226 / 486
第八章 フェロー王国動乱編
第279話 領主様との話し合い⑤
しおりを挟む
「ロ、ロイ様! 大変です! フェリーが……。陛下の命令により王都行きフェリーの運航が停止となりました!」
「な、なんだと! 陛下は……。いや、ノルマンは何を考えているのだ!」
突然の事で頭が付いていかない。
「えっ? 一体どうしたって言うんですか?」
俺がそう呟くと、ゴタさんが神妙そうな表情を浮かべる。
「お、恐らく一週間後に予定していた領主会議の開催を妨害する為、陛下がフェリーの運航を停止したのでしょう。しかし王都の食料はエストゥロイ領を含む他領からの輸入に頼っている筈……。運航停止の期間にもよりますが、そんな事をすれば王都は深刻な食糧難に……」
「くっ! 陛下は王都に住む者の事を……。民の事を考えているのかっ!」
ロイ様がテーブルに拳を打ち据える。
「ゴタ! 馬車の準備を! すぐに王都に向かうぞ!」
「し、しかし、せめて過半数以上の他領の領主様が集まらねば領主会議を開く事はできません! それにこうなった以上、領主様方の大半はエストゥロイ領に向かって来られるでしょう。領主様方と足並みを揃えない事には国王陛下の罷免も……」
「くそっ! どうしたら良いのだ!」
何やら大変な事になってた様だ。
王弟陛下の話によれば、領主会議によって現国王を罷免し、王弟殿下が王位につくとの事。
この領主会議が開かれなければ、接収された土地もヴォーアル迷宮の攻略許可も手にする事ができない。
折角、学園長の説得もしたし色々お膳立てしたというのに、それらが台無しになってしまうのは少し嫌な感じだ。
チラリと収納指輪に視線を向けると、先ほど作成したばかりの〔転移門〕と〔瞬間移動〕を付与した魔石の事を思い出す。
要はあれだ。フェリーを使わず王都に移動する事ができれば問題は解決する訳か……。
しかし、この〔転移門〕と〔瞬間移動〕を付与した魔石を表に出すのは少し拙い気がするし、一体どうすれば……。
ユートピア商会に国と同じ位の力や権威があれば問題ないんだろうけど……。
何かいい方法はないだろうか?
そんな事を考えているとロイ様が声をかけてくる。
「悠斗君。急用が入ってしまった。折角、冒険者ギルドに来て貰ったというのに申し訳がない」
「いえ、こればかりは仕方がありません。また後日、依頼のあった人形を持って伺わせて頂きます」
「すまないね。君が廃坑から回収した金庫については、調査の後、必ず報酬を渡す事を約束する」
「はい。俺はここで失礼致します」
俺はロイ様に一礼すると、ギルドマスター室を後にした。
「それにしても、どうしようかな?」
ギルドマスター室を後にした俺は〔影転移〕で邸宅内に戻ると、鎮守神のいる地下迷宮に足を運ぶ。鎮守神には、ドレーク人形に似た人形を作って貰わなければならない。
迷宮内を歩いていると、人形達に指示を出している鎮守神を見つけた。
「鎮守神。今大丈夫?」
「おお、悠斗様。勿論です。それで私に何か用ですかな?」
「うん。実は領主様の娘さんにドレーク人形みたいな人形の作成を依頼されちゃって……」
「ドレーク人形ですか?」
「うん。まるで元Sランク冒険者のドレークさんをデフォルメしたかの様な、目と口に特徴的なメイクの人形なんだけど……」
俺がそう言うと、鎮守神はポンッと手の平を叩く。
「おお、あの人形の事でしたか。人形に名称など必要ないだろうと考えておりましたが、悠斗様はお優しいですな。あんな人形にまで気をかけて下さるなんて……。しかし困りました。丁度、数時間前、その人形にオーランド王国での諜報活動を命じた所なのです。
それに、あの人形はユニークスキルを持つ珍しい素体を元に作成しておりますので、例え、領主様の依頼であったとしてもお渡しする事はできません。勿論、悠斗様がその人形を使って頂くのには申し分ないのですが、領主様に差し上げるのは……」
「そっか、それはそうだよね」
ドレーク人形はユニークスキル〔収納魔法〕と希少スキル〔悪魔召喚〕を持つ特殊な人形だ。
鎮守神としても失いたくない人形の一つだろう。
「しかしながら、領主様の元に諜報要員を送るというその考え、とても素晴らしく思います。領主様も娘の前で重要な話はしないでしょうが、私の作成する人形は優秀です。その建物にさえ侵入してしまえば、もはや情報は筒抜けといっても過言ではありません。要はあの人形と同じ見た目の人形を用意すればよろしいのですね?」
「う、うん。まあそうなんだけど。別にあれだよ? ユートピア商会で販売している人形に、ドレーク人形と同じ様なメイクを施すだけでも全然いいんだからね?」
俺そう言うと、鎮守神は首を振る。
「悠斗様の優しさはお分かりになります。私の作成する人形達に過酷な思いをさせたくないと、そう考えているのでしょう?」
いや、全然違いますけど……。
領主様に渡す為に、態々犯罪者を捕えて人形化しなくてもいいって言ってるんですけど……。
