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悠斗の家出
第388話 マリエハムン迷宮③
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「や、やめろー!」
ボス部屋を覆うシャボン玉が割れれば、ボス部屋一杯に湖の水が流れ込んでしまう。
そんな事をされれば、待っているのは溺死だ。
俺はリバイアサンに向けて影を這わせると、リバイアサンの全身を包み込み、そのまま迷宮の外に『影転移』させた。
あまりの危機感に、身体中から汗が噴き出てくる。
咄嗟の事だったし、あんな大きなモンスター相手に『影転移』をかけた事がなかったから多少の不安もあったが、上手くいって本当によかった。
今思えば『影収納』に入れるという手段でも良かったのではないだろうかとも思ったが、リバイアサンは水棲の巨大な幻獣。
エラがあるかは分からないが、万が一、呼吸ができず『影収納』の中で死んでしまえば、俺のレベルが上がってしまうかもしれない。
そう思えば、『影転移』でリバイアサンを迷宮の外に転移させたのは正解だったといえる。
迷宮の外から出て行ってほしいという思いから、リバイアサンを転移させたが、迷宮の外にいる兵士さん達は大丈夫だろうか?
「まあ、大丈夫だよね?」
俺の頬を冷や汗が伝っていく。
だ、大丈夫な筈だ。
リバイアサンは水棲の巨大な幻獣。陸にあげれば、そこまで手こずりはしない筈だ。
兵士という職業柄闘う事に慣れていそうだし、きっと大丈夫。
リバイアサン……強敵だった。
まさかボスモンスターがボス部屋を破壊しにくるとは思いもしなかった。
この迷宮を手に入れ次第、第十階層のボスモンスターはリバイアサンから他の……それこそ、ボス部屋を破壊するだなんて暴挙に出ない様な、そんなモンスターに変えよう。
俺はそんな事を考えながら袖で額の冷や汗を拭うと、第十一階層へと続く階段を降りていく。
マリエハムン迷宮第十一階層へと続く階段を降りていくと、今度は洞窟と繋がっていた。
リバイアサンによってボス部屋を破壊されそうになった今となっては、地に足がついているこういったフィールドの方がありがたい。
洞窟の天井を見上げると、そこにはまるで、キラキラ光る星をばら撒いたかの様に美しく光る結晶の様なものが散りばめられていた。
中々の絶景だ。
この迷宮を創った人はもしかしたら癒しの空間が欲しくて、こういった迷宮を創ったのかもしれない。
なんだか気が合いそうだ。
そんな事を考えつつも『影探知』で階層内を探っていく。すると、この迷宮にしては珍しくモンスターの反応があった。
第一階層から第十階層までボスモンスター以外のモンスターを見なかったから、ほんの少しだけ驚いた。
しかし、よく考えて見ればここは迷宮。
モンスターが出てくる事は極々当たり前の事である。
警戒しつつ、洞窟を進んでいくと、そこには色とりどりに光る数体のスライムの姿があった。
スライムといえば、最弱のモンスターとして有名なモンスターだ。
この世界に来て初めて見たかもしれない。
丸いフォルムのスライム達は、呆然とする俺を見てポヨンポヨンと洞窟内を飛び跳ねる。
しかし、攻撃してくる素振りは全くない様だ。
例え攻撃されても『影纏』を纏っている以上、俺に物理攻撃は効かない。
それにしても……。
丸いフォルムのスライムが飛び跳ねている姿を見ていると、なんだかホッコリした気分になってくる。
やはり、この迷宮を創った方とは気が合いそうだ。
俺は全く攻撃してくる素振りのないスライム達から視線を外すと、第十二階層へと進んでいく。
第十二階層もどうやら洞窟の様だ。
第十一階層と違い。まるで宝石の原石の様な石や硝石が光を放ち、これまた幻想的な空間を創り出している。
第十一階層と同じく『影探知』で洞窟内を探知すると、またもやスライムが引っかかる。
どうやらこの洞窟内はスライムの巣窟となっているらしい。
ボスモンスター以外、実に平和な迷宮だ。
『マデイラ大迷宮』や『アンドラ迷宮』、『名もなき迷宮』や『ヴォーアル迷宮』とは趣が全然違う。
俺はホッコリとした気分のまま、迷宮内を進んでいく。
すると、あっという間に第二十階層に辿り着いてしまった。
この迷宮。第二階層に辿り着く迄と、ボスモンスター以外の攻略は意外とイージーモードなのかもしれない。
「問題はボスモンスターなんだけど……」
そう。問題は第二十階層のボスモンスターが何かという事だ。
第十階層のボスモンスター、リバイアサンは中々凶悪なモンスターだった。
第二十階層のボスモンスターも、いきなりボス部屋ごと攻撃してくる様な性格のボスモンスターでなければいいんだけど……。
俺は恐る恐る、ボス部屋の扉に手をかける。
一呼吸置きボス部屋の扉を開くと、ゆっくり奥へ進んで行く。
このボス部屋……階層並みに広い。
一体、どんなボスモンスターが現れるのか想像もつかない。
「つ、次はどんなボスモンスターが出るのかな……あまり強いモンスターじゃなければいいんだけど……」
俺がそう呟くと、ボス部屋の中心に描かれた魔法陣が赤く輝き出した。
今まで見た事がない位、大きい魔法陣に若干の不安を覚える。
赤い光が収まると、そこには全長五十メートルはありそうな、巨大な彫像が立っていた。
ボス部屋を覆うシャボン玉が割れれば、ボス部屋一杯に湖の水が流れ込んでしまう。
そんな事をされれば、待っているのは溺死だ。
俺はリバイアサンに向けて影を這わせると、リバイアサンの全身を包み込み、そのまま迷宮の外に『影転移』させた。
あまりの危機感に、身体中から汗が噴き出てくる。
咄嗟の事だったし、あんな大きなモンスター相手に『影転移』をかけた事がなかったから多少の不安もあったが、上手くいって本当によかった。
今思えば『影収納』に入れるという手段でも良かったのではないだろうかとも思ったが、リバイアサンは水棲の巨大な幻獣。
エラがあるかは分からないが、万が一、呼吸ができず『影収納』の中で死んでしまえば、俺のレベルが上がってしまうかもしれない。
そう思えば、『影転移』でリバイアサンを迷宮の外に転移させたのは正解だったといえる。
迷宮の外から出て行ってほしいという思いから、リバイアサンを転移させたが、迷宮の外にいる兵士さん達は大丈夫だろうか?
