいるの!? 僕の住処が奪われるかもしれないピンチなんだよ? ナビさん、ゴブリンが繰り出す一撃は大気を穿ち、踏み出す一歩は大地を割るって言っていたよね! 滅茶苦茶ピンチじゃん!」
<……あー、そう言ったこともありましたね。そうですよー。その通りです>
「なに、その投げやりな感じ……僕、ちょっと行ってくる!」
僕は椅子から立ち上がると、一階に向かおうとする。
<えっ、ちょっと、ノース様っ? ま、待って下さい>
「待てないよ! すぐ近くにゴブリンがやってきているんでしょ!?」
<い、いや、そうなんですけどっ! ええいっ! マッシュルーム・バトラー、あなた達がゴブリンの相手をしなさい。マッシュルーム・ソルジャーは下がらせます!>
「ええっー! マッシュルーム・ソルジャーを下がらせちゃうのっ!?」
<はい。マッシュルーム・ソルジャーは先のオークとの戦闘で傷付いています。彼等にも休憩は必要です。それに、敵はゴブリンです。ノース様には荷が重すぎます>
「た、確かに……」
言われてみればそうかもしれない。
「で、でも、マッシュルーム・バトラーだけじゃ……」
僕が不安そうな表情を浮かべると、ナビさんが視界に文字を浮かべた。
<ご安心下さい。マッシュルーム・バトラーには、仕える主がいる場合、攻撃力、防御力共に十倍となる特性があります。この者達に任せておけば、問題はないでしょう>
ナビさんがそう文字を浮かべると、マッシュルーム・バトラー達が整列する。
そしてお辞儀をすると、ゴブリン討伐に向かっていった。
「いや、それどんな楽しみ方っ!?」
オークの軍勢がマッシュルーム・ソルジャーに倒されていくさまを、キノコ茶を飲みながら特等席で眺めるなんて、どこの貴族の楽しみ方なのだろうか。
悪趣味過ぎる。
僕がナビさんにツッコミを入れていると、執事服となったマッシュルーム・バトラーがキノコ茶を運んできた。
マッシュルーム・バトラーは行儀よくキノコ茶をティーカップに注ぐと、テーブルの上に置いてくれる。
「……あ、ありがとう」
僕がそう声をかけると、マッシュルーム・バトラーは、僕の右後ろに立ち、直立姿勢を保ったまま、動かなくなってしまった。
<ノース様。マッシュルーム・バトラーが煎れてくれたキノコ茶です。折角ですので、頂きましょう>
「う、うん。そうだね」
マッシュルーム・バトラーが煎れてくれたキノコ茶をすすると、お茶とは思えない豊潤な味がした。これはもはや、お茶ではない。お吸い物の域だ。
それにしても……。
僕はマッシュルーム・バトラーの煎れてくれたキノコ茶とティーカップに視線を向ける。
食器やキノコ茶なんて作成した覚えがないけど、一体どうやって作ったのだろうか?
それに、マッシュルーム・バトラーがキノコ茶を煎じるってどういう気分なのだろう……。
なんだか非道なことをやっている気分になってきた。
<ノース様。大丈夫ですよ>
「えっ? 大丈夫って一体なにが?」
<心優しいノース様は、キノコがキノコ茶を煎じたことに心を痛めているのでしょうけれども、人間はそれ以上のことをしています。ほら、あそこに見える街を見て下さい>
ナビさんはボクの視界にそう文字を浮かべながら矢印(↓)で街を指した。
<あの街があった場所は、元は動物達やモンスターが暮らす自然豊かな森でした。しかし、人間達はその森を破壊し、街を造り上げたのです。それだけではありません。人間は生きるために、動物を殺し食べるだけでは飽き足らず、狩りをして楽しみ、動物達の親をその子供達の目の前で、矢を射たり、惨殺したり、持ち運べないからといって死体をそのまま放置するなど、やりたい放題やっているではありませんか。それに比べたら、ノース様がキノコにキノコ茶を煎じさせたくらい大したことではありませんよ>
「ず、随分と熱がこもっていたようだけど、なにか人間に恨みでもあるの?」
<いいえ、恨みなんて一切ありません。それより見て下さい。戦いが終わったみたいですよ?>
「えっ?」
僕が下を眺めると、マッシュルーム・ソルジャーが最後に一体残ったオークを斬り倒すところだった。
マッシュルーム・ソルジャーは大量のオークを積み上げると、剣を上に突き上げる。
どうやら、オークによるキノコ・キャッスルの占領は失敗に終わったようだ。
マッシュルーム・ソルジャー達はオークをキノコまみれにすると、カエンタケで着火し、火葬し始めた。
「…………」
と、とりあえず、住処を奪われなくてよかった。
僕がホッとした表情を浮かべていると、ナビさんが視界に文字を浮かべてくる。
<おやおや、次はゴブリンの群れがこちらに向かっているみたいですよ? 果たして、悪臭を漂わせ臭いで敵を怯ませることしかできない緑色の悪鬼ごときが、ノース様の作成したマッシュルーム・ソルジャーに敵うでしょうか?>
「いや、なに楽しんでいるの!? 僕の住処が奪われるかもしれないピンチなんだよ? ナビさん、ゴブリンが繰り出す一撃は大気を穿ち、踏み出す一歩は大地を割るって言っていたよね! 滅茶苦茶ピンチじゃん!」
<……あー、そう言ったこともありましたね。そうですよー。その通りです>
「なに、その投げやりな感じ……僕、ちょっと行ってくる!」
僕は椅子から立ち上がると、一階に向かおうとする。
<えっ、ちょっと、ノース様っ? ま、待って下さい>
「待てないよ! すぐ近くにゴブリンがやってきているんでしょ!?」
<い、いや、そうなんですけどっ! ええいっ! マッシュルーム・バトラー、あなた達がゴブリンの相手をしなさい。マッシュルーム・ソルジャーは下がらせます!>
「ええっー! マッシュルーム・ソルジャーを下がらせちゃうのっ!?」
<はい。マッシュルーム・ソルジャーは先のオークとの戦闘で傷付いています。彼等にも休憩は必要です。それに、敵はゴブリンです。ノース様には荷が重すぎます>
「た、確かに……」
言われてみればそうかもしれない。
「で、でも、マッシュルーム・バトラーだけじゃ……」
僕が不安そうな表情を浮かべると、ナビさんが視界に文字を浮かべた。
<ご安心下さい。マッシュルーム・バトラーには、仕える主がいる場合、攻撃力、防御力共に十倍となる特性があります。この者達に任せておけば、問題はないでしょう>
ナビさんがそう文字を浮かべると、マッシュルーム・バトラー達が整列する。
そしてお辞儀をすると、ゴブリン討伐に向かっていった。
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