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第一章 キノコマスター
第2話 そこに生えているキノコを採取して下さい
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「ま、迷った……」
孤児院は思っていた以上に、田舎にあったようだ。
教会に行った際、通ったけもの道を必死に思い出しながら歩いていると、いつの間にか森の奥底にたどり着いていた。
ワオーン! ワンワンッ!
耳を澄ませてみると、どこからともなく動物の鳴き声が聞こえてくる。
周囲を見渡すと、森、森、森……森のことが怖すぎて森林恐怖症になりそうだ。
いつの間にか辺りは暗くなり『ガサッ!』という音が鳴る度、ビクリと身体を震わせる。
な、なんということでしょう。
僕はいつの間にか、森の中に迷い込んでしまったらしい。
おかしい……もしかして僕、方向音痴だったのだろうか?
教会に向かった時のことを思い出し、案内標識に従って、道なりに真っ直ぐに進んだつもりだったんだけど……。
そういえば、あの案内標識……なぜか、けもの道を指していたような……。
いや、おかしいとは思っていた。
なんで案内標識が森の方向を向いていたのかと……。
いま思えば、なんとなく、なにかがぶつかったかのように傾いていたけど、案内標識さんが『街ある方向はこっちだよ?』と森の方向を示していたのだ。
そんなの信じる他ないだろう。
しかし……どうしたものか。
辺りは真っ暗、もう時間的猶予は残されていない。
……仕方がない。今日のところは野宿するか。
なに、問題はないはずだ。
自慢じゃないが、僕は昔、ルームメイトとキャンプをしたことがある。
こういう時はあれだ。
まずは、食糧を調達しよう。
森の中を彷徨っていたら、なんだかお腹が空いてきた。
この不安な気持ちも、きっと空腹からくるものだ。
絶対にそうだ。そうに決まっている。
「よしっ! やるぞっ!」
僕は自分に対してそう奮い立たせると、早速、辺り周辺で食糧捜索を開始した。
森の中には、様々な木の実や食べ物、薬草が生えている。
辺りが暗くなる前に、周囲を捜索していると、地面に数本生えたキノコを発見した。
「えーっと、これは食べられるのかな?」
キノコを前にそう呟くと、ピコンという音が頭の中に鳴り響く。
すると、視界に文字が浮かび上がってきた。
<チュートリアル:初めてのキノコ採集 ~キノコマスターへの道~>
「はっ?」
突然、視界の端に表示された文字に素っ頓狂な声を上げると、視界の端に表示されていた文字が変化する。
<まずは、そこに生えているキノコを採取して下さい>
「う、うん……」
突然、視界の端に表示された文字に驚きつつも、その文字に従い、キノコを採取すると、視界の端に表示された文字が変化する。
<それでは、パクリとキノコを頂きましょう>
視界の端に表示された文字を尻目に、手に持ったキノコを見てみると、随分と毒々しい色合いをしていた。
このキノコを生で食べろと言っているのだろうか?
「す、すいません。キノコを生で食べるのはちょっと……」
僕がそう呟くと、視界の端に表示された文字が変化する。
<生で食べないとチュートリアルは終りません。それでもよろしいですか?>
なんだか、掲示板と会話をしているかのような気分だ。
もしかして、僕のギフト『キノコマスター』には、ナビゲートのような……そのような機能が付いているというのだろうか?
気になった僕は試しに質問を投げ掛けてみることにした。
「えっと、ナビさん? このキノコ、生で食べても大丈夫なものなんですか?」
ナビゲートは生で食べろと言っている。
しかし、普通、キノコを生で食べることなんてできない。
酷い食当たりに見舞われること間違いなしだ。
僕がそう質問すると、視界の端に表示された文字が変化する。
<人間にとっては毒です。下痢、嘔吐、脱水症状に見舞われた挙句、神経系を汚染されて死に至ります>
視界の端にそう表示された瞬間、僕は叫んだ。
「ダメじゃん!」
どう考えてもダメじゃん!
