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第九章 商人連合国アキンド編
第324話 オーランド王国、悩む女王
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悠斗がヴォーアル迷宮を支配し、ショッピングモールの運営を始めてから数日後。
オーランド王国の女王フィンは大きなため息を吐いていた。
「もう一度、言ってくれない?」
「は、はいっ! フェロー王国の新国王シェトランド様より難民受け入れの打診がありました!」
「私の聞き間違いではないようね……あまりに都合が良すぎて聞き間違いかと思ったわ。それにしても、あの数の難民を受け入れるなんて……あの国にそんな余裕があるのかしら?」
フェロー王国、特に今の王都に難民を受け入れる余裕があるとは思えない。
あの国の王は一体何を考えているのだろうか?
私の国にとって、あまりに都合が良すぎるこの打診、受けるべきか、受けぬべきか判断に迷う。
いや……判断に迷う程の事ではないか。
どちらにしろ、私の国にあれ程の難民を受け入れるキャパシティはない。
それに国力が低下している今、難民を受け入れる意味もない。金が出ていくだけだ。
「まあいいわ。難民を受け入れてくれるなら好都合。フェロー王国に、難民を受け入れて頂きましょう」
「はい。ではその様に返答致します。もう一点、ユートピア商会についてですが……」
「ユートピア商会……?」
ユートピア商会……教会に万能薬を卸し、現在進行形で我が国の国力を削いでいる忌々しい商会……王都ストレイモイに工作員を潜り込ませるも、翌日には工作員と連絡を取る事ができなくなり困っていた。何か情報が掴めたのだろうか?
「はい、ユートピア商会について、王都ストレイモイから我が国に拠点を移した商会から情報を得る事に成功致しました」
なんだ、王都ストレイモイに潜り込ませた工作員からの情報ではなく、商会からの情報か……。
信頼性に欠ける……とはいえ、念の為、聞いておく必要はありそうだ。
「情報……商会からの情報ねぇ? 続けなさい」
「はいっ! 商会にユートピア商会の現状について聞いて見た所、何でも王都の大通りの土地を買い占め、見た事のない大きな商会を建てたそうです!」
王都の大通りの土地を買い占め大きな商会を?
王都ストレイモイは、工作員の活躍と無能な王の政策により破綻寸前と聞いている。
そんな所の土地を買い占めて一体何をする気なのだろうか?
「……それで? 大きな商会を建てて、何をしようとしているの?」
「いえ、情報は以上です!」
「はあっ?」
「い、いえ、ですので情報は以上で……」
確かに、ユートピア商会について、何か動きがあれば、些細な事でも構わないから報告する様に言っていたが、流石に今の報告はない。
今の話で分かる事は、破綻寸前の王都の大通りの土地を買い占め、大きな商会を建てたという事だけ……。
というより、ユートピア商会の会頭が何を考えそんな行動をしたのか分からない。
案外何も考えていないだけ?
破綻寸前の王都の大通りの土地を買い占めるなんて、マトモな商人のする事ではない。
ユートピア商会の作る万能薬にばかり目がいってしまったけど、もしかして買い被りだった……?
もしかして、何もしなくてもあの商会は潰れる?
いえ……まだ油断はできない。
教会側に睨まれず、万能薬を作り教会に流すなんて普通の商会にできる事ではない。
それに、元フェロー王国を担当していた評議員リマを破滅に追い込んだ事も事実。
「そう……ありがとう。これ以上情報がない事はわかりました。もう下がってもいいわよ」
「は、はいっ! 失礼致します!」
「はあっ……」
足早に部屋から出て行く男の姿を眺めながらため息を吐く。
一体何故こんな事になってしまったのだろうか……。
これまで教会とは上手くやってきたつもりだ。
しかし、いつの間にか教皇がソテルとかいう訳の分からぬ女に変わり、元教皇は別人の様に変わり果ててしまった。
教会による万能薬のばら撒き。
これを止めない事には、ポーションを初めとした医薬品を産出する我が国の衰退は避けられない。
しかし、教会組織を敵に回す事はできない。
教会組織の中には、教義の為ならば何をしても許されると思いこんでいる者や、神の為に自分の命を顧みない事を美徳と思い込む者もいるという。
特に、新しく教皇となったソテルという女……アレはヤバい。
元教皇が信仰していた主神とは異なる神、ロプト神を熱狂的に盲信しているヤバい女。
賄賂には一切手を付けず、そのくせユートピア商会と深い係わりのある謎めいた女教皇だ。
あのソテルとかいう女教皇、ユートピア商会に弱みでも握られているのだろうか?
