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第六章 商業ギルド対立編
第149話 リマの策謀
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――時は少し溯る。
白金貨100,000枚もの負担を強いられた俺は、強いストレスを受けたことにより気絶、起きてしばらくの間、ギルド内で錯乱してしまった。
結局は、従業員たちによって取り押さえられてしまい、気付けば次の日の朝。
いつの間にか夜が明けていたようだ。
一瞬、ミクロが近くにいたような気がしたが気のせいだろう。
リマが窓に視線を向けると、お日様の光が窓に差し込んできている。
窓からはこんなにも光が差し込んでいるのに、俺の心の中は、今もどす黒い闇が広がり続けていく。
これもそれも、佐藤悠斗のせいだ。
奴が余計なこと(価格を10倍)をしたせいで、白金貨100,000枚(約100億円)もの支援金を自腹で負担する羽目になってしまった。
Sランク商人&評議員の俺ですら、年間の売上は白金貨500,000枚(約500億円)、商業ギルドに3%の税金を払って残る最終的な利益は白金貨5,000枚(約5億円)程度。
10年もの歳月をかけて貯め込んだ内部留保……。これを一気に失ってしまった。
10年……10年だ、10年かけて利益を貯め込み、次の事業に投資しようと思っていた内部留保……。
それだけではない。10年かけて貯め込んだ内部留保を吐き出しても、まだ白金貨50,000枚(約50億円)ほど足りない……。
「ふふっ、やってくれたな……。」
正直、発狂したい。
俺様ともあろうものが……俺の統括する商業ギルドのギルドマスター如きの意見を鵜呑みにし、独断専行してしまうとは……。独断専行なんてしなければよかった。
奴を潰すチャンスがつい目の前にあったから、思いっきり掴んでしまった。
最近、フェロー王国で流通している【エーヨン用紙】に【エーサン用紙】。
聞くところによると、これを開発し、流通させているのが佐藤悠斗らしい。
この【エーヨン用紙】に【エーサン用紙】は、他国の商会の軒先でも少しずつ見かけるようになってきた。
おそらく、佐藤悠斗と交流のある奴隷商人、ハメッドが佐藤悠斗を経由してフェロー王国のみならず、他国にも販売攻勢をかけているのだろう。
ハメッドもハメッドだ。お前は奴隷商人だろうが、なんで奴隷じゃなくて紙を売っているんだよ。
最近じゃ、奴隷より紙の売上の方が高いらしいじゃないか。余計なことを……。
この【エーヨン用紙】に【エーサン用紙】の登場により、俺が開発した『アキンド紙』がフェロー王国内で全く売れなくなってしまった。
当然だ。あちらの紙の方が品質が良く安い。
本当にふざけていやがる。一体俺がアキンド紙の生産にどれだけの投資をしたと思っている。
これからだ……これからという時にあんな安い値段で紙を売られちゃ困るんだよッ!!
アキンド紙はフェロー王国以外にも輸出しているため、損害はフェロー王国だけに留まっているが、ハメッドがこのまま他国に販売攻勢をかけていくとなれば、その損害額は途方もない金額となるだろう。
それだけではない。
生鮮食品の販売に、丸太足場、建築資材の販売など完全に佐藤悠斗と商売が被っている。
あの価格差だ。普通に商いしたら勝てる気がまるでしない。
奴はまだ、他国への進出を進めていないためなんとかなっているが、もはや時間の問題だろう。
佐藤悠斗……あいつは俺にとって目障りな蠅でしかない。
今まで数多くの妨害工作や嫌がらせを行ってきたがまるで効果はないし、憎たらしい限りである。
他にできることはないか考えるも、なにも思いつかない……。
ん? いや……まてよ?
あるじゃないか……俺にしかできない嫌がらせが……。
リマは椅子から立ち上がると、商業ギルドを出て王城へと歩を進める。
なぜこんな簡単なことに気付かなかったんだ。
俺の立場だからこそできることがあったじゃないか!
