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悠斗の家出
第383話 悠斗の家出③
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俺が転移したのは、オーランド王国にある迷宮跡地。
フェロー王国内の迷宮ならともかく、この迷宮跡地は屋敷神や鎮守神の管轄外。
ここなら、足も付かないだろう。
それにストレス発散に持ってこいだ。
仕事がこんなにも忙しくなった原因……。
思い返して見れば、それはオーランド王国の女王フィンが、ユートピア商会にちょっかいをかけてきた事から始まった。
オーランド王国の女王フィンが、トゥルクさんに協力を仰ぎ、ちょっかいをかけて来なければ、四つの大商会を傘下に収める事もなかったし、評議員選挙に出馬する事も(多分)なかった。
フェロー王国の元国王ノルマンも、ユートピア商会の土地を接収する等といった馬鹿げた行動を起こさなかった筈だ。
この国の女王フィンの判断全てが、俺の仕事を増やしていく。
本当に……本当にいい加減にして欲しい。
これはあれだ。聖戦だ。
俺の心の平穏と自由を取り戻す為行う正義の戦争。
いわば、一人ぼっちの戦争の開幕である。
今も俺の仕事を増やし続ける元凶は絶たねばならない。
たった一人でできる事なんて限られている。
しかし、八つ当たりをしない事には、もう心の平穏を保つ事ができない。
オーランド王国にある迷宮は残り二つ。
二つの迷宮ある迷宮の内、一つを人質に取り、オーランド王国の女王と交渉をする。
金輪際、ユートピア商会に関わり合いにならぬ様にと……。
しかし、問題はある。
今回、家出してしまったからには『召喚』スキルでロキさんやカマエルさんを頼る事ができない。
居場所がバレる事に繋がりかねないからだ。
加えて、今の俺のレベルは98。
レベル100迄、あと2レベルしかない。
そして、3レベル上がって101レベルになってしまうと、人の枠から外れてしまう恐れがある。
つまり、モンスターを倒さず、迷宮を攻略しなければならないのだ。
これはハードルが高い。
しかし、これはやりきらねばならぬ事だ。
割り切ろう。
俺は影を操り『影纏』を全身に纏うと、周囲の影を取り除き、迷宮跡地内を明るく照らす。
「まずはここから出る事が先決か」
屋敷神が言うには、オーランド王国にある三つの迷宮は、比較的近い場所にあるらしい。
俺は迷宮跡地内に『影探知』をかけ、最短距離で脱出する事のできるルートを探していく。
すると『影探知』に人間の反応が引っかかる。
俺は、慌てて影魔法を解くと、暗闇の中『影探知』で割り出したルートに沿って歩いていく。
「あれは冒険者……いや、この国の兵士かな?」
その人間達は、困った表情を浮かべながら、迷宮跡地を徘徊していた。
俺は暗闇に紛れながら兵士達の近くに忍び寄り、『影潜』で兵士達の影の中に潜り込む。
そして、影の中から聞き耳を立てると、こんな話が聞こえてきた。
「おい。もう戻ろう。この状況を見てみろよ。調査の必要もない。この迷宮は何者かによって迷宮核を取り除かれてしまったんだ。あの戦闘痕が何よりの証拠だろ」
「いや、しかし、フィン様になんと報告をするつもりだ。この迷宮はオーランド王国の生命線の一つだったんだぞ。犯人までは分からずとも、より詳細な調査は必要だろ」
「しかし、迷宮が沈黙してから一ヶ月経過しているとはいえ、まだモンスターが潜んでいる筈。この迷宮のモンスターは虫型が多い。暗闇の中、襲われては命はないぞ」
「……っ! 仕方がない。迷宮内には調査は一旦打ち切る。最近、オーランド王国内に入国した冒険者を中心の調査に切り替えるぞ」
「ああ、それがいい。まるで何かが迫り上がってきたかの様な大穴に、巨大な建造物。そして、あの戦闘痕。あんな事ができる冒険者は限られている。十中八九Aランク冒険者以上の者の仕業だろう」
「そうだな……それではいくぞ」
「おう」
そう言うと、兵士達は迷宮の外へと向かい歩き始めた。俺としては願ったり叶ったりの状況だ。
俺は兵士達の影の中に潜り込むと、影の中で布団を敷いて潜り込みゆっくり目を閉じた。
夜寝る時以外の昼寝なんていつ振りだろうか。
「う、うーん」
しかし、不思議な事に全く落ち着かない。
何故だろう?
