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第七章 教会編

第178話 狂信のソテル(side悠斗)

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「はあ、面倒くさい……。」

 悠斗は今、一人でスヴロイ領を訪れていた。
 というのも、俺がスヴロイ領近くにある森で発見した新しい迷宮、発見後すぐに冒険者ギルドに報告していれば、俺がモンスターを掃討した後のため、冒険者ギルド側もスムーズに迷宮の確認、保全を図る事が出来たそうだが、俺が迷宮発見後、子供たちの魔法学園入学、ユートピア商会の発足を優先してしまい数ヶ月間経ってしまった事で森にモンスターが増え、掃討しない事には迷宮確認に時間が係る旨を冒険者ギルドのギルドマスターより伝えられたからだ。

 個人的には、既に新しい迷宮のある場所は示したし、ユートピア商会がある以上、お金にも生活にも困らないし、Sランクになる事に対して急いでいる訳でもない。

 ただ一人、マスカットさんだけが困るだけだ。

 結局、マスカットさんの意向と、ギルドマスターからの熱弁により、十分過ぎる程の報酬を貰う事そして、お値段はそのままに私の商会に対する商品の納品数を減らす事で手を打ち、新しく発見された迷宮のあるスヴロイ領近くの森の掃討作戦が決行される事になった。

 当然その掃討作戦は一人で行う事になる。

 大人の事情はよく分からないが、新しい迷宮が発見された報告をする前に、スヴロイ領の森で他の冒険者にモンスターの掃討を依頼し、その過程で新しい迷宮をその冒険者が見つけた場合、とんでもなく面倒くさい事になるそうだ。そのため、まずは報告通りの場所に迷宮がある事を迷宮発見者が立証し、冒険者ギルドがそれを認める事が肝心となるらしい。

 そのため、今俺は一人でスヴロイ領近くの森でモンスター掃討に当たっている。
 今回、ロキとカマエルにも手伝って貰えるようお願いをしたがロキには、忙しいと断られ、カマエルは、大天使の剣の一件で下した罰(大天使の剣をマデイラ王国に置きっぱなしにした事に対する罰として迷宮に1ヶ月間入る事を禁止する。)を課した為か不貞腐れ協力を得る事が出来なかった。

 猿田毘古神サルくんや紙祖神カミーユは戦闘面ではあまり役に立たないと辞退され、ウッチーとトッチーには悠斗邸守護の為、ここを離れる訳にはいかないと言われてしまえば、もう一人でやり遂げるしかない。

 召喚スキルで、使えそうな神や悪魔を召喚してもいいんだけど、これまでの経験から迂闊に召喚スキルを利用すると、迷宮に階層を用意しなければならない等、面倒くさい事が多かったので、仕方がなく俺一人でスヴロイ領の森にいるモンスターの掃討をする事にした。

 とはいえ、俺にもやる事がある。
 最近、聖属性魔法が付与された魔道具に加え、今までポーションとして売り出してきた万能薬を正式に万能薬として売り出す事が決まり、猫の手も借りたい位忙しい。

 ということで、俺は影分身アバターで俺自身を作り上げると影潜ハイドで、影分身アバターの影に潜み、影の中で、聖属性魔法が付与された魔道具や、万能薬の作成等を行うことにした。

 影分身アバターにすべてを任せ、魔道具や万能薬の作成をする事、数時間……どの位モンスターの掃討が進んだのか気になり影分身アバターの様子を影潜ハイドから覗いてみると、そこには足から血を流す同い年位の修道士の様な恰好をしている女性と、怪我をしている女性に対して狂気的な顔を浮かべながら手を伸ばす大人の修道士の様な女性の姿があった。

 影分身アバターが大人の修道士っぽい女性に声をかけると、何故かその女性は「あらあら」と呟きながら俺の視線と同じ高さに自分の視線を持ってくる。

 狂気的な笑みを浮かべながらこちらに近付いてくる女性に、血に伏している修道士っぽい女性を治してあげる気は全くなさそうだ。

 そしてその女性はまるで、子供をあやす時の様な柔らかな声音でこう呟いた。

「あらあら、可愛い子が森に入ってきましたね。あの子の加勢でしょうか? いえ、もしかしたら迷子なのかもしれませんね。ボク、どこから来たの? お父さんやお母さんから逸れてしまったのでしょうか? こんな森深くに探検しに来ちゃダメでしょう?」

 まさかの子ども扱いである。あの子の加勢とか訳の分からない事を言っていた気がするが俺は声を大にして言いたい。いや、そんな場合じゃねーだろと……。

 影潜ハイドに潜っている俺がそう思っていると影分身アバターが、足に怪我を負い血で地面を濡らしている女の子に指を向けて声を張る。

「いや、それどころじゃないでしょ。アレ、ヤバいですってアレ! 血流してるじゃないですか! 早く怪我を治してあげないと危険ですよ!」

 全くもってその通りだと思う。
 流石は俺の影分身アバターだと褒めてやりたい。

 早く治してやって! と万能薬を作成しながら、影潜ハイドから様子を伺っていると、影分身アバター影収納ストレージから万能薬を取り出した瞬間、大人の修道士の空気が一変する。

 突如として、血に伏している女の子に向け回復魔法を使ったと思いきや、影分身アバターの腹を杭でぶっ刺してきた。

 俺は驚きのあまり目を見開き、つい自分の腹を擦ってしまう。
 余りに衝撃的な行動に、つい自分が刺されたものと錯覚してしまった。

「あら? あらあら? おかしいですね。確かに腹部を刺したと思ったのですが……あなた、何で生きているのですか?」

 影潜ハイドの向こう側では、大人の修道士が狂気的な笑みを浮かべ滅茶苦茶怖いことを言っている。

 コイツはヤバい。

 そう確信した俺は、傷は癒えたもののまだ血に伏している修道士っぽい女性を影収納ストレージに取り込むとスヴロイ領の森から影転移トランゼッションで悠斗邸へと転移した。
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