死んじゃうじゃん!
そんなことわかりきっていたよ!
目を閉じながら、顔を強張らせてそう叫ぶと、視界の端に表示された文字が変わっていく。
<煩いな、まだ話の途中だっつーの。それは普通の人間がそのキノコを食べた場合の話だろうがよ! 最後まで話を聞けやコラ! なあ、おい。お前だよ、お前。キノコマスターのナビゲートシステムである私をなめとるんと違うか? ええ、コラ?>
「……なんだか、すいませんでした」
ナビさん、なんだか怖い人?のようだ。
いや、文字でしか怖い人?であるかどうかの判断しかできないんだけど……。
僕がそう謝罪すると、ナビさんは更なる要求をしてきた。
<なんだかって、なんや! それ謝ってるんとちゃうよな? もっと、誠心誠意謝らんかい!>
ナビさん、ちょっと面倒くさい性格のようだ。しかし、僕は自立した大人?だ。
僕は地面に両手を付けると、頭を地面に擦り付けながら土下座する。
そして、大声を上げながら謝罪した。
「ナビ様、申し訳ございませんでしたっ!」
僕が頭を擦り付けながらそう言うと、ナビ様の機嫌がすこぶる良く回復した。
<謝罪を頂ければいいのです。ナビもそれ程、怒りを抱いておりません>
「そ、そうでしたか。申し訳ございません。それでナビ様。先程の話を詳しくご教示頂けるとありがたいのですが……」
僕が下手に出ながらそう言うと、視界の端に表示された文字が変わっていく。
<キノコマスターにキノコの毒は通じません。腹ごしらえになり、チュートリアルを終わらせギフトレベルを上げる大チャンスです。さあ、キノコを生で食べましょう>
僕はゴクリと喉を鳴らすと、手に持ったキノコを凝視する。そして、汗を流すと、紫色と赤色に染まった笠の毒キノコにしか見えないキノコを口にした。
孤児院は思っていた以上に、田舎にあったようだ。
教会に行った際、通ったけもの道を必死に思い出しながら歩いていると、いつの間にか森の奥底にたどり着いていた。
ワオーン! ワンワンッ!
耳を澄ませてみると、どこからともなく動物の鳴き声が聞こえてくる。
周囲を見渡すと、森、森、森……森のことが怖すぎて森林恐怖症になりそうだ。
いつの間にか辺りは暗くなり『ガサッ!』という音が鳴る度、ビクリと身体を震わせる。
な、なんということでしょう。
僕はいつの間にか、森の中に迷い込んでしまったらしい。
おかしい……もしかして僕、方向音痴だったのだろうか?
教会に向かった時のことを思い出し、案内標識に従って、道なりに真っ直ぐに進んだつもりだったんだけど……。
そういえば、あの案内標識……なぜか、けもの道を指していたような……。
いや、おかしいとは思っていた。
なんで案内標識が森の方向を向いていたのかと……。
いま思えば、なんとなく、なにかがぶつかったかのように傾いていたけど、案内標識さんが『街ある方向はこっちだよ?』と森の方向を示していたのだ。
そんなの信じる他ないだろう。
しかし……どうしたものか。
辺りは真っ暗、もう時間的猶予は残されていない。
……仕方がない。今日のところは野宿するか。
なに、問題はないはずだ。
自慢じゃないが、僕は昔、ルームメイトとキャンプをしたことがある。
こういう時はあれだ。
まずは、食糧を調達しよう。
森の中を彷徨っていたら、なんだかお腹が空いてきた。
この不安な気持ちも、きっと空腹からくるものだ。
絶対にそうだ。そうに決まっている。
「よしっ! やるぞっ!」
僕は自分に対してそう奮い立たせると、早速、辺り周辺で食糧捜索を開始した。
森の中には、様々な木の実や食べ物、薬草が生えている。
辺りが暗くなる前に、周囲を捜索していると、地面に数本生えたキノコを発見した。
「えーっと、これは食べられるのかな?」
キノコを前にそう呟くと、ピコンという音が頭の中に鳴り響く。
すると、視界に文字が浮かび上がってきた。
<チュートリアル:初めてのキノコ採集 ~キノコマスターへの道~>
「はっ?」
突然、視界の端に表示された文字に素っ頓狂な声を上げると、視界の端に表示されていた文字が変化する。
<まずは、そこに生えているキノコを採取して下さい>
「う、うん……」
突然、視界の端に表示された文字に驚きつつも、その文字に従い、キノコを採取すると、視界の端に表示された文字が変化する。
<それでは、パクリとキノコを頂きましょう>
視界の端に表示された文字を尻目に、手に持ったキノコを見てみると、随分と毒々しい色合いをしていた。
このキノコを生で食べろと言っているのだろうか?
