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第八章 フェロー王国動乱編
第199話 愚王の選択
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宰相が商業ギルドに部下を遣いとして出してから数時間後。
前ギルドマスター、ミクロに変わりフェロー王国王都支部商業ギルドのギルドマスターに就任したウエハスが王城の会議室へとやってきた。
「失礼致します。到着が遅くなり申し訳ございません。私、新しくフェロー王国王都支部商業ギルドのギルドマスターとして赴任致しましたウエハスと申します。以後お見知りおきを」
「君が商業ギルドの責任者か、君に聞きたい事がある。まずはこれを見てくれ。」
ノルマン新国王は収支報告書をウエハスの前に置く。
「ふむ。これは収支報告書ですね。よろしいのですか? 商業ギルドのギルドマスターであるとはいえ、国家の財政状態を見せるような真似をしても……」
ウエハスの言葉に、全くもってその通りですとでも言わんばかりに宰相達が頷いていく。
「そんな事はどうでもいい。君に確認したいのは、なぜ税収が昨年と比較して白金貨100万枚(約1,000億円)も下がってしまったのかという点だ。私が宰相に確認した所、この国で商いをしていた商人連合国アキンドの評議員リマ殿の失脚がその理由というではないか」
「はい。概ねその通りです。評議員のリマ様が失脚された為、商業ギルドが国に納める事の出来る税金は契約により白金貨200万枚(約2,000億円)となりました」
ウエハスの言葉に、ノルマン新国王は激怒しながら机を叩く。
「つまり、商業ギルドの落ち度で税収が落ちた。そういう事だな!」
「お待ち下さい。商業ギルドの落ち度で税収が落ちた訳ではございません。評議員だったリマ様が貴国によって捕えられてしまった為、結果として税収が落ちたのです。もし貴国がリマ様を捕らえ、犯罪奴隷に落とさなければこんな事にはなりませんでした。つまり、責任の所在は元評議員のリマ様と貴国にあります。商業ギルドはあくまでも国の代わりに加盟するギルド員から税金を徴収し、納める為の組織です。もちろん、加盟するギルド員に不利益がないように調整するのも、私達の仕事ではありますが……」
「つまり、元評議員のリマ殿を捕らえ犯罪奴隷に落とした為、税収が白金貨100万枚も落ち込みました。商業ギルドは悪くありません。すべては元評議員のリマ殿を捕らえ、犯罪奴隷に落とした王国と張本人のリマ殿が悪いんですと、そういう事か?」
ノルマン新国王は額に青筋を浮かべながら呟く。
「そこまでは言いませんが、概ねその通りです。商業ギルドには一切の落ち度はございません」
「ほう。そうか、そうか……。商業ギルドに落ち度はなく。落ち度は我々にあると……。そういえば君は先程こう言ったな、商業ギルドはあくまでも国の代わりに加盟するギルド員から税金を徴収し、納める為の組織であると……。ならその役目を商業ギルドに代わり、我々が引き受けても構わないな?」
「なっ!」
ノルマン新国王の言葉に、宰相達は絶句する。
「ほう。つまりフェロー王国の王都に商業ギルドは必要ない。そういう事ですか?」
「いや、そこまでは言っていない。ただ税金の回収は私たちに任せてもらう。そう言っているだけだ」
ウエハスはため息をつくと、呆れた声で呟く。
「陛下。商人達を管理する商業ギルドとして、それを認める訳には参りません」
「なぜだ!」
「当然でしょう。商人達の不利益になると分かり切っている事に許可を出す責任者が何処にいるのですか。商業ギルドでは、商人のランクによって納める税率を設定しております。まさかとは思いますが、税率を無視して、税金を納めて貰おうなんて考えている訳ではありませんよね?」
ノルマン新国王は、『ううっ』と声を漏らしながらも、「そんな訳がないだろう」と呟く。
「でしたら我々が、税金を徴収しても問題ありませんよね。これまで通り、商業ギルドが責任を以って陛下に収める税金を回収してまいります」
「くっ! どうしても考えを譲らぬ気か……?」
「当然でございます……が、陛下が私のお願いを聞いて下さるのであれば、私共の業務の一部を今年に限りお譲りしても構いません。」
ウエハスの言葉に目を見開いたノルマン新国王は席に座る様ウエハスに促す。
「ほう。それでは聞かせて貰おうではないか、その条件とやらを……」
ウエハスはニコリと笑顔を浮かべると、ゆっくりした口調で話し出す。
「簡単な事です。気に入らない商会があるので、その商会を潰して貰えませんか?」
「はっ! そんな事でいいのか?」
「はい。勿論です。」
数百ある内のたった一つの商会を潰すこと位、国の力を以ってすれば容易い事だ。
しかし、ここで疑問が浮かぶ。
「しかし、なぜそれ私に頼む? 商業ギルドの力を使えば潰せぬ商会などあり得ぬだろう」
「ふふっ、これは失礼。それがあるのですよ。それに商業ギルドのギルドマスターとして理由もなく、加盟する商会を潰す事はできません。マスカット様が常に目を光らせていますので……」
「そうか……して、その商会の名はなんと言うのだ?」