黙っていると、それを肯定と捉えたのか鎮守神はゆっくりと頷いた。
「な、なんだと! 陛下は……。いや、ノルマンは何を考えているのだ!」
突然の事で頭が付いていかない。
「えっ? 一体どうしたって言うんですか?」
俺がそう呟くと、ゴタさんが神妙そうな表情を浮かべる。
「お、恐らく一週間後に予定していた領主会議の開催を妨害する為、陛下がフェリーの運航を停止したのでしょう。しかし王都の食料はエストゥロイ領を含む他領からの輸入に頼っている筈……。運航停止の期間にもよりますが、そんな事をすれば王都は深刻な食糧難に……」
「くっ! 陛下は王都に住む者の事を……。民の事を考えているのかっ!」
ロイ様がテーブルに拳を打ち据える。
「ゴタ! 馬車の準備を! すぐに王都に向かうぞ!」
「し、しかし、せめて過半数以上の他領の領主様が集まらねば領主会議を開く事はできません! それにこうなった以上、領主様方の大半はエストゥロイ領に向かって来られるでしょう。領主様方と足並みを揃えない事には国王陛下の罷免も……」
「くそっ! どうしたら良いのだ!」
何やら大変な事になってた様だ。
王弟陛下の話によれば、領主会議によって現国王を罷免し、王弟殿下が王位につくとの事。
この領主会議が開かれなければ、接収された土地もヴォーアル迷宮の攻略許可も手にする事ができない。
折角、学園長の説得もしたし色々お膳立てしたというのに、それらが台無しになってしまうのは少し嫌な感じだ。
チラリと収納指輪に視線を向けると、先ほど作成したばかりの〔転移門〕と〔瞬間移動〕を付与した魔石の事を思い出す。
要はあれだ。フェリーを使わず王都に移動する事ができれば問題は解決する訳か……。
しかし、この〔転移門〕と〔瞬間移動〕を付与した魔石を表に出すのは少し拙い気がするし、一体どうすれば……。
ユートピア商会に国と同じ位の力や権威があれば問題ないんだろうけど……。
何かいい方法はないだろうか?
そんな事を考えているとロイ様が声をかけてくる。
「悠斗君。急用が入ってしまった。折角、冒険者ギルドに来て貰ったというのに申し訳がない」
「いえ、こればかりは仕方がありません。また後日、依頼のあった人形を持って伺わせて頂きます」
「すまないね。君が廃坑から回収した金庫については、調査の後、必ず報酬を渡す事を約束する」
「はい。俺はここで失礼致します」
俺はロイ様に一礼すると、ギルドマスター室を後にした。
「それにしても、どうしようかな?」
ギルドマスター室を後にした俺は〔影転移〕で邸宅内に戻ると、鎮守神のいる地下迷宮に足を運ぶ。鎮守神には、ドレーク人形に似た人形を作って貰わなければならない。
迷宮内を歩いていると、人形達に指示を出している鎮守神を見つけた。
「鎮守神。今大丈夫?」
「おお、悠斗様。勿論です。それで私に何か用ですかな?」
「うん。実は領主様の娘さんにドレーク人形みたいな人形の作成を依頼されちゃって……」
「ドレーク人形ですか?」
「うん。まるで元Sランク冒険者のドレークさんをデフォルメしたかの様な、目と口に特徴的なメイクの人形なんだけど……」
俺がそう言うと、鎮守神はポンッと手の平を叩く。
「おお、あの人形の事でしたか。人形に名称など必要ないだろうと考えておりましたが、悠斗様はお優しいですな。あんな人形にまで気をかけて下さるなんて……。しかし困りました。丁度、数時間前、その人形にオーランド王国での諜報活動を命じた所なのです。
それに、あの人形はユニークスキルを持つ珍しい素体を元に作成しておりますので、例え、領主様の依頼であったとしてもお渡しする事はできません。勿論、悠斗様がその人形を使って頂くのには申し分ないのですが、領主様に差し上げるのは……」
「そっか、それはそうだよね」
ドレーク人形はユニークスキル〔収納魔法〕と希少スキル〔悪魔召喚〕を持つ特殊な人形だ。
鎮守神としても失いたくない人形の一つだろう。
「しかしながら、領主様の元に諜報要員を送るというその考え、とても素晴らしく思います。領主様も娘の前で重要な話はしないでしょうが、私の作成する人形は優秀です。その建物にさえ侵入してしまえば、もはや情報は筒抜けといっても過言ではありません。要はあの人形と同じ見た目の人形を用意すればよろしいのですね?」
「う、うん。まあそうなんだけど。別にあれだよ? ユートピア商会で販売している人形に、ドレーク人形と同じ様なメイクを施すだけでも全然いいんだからね?」
俺そう言うと、鎮守神は首を振る。
「悠斗様の優しさはお分かりになります。私の作成する人形達に過酷な思いをさせたくないと、そう考えているのでしょう?」
いや、全然違いますけど……。
領主様に渡す為に、態々犯罪者を捕えて人形化しなくてもいいって言ってるんですけど……。
黙っていると、それを肯定と捉えたのか鎮守神はゆっくりと頷いた。
1
お気に入りに追加
8,256
あなたにおすすめの小説
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