今まで休みなく働いていたせいか、プライベートな時間にも拘わらず脳内が仕事の事が気になり過ぎて昼寝が全然できない。
いつからこんな社畜精神が染み付いてしまったと言うのだろうか。
「これがワーカーホリック……仕事が気になって全然休めない……。従業員達には、こんな状態になる事がない様、休み明けに規程の見直しをしなければ……」
最早、元高校生だった俺がいうセリフではない様な気がする。
それに従業員達には週休二日制を布いているにも関わらず、肝心の俺にそれが適用されないというのは、どういう事だろうか。
全くもって遺憾である。
寝る事ができないのであれば仕方がない。
俺は布団から起き上がると、影の中から兵士達の様子を伺う事にした。
しかし、兵士達は無言の進行を続けるだけで、会話という会話が全くない状況だ。
これでは暇つぶしにもならない。
休み欲しさに逃げ出したものの、頭に浮かぶのは仕事の事ばかり。
鎮守神に悪い事をしまっただろうか……。
フェロー王国内の迷宮ならともかく、この迷宮跡地は屋敷神や鎮守神の管轄外。
ここなら、足も付かないだろう。
それにストレス発散に持ってこいだ。
仕事がこんなにも忙しくなった原因……。
思い返して見れば、それはオーランド王国の女王フィンが、ユートピア商会にちょっかいをかけてきた事から始まった。
オーランド王国の女王フィンが、トゥルクさんに協力を仰ぎ、ちょっかいをかけて来なければ、四つの大商会を傘下に収める事もなかったし、評議員選挙に出馬する事も(多分)なかった。
フェロー王国の元国王ノルマンも、ユートピア商会の土地を接収する等といった馬鹿げた行動を起こさなかった筈だ。
この国の女王フィンの判断全てが、俺の仕事を増やしていく。
本当に……本当にいい加減にして欲しい。
これはあれだ。聖戦だ。
俺の心の平穏と自由を取り戻す為行う正義の戦争。
いわば、一人ぼっちの戦争の開幕である。
今も俺の仕事を増やし続ける元凶は絶たねばならない。
たった一人でできる事なんて限られている。
しかし、八つ当たりをしない事には、もう心の平穏を保つ事ができない。
オーランド王国にある迷宮は残り二つ。
二つの迷宮ある迷宮の内、一つを人質に取り、オーランド王国の女王と交渉をする。
金輪際、ユートピア商会に関わり合いにならぬ様にと……。
しかし、問題はある。
今回、家出してしまったからには『召喚』スキルでロキさんやカマエルさんを頼る事ができない。
居場所がバレる事に繋がりかねないからだ。
加えて、今の俺のレベルは98。
レベル100迄、あと2レベルしかない。
そして、3レベル上がって101レベルになってしまうと、人の枠から外れてしまう恐れがある。
つまり、モンスターを倒さず、迷宮を攻略しなければならないのだ。
これはハードルが高い。
しかし、これはやりきらねばならぬ事だ。
割り切ろう。
俺は影を操り『影纏』を全身に纏うと、周囲の影を取り除き、迷宮跡地内を明るく照らす。
「まずはここから出る事が先決か」
屋敷神が言うには、オーランド王国にある三つの迷宮は、比較的近い場所にあるらしい。
俺は迷宮跡地内に『影探知』をかけ、最短距離で脱出する事のできるルートを探していく。
すると『影探知』に人間の反応が引っかかる。
俺は、慌てて影魔法を解くと、暗闇の中『影探知』で割り出したルートに沿って歩いていく。
「あれは冒険者……いや、この国の兵士かな?」
その人間達は、困った表情を浮かべながら、迷宮跡地を徘徊していた。
俺は暗闇に紛れながら兵士達の近くに忍び寄り、『影潜』で兵士達の影の中に潜り込む。
そして、影の中から聞き耳を立てると、こんな話が聞こえてきた。
「おい。もう戻ろう。この状況を見てみろよ。調査の必要もない。この迷宮は何者かによって迷宮核を取り除かれてしまったんだ。あの戦闘痕が何よりの証拠だろ」
「いや、しかし、フィン様になんと報告をするつもりだ。この迷宮はオーランド王国の生命線の一つだったんだぞ。犯人までは分からずとも、より詳細な調査は必要だろ」
「しかし、迷宮が沈黙してから一ヶ月経過しているとはいえ、まだモンスターが潜んでいる筈。この迷宮のモンスターは虫型が多い。暗闇の中、襲われては命はないぞ」
「……っ! 仕方がない。迷宮内には調査は一旦打ち切る。最近、オーランド王国内に入国した冒険者を中心の調査に切り替えるぞ」
「ああ、それがいい。まるで何かが迫り上がってきたかの様な大穴に、巨大な建造物。そして、あの戦闘痕。あんな事ができる冒険者は限られている。十中八九Aランク冒険者以上の者の仕業だろう」
「そうだな……それではいくぞ」
「おう」
そう言うと、兵士達は迷宮の外へと向かい歩き始めた。俺としては願ったり叶ったりの状況だ。
俺は兵士達の影の中に潜り込むと、影の中で布団を敷いて潜り込みゆっくり目を閉じた。
夜寝る時以外の昼寝なんていつ振りだろうか。
「う、うーん」
しかし、不思議な事に全く落ち着かない。
何故だろう?
今まで休みなく働いていたせいか、プライベートな時間にも拘わらず脳内が仕事の事が気になり過ぎて昼寝が全然できない。
いつからこんな社畜精神が染み付いてしまったと言うのだろうか。
「これがワーカーホリック……仕事が気になって全然休めない……。従業員達には、こんな状態になる事がない様、休み明けに規程の見直しをしなければ……」
最早、元高校生だった俺がいうセリフではない様な気がする。
それに従業員達には週休二日制を布いているにも関わらず、肝心の俺にそれが適用されないというのは、どういう事だろうか。
全くもって遺憾である。
寝る事ができないのであれば仕方がない。
俺は布団から起き上がると、影の中から兵士達の様子を伺う事にした。
しかし、兵士達は無言の進行を続けるだけで、会話という会話が全くない状況だ。
これでは暇つぶしにもならない。
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