「まあ、大丈夫だよね?」
俺の頬を冷や汗が伝っていく。
だ、大丈夫な筈だ。
リバイアサンは水棲の巨大な幻獣。陸にあげれば、そこまで手こずりはしない筈だ。
兵士という職業柄闘う事に慣れていそうだし、きっと大丈夫。
リバイアサン……強敵だった。
まさかボスモンスターがボス部屋を破壊しにくるとは思いもしなかった。
この迷宮を手に入れ次第、第十階層のボスモンスターはリバイアサンから他の……それこそ、ボス部屋を破壊するだなんて暴挙に出ない様な、そんなモンスターに変えよう。
俺はそんな事を考えながら袖で額の冷や汗を拭うと、第十一階層へと続く階段を降りていく。
マリエハムン迷宮第十一階層へと続く階段を降りていくと、今度は洞窟と繋がっていた。
リバイアサンによってボス部屋を破壊されそうになった今となっては、地に足がついているこういったフィールドの方がありがたい。
洞窟の天井を見上げると、そこにはまるで、キラキラ光る星をばら撒いたかの様に美しく光る結晶の様なものが散りばめられていた。
中々の絶景だ。
この迷宮を創った人はもしかしたら癒しの空間が欲しくて、こういった迷宮を創ったのかもしれない。
なんだか気が合いそうだ。
そんな事を考えつつも『影探知』で階層内を探っていく。すると、この迷宮にしては珍しくモンスターの反応があった。
第一階層から第十階層までボスモンスター以外のモンスターを見なかったから、ほんの少しだけ驚いた。
しかし、よく考えて見ればここは迷宮。
モンスターが出てくる事は極々当たり前の事である。
警戒しつつ、洞窟を進んでいくと、そこには色とりどりに光る数体のスライムの姿があった。
スライムといえば、最弱のモンスターとして有名なモンスターだ。
この世界に来て初めて見たかもしれない。
丸いフォルムのスライム達は、呆然とする俺を見てポヨンポヨンと洞窟内を飛び跳ねる。
しかし、攻撃してくる素振りは全くない様だ。
例え攻撃されても『影纏』を纏っている以上、俺に物理攻撃は効かない。
それにしても……。
丸いフォルムのスライムが飛び跳ねている姿を見ていると、なんだかホッコリした気分になってくる。
やはり、この迷宮を創った方とは気が合いそうだ。
俺は全く攻撃してくる素振りのないスライム達から視線を外すと、第十二階層へと進んでいく。
第十二階層もどうやら洞窟の様だ。
第十一階層と違い。まるで宝石の原石の様な石や硝石が光を放ち、これまた幻想的な空間を創り出している。
第十一階層と同じく『影探知』で洞窟内を探知すると、またもやスライムが引っかかる。
どうやらこの洞窟内はスライムの巣窟となっているらしい。
ボスモンスター以外、実に平和な迷宮だ。
『マデイラ大迷宮』や『アンドラ迷宮』、『名もなき迷宮』や『ヴォーアル迷宮』とは趣が全然違う。
俺はホッコリとした気分のまま、迷宮内を進んでいく。
すると、あっという間に第二十階層に辿り着いてしまった。
この迷宮。第二階層に辿り着く迄と、ボスモンスター以外の攻略は意外とイージーモードなのかもしれない。
「問題はボスモンスターなんだけど……」
そう。問題は第二十階層のボスモンスターが何かという事だ。
第十階層のボスモンスター、リバイアサンは中々凶悪なモンスターだった。
第二十階層のボスモンスターも、いきなりボス部屋ごと攻撃してくる様な性格のボスモンスターでなければいいんだけど……。
俺は恐る恐る、ボス部屋の扉に手をかける。
一呼吸置きボス部屋の扉を開くと、ゆっくり奥へ進んで行く。
このボス部屋……階層並みに広い。
一体、どんなボスモンスターが現れるのか想像もつかない。
「つ、次はどんなボスモンスターが出るのかな……あまり強いモンスターじゃなければいいんだけど……」
俺がそう呟くと、ボス部屋の中心に描かれた魔法陣が赤く輝き出した。
今まで見た事がない位、大きい魔法陣に若干の不安を覚える。
赤い光が収まると、そこには全長五十メートルはありそうな、巨大な彫像が立っていた。
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