パーティーから追放され婚約者を寝取られ家から勘当、の三拍子揃った元貴族は、いずれ竜をも倒す大英雄へ ~もはやマイナスからの成り上がり英雄譚~
一条おかゆ
ファンタジー
貴族の青年、イオは冒険者パーティーの中衛。
彼はレベルの低さゆえにパーティーを追放され、さらに婚約者を寝取られ、家からも追放されてしまう。
全てを失って悲しみに打ちひしがれるイオだったが、騎士学校時代の同級生、ベガに拾われる。
「──イオを勧誘しにきたんだ」
ベガと二人で新たなパーティーを組んだイオ。
ダンジョンへと向かい、そこで自身の本当の才能──『対人能力』に気が付いた。
そして心機一転。
「前よりも強いパーティーを作って、前よりも良い婚約者を貰って、前よりも格の高い家の者となる」
今までの全てを見返すことを目標に、彼は成り上がることを決意する。
これは、そんな英雄譚。
俺は善人にはなれない
気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
公国の後継者として有望視されていたが無能者と烙印を押され、追放されたが、とんでもない隠れスキルで成り上がっていく。公国に戻る?いやだね!
秋田ノ介
ファンタジー
主人公のロスティは公国家の次男として生まれ、品行方正、学問や剣術が優秀で、非の打ち所がなく、後継者となることを有望視されていた。
『スキル無し』……それによりロスティは無能者としての烙印を押され、後継者どころか公国から追放されることとなった。ロスティはなんとかなけなしの金でスキルを買うのだが、ゴミスキルと呼ばれるものだった。何の役にも立たないスキルだったが、ロスティのとんでもない隠れスキルでゴミスキルが成長し、レアスキル級に大化けしてしまう。
ロスティは次々とスキルを替えては成長させ、より凄いスキルを手にしていき、徐々に成り上がっていく。一方、ロスティを追放した公国は衰退を始めた。成り上がったロスティを呼び戻そうとするが……絶対にお断りだ!!!!
小説家になろうにも掲載しています。
外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~
そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」
「何てことなの……」
「全く期待はずれだ」
私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。
このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。
そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。
だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。
そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。
そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど?
私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。
私は最高の仲間と最強を目指すから。
外れスキル『レベル分配』が覚醒したら無限にレベルが上がるようになったんだが。〜俺を追放してからレベルが上がらなくなったって?知らん〜
純真
ファンタジー
「普通にレベル上げした方が早いじゃない。なんの意味があるのよ」
E級冒険者ヒスイのスキルは、パーティ間でレベルを移動させる『レベル分配』だ。
毎日必死に最弱モンスター【スライム】を倒し続け、自分のレベルをパーティメンバーに分け与えていた。
そんなある日、ヒスイはパーティメンバーに「役立たず」「足でまとい」と罵られ、パーティを追放されてしまう。
しかし、その晩にスキルが覚醒。新たに手に入れたそのスキルは、『元パーティメンバーのレベルが一生上がらなくなる』かわりに『ヒスイは息をするだけでレベルが上がり続ける』というものだった。
そのレベルを新しいパーティメンバーに分け与え、最強のパーティを作ることにしたヒスイ。
『剣聖』や『白夜』と呼ばれるS級冒険者と共に、ヒスイの名は世界中に轟いていく――。
「戯言を。貴様らがいくら成長したところで、私に! ましてや! 魔王様に届くはずがない! 生まれながらの劣等種! それが貴様ら人間だ!」
「――本当にそうか、確かめてやるよ。この俺出来たてホヤホヤの成長をもってな」
これは、『弱き者』が『強き者』になる――ついでに、可愛い女の子と旅をする物語。
※この作品は『小説家になろう』様、『カクヨム』様にも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。