185 / 486
第八章 フェロー王国動乱編
第238話 ヨルズルの依頼⑤
しおりを挟む
現在の時刻は午後5時。辺りを見渡すと少し薄暗くなってきた。
悠斗達一行はエストゥロイ領の冒険者ギルドのギルドマスター、ヨルズルの案内で目的の廃坑近くに建てられたヨルズルの別荘へと足を運ぶ。
「辺りが暗くなってきましたね。気分転換に軽く一杯ハーブティーをご馳走いたします。これを飲んでから、廃坑の調査を致しましょう。大丈夫ですよ。日が落ちてきましたが、廃校の中はとても明るくなっています。今日は様子を見るに留めて、明日から本格的な調査に移りましょう」
正直、午後3時から受ける依頼ではなかったと少し後悔していた所だ。ヨルズルさんの提案はありがたい。
俺達はヨルズルさんの別荘に入り、軽くハーブティーを口にするとホッと一息をつく。
「このハーブティーには、気持ちをリラックスさせる効果があるんですよ。味はいかがですか?」
「はい! とっても美味しいです」
ヨルズルさんに勧められるままハーブティーを口にすると、爽やかな香りが鼻腔をくすぐる。
時よりピリッとした味が舌に伝わってくるが、慣れてくるとこれはこれでいいものだ。
仮面を付けたままのAランク冒険者、レイさんとマークさんは不思議なものを見る様な感じで、仮面越しに視線を向けてくる。
レイさんとマークさんはこのハーブティーを飲まないのだろうか? 美味しいのに勿体ない。
俺が5杯目のお代わりをした所で、何故か慌てた様子のヨルズルさんが声をかけてくる。
「ゆ、悠斗君……。た、体調に問題はないかい? 実はこのハーブティー飲み過ぎると副作用があるんですよ。まさかそんなに気に入ってくれるとは思いもしなくてね。だいぶ気も紛れた様だし、早速、廃坑の様子見をしに行きましょうか?」
そうだった。俺は何もヨルズルさんの別荘にハーブティーを飲みに来たわけではない。
あくまで気持ちを落ち着かせる為に来たのだ。
本題を忘れてはいけない。
「そうですね。ヨルズルさん。ハーブティーありがとうございました。だいぶ気が紛れた気がします」
「そうですか……。それは良かった。それでは早速、廃坑の下見に行きましょう」
ヨルズルさんは何故か引き攣った笑みを浮かべると立ち上がりハーブティーを片付ける。
もしかして貴重なハーブだったんだろうか?
もしそうなら悪い事をしてしまったかも知れない。
ヨルズルさんが俺が最高のパフォーマンスを発揮できる様に提供してくれたハーブティーだ。飲み過ぎてしまった分、働く事でお返ししよう。
俺は〔影纏〕を全身に纏うと、廃坑へと先導してくれているヨルズルさん達に着いて行く。
ここから先何が起こるかわからない。
Sランク冒険者が廃坑調査から戻って来ない位だ。用心に越した事はないだろう。
すると、〔影纏〕が相当珍しかったのか、ヨルズルさんが声をかけてきた。
「ゆ、悠斗君。それはなんだい?」
「これですか? これは俺の持つユニークスキルによるものです。あまり詳しく説明する事が出来ないのが申し訳ないんですが……」
「そうですか……。確かに冒険者の奥の手を聞くのはマナー違反ですしね。気を取り直して廃坑へと向かいましょう」
俺の返答にヨルズルさんは一瞬ガッカリした様な表情を浮かべるも、廃坑に向かって歩き出す。
調査対象となる廃坑は、ヨルズルさんの別荘のほぼ真上にある様だ。入り口の様相は洞窟に近い大きさをしている。
廃坑の中はこれより広い空間が広がっているというし、これだけ広い入り口ならモンスターが入り込んでしまったというのも頷ける話だ。
というより、こんな空洞の真上に別荘を建てて大丈夫なんだろうか?