ウエハスは黒い笑みを浮かべるとその商会の名前を呟く。
「それは、王都に拠点を持つユートピア商会ですよ」
前ギルドマスター、ミクロに変わりフェロー王国王都支部商業ギルドのギルドマスターに就任したウエハスが王城の会議室へとやってきた。
「失礼致します。到着が遅くなり申し訳ございません。私、新しくフェロー王国王都支部商業ギルドのギルドマスターとして赴任致しましたウエハスと申します。以後お見知りおきを」
「君が商業ギルドの責任者か、君に聞きたい事がある。まずはこれを見てくれ。」
ノルマン新国王は収支報告書をウエハスの前に置く。
「ふむ。これは収支報告書ですね。よろしいのですか? 商業ギルドのギルドマスターであるとはいえ、国家の財政状態を見せるような真似をしても……」
ウエハスの言葉に、全くもってその通りですとでも言わんばかりに宰相達が頷いていく。
「そんな事はどうでもいい。君に確認したいのは、なぜ税収が昨年と比較して白金貨100万枚(約1,000億円)も下がってしまったのかという点だ。私が宰相に確認した所、この国で商いをしていた商人連合国アキンドの評議員リマ殿の失脚がその理由というではないか」
「はい。概ねその通りです。評議員のリマ様が失脚された為、商業ギルドが国に納める事の出来る税金は契約により白金貨200万枚(約2,000億円)となりました」
ウエハスの言葉に、ノルマン新国王は激怒しながら机を叩く。
「つまり、商業ギルドの落ち度で税収が落ちた。そういう事だな!」
「お待ち下さい。商業ギルドの落ち度で税収が落ちた訳ではございません。評議員だったリマ様が貴国によって捕えられてしまった為、結果として税収が落ちたのです。もし貴国がリマ様を捕らえ、犯罪奴隷に落とさなければこんな事にはなりませんでした。つまり、責任の所在は元評議員のリマ様と貴国にあります。商業ギルドはあくまでも国の代わりに加盟するギルド員から税金を徴収し、納める為の組織です。もちろん、加盟するギルド員に不利益がないように調整するのも、私達の仕事ではありますが……」
「つまり、元評議員のリマ殿を捕らえ犯罪奴隷に落とした為、税収が白金貨100万枚も落ち込みました。商業ギルドは悪くありません。すべては元評議員のリマ殿を捕らえ、犯罪奴隷に落とした王国と張本人のリマ殿が悪いんですと、そういう事か?」
ノルマン新国王は額に青筋を浮かべながら呟く。
「そこまでは言いませんが、概ねその通りです。商業ギルドには一切の落ち度はございません」
「ほう。そうか、そうか……。商業ギルドに落ち度はなく。落ち度は我々にあると……。そういえば君は先程こう言ったな、商業ギルドはあくまでも国の代わりに加盟するギルド員から税金を徴収し、納める為の組織であると……。ならその役目を商業ギルドに代わり、我々が引き受けても構わないな?」
「なっ!」
ノルマン新国王の言葉に、宰相達は絶句する。
「ほう。つまりフェロー王国の王都に商業ギルドは必要ない。そういう事ですか?」
「いや、そこまでは言っていない。ただ税金の回収は私たちに任せてもらう。そう言っているだけだ」
ウエハスはため息をつくと、呆れた声で呟く。
「陛下。商人達を管理する商業ギルドとして、それを認める訳には参りません」
「なぜだ!」
「当然でしょう。商人達の不利益になると分かり切っている事に許可を出す責任者が何処にいるのですか。商業ギルドでは、商人のランクによって納める税率を設定しております。まさかとは思いますが、税率を無視して、税金を納めて貰おうなんて考えている訳ではありませんよね?」
ノルマン新国王は、『ううっ』と声を漏らしながらも、「そんな訳がないだろう」と呟く。
「でしたら我々が、税金を徴収しても問題ありませんよね。これまで通り、商業ギルドが責任を以って陛下に収める税金を回収してまいります」
「くっ! どうしても考えを譲らぬ気か……?」
「当然でございます……が、陛下が私のお願いを聞いて下さるのであれば、私共の業務の一部を今年に限りお譲りしても構いません。」
ウエハスの言葉に目を見開いたノルマン新国王は席に座る様ウエハスに促す。
「ほう。それでは聞かせて貰おうではないか、その条件とやらを……」
ウエハスはニコリと笑顔を浮かべると、ゆっくりした口調で話し出す。
「簡単な事です。気に入らない商会があるので、その商会を潰して貰えませんか?」
「はっ! そんな事でいいのか?」
「はい。勿論です。」
数百ある内のたった一つの商会を潰すこと位、国の力を以ってすれば容易い事だ。
しかし、ここで疑問が浮かぶ。
「しかし、なぜそれ私に頼む? 商業ギルドの力を使えば潰せぬ商会などあり得ぬだろう」
「ふふっ、これは失礼。それがあるのですよ。それに商業ギルドのギルドマスターとして理由もなく、加盟する商会を潰す事はできません。マスカット様が常に目を光らせていますので……」
「そうか……して、その商会の名はなんと言うのだ?」
ウエハスは黒い笑みを浮かべるとその商会の名前を呟く。
「それは、王都に拠点を持つユートピア商会ですよ」
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