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第六章 商業ギルド対立編

第126話 従業員たちの臨時ボーナス

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 悠斗たちが王都の冒険者ギルドに辿りつくと、一緒に来た従業員さんたちと共に受付の列に並ぶことにした。
 なんだかしばらくギルドに来ていなかった気がする。

「そういえば、皆さんのギルドランクはどのくらいですか?」

 従業員さんたちのギルドランクを聞いてみたところ、意外なことに全員がDランク冒険者だった。

 Dランク冒険者であれば、月白金貨5枚以上を稼ぐのなんて簡単だろう。

 正直、なんで俺の店に雇われてくれたのかよく分からない。まあ、いつか聞いてみよう。

 そんなこんなで、従業員さんたちと楽しく雑談をしていると、ようやく俺達の順番が来たようだ。

「ようこそ、冒険者ギルドへ。本日はどのようなご用件でしょうか。」

「ヴォーアル迷宮で、モンスターを狩ってきました。モンスター素材の買取と、この目録にあるモンスターの討伐依頼を見繕って頂けますか?」

「はい。目録を拝見させて頂きます。」

 ちなみにこの目録は、冒険者ギルドに移動するまでの間に用意したものだ。
 こういった目録があれば、事前にどんなモンスターを狩ってきたのか分かりやすくギルドの職員さんや【私の商会】の従業員さんに説明することができる……ということを最近学んだばかりだ。

 今回狩ったモンスターは次の通りである。
 --------------------------------------
 ゴブリン×120
 ホフゴブリン×120
 ゴブリンロード×60
 ゴブリンジェネラル×60
 ゴブリンメイジ×10
 ゴブリンキング×2

 オーク×120
 オークロード×60
 オークジェネラル×60
 オークメイジ×10
 オークキング×2

 クレイジーモンキー×120
 ウェークピューマ×120
 ウェークバイソン×60
 リトルグリズリー×10
 ロックベア×2

 --------------------------------------

 目録にすると中々の成果ではなかろうか?

 目録を手にした受付嬢さんの手が少し震えている。

「こっ、これはっ……いえ、確かめれば分かることですね。それでは、この目録に合った討伐・常設依頼を集めておきますので、素材買取カウンターの倉庫でお待ちください。すぐに、職員を向かわせますので。」

 悠斗たちは立ち上がると、冒険者ギルドに併設されている素材買取カウンターの倉庫へと向かうことにした。

 しばらく、倉庫前の扉で待っていると、職員と思わしき眼鏡をかけた男性がこっちに向かってくる。

「大変お待たせいたしました。私は、王都支部素材買取カウンターの支配人のフェニックスと申します。それでは、こちらへどうぞ。」

 フェニックスさんが倉庫の扉を開け、俺達にも入ってくるよう促してくる。

「それでは、目録にあったモンスターを拝見させて頂きたいと思います。こちらの床にモンスターを出して頂いてもよろしいでしょうか?」

「はい。それでは失礼してっ……。」

 そういうと悠斗は、収納指輪(従業員用)から次々とモンスターを取り出していく。
 もちろん、モンスター毎に数えやすいよう並べていくことも忘れていない。

 悠斗が床にモンスターを置いていくと、それを見ていたフェニックスさんの眼鏡が徐々に傾いていく。
 その姿はまるで、あの目録は本当のことだったのかっ!? という驚きを体現しているようだ。

 最後にロックベア2体を床に置くと、フェニックスさんに向かって振り向く。

「これでよろしいでしょうか?」

「…………ッ。」

 フェニックスさんの開いた口が塞がらない。声を出すこともできない位、驚いている。

「フェニックスさん??」

 どうしたんだろう? なんかすごく驚いた顔をしている……。

 あらかじめパニックを起こさないようにわざわざ目録を書いて受付嬢さんに渡していたというのになんでこんなに驚いているのだろう?

 悠斗がそんな事を思っていると、『ハッ!』と我に返ったフェニックスさんが返事をしてきた。

「もっ、申し訳ございません。少しばかり茫然としておりました。すぐにモンスターのカウントを行いますので、こちらの木版を持ってギルドでお待ちください。カウントが済み次第、個室に呼ばれると思いますので、受付近くで待っていただけると幸いです。」

 そういうと、フェニックスさんは俺に木版を渡し、モンスターのカウントを始める。
 邪魔になってはいけないと、俺たちも冒険者ギルドにきびすを返すことにした。

 冒険者ギルドで待つこと数十分。ようやく、カウントが終わったようだ。

「受付でお待ちの悠斗様、いらっしゃいませんか?」

「はい。ここにいます。」

 悠斗が返事をすると、受付嬢さんはニコリとほほ笑み、個室へと案内してくれる。
 部屋には書類の束を持った中年男性が待っていた。

「どうぞ、ソファーへとお掛けください。」

 中年男性がそう言うと、受付嬢さんは扉を閉め去っていく。
 悠斗たちが椅子に座ると、中年男性が話しかけてくる。

「大変お待たせいたしました。私、フェロー王国王都支部のギルドマスター、キルギスと申します。早速で申し訳ありませんが、皆さんのギルドカードをお預かりしてもよろしいでしょうか?」

