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第八章 フェロー王国動乱編
第289話 王都③
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引き上げ式の階段をゆっくり降りると、私はまず窓の外に視線を向けた。
すると無くなっていた筈の外門が完全復活している。
「よしっ!」
私はグッとガッツポーズを決める。
何が起こっているのか全く分からないが、外門さえちゃんと機能していれば問題ない。
後は王城内に愚民共が残っているかどうかについてだが……。
私は周囲を警戒しつつも、扉に耳をつけ、聞き耳を立てる。
『陛下! 国王陛下!』
すると、扉の向こうから内務大臣スカーリの声が聞こえてきた。
「これは……スカーリの声か?」
これは私を釣る為の罠? いや、考えすぎか……。
アイツは自分の地位を守るのに必死なだけの取るに足らない凡人だ。
知恵は持ち得ていても行動力の乏しい凡人如きが、国王である私を罠に嵌める等とそんな度胸がある筈がない。
意を決して部屋を出ると、私を呼ぶ声の方向に従って歩き始めた。
しかしスカーリの奴、どうやって窮地を脱したんだ?
暴徒と化した国民共が、一時的とはいえ王城を制圧していたんだぞ⁇
まあいい、取り敢えず奴との合流を果たさねば……。
スタスタと歩いていくと、私の事を呼ぶスカーリの姿を確認する。
「スカーリ! 私はここだ」
私がそう言うと、スカーリは喜びの表情を浮かべ私に向かって駆けてくる。
「陛下っ! ご無事で何よりです!」
「そんな話はどうでも良い。王城を占拠していた愚民共はどうした。何か知らないか?」
「は、はい。私も陛下に突然投げられ悶絶している所に暴徒と化した国民達が入り込んだきた時には、焦りに焦りましたが、命辛々、王の間にある隠し通路に逃げ込み難を逃れる事ができました」
何だコイツ。王専用の隠し通路に逃げ込んでいたのか……。
あれは王専用の隠し通路だぞ?
何を勝手に使ってるんだ⁇
まあいい。コイツが何故、逃げ延びる事ができたのかについてはよく分かった。
「それで?」
「はい。私は二日程そこに隠れ、逃げる……いえ、陛下を助ける機会を伺っていたのですが、昨日、突然王城を占拠した国民達の足下に魔法陣の様なモノが顕れ消えてしまったのです。念の為、一日ほど様子を見てから王城内の散策をしてみたのですが、誰一人としていなくなっておりました」
「ほう。誰一人としてな……」
つまり兵士や文官達は私等を置いて一目散に逃げたという訳か……。
全く使えない奴等だ。
「所でスカーリ。門が閉じている事は確認したか?」
「はい。率先して確認致しました所、先日突如消えてしまった外門が復活しておりました。外門が消えてしまった理由については最後までわかりませんでしたが……」
「まあ良い。武器庫や食糧庫はどうだ?」
「武器庫と食糧庫には何も残されておりませんでした。恐らく、国民達が持ち出したのでしょう」
「そうか……」
「しかし、金庫の方は無事でした」
金庫は無事か……せめてもの幸いだな。
とはいえ、今、私が外に出れば国民達によって捕えられてしまう危険性がある。
ここは備蓄分の食糧で乗り切るしかないか……。
「ご苦労だったなスカーリ。さあ行くぞ」
「へ、陛下? どこへ行かれるのですか?」
そんな事は決まっている。
「暴徒が侵入した事により、数日間、領主会議の対策を打つ事ができなかった。お前も策を考えろ」
「……は、はい」
スカーリは一瞬嫌な表情を浮かべるも、仕方がなく私に付いて来た。
◇◇◇
今日は領主会談の日。あと数時間で領主会談が始まる。
既に王弟殿下が新たなフェロー王国の国王となる事は既定路線となっている。
「いよいよだな。君達も準備は良いかい?」
「「はい」」
護衛役としてAランク冒険者二名も確保した。
本当はSランク冒険者の悠斗君を護衛として連れて行きたかったが仕方がない。
私がそう呟き立ち上がると、トントンと扉をノックする音が聞こえた。
ようやく教会の人間が到着したらしい。
『ロイ様。司教様をお連れしました』
扉の向こうからゴタの声が聞こえてくる。
「入ってくれ」
私がドアに向かってそう呟くと、悠斗君と同じ位の年齢だろうか?