いや、しかし、一度会った感触からして、弱みに屈する様な教皇には見えなかった。
むしろ、その目には狂気が宿っておりあまり関わり合いになりたくない部類の人間だ。
とはいえ、何もしないまま希望に縋るのは愚作。
となれば、やはり行動に移すしかないだろう。
ユートピア商会の会頭は王都の大通りの土地を購入した。
ならば私は、フェロー王国にあるヴォーアル迷宮、その迷宮付近にある土地を購入しよう。
会った事はないが、あの強かな会頭のやる事だ。
きっと何か意味がある筈……。
私はそう決意を固めると、今抱いた決意を忘れぬ様に紙に書き記し仮眠をとる事にした。
ここの所、気が休まらず全然寝る事ができない。
私は処方された薬を口に含むと、ゆっくり横になり仮眠を始めた。
オーランド王国の女王フィンは大きなため息を吐いていた。
「もう一度、言ってくれない?」
「は、はいっ! フェロー王国の新国王シェトランド様より難民受け入れの打診がありました!」
「私の聞き間違いではないようね……あまりに都合が良すぎて聞き間違いかと思ったわ。それにしても、あの数の難民を受け入れるなんて……あの国にそんな余裕があるのかしら?」
フェロー王国、特に今の王都に難民を受け入れる余裕があるとは思えない。
あの国の王は一体何を考えているのだろうか?
私の国にとって、あまりに都合が良すぎるこの打診、受けるべきか、受けぬべきか判断に迷う。
いや……判断に迷う程の事ではないか。
どちらにしろ、私の国にあれ程の難民を受け入れるキャパシティはない。
それに国力が低下している今、難民を受け入れる意味もない。金が出ていくだけだ。
「まあいいわ。難民を受け入れてくれるなら好都合。フェロー王国に、難民を受け入れて頂きましょう」
「はい。ではその様に返答致します。もう一点、ユートピア商会についてですが……」
「ユートピア商会……?」
ユートピア商会……教会に万能薬を卸し、現在進行形で我が国の国力を削いでいる忌々しい商会……王都ストレイモイに工作員を潜り込ませるも、翌日には工作員と連絡を取る事ができなくなり困っていた。何か情報が掴めたのだろうか?
「はい、ユートピア商会について、王都ストレイモイから我が国に拠点を移した商会から情報を得る事に成功致しました」
なんだ、王都ストレイモイに潜り込ませた工作員からの情報ではなく、商会からの情報か……。
信頼性に欠ける……とはいえ、念の為、聞いておく必要はありそうだ。
「情報……商会からの情報ねぇ? 続けなさい」
「はいっ! 商会にユートピア商会の現状について聞いて見た所、何でも王都の大通りの土地を買い占め、見た事のない大きな商会を建てたそうです!」
王都の大通りの土地を買い占め大きな商会を?
王都ストレイモイは、工作員の活躍と無能な王の政策により破綻寸前と聞いている。
そんな所の土地を買い占めて一体何をする気なのだろうか?
「……それで? 大きな商会を建てて、何をしようとしているの?」
「いえ、情報は以上です!」
「はあっ?」
「い、いえ、ですので情報は以上で……」
確かに、ユートピア商会について、何か動きがあれば、些細な事でも構わないから報告する様に言っていたが、流石に今の報告はない。
今の話で分かる事は、破綻寸前の王都の大通りの土地を買い占め、大きな商会を建てたという事だけ……。
というより、ユートピア商会の会頭が何を考えそんな行動をしたのか分からない。
案外何も考えていないだけ?
破綻寸前の王都の大通りの土地を買い占めるなんて、マトモな商人のする事ではない。
ユートピア商会の作る万能薬にばかり目がいってしまったけど、もしかして買い被りだった……?
もしかして、何もしなくてもあの商会は潰れる?
いえ……まだ油断はできない。
教会側に睨まれず、万能薬を作り教会に流すなんて普通の商会にできる事ではない。
それに、元フェロー王国を担当していた評議員リマを破滅に追い込んだ事も事実。
「そう……ありがとう。これ以上情報がない事はわかりました。もう下がってもいいわよ」
「は、はいっ! 失礼致します!」
「はあっ……」
足早に部屋から出て行く男の姿を眺めながらため息を吐く。
一体何故こんな事になってしまったのだろうか……。
これまで教会とは上手くやってきたつもりだ。
しかし、いつの間にか教皇がソテルとかいう訳の分からぬ女に変わり、元教皇は別人の様に変わり果ててしまった。
教会による万能薬のばら撒き。
これを止めない事には、ポーションを初めとした医薬品を産出する我が国の衰退は避けられない。
しかし、教会組織を敵に回す事はできない。
教会組織の中には、教義の為ならば何をしても許されると思いこんでいる者や、神の為に自分の命を顧みない事を美徳と思い込む者もいるという。
特に、新しく教皇となったソテルという女……アレはヤバい。
元教皇が信仰していた主神とは異なる神、ロプト神を熱狂的に盲信しているヤバい女。
賄賂には一切手を付けず、そのくせユートピア商会と深い係わりのある謎めいた女教皇だ。
あのソテルとかいう女教皇、ユートピア商会に弱みでも握られているのだろうか?
いや、しかし、一度会った感触からして、弱みに屈する様な教皇には見えなかった。
むしろ、その目には狂気が宿っておりあまり関わり合いになりたくない部類の人間だ。
とはいえ、何もしないまま希望に縋るのは愚作。
となれば、やはり行動に移すしかないだろう。
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ならば私は、フェロー王国にあるヴォーアル迷宮、その迷宮付近にある土地を購入しよう。
会った事はないが、あの強かな会頭のやる事だ。
きっと何か意味がある筈……。
私はそう決意を固めると、今抱いた決意を忘れぬ様に紙に書き記し仮眠をとる事にした。
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