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第十章 冒険者ギルド編
第413話 トースハウン領⑤
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「ねーねー、悠斗様。迷宮って俺達も行っていいの?」
「うん。冒険者ギルドのギルドカードは十五歳から発行されるけど、商業ギルドのギルドカードは評議員の推薦があれば十五歳以下でも発行可能だからね。それに迷宮といってもそんなに怖くはないんだよ? 俺がケガ一つさせないからね」
迷宮でレベル上げをする時は必ず『影纏』を纏わせる。絶対にケガ一つさせない。
そして、従業員の大半は『影分身』に任せる予定だ。
任せるといっても影分身に任せるのは引率と『影探知』『影収納』を用いたお手軽なレベル上げのみ、絶対に俺のレベルは一つとして上げさせない。
俺がそういうと、リオ君達はホッとした表情を浮かべた。突然、迷宮に行くといわれ不安に思ったのかも知れない。
「さあ、明日から研修が始まるよ。今日の内に生活に必要なものを揃えなきゃ。俺がついていってあげるから、まずお風呂に入って服に着替えておいで」
「「「うん!」」」
リオ君達はそう元気な声を上げると、マンションの一室に向かって駆け出した。
「お待たせ! 悠斗様!」
リオ君達を待つ事、三十分。
身だしなみを整えたリオ君達三人組がやってきた。
「うん。それじゃあ、生活用品を買いに行こうか」
「「「うん!」」」
俺はそういうとリオ君達三人組と共に街の散策に出かける事にした。
トースハウン領の街中を歩いていると、魚の焼ける香ばしくいい匂いが漂ってくる。
「うわぁ、いい匂いだね」
トースハウン領は街中に『ゲーベル迷宮』という海産物の採れる迷宮がある。
その為なのかは分からないが、ゲーベル迷宮付近には、まるで漁師の様に体格のいい髭面の男達が真っ昼間から酒を飲み騒いでいた。
おそらく冒険者なのだろうが、あまり係り合いになりたくはない。
「おい、あれスラムの餓鬼じゃねーか?」
「本当だ。俺、何度か遊んでやった事があるぜ」
「折角だ。誰か捕まえてこいよ。サンドバックにでもして遊ぼうぜ」
遠回りをして通り過ぎようとすると、魚をつまみにエールを呷りながら男達が指を刺してきた。
心なしか、子供達の身体が震えている様に見える。
「俺がいるから大丈夫だよ。あんな奴らは気にせず行こう」
「「「う、うん」」」
俺は男達の事を無視し、リオ君達を連れてその場から離れようとする。
すると、男の一人がエールを置き、俺達を後ろから追いかけてきた。
「ゆ、悠斗様、あいつ追いかけてくるよ」
「うん。そうみたいだね」
全く。子供達をこんなに怖がらせて……。
ここの冒険者はスラム街の住民の事をストレスのはけ口とでも思っているのだろうか?
