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第十一章 オーランド王国動乱編

第479話 二つの選択①

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 目の前にいるのは神敵ヴィーザル、巨人となりてヤンマイエン王国を滅ぼした神。
 影精霊の『影転移』でソテル様の元に転移させようとするも、突然身体を膨張させ『影転移』から逃れてしまった。

「ねえ、バルドルをどこにやったの?」
「バルドル様はソテル様の元に送らせて頂きました」
「そう。それで? もしかして、君一人でボクを止める事ができると、本当に思っているの?」

 もう一柱の神敵ヴァーリもヴィーザルの背後に控えている。

「勿論です。と、言いたい所ではありますが、私一人では、神二柱を相手に勝てそうにありません」
「へえ、それで?」
「はい。ですので……私は今、降りた神託に従います」
「なにっ!? ぐうっ!」

 目の前の空間が歪むと、ヴィーザルの身体が何かに締め付けられたかの様に動かなくなる。

「お、お前……一体何をした」
「それを申し上げる事はできません。あなたの相手は後ほど、ソテル様が行います。それまでの間、そこで大人しくしていて下さい」
「ぐうっ……」

 ロキ様の神託によれば、ソテル様は今、神敵バルドルと交戦中。そんなソテル様の下にヴィーザルを転移させるのは悪手。
 ならば、ロキ様の王座の力で動けなくなっているヴィーザルを放置し、計画通りにヴァーリを倒すのが先決だ。

 ロキ様の王座の力により囚われたヴィーザルを尻目に、司法神ヴァーリがこちらに向かって近付いてくる。

「おやおや、あのヴィーザルの動きを封じ込めるなんて、中々、やるではありませんか。これはもしや、父上の神器『王座フリズスキャールヴ』の力ではありませんか?」
「王座フリズスキャールヴ? なんの事でしょうか?」

 この神、王座の事を知っている!?
 いや、当たり前か……司法神ヴァーリは、この世界の元主神オーディンの子。
 王座の力を知らない筈がない。

「白を切りますか……しかし、何故、王座の力をロキが……これは弱りましたね」
「そうですか、それなら降伏してくれてもいいんですよ?」

 私がそう言うと、ヴァーリは鼻で笑う。

「ふふふっ、ご冗談を……王座の力は確かに強大です。しかし、その王座の元々の持ち主は我が父上に他なりません」
「それで、何が言いたいのですか?」

 この神は一体何が言いたいのだろうか。
 王座を奪われている時点で、どうにもならない様な気がするのだけど……。

「ふふふっ、わかりませんか? 王座の力を十全に使う事ができるのは父上のみという事です。十全に使ってこその王座。その王座がロキサイドに渡ったとしても、何ら影響はありません。見てみなさい」

 そういうと、ヴァーリは王座の力により囚われたヴィーザルに視線を向ける。

「王座の力を十全に使う事ができるのであれば、このヴィーザルを捕える所か握り潰す事もできる筈。それをしないという事は……いえ、それが出来ないという事は、王座の力を十全に使いこなせていないと言っている様なものではありませんか!」
「え? そうなんですか?」

『勿論違うよ♪』

 すると、頭にロキ様の声が響き渡る。

「なっ、その声はロキ! どこです。どこにいるのです!」

 ロキ様の声はヴァーリにも届いたようだ。
 さっきまでの余裕はどこへやら、突然、ロキ様の声が聞こえ慌てふためいている様に見える。

『そんな事を教える訳がないでしょ? それよりヴァーリ。君が今、自信満々に言った事、間違っているよ♪』
「間違っている? この私が言った事が間違っているですって!? 何が間違っているというのです!」
『自分が言った事をもう忘れてしまったのかい? 王座の話だよ。確かにボクじゃあ、王座の力を十全に引き出す事はできないかもしれない。ただし、もう一柱いるでしょう? 王座に座す権利を持った者が……』
「な、なにっ!?」
『ボクも最初は、君達を滅ぼすしかないのかなと考えていたんだけど、それに待ったをかける神が現れてね♪』
「だ、誰です! 王座に座す権利を持つ者など……」
『そんな事は決まっているじゃん♪ オーディンの妻、愛と結婚と豊穣の神フリッグだよ』

 ロキ様がそう言うと、目の前の空間が歪み、ヴァーリの身体が何かに締め付けられたかの様に動かなくなる。

「ぐっ、がっ……フリッグ様ですって!?」
『うん。そうだよ~♪ 今、君達を抑え込んでいるのもフリッグさ。フリッグとの出会いは偶然だったんだけどね。ボクの第一使徒ソテルがこの国の地下にある迷宮を攻略した時、三十階層で待ち構えていたんだ♪ バルドルの手助けをする為、態々、聖域迷宮の三十階層のボスモンスターとして自身を配置していたみたいなんだけど、ソテルが間違えてフリッグを召喚する為の魔方陣を傷付けてしまってね♪ そのまま、ソテルが迷宮を支配してしまったから、三十階層のボスモンスターとして配置されたままになってしまったんだ♪ しかも、フリッグは迷宮主となったソテルに指一本触れる事ができない。折角なので、ボクはそれを利用させて貰ったのさ♪』

「ぐっ、フリッグ様が敵に……という事は……バルドルはっ!?」
『バルドルは生きているよ♪ まあ、百年位はこの世界の役に立ってもらう予定だけど……さて、君には二つの道がある。どちらを選ぶかは君達次第だ♪ でも、よ~く考えて選んでね?』

 そう言うと、ロキ様はヴァーリとヴィーザルに二つの選択肢を提示した。
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