「佐藤悠斗……貴様にも必ず地獄を見てもらう……。必ずだッ!」
そう呟くと、俺はフェロー王国の財務大臣の元へ向かうことにした。
――ところ変わって、商人連合国アキンドにいるアラブ・マスカットは難しい表情を浮かべていた。
「まったく、奴は何を考えているのだ……。」
商人連合国アキンドの監査担当評議員アラブ・マスカットは、そう呟きながら、馬車に乗り込みフェロー王国へと向かう。
なぜ、マスカットがフェロー王国へと向かっているのか、それは、悠斗がフェロー王国から召喚状を受け取る数日前、王都の商業ギルドのギルドマスター、ミクロより一本の連絡が入ったためである。
なんでもフェロー王国の商業ギルドを統括している執行担当評議員リマが『佐藤悠斗ッ! 貴様は商人連合国アキンドを敵に回したッ!! 王国からもそのうちお呼びがかかるだろう! ザマぁ見ろッ!! 俺に逆らうからだッ、馬鹿野郎めがッ!!』といった発言をしたらしい。
それだけではない。今回の件を含め、リマは評議員会議で決めた『静観』という決定を2度破っている。
商人連合国アキンドの、評議員という立場は権力が集中しやすく、評議員の決定一つで国の流通を左右させるほどの大きな力を持っている。
特に【執行担当評議員】は、特定の執行権限を保持しており、その権限を行使することにより一国の流通を止めることすら可能とする。(もちろん、その後、評議員会機で決議をする必要はあるが……)だからこそ、評議員となる者には、清廉潔白で高い倫理性と公平さが求められる。
現執行担当評議員リマは、商人連合国アキンドの評議員として不適格。そう判断した。
今回の件で監査担当評議員であるマスカットは、現執行担当評議員リマが行ったと推察される『執行行為の違法性』、『権限の私的流用』を評議員会議の議題にあげるつもりである。
ここで言うところの、『執行行為の違法性』『権限の私的流用』とは、現執行担当評議員であるリマが、元Aランク商人、佐藤悠斗を貶めるため、フェロー王国に対して流通の一部を止めるなど執行担当評議員に与えられた権限を振りかざした嫌疑のことを指している。
当然、何の理由もなくそんな権限を行使することはできない。
佐藤悠斗を貶める。そんなくだらないことのために一国を巻き込むなんてことをすれば尚更だ。
しかし、フェロー王国側にわれらの国の事情等を推察することはできまい。
そのため【執行担当評議員】の言葉は商人連合国アキンドの総意と受け止められてもおかしくはない。
マスカットは、リマの評議員資格を停止するため急ぎ馬車を走らせるのであった。
白金貨100,000枚もの負担を強いられた俺は、強いストレスを受けたことにより気絶、起きてしばらくの間、ギルド内で錯乱してしまった。
結局は、従業員たちによって取り押さえられてしまい、気付けば次の日の朝。
いつの間にか夜が明けていたようだ。
一瞬、ミクロが近くにいたような気がしたが気のせいだろう。
リマが窓に視線を向けると、お日様の光が窓に差し込んできている。
窓からはこんなにも光が差し込んでいるのに、俺の心の中は、今もどす黒い闇が広がり続けていく。
これもそれも、佐藤悠斗のせいだ。
奴が余計なこと(価格を10倍)をしたせいで、白金貨100,000枚(約100億円)もの支援金を自腹で負担する羽目になってしまった。
Sランク商人&評議員の俺ですら、年間の売上は白金貨500,000枚(約500億円)、商業ギルドに3%の税金を払って残る最終的な利益は白金貨5,000枚(約5億円)程度。
10年もの歳月をかけて貯め込んだ内部留保……。これを一気に失ってしまった。
10年……10年だ、10年かけて利益を貯め込み、次の事業に投資しようと思っていた内部留保……。
それだけではない。10年かけて貯め込んだ内部留保を吐き出しても、まだ白金貨50,000枚(約50億円)ほど足りない……。
「ふふっ、やってくれたな……。」
正直、発狂したい。
俺様ともあろうものが……俺の統括する商業ギルドのギルドマスター如きの意見を鵜呑みにし、独断専行してしまうとは……。独断専行なんてしなければよかった。
奴を潰すチャンスがつい目の前にあったから、思いっきり掴んでしまった。
最近、フェロー王国で流通している【エーヨン用紙】に【エーサン用紙】。
聞くところによると、これを開発し、流通させているのが佐藤悠斗らしい。
この【エーヨン用紙】に【エーサン用紙】は、他国の商会の軒先でも少しずつ見かけるようになってきた。
おそらく、佐藤悠斗と交流のある奴隷商人、ハメッドが佐藤悠斗を経由してフェロー王国のみならず、他国にも販売攻勢をかけているのだろう。
ハメッドもハメッドだ。お前は奴隷商人だろうが、なんで奴隷じゃなくて紙を売っているんだよ。
最近じゃ、奴隷より紙の売上の方が高いらしいじゃないか。余計なことを……。
この【エーヨン用紙】に【エーサン用紙】の登場により、俺が開発した『アキンド紙』がフェロー王国内で全く売れなくなってしまった。
当然だ。あちらの紙の方が品質が良く安い。
本当にふざけていやがる。一体俺がアキンド紙の生産にどれだけの投資をしたと思っている。
これからだ……これからという時にあんな安い値段で紙を売られちゃ困るんだよッ!!
