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第八章 フェロー王国動乱編

第272話 ドレーク人形③

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 一方、廃坑内に落下中のドレーク人形は……。

 クルクル回りながらスカイダイビングを楽しんでいた。
 鎮守神によりドレーク人形は通常の人形より数倍頑丈に造られている。
 その強度は高度三千メートルから落下しても壊れない程度に頑丈だ。

 廃坑内のスカイダイビングを楽しんでいるドレーク人形が、ふと下を見ると地面が迫ってきているのが見える。ドレーク人形はクルクル上下回転すると、両足を地につけ着地した。

 廃坑内は、廃坑内に埋め込まれた蓄光石があるお蔭でそこまで暗くない。
 ドレーク人形はキョロキョロと首を回すと、廃坑内に崩れた家の残骸を見つける。

 廃坑内にある家の残骸の中に入っていくと、崩れた家の中に金庫らしきものを発見した。
 恐らくこれが、マモンの報告に合った金庫だろう。

 ドレーク人形は金庫を〔収納魔法〕に収めると、崩れた家を出て廃坑の出口に顔を向ける。
 廃坑内に道はない。廃坑から出る為には、この廃坑をよじ登っていくしかないようだ。
 しかし、そんな事できるだろうか?

 するとドレーク人形は名案を思い付く。
 そうだ。こんな時は〔悪魔召喚〕スキルで空を飛ぶ事のできる悪魔マモンを召喚すればいい。

 ドレーク人形は早速、〔悪魔召喚〕でマモンを召喚すると、マモンに身体を持って貰い陥没した穴から外に出るよう指示を出す。ドレーク人形の指示通り召喚された悪魔、マモンが飛び立つと、すぐに陥没した穴から抜ける事ができた。

 陥没した穴から出て見ると、マモンが男達を捕縛している所だった。
 ドレーク人形は感心した素振りで頷くと捕縛され動く事のできない男達の前に立つ。

 この男達を見ていると、不思議な気分が湧いてくる。
 何だか昔、旧友だった様な、戦友だった様な。何とも言えない気分が……。

 ドレーク人形は首をコテンと横に傾けると、『まあいいか』と思い直した。
 金庫を回収した事によりミッションはコンプリート。
 まさか金庫が二つもあるとは思わなかったが、マスターもお喜びになる事だろう。
 それに今日はこんなに多くの、敵対する人間を捕える事ができた。

 ユートピア商会の裏方で働く人形達の職場環境は超絶ブラックだ。
 一週間に一度だけ訪れる人形のエネルギー源たる魔石の補給をする僅かな時間しか休みはない。

 しかし、マスターにはとても感謝している。
 王都の迷宮で働く人形達には、人間だった頃の記憶を持っている人形も少なくない。
 そんな人形にとって、一週間に一度だけ訪れる僅かな魔石補給の時間だけしか休みが与えられないのはかなり厳しいらしい。

 その点、エストゥロイ領の人形達に人間だった頃の記憶を持っているものは少ない。
 いや、ほぼ皆無といっていいほどだ。
 それに人間だった時と違い人形の身体は疲れを知らない。
 人間の様に嗅覚、味覚、触覚、痛覚といった感覚機能もないのだ。
 その為、ニ十四時間動き続ける事ができる。

 それにマスターは厳しい様に見えて、有能な人形には優しい。
 こうして、エストゥロイ領にある迷宮の外に出る事ができるのも、マスターの信頼を得ている証だ。
 そして今日、多くの人間を捕える事ができた。

 迷宮内で働く人形は少ない。
 グランドマスターはまだまだユートピア商会を発展させていくつもりらしい。
 こうして敵対する人間を捕え人形にする事はユートピア商会の発展に繋がる筈だ。
 ついでにフェロー王国の治安も良くなる。

 ドレーク人形は夜になったら男達をマスターの下に運ぶようマモンに命じると、エストゥロイ領にいるマスターの下に戻る為、駆けだした。

 エストゥロイ領にあるグランドマスターの邸宅に辿り着くと、人形用の通路を辿りマスターの下へ駆け足で向かう。すると、人形達に指示を出しているマスターを見つけた。

「おや、戻ってきた様ですね。金庫は無事回収する事ができましたか?」

 マスターの問いかけにコクリと首を前に傾け答えた。
 金庫だけではなく人間も捕え、オークの肉を狩ってきた事も伝える。
 するとマスターは喜びの声をあげる。

「それは素晴らしい。悠斗様もお喜びになる事でしょう。それではまず回収した金庫を見せて下さい」

 マスターに言われた通り、廃坑から回収した金庫を二基取り出した。
 するとマスターは少し戸惑ったかの様な声を上げる。

「金庫が二基? 聞いていた話と違いますが……。まあいいでしょう。それではあなたに次の任務を与えます」

 コクリと頷くと、直立姿勢を保ったまま、マスターの言葉を聞く。

「次の任務は少しばかり大変かもしれません。この人形達を連れ、オーランド王国の諜報活動をして頂きます」

 するとマスターの下に、笑顔を浮かべた通称ウエハス人形と、数体の人形達が集まってくる。

「この人形達はオーランド王国の元工作員です。彼等を連れて、オーランド王国に向かいなさい。そして、オーランド王国の内情を調べ上げ、週に一度、必ず連絡するのです」

 マスターより与えられた命令にコクリと首を傾けると、人形達を収納魔法に収め、ドレーク人形はオーランド王国に向かう事にした。

 迷宮で働く人形に休みはない。
 今日も人形達は超絶ブラックな職場で身を粉にして働くのであった。
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