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第八章 フェロー王国動乱編

第298話 後日談①

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 領主会議が終わり、ノルマン元陛下の罷免、そして新しい国王シェトランド様の即位が、発表されてから数日後……。

「悠斗様。大変お待たせ致しました。こちらが、ヴォーアル迷宮の攻略許可。そして、こちらが土地の契約書になります。全ての手続きはこちらで行いましたので、ここに受領印をお願い致します」

 エストゥロイ領に構えた邸宅の一室に、フェロー王国の新しい国王、シェトランド陛下の姿があった。

「えーっと、陛下は何をしにこちらへ?」

 シェトランド陛下が国王に即位してから、まだ数日しか経っていない。
 一番忙しい立場にある人の筈だ。
 そんな人が何故ここに?

「はい。先日、約束致しました通りヴォーアル迷宮の攻略許可と前国王が接収した土地の返却に参りました」
「いえ、それはもうお聞きしましたが……」

 俺が聞いているのは、国のトップが何で配達員さんみたいな事をしているのかについてだ。
 態々、国のトップが書類を届けに来て、受領印を受け取って来るなんて聞いた事がない。

 さては……前国王が残していった課題が余りに多く逃げてきたな?

「じ、実はですね……確認とお願いがありまして」

 と思ったら違った。
 ちゃんと仕事の一環で来たらしい。

 それにしても、国王陛下からのお願いか……なんだか怖いな。心して掛かろう。

「お願いですか……?」

 俺がそう呟くと、シェトランド陛下は申し訳なさそうな顔をしてお願いの内容を話し始めた。

「催促する様で申し訳ないのですが、ユートピア商会の営業はいつ位から始める事ができるのでしょうか?」

 ああ、そう言えばそんな事を言っていた。
 王都で働いていた従業員達も働きたいと言っていたし、準備だけでも始めておかなければ……。

「すぐにでも営業を始める事ができますよ?」

 俺がそう言うと、シェトランド陛下はホッとしたを浮かべた。

「そうですか。それではできるだけ早く、ユートピア商会の営業再開をお願いします。実は商業ギルド経由で、商人達を誘致するにも、ユートピア商会の土地が返還され、営業を始めてからでなければ難しく困っていたのです」

 まあ誘致される商人側の気持ちも分かる気がする。
 土地を接収した側の国が、接収した相手と和解しましたと声高に叫んだとしても、用心深い商人達の関心を惹く事は難しいだろう。

「それにお恥ずかしい話、商人達が軒並み王都から拠点を移した影響により、失業者が大量に発生しておりまして……」

 前国王や大臣達も、まさかユートピア商会が国から出ていっただけで、商人達が軒並み拠点を移すとは考えてなかったのだろう。
 正直な所、俺もそうなるとは思っていなかった。

「悠斗様のご配慮により、今も食糧品と生活用品の配布を行っているお陰で大事には至っておりませんが、このままでは財政にも影響が……いえ、既に多大な影響が出てしまっているのです。そこで悠斗様にお願いがあります」

 うん?
 まさかとは思うけど、シェトランド陛下……。

 俺がそう思うと同時に、シェトランド陛下が頭を下げた。

「悠斗様には、これまで多大なるご迷惑とご配慮頂いている事は重々承知しておりますが、国にお金を貸して頂けないでしょうか!」

 大方、前国王のやらかしによる散財と、国民の生活補償にお金を注ぎ込み過ぎて既に財政が二進も三進も行かなくなったのだろう。

 しかし、何故、俺に借金の申し入れを?
 商業ギルドに借りればいいのに……。

 そんな事を考えていると、顔に出ていたのだろう。シェトランド陛下が口を開く。

「実は商業ギルド経由でお金を借りようとしたのですが、商人達の誘致と同様に、お金を借りる事ができなくてですね……」

 なる程、理由はよく分かった。

「他の領地から支援をして頂く事はできないのですか?」
「既に支援して頂いているのですが、まだまだ足りなくて……」
「そうですか……」

 一体、俺は何を聞かされているのだろうか。
 まるで破綻寸前の会社の話を聞かされているみたいだ。
 しかし、今、王都に倒れられては困る。

 俺はため息を吐いた。

「いくら必要なんですか?」
「は、はい。できれば、年利五パーセント位の利率で白金貨百万枚(約一千億円)程、貸して頂けるとありがたいのですが……」

 白金貨百万枚か……。
 国の運営が白金貨百万枚でどうにかなるのかは置いておくとして、丁度、俺の手元にはカジノで稼いだ泡銭がある。本当は違う事に使う予定だったけど仕方がない。

「わかりました。白金貨百万枚をお貸し致します。今、手元にないので明日にでも商業ギルド経由で振り込みたいと思い出すが、それでよろしいでしょうか?」
「はい。勿論です。ありがとうございます!」

 シェトランド陛下の表情が少しだけ和らいだ。
 資金繰りの見通しがついてホッとしたのかもしれない。
 しかし、俺とそう変わらない年齢だというのに大変そうだ。目の下には隈ができているし、少しだけ痩せた様にも見える。
 なんだか可哀想になってきた。

 仕方がない。俺にできる事といえば、精々、この程度のものだ。

 俺は万能薬と使い捨ての収納指輪を取り出すと、シェトランド陛下の目の前に置いた。

「悠斗様、これは?」
「こちらはユートピア商会謹製の万能薬です。これを飲んでお仕事を頑張って下さい」
「あ、ありがとうございます……」

 俺がそう言うとシェトランド陛下は何故が頬を引き攣らせた。
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