「す、すいません。キノコを生で食べるのはちょっと……」
僕がそう呟くと、視界の端に表示された文字が変化する。
<生で食べないとチュートリアルは終りません。それでもよろしいですか?>
なんだか、掲示板と会話をしているかのような気分だ。
もしかして、僕のギフト『キノコマスター』には、ナビゲートのような……そのような機能が付いているというのだろうか?
気になった僕は試しに質問を投げ掛けてみることにした。
「えっと、ナビさん? このキノコ、生で食べても大丈夫なものなんですか?」
ナビゲートは生で食べろと言っている。
しかし、普通、キノコを生で食べることなんてできない。
酷い食当たりに見舞われること間違いなしだ。
僕がそう質問すると、視界の端に表示された文字が変化する。
<人間にとっては毒です。下痢、嘔吐、脱水症状に見舞われた挙句、神経系を汚染されて死に至ります>
視界の端にそう表示された瞬間、僕は叫んだ。
「ダメじゃん!」
どう考えてもダメじゃん!
死んじゃうじゃん!
そんなことわかりきっていたよ!
目を閉じながら、顔を強張らせてそう叫ぶと、視界の端に表示された文字が変わっていく。
<煩いな、まだ話の途中だっつーの。それは普通の人間がそのキノコを食べた場合の話だろうがよ! 最後まで話を聞けやコラ! なあ、おい。お前だよ、お前。キノコマスターのナビゲートシステムである私をなめとるんと違うか? ええ、コラ?>
「……なんだか、すいませんでした」
ナビさん、なんだか怖い人?のようだ。
いや、文字でしか怖い人?であるかどうかの判断しかできないんだけど……。
僕がそう謝罪すると、ナビさんは更なる要求をしてきた。
<なんだかって、なんや! それ謝ってるんとちゃうよな? もっと、誠心誠意謝らんかい!>
ナビさん、ちょっと面倒くさい性格のようだ。しかし、僕は自立した大人?だ。
僕は地面に両手を付けると、頭を地面に擦り付けながら土下座する。
そして、大声を上げながら謝罪した。
「ナビ様、申し訳ございませんでしたっ!」
僕が頭を擦り付けながらそう言うと、ナビ様の機嫌がすこぶる良く回復した。
<謝罪を頂ければいいのです。ナビもそれ程、怒りを抱いておりません>
「そ、そうでしたか。申し訳ございません。それでナビ様。先程の話を詳しくご教示頂けるとありがたいのですが……」
僕が下手に出ながらそう言うと、視界の端に表示された文字が変わっていく。
<キノコマスターにキノコの毒は通じません。腹ごしらえになり、チュートリアルを終わらせギフトレベルを上げる大チャンスです。さあ、キノコを生で食べましょう>
僕はゴクリと喉を鳴らすと、手に持ったキノコを凝視する。そして、汗を流すと、紫色と赤色に染まった笠の毒キノコにしか見えないキノコを口にした。
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