使用人のゴタと共に聖モンテ教会の司教が入ってくる。
「初めまして、私はエストゥロイ領の領主、ロイ・エストゥロイと申します。お待ちしておりました司教様」
「丁寧なご挨拶ありがとうございます。私は聖モンテ教会の司教ルチアと申します。教皇ソテル様よりこちらをお預かりして参りました」
するとルチア様は、赤と青の魔石を取り出した。
「おお、これが〔瞬間移動〕の魔法を付与した魔石ですか!」
「はい。その通りです。これを使う事により、エストゥロイ領から王都へと転移する事ができます。この魔道具には既に座標が刻まれており、決まった座標にしか移動する事はできません」
「決まった座標とは?」
私がそう呟くと、ルチア様は赤の魔石と青の魔石を手に持った。
「はい。この赤の魔石を使用する事で王都にある聖モンテ教の教区教会に転移する事が、青の魔石を使用する事でエストゥロイ領にある教区教会に転移する事ができます。貴重なものですので領主会談後は速やかに返却下さい」
「わかりました」
「それでは、早速王都へ参りましょう。準備はできておりますか?」
私は胸元にある悠斗君から貰ったペンダントを軽く握る。
このペンダントにはSランク冒険者である悠斗君が直接、影精霊という精霊を付与してくれている。
Aランク冒険者も二名確保したし問題はない筈だ。
それに〔瞬間移動〕を付与した魔石の数は限られている。
「はい。準備は万端です。早速、王都へと参りましょう」
「わかりました。それでは皆様に一つずつこの魔道具をお渡し致します。領主様、こちらを手にお持ち下さい」
「ああ、ありがとう」
私はルチア様から魔道具を受け取ると、護衛の冒険者達にも受け取る様、視線を送った。
すると無くなっていた筈の外門が完全復活している。
「よしっ!」
私はグッとガッツポーズを決める。
何が起こっているのか全く分からないが、外門さえちゃんと機能していれば問題ない。
後は王城内に愚民共が残っているかどうかについてだが……。
私は周囲を警戒しつつも、扉に耳をつけ、聞き耳を立てる。
『陛下! 国王陛下!』
すると、扉の向こうから内務大臣スカーリの声が聞こえてきた。
「これは……スカーリの声か?」
これは私を釣る為の罠? いや、考えすぎか……。
アイツは自分の地位を守るのに必死なだけの取るに足らない凡人だ。
知恵は持ち得ていても行動力の乏しい凡人如きが、国王である私を罠に嵌める等とそんな度胸がある筈がない。
意を決して部屋を出ると、私を呼ぶ声の方向に従って歩き始めた。
しかしスカーリの奴、どうやって窮地を脱したんだ?
暴徒と化した国民共が、一時的とはいえ王城を制圧していたんだぞ⁇
まあいい、取り敢えず奴との合流を果たさねば……。
スタスタと歩いていくと、私の事を呼ぶスカーリの姿を確認する。
「スカーリ! 私はここだ」
私がそう言うと、スカーリは喜びの表情を浮かべ私に向かって駆けてくる。
「陛下っ! ご無事で何よりです!」
「そんな話はどうでも良い。王城を占拠していた愚民共はどうした。何か知らないか?」
「は、はい。私も陛下に突然投げられ悶絶している所に暴徒と化した国民達が入り込んだきた時には、焦りに焦りましたが、命辛々、王の間にある隠し通路に逃げ込み難を逃れる事ができました」
何だコイツ。王専用の隠し通路に逃げ込んでいたのか……。
あれは王専用の隠し通路だぞ?