廃坑内で万が一の事があり、ヨルズルさんの別荘ごと崩落してしまった場合、責任が取れない。一応、ヨルズルさんに確認を取っておこう。
「ヨルズルさん、ちょっといいですか?」
「ん? 何かな悠斗君」
何故か少しヨルズルさんが警戒心を滲ませている。
「いえ、大した事ではないんですけど、ヨルズルさんの別荘、廃坑の真上にあるじゃないですか?」
「ふむ。確かにそうですね」
「もし万が一ですよ? もし万が一廃坑の調査中、廃坑が崩落してヨルズルさんの別荘がそれに巻き込まれてしまった場合どうなるのかなと思いまして……」
「ああ、悠斗君は廃坑が崩落した場合の責任の所在について心配しているんですね? 安心してください。廃坑の崩落なんてよくある事です。依頼書にも書かれていますが、悠斗君が崩落による責任は負う事はありません。それに……」
ん? なんだろう。ヨルズルさんが言い淀んでいる。
「それに……。なんですか?」
「いえ、それにあの辺りの地盤は崩落に備えて補強済ですから、悠斗君が気にする事はありませんよ」
よかった。廃坑調査で万が一、崩落してしまっても俺の責任にはならないらしい。
「それにしても、不気味な所ですね」
この廃坑が冥府の扉と呼ばれる気もわかる気がする。
それに……。
「中から音がしますね……」
「ええ、もしかしたら廃坑の調査依頼から戻って来ていないSランク冒険者が、中にいるモンスターと戦っているのかもしれませんね。早速、廃坑内に入ってみましょう」
悠斗達一行はエストゥロイ領の冒険者ギルドのギルドマスター、ヨルズルの案内で目的の廃坑近くに建てられたヨルズルの別荘へと足を運ぶ。
「辺りが暗くなってきましたね。気分転換に軽く一杯ハーブティーをご馳走いたします。これを飲んでから、廃坑の調査を致しましょう。大丈夫ですよ。日が落ちてきましたが、廃校の中はとても明るくなっています。今日は様子を見るに留めて、明日から本格的な調査に移りましょう」
正直、午後3時から受ける依頼ではなかったと少し後悔していた所だ。ヨルズルさんの提案はありがたい。
俺達はヨルズルさんの別荘に入り、軽くハーブティーを口にするとホッと一息をつく。
「このハーブティーには、気持ちをリラックスさせる効果があるんですよ。味はいかがですか?」
「はい! とっても美味しいです」
ヨルズルさんに勧められるままハーブティーを口にすると、爽やかな香りが鼻腔をくすぐる。
時よりピリッとした味が舌に伝わってくるが、慣れてくるとこれはこれでいいものだ。
仮面を付けたままのAランク冒険者、レイさんとマークさんは不思議なものを見る様な感じで、仮面越しに視線を向けてくる。
レイさんとマークさんはこのハーブティーを飲まないのだろうか? 美味しいのに勿体ない。
俺が5杯目のお代わりをした所で、何故か慌てた様子のヨルズルさんが声をかけてくる。
「ゆ、悠斗君……。た、体調に問題はないかい? 実はこのハーブティー飲み過ぎると副作用があるんですよ。まさかそんなに気に入ってくれるとは思いもしなくてね。だいぶ気も紛れた様だし、早速、廃坑の様子見をしに行きましょうか?」
そうだった。俺は何もヨルズルさんの別荘にハーブティーを飲みに来たわけではない。
あくまで気持ちを落ち着かせる為に来たのだ。
本題を忘れてはいけない。
「そうですね。ヨルズルさん。ハーブティーありがとうございました。だいぶ気が紛れた気がします」
「そうですか……。それは良かった。それでは早速、廃坑の下見に行きましょう」
ヨルズルさんは何故か引き攣った笑みを浮かべると立ち上がりハーブティーを片付ける。
もしかして貴重なハーブだったんだろうか?
もしそうなら悪い事をしてしまったかも知れない。
ヨルズルさんが俺が最高のパフォーマンスを発揮できる様に提供してくれたハーブティーだ。飲み過ぎてしまった分、働く事でお返ししよう。
俺は〔影纏〕を全身に纏うと、廃坑へと先導してくれているヨルズルさん達に着いて行く。
ここから先何が起こるかわからない。
Sランク冒険者が廃坑調査から戻って来ない位だ。用心に越した事はないだろう。
すると、〔影纏〕が相当珍しかったのか、ヨルズルさんが声をかけてきた。
「ゆ、悠斗君。それはなんだい?」
「これですか? これは俺の持つユニークスキルによるものです。あまり詳しく説明する事が出来ないのが申し訳ないんですが……」
「そうですか……。確かに冒険者の奥の手を聞くのはマナー違反ですしね。気を取り直して廃坑へと向かいましょう」
俺の返答にヨルズルさんは一瞬ガッカリした様な表情を浮かべるも、廃坑に向かって歩き出す。
調査対象となる廃坑は、ヨルズルさんの別荘のほぼ真上にある様だ。入り口の様相は洞窟に近い大きさをしている。
廃坑の中はこれより広い空間が広がっているというし、これだけ広い入り口ならモンスターが入り込んでしまったというのも頷ける話だ。
というより、こんな空洞の真上に別荘を建てて大丈夫なんだろうか?