王都のギルドマスター、モルトバといい、冒険者ギルドには碌な人間がいない。
「後ろから着いてくるおじさん。俺達になんの用ですか?」
俺がそういうと、男はピタリと足を止める。
「ほお、餓鬼風情が俺の事に気付いていたのか」
「勿論、子供達でもその位気付けますよ。それで、俺達に一体何の用ですか?」
「いや、何。そこにいる子供をこちらに引き渡して貰おうと思ってな……ほら、俺その子の保護者なんだよ。なあ? そうだろ坊主共」
そういうと男はリオ君達に視線を向ける。
男の視線に合わせ、リオ君達に視線を向けると、酷く怯えている様に見えた。
俺はリオ君達の前に立つと、男を睨み付ける。
「そんな馬鹿でもわかる嘘を信じるとでも思っているんですか?」
「ああっ、馬鹿とは誰の事だ? まさか俺の事じゃないだろうなぁ?」
そう言うと、男は腰に付けていたナイフの柄に手を当てる。
マデイラ王国の冒険者ギルドに入った時と全く同じだ。
冒険者ギルドには、この様な低俗な冒険者も多くいるのだろう。
俺はニコリと微笑むと、影を男に這わせながら呟いた。
「はい。あなた以外に誰がいるんですか?」
「てめぇ、どうやら死にたい様だな……それじゃあ、お望み通りにしてやるよっ! って、えええっ!?」
「『影収納』」
俺がそう呟くと男は、叫び声と共にそのまま影の中に沈んでいく。
「からの……『影転移』」
そして、エールを呷りながら飲んでいるこの男の仲間達の真上である屋根の裏側に座標を合わせると、俺達に絡んできた男をそのまま仲間の下に転移させた。
視線を向けると、丁度、男が『影収納』から解放され仲間を巻き込みエール塗れになる姿が目に映る。
「怖い思いをさせてごめんね。さっきの人、実は保護者だったりする?」
「ううん、全然知らない人。でも、俺達をイジメにスラムにはよく来ていたかも……」
「そっか……」
それなら、今『影収納』の中にいるBランク冒険者達と同様に『影収納』の中に収めたまま放置しておけばよかった。そっちの方が害虫一匹がいなくなる分、トースハウン領の治安が良くなったかもしれない。
「じゃあ、次絡んできたら目に物を見せて上げようね」
チラッと『鑑定』スキルで絡んできた男のレベルを確認して見たけど、レベルは34とそこまで強くない様だ。これなら、明日の迷宮内研修で歴然としたステータス差を付ける事ができる。
収納指輪に『影精霊』を十体付与しているし、奴らに後れを取る要素は何一つなさそうだ。
そういえば、屋敷神は冒険者ギルドの責任で『影精霊を付与した魔道具』を回収させるって言っていたけど、どうしたんだろ?
何やらロキさんと談笑しながら、トゥルクさんとツカサさんのいる部屋に入っていっていたみたいだけど……まあいいか。
今は、トースハウン領の従業員達を鍛え上げる方が先決だ。
俺は、リオ君達と共に当面の生活に必要な生活物資を買い揃えると、ユートピア商会トースハウン支部に戻っていくのであった。
「うん。冒険者ギルドのギルドカードは十五歳から発行されるけど、商業ギルドのギルドカードは評議員の推薦があれば十五歳以下でも発行可能だからね。それに迷宮といってもそんなに怖くはないんだよ? 俺がケガ一つさせないからね」
迷宮でレベル上げをする時は必ず『影纏』を纏わせる。絶対にケガ一つさせない。
そして、従業員の大半は『影分身』に任せる予定だ。
任せるといっても影分身に任せるのは引率と『影探知』『影収納』を用いたお手軽なレベル上げのみ、絶対に俺のレベルは一つとして上げさせない。
俺がそういうと、リオ君達はホッとした表情を浮かべた。突然、迷宮に行くといわれ不安に思ったのかも知れない。
「さあ、明日から研修が始まるよ。今日の内に生活に必要なものを揃えなきゃ。俺がついていってあげるから、まずお風呂に入って服に着替えておいで」
「「「うん!」」」
リオ君達はそう元気な声を上げると、マンションの一室に向かって駆け出した。
「お待たせ! 悠斗様!」
リオ君達を待つ事、三十分。
身だしなみを整えたリオ君達三人組がやってきた。
「うん。それじゃあ、生活用品を買いに行こうか」
「「「うん!」」」
俺はそういうとリオ君達三人組と共に街の散策に出かける事にした。
トースハウン領の街中を歩いていると、魚の焼ける香ばしくいい匂いが漂ってくる。
「うわぁ、いい匂いだね」
トースハウン領は街中に『ゲーベル迷宮』という海産物の採れる迷宮がある。
その為なのかは分からないが、ゲーベル迷宮付近には、まるで漁師の様に体格のいい髭面の男達が真っ昼間から酒を飲み騒いでいた。
おそらく冒険者なのだろうが、あまり係り合いになりたくはない。
「おい、あれスラムの餓鬼じゃねーか?」
「本当だ。俺、何度か遊んでやった事があるぜ」
「折角だ。誰か捕まえてこいよ。サンドバックにでもして遊ぼうぜ」
遠回りをして通り過ぎようとすると、魚をつまみにエールを呷りながら男達が指を刺してきた。
心なしか、子供達の身体が震えている様に見える。
「俺がいるから大丈夫だよ。あんな奴らは気にせず行こう」
「「「う、うん」」」
俺は男達の事を無視し、リオ君達を連れてその場から離れようとする。
すると、男の一人がエールを置き、俺達を後ろから追いかけてきた。
「ゆ、悠斗様、あいつ追いかけてくるよ」
「うん。そうみたいだね」
全く。子供達をこんなに怖がらせて……。
ここの冒険者はスラム街の住民の事をストレスのはけ口とでも思っているのだろうか?