何を勝手に使ってるんだ⁇
まあいい。コイツが何故、逃げ延びる事ができたのかについてはよく分かった。
「それで?」
「はい。私は二日程そこに隠れ、逃げる……いえ、陛下を助ける機会を伺っていたのですが、昨日、突然王城を占拠した国民達の足下に魔法陣の様なモノが顕れ消えてしまったのです。念の為、一日ほど様子を見てから王城内の散策をしてみたのですが、誰一人としていなくなっておりました」
「ほう。誰一人としてな……」
つまり兵士や文官達は私等を置いて一目散に逃げたという訳か……。
全く使えない奴等だ。
「所でスカーリ。門が閉じている事は確認したか?」
「はい。率先して確認致しました所、先日突如消えてしまった外門が復活しておりました。外門が消えてしまった理由については最後までわかりませんでしたが……」
「まあ良い。武器庫や食糧庫はどうだ?」
「武器庫と食糧庫には何も残されておりませんでした。恐らく、国民達が持ち出したのでしょう」
「そうか……」
「しかし、金庫の方は無事でした」
金庫は無事か……せめてもの幸いだな。
とはいえ、今、私が外に出れば国民達によって捕えられてしまう危険性がある。
ここは備蓄分の食糧で乗り切るしかないか……。
「ご苦労だったなスカーリ。さあ行くぞ」
「へ、陛下? どこへ行かれるのですか?」
そんな事は決まっている。
「暴徒が侵入した事により、数日間、領主会議の対策を打つ事ができなかった。お前も策を考えろ」
「……は、はい」
スカーリは一瞬嫌な表情を浮かべるも、仕方がなく私に付いて来た。
◇◇◇
今日は領主会談の日。あと数時間で領主会談が始まる。
既に王弟殿下が新たなフェロー王国の国王となる事は既定路線となっている。
「いよいよだな。君達も準備は良いかい?」
「「はい」」
護衛役としてAランク冒険者二名も確保した。
本当はSランク冒険者の悠斗君を護衛として連れて行きたかったが仕方がない。
私がそう呟き立ち上がると、トントンと扉をノックする音が聞こえた。
ようやく教会の人間が到着したらしい。
『ロイ様。司教様をお連れしました』
扉の向こうからゴタの声が聞こえてくる。
「入ってくれ」
私がドアに向かってそう呟くと、悠斗君と同じ位の年齢だろうか?
使用人のゴタと共に聖モンテ教会の司教が入ってくる。
「初めまして、私はエストゥロイ領の領主、ロイ・エストゥロイと申します。お待ちしておりました司教様」
「丁寧なご挨拶ありがとうございます。私は聖モンテ教会の司教ルチアと申します。教皇ソテル様よりこちらをお預かりして参りました」
するとルチア様は、赤と青の魔石を取り出した。
「おお、これが〔瞬間移動〕の魔法を付与した魔石ですか!」
「はい。その通りです。これを使う事により、エストゥロイ領から王都へと転移する事ができます。この魔道具には既に座標が刻まれており、決まった座標にしか移動する事はできません」
「決まった座標とは?」
私がそう呟くと、ルチア様は赤の魔石と青の魔石を手に持った。
「はい。この赤の魔石を使用する事で王都にある聖モンテ教の教区教会に転移する事が、青の魔石を使用する事でエストゥロイ領にある教区教会に転移する事ができます。貴重なものですので領主会談後は速やかに返却下さい」
「わかりました」
「それでは、早速王都へ参りましょう。準備はできておりますか?」
私は胸元にある悠斗君から貰ったペンダントを軽く握る。
このペンダントにはSランク冒険者である悠斗君が直接、影精霊という精霊を付与してくれている。
Aランク冒険者も二名確保したし問題はない筈だ。
それに〔瞬間移動〕を付与した魔石の数は限られている。
「はい。準備は万端です。早速、王都へと参りましょう」
「わかりました。それでは皆様に一つずつこの魔道具をお渡し致します。領主様、こちらを手にお持ち下さい」
「ああ、ありがとう」
私はルチア様から魔道具を受け取ると、護衛の冒険者達にも受け取る様、視線を送った。
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