アキンド紙はフェロー王国以外にも輸出しているため、損害はフェロー王国だけに留まっているが、ハメッドがこのまま他国に販売攻勢をかけていくとなれば、その損害額は途方もない金額となるだろう。
それだけではない。
生鮮食品の販売に、丸太足場、建築資材の販売など完全に佐藤悠斗と商売が被っている。
あの価格差だ。普通に商いしたら勝てる気がまるでしない。
奴はまだ、他国への進出を進めていないためなんとかなっているが、もはや時間の問題だろう。
佐藤悠斗……あいつは俺にとって目障りな蠅でしかない。
今まで数多くの妨害工作や嫌がらせを行ってきたがまるで効果はないし、憎たらしい限りである。
他にできることはないか考えるも、なにも思いつかない……。
ん? いや……まてよ?
あるじゃないか……俺にしかできない嫌がらせが……。
リマは椅子から立ち上がると、商業ギルドを出て王城へと歩を進める。
なぜこんな簡単なことに気付かなかったんだ。
俺の立場だからこそできることがあったじゃないか!
「佐藤悠斗……貴様にも必ず地獄を見てもらう……。必ずだッ!」
そう呟くと、俺はフェロー王国の財務大臣の元へ向かうことにした。
――ところ変わって、商人連合国アキンドにいるアラブ・マスカットは難しい表情を浮かべていた。
「まったく、奴は何を考えているのだ……。」
商人連合国アキンドの監査担当評議員アラブ・マスカットは、そう呟きながら、馬車に乗り込みフェロー王国へと向かう。
なぜ、マスカットがフェロー王国へと向かっているのか、それは、悠斗がフェロー王国から召喚状を受け取る数日前、王都の商業ギルドのギルドマスター、ミクロより一本の連絡が入ったためである。
なんでもフェロー王国の商業ギルドを統括している執行担当評議員リマが『佐藤悠斗ッ! 貴様は商人連合国アキンドを敵に回したッ!! 王国からもそのうちお呼びがかかるだろう! ザマぁ見ろッ!! 俺に逆らうからだッ、馬鹿野郎めがッ!!』といった発言をしたらしい。
それだけではない。今回の件を含め、リマは評議員会議で決めた『静観』という決定を2度破っている。
商人連合国アキンドの、評議員という立場は権力が集中しやすく、評議員の決定一つで国の流通を左右させるほどの大きな力を持っている。
特に【執行担当評議員】は、特定の執行権限を保持しており、その権限を行使することにより一国の流通を止めることすら可能とする。(もちろん、その後、評議員会機で決議をする必要はあるが……)だからこそ、評議員となる者には、清廉潔白で高い倫理性と公平さが求められる。
現執行担当評議員リマは、商人連合国アキンドの評議員として不適格。そう判断した。
今回の件で監査担当評議員であるマスカットは、現執行担当評議員リマが行ったと推察される『執行行為の違法性』、『権限の私的流用』を評議員会議の議題にあげるつもりである。
ここで言うところの、『執行行為の違法性』『権限の私的流用』とは、現執行担当評議員であるリマが、元Aランク商人、佐藤悠斗を貶めるため、フェロー王国に対して流通の一部を止めるなど執行担当評議員に与えられた権限を振りかざした嫌疑のことを指している。
当然、何の理由もなくそんな権限を行使することはできない。
佐藤悠斗を貶める。そんなくだらないことのために一国を巻き込むなんてことをすれば尚更だ。
しかし、フェロー王国側にわれらの国の事情等を推察することはできまい。
そのため【執行担当評議員】の言葉は商人連合国アキンドの総意と受け止められてもおかしくはない。
マスカットは、リマの評議員資格を停止するため急ぎ馬車を走らせるのであった。
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