王都のギルドマスター、モルトバといい、冒険者ギルドには碌な人間がいない。
「後ろから着いてくるおじさん。俺達になんの用ですか?」
俺がそういうと、男はピタリと足を止める。
「ほお、餓鬼風情が俺の事に気付いていたのか」
「勿論、子供達でもその位気付けますよ。それで、俺達に一体何の用ですか?」
「いや、何。そこにいる子供をこちらに引き渡して貰おうと思ってな……ほら、俺その子の保護者なんだよ。なあ? そうだろ坊主共」
そういうと男はリオ君達に視線を向ける。
男の視線に合わせ、リオ君達に視線を向けると、酷く怯えている様に見えた。
俺はリオ君達の前に立つと、男を睨み付ける。
「そんな馬鹿でもわかる嘘を信じるとでも思っているんですか?」
「ああっ、馬鹿とは誰の事だ? まさか俺の事じゃないだろうなぁ?」
そう言うと、男は腰に付けていたナイフの柄に手を当てる。
マデイラ王国の冒険者ギルドに入った時と全く同じだ。
冒険者ギルドには、この様な低俗な冒険者も多くいるのだろう。
俺はニコリと微笑むと、影を男に這わせながら呟いた。
「はい。あなた以外に誰がいるんですか?」
「てめぇ、どうやら死にたい様だな……それじゃあ、お望み通りにしてやるよっ! って、えええっ!?」
「『影収納』」
俺がそう呟くと男は、叫び声と共にそのまま影の中に沈んでいく。
「からの……『影転移』」
そして、エールを呷りながら飲んでいるこの男の仲間達の真上である屋根の裏側に座標を合わせると、俺達に絡んできた男をそのまま仲間の下に転移させた。
視線を向けると、丁度、男が『影収納』から解放され仲間を巻き込みエール塗れになる姿が目に映る。
「怖い思いをさせてごめんね。さっきの人、実は保護者だったりする?」
「ううん、全然知らない人。でも、俺達をイジメにスラムにはよく来ていたかも……」
「そっか……」
それなら、今『影収納』の中にいるBランク冒険者達と同様に『影収納』の中に収めたまま放置しておけばよかった。そっちの方が害虫一匹がいなくなる分、トースハウン領の治安が良くなったかもしれない。
「じゃあ、次絡んできたら目に物を見せて上げようね」
チラッと『鑑定』スキルで絡んできた男のレベルを確認して見たけど、レベルは34とそこまで強くない様だ。これなら、明日の迷宮内研修で歴然としたステータス差を付ける事ができる。
収納指輪に『影精霊』を十体付与しているし、奴らに後れを取る要素は何一つなさそうだ。
そういえば、屋敷神は冒険者ギルドの責任で『影精霊を付与した魔道具』を回収させるって言っていたけど、どうしたんだろ?
何やらロキさんと談笑しながら、トゥルクさんとツカサさんのいる部屋に入っていっていたみたいだけど……まあいいか。
今は、トースハウン領の従業員達を鍛え上げる方が先決だ。
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