廃坑内で万が一の事があり、ヨルズルさんの別荘ごと崩落してしまった場合、責任が取れない。一応、ヨルズルさんに確認を取っておこう。
「ヨルズルさん、ちょっといいですか?」
「ん? 何かな悠斗君」
何故か少しヨルズルさんが警戒心を滲ませている。
「いえ、大した事ではないんですけど、ヨルズルさんの別荘、廃坑の真上にあるじゃないですか?」
「ふむ。確かにそうですね」
「もし万が一ですよ? もし万が一廃坑の調査中、廃坑が崩落してヨルズルさんの別荘がそれに巻き込まれてしまった場合どうなるのかなと思いまして……」
「ああ、悠斗君は廃坑が崩落した場合の責任の所在について心配しているんですね? 安心してください。廃坑の崩落なんてよくある事です。依頼書にも書かれていますが、悠斗君が崩落による責任は負う事はありません。それに……」
ん? なんだろう。ヨルズルさんが言い淀んでいる。
「それに……。なんですか?」
「いえ、それにあの辺りの地盤は崩落に備えて補強済ですから、悠斗君が気にする事はありませんよ」
よかった。廃坑調査で万が一、崩落してしまっても俺の責任にはならないらしい。
「それにしても、不気味な所ですね」
この廃坑が冥府の扉と呼ばれる気もわかる気がする。
それに……。
「中から音がしますね……」
「ええ、もしかしたら廃坑の調査依頼から戻って来ていないSランク冒険者が、中にいるモンスターと戦っているのかもしれませんね。早速、廃坑内に入ってみましょう」
1
お気に入りに追加
8,256
あなたにおすすめの小説
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
パーティーから追放され婚約者を寝取られ家から勘当、の三拍子揃った元貴族は、いずれ竜をも倒す大英雄へ ~もはやマイナスからの成り上がり英雄譚~
一条おかゆ
ファンタジー
貴族の青年、イオは冒険者パーティーの中衛。
彼はレベルの低さゆえにパーティーを追放され、さらに婚約者を寝取られ、家からも追放されてしまう。
全てを失って悲しみに打ちひしがれるイオだったが、騎士学校時代の同級生、ベガに拾われる。
「──イオを勧誘しにきたんだ」
ベガと二人で新たなパーティーを組んだイオ。
ダンジョンへと向かい、そこで自身の本当の才能──『対人能力』に気が付いた。
そして心機一転。
「前よりも強いパーティーを作って、前よりも良い婚約者を貰って、前よりも格の高い家の者となる」
今までの全てを見返すことを目標に、彼は成り上がることを決意する。
これは、そんな英雄譚。
俺は善人にはなれない
気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。
母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)
いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。
全く親父の奴!勝手に消えやがって!
親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。
俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。
母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。
なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな?
なら、出ていくよ!
俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ!
これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。
カクヨム様にて先行掲載中です。
不定期更新です。
公国の後継者として有望視されていたが無能者と烙印を押され、追放されたが、とんでもない隠れスキルで成り上がっていく。公国に戻る?いやだね!
秋田ノ介
ファンタジー
主人公のロスティは公国家の次男として生まれ、品行方正、学問や剣術が優秀で、非の打ち所がなく、後継者となることを有望視されていた。
『スキル無し』……それによりロスティは無能者としての烙印を押され、後継者どころか公国から追放されることとなった。ロスティはなんとかなけなしの金でスキルを買うのだが、ゴミスキルと呼ばれるものだった。何の役にも立たないスキルだったが、ロスティのとんでもない隠れスキルでゴミスキルが成長し、レアスキル級に大化けしてしまう。
ロスティは次々とスキルを替えては成長させ、より凄いスキルを手にしていき、徐々に成り上がっていく。一方、ロスティを追放した公国は衰退を始めた。成り上がったロスティを呼び戻そうとするが……絶対にお断りだ!!!!
小説家になろうにも掲載しています。
外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~
そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」
「何てことなの……」
「全く期待はずれだ」
私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。
このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。
そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。
だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。
そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。
そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど?
私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。
私は最高の仲間と最強を目指すから。
外れスキル『レベル分配』が覚醒したら無限にレベルが上がるようになったんだが。〜俺を追放してからレベルが上がらなくなったって?知らん〜
純真
ファンタジー
「普通にレベル上げした方が早いじゃない。なんの意味があるのよ」
E級冒険者ヒスイのスキルは、パーティ間でレベルを移動させる『レベル分配』だ。
毎日必死に最弱モンスター【スライム】を倒し続け、自分のレベルをパーティメンバーに分け与えていた。
そんなある日、ヒスイはパーティメンバーに「役立たず」「足でまとい」と罵られ、パーティを追放されてしまう。
しかし、その晩にスキルが覚醒。新たに手に入れたそのスキルは、『元パーティメンバーのレベルが一生上がらなくなる』かわりに『ヒスイは息をするだけでレベルが上がり続ける』というものだった。
そのレベルを新しいパーティメンバーに分け与え、最強のパーティを作ることにしたヒスイ。
『剣聖』や『白夜』と呼ばれるS級冒険者と共に、ヒスイの名は世界中に轟いていく――。
「戯言を。貴様らがいくら成長したところで、私に! ましてや! 魔王様に届くはずがない! 生まれながらの劣等種! それが貴様ら人間だ!」
「――本当にそうか、確かめてやるよ。この俺出来たてホヤホヤの成長をもってな」
これは、『弱き者』が『強き者』になる――ついでに、可愛い女の子と旅をする物語。
※この作品は『小説家になろう』様、『カクヨム』様にも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。