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第八章 フェロー王国動乱編

第270話 ドレーク人形①

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「なんだ、コイツ動くのか? 気味が悪いな……。だが捕まえて売り捌けばいい金になりそうだ」

 人相の悪い男が、縛られている子供を降ろすとドレーク人形を捕まえようと、ナイフを片手ににじり寄ってくる。
 危険を感じたドレーク人形は、鎮守神から受け取った護身用の武器を〔収納魔法〕から取り出すと、〔悪魔召喚〕スキルを発動させ、召喚した貪欲の悪魔マモンに武器を持たせていく。

 それを見た人相の悪い男は、驚愕の表情を浮かべた。

「そ、それは……。まさか、ドレーク団長のスキル……〔悪魔召喚〕。そんなっ……なんで」

 マモンに取り囲まれた人相の悪い男が、汗をダラダラと流し顔をヒクつかせている。
 しかし、ドレーク人形にこの人間を殺す気はない。

 ドレーク人形は、カタカタと口を歪ませた。
 仲間に引き入れるチャンス到来である。

 マモンは人相の悪い男を取り囲むと、男の持つ武器を壊し取り押さえる。

 鎮守神に命じられた命令は二つ。
 悠斗様と創造主たる鎮守神の命令に逆らわない事。そして敵対する又は悪い人間を捕え、人形の素体とする為に鎮守神に引き渡す事。

 ドレーク人形は目を光らせると、召喚した悪魔マモンに捕縛を命じる。

「や、やめろっ! 近寄るなっ! ドレーク様! ドレーク様ぁぁぁぁ!」

 ドレーク人形はその悲鳴に笑顔を浮かべると、縛られて動けない子供ににじり寄る。

「……ッ⁉︎」

 子供の様子がおかしい。
 何故か怯えた表情を浮かべている。
 心なしか声も出ない様だ。あまりの恐怖に声が出ない様にも見える。
 一体、何を怖がっているというのだろう?

 ドレーク人形は、縛られた子供の縄をナイフで切ると、護衛代わりに数体の人形を収納魔法から取り出し、廃坑へと掛けていく。

 こんな所で道草を食っている場合じゃなかった。

 子供には護衛代わりに人形を数体付けたし、放置しても問題ないだろう。後は人形達が勝手にエストゥロイ領近くまで送ってくれる筈だ。

 勿論、捕縛した男は別口である。
 しかし、エストゥロイ領の人間に召喚した悪魔を見られても困る。
 こいつはこのまま悪魔達に見張らせて、夜にでもマスターの元に運ぼう。

 悪魔に捕縛した男を任せると、ドレーク人形が廃坑に向かい森の中をひた走る。
 すると今度は、木の陰から二足歩行で歩く豚型モンスター、オーク六体と遭遇した。

「ブモォ?」

 オーク達はドレーク人形に視線を向けると、まるで玩具を見つけた子供の様に近付いてくる。

 ドレーク人形はヤレヤレと言わんばかりに首を振る。
 しかし折角、エネルギー源が自ら近付いてきてくれたんだ。マスターへのお土産にもなるし、丁度いいので狩っていこう。

 そうこうしている内に、オークが手を伸ばしてきた。

 ドレーク人形はオークが伸ばしてきた手を切断すると、オークの心臓付近に手を突っ込み、オークの魔石を引き抜いた。オークの魔石を身体に取り込むとカタカタ口を歪ませる。

「ブ、ブモォ⁉︎」

 オーク達は突然、仲間が倒れた事に驚きの表情を浮かべるだけで動こうとしない。
 ドレーク人形は、動こうとしないオーク達の胸と手を突っ込んでいくと魔石を強引に引き抜いていく。

 オークの魔石を取り込んだドレーク人形は、満足そうにカタカタ口を震わせると、魔石を抜いたオークの残骸を収納魔法に収めていく。

 マスターにいいお土産ができた。
 ドレーク人形は収納魔法から地図を取り出すと、廃坑の位置を確認する。
 すると、上空から〔悪魔召喚〕スキルで召喚した悪魔マモンが降りてきた。どうやら廃坑内調査を終えた様だ。
 ドレーク人形はマモンから廃坑内調査の報告を受けると、カタカタ口を震わせた。

 どうやら、これから向かう廃坑に金庫らしき物を発見したらしい。ドレーク人形はマモン先導の下、その金庫のある廃坑へと足を運んだ。

 マモン先導の下、早速、廃坑に向かうと、廃坑の入り口に数人の男が立っていた。
 男達の表情を見ると、なんだか殺気だっている様に見える。

 ドレーク人形はコテンと首を傾ける。

 何故、廃坑の入り口に人間が?

 そんな事を考えていると、男達が武器を片手に騒ぎ出す。心なしか、男達の視線が隣にいる悪魔、マモンに向いている気がする。

「あ、あいつだ。あいつがまた来たぞっ!」
「頭を、頭を呼んでこい! いや、金庫を隠せ!」

『お前何やったの?』と確認すると、マモンは『ご命令通り廃坑内探索をしただけですよ?』と答えてくる。

 話は分かった。
 要はアレだ。この廃坑はあの男達のアジトか何かなのだろう。そのアジトにマモンが強引に入り込んだ。だからあの男達は殺気立っていると……。

 まあいいか……。

 マスターに与えられた任務は、廃坑内にある金庫の回収。それ以上でも、それ以下でもない。
 与えられた任務を忠実にこなすだけだ。

 すると、廃坑の中から一人の男が出てきた。

「全く。折角、冒険者ギルドから逃げてきたというのに、化け物に目をつけられるとは運が悪い……」
「か、頭ぁ!」

 見張りの男がそう叫ぶと、廃坑から出てきた男が剣をマモンに向け大声を上げた。
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