 悠斗を含めたギルドカードを、キルギスさんに渡すと、机の横に置いてある魔道具にギルドカードを押し当てていく。

 キルギスさんは全員のギルドカードを、魔道具に押し当てると、『ふむっ』と呟き、従業員さんたちの前に書類の束とペンを置いていく。

 どうやら書類の束と思っていたものは、常設依頼と討伐依頼の依頼書のようだ。

「さて、先ほど素材買取カウンターより、あなた方が作成した目録通りのモンスター数を確認したと連絡がありました。つきましては、ランクアップ手続きを進めるため、こちらの依頼書にサインをお願いします。」

 従業員さんたちは、依頼書の束に茫然としている。
 しかし、この依頼書の束を処理しないと、ランクアップ手続きに移れないというのだから仕方がない。

「さあ皆さん! 頑張ってくださいっ!」

 悠斗としては、従業員さんたちを応援することしかできない。
 そこから数十分かけて、従業員さんたちは1人当たり100枚を超える依頼書にサインをしていく。

 従業員さんたちが依頼書にサインするのを見ているとキルギスさんが話しかけてきた。

「さて、悠斗くんはこちらで彼らの報酬についてお話をしようじゃありませんか。」

 そういうと、キルギスさんは、モンスターの査定結果と討伐報酬の書かれた紙を渡してくる。

「これは、モンスターの査定結果に討伐報酬を加えたものです。ご確認ください。」

 --------------------------------------
 ゴブリン×120 :一体あたり鉄貨5枚(500円) 金貨6枚
 ホフゴブリン×120 :一体あたり銀貨5枚(5,000円) 白金貨6枚
 ゴブリンロード×60 :一体あたり金貨2枚(20,000円) 白金貨12枚
 ゴブリンジェネラル×60 :一体あたり金貨5枚(50,000円) 白金貨30枚
 ゴブリンメイジ×10 :一体あたり白金貨1枚(100,000円) 白金貨10枚
 ゴブリンキング×2 :一体あたり白金貨2枚(200,000円) 白金貨4枚

 オーク×120 :一体あたり銀貨5枚(5,000円) 白金貨6枚
 オークロード×60 :一体あたり金貨2枚(20,000円)白金貨12枚
 オークジェネラル×60 :一体あたり金貨5枚(50,000円) 白金貨30枚
 オークメイジ×10 :一体あたり白金貨1枚(100,000円) 白金貨10枚
 オークキング×2 :一体あたり白金貨3枚(300,000円) 白金貨6枚

 クレイジーモンキー×120 :一体あたり銀貨1枚(1,000円) 金貨12枚
 ウェークピューマ×120 :一体あたり銀貨5枚(5,000円) 白金貨6枚
 ウェークバイソン×60 :一体あたり金貨5枚(50,000円) 白金貨30枚
 リトルグリズリー×10 :一体あたり白金貨1枚(100,000円) 白金貨10枚
 ロックベア×2 :一体あたり白金貨4枚(400,000円) 白金貨8枚

 解体費用(見込) :白金貨2枚、金貨6枚
 --------------------------------------
 累計:白金貨190枚(日本円にして、約1,900万円)

 1人当たり白金貨19枚か……。従業員たちに配る臨時ボーナスとしては多すぎたかもしれない……。大丈夫だよね? これ貰って辞めちゃったりしないよね??

 それにしても今回は査定が早かったな? いつもだったら解体と査定に1日位かかるのに……。
 少しばかり気になった悠斗は聞いてみることにした。

「そういえば、今回の査定は随分早かったみたいですけど、何かあったんですか?」

「何かあった訳ではありませんが、査定の方法を少々変更致しまして、解体料金を見込みで請求する事にいたしました。素材は切傷でボロボロでしたが、モンスターの質自体は良かったためこの査定とさせて頂いております。」

「そうですか……、それではこの査定額でお願いします。」

「ありがとうございます。それでは、こちらが白金貨190枚となります。」

 キルギスさんは机に白金貨190枚を置くと、微笑みを浮かべながら悠斗に視線を向けてくる。
 悠斗は白金貨を収納指輪にしまうと、従業員たちが依頼書の束を片付けるのを待ち冒険者ギルドを後にした。
 余談ではあるが、彼らのランクは、DランクからなんとBランクにまで上がっていた。以前に、盗賊の討伐などの依頼を受けていたことがあるらしく、Bランクに上がれたようだ。

 まあ、この辺って盗賊が異常に多いしね。

 翌日、朝に実技研修を受けた従業員たちの元を訪れ、白金貨19枚を渡すとまるで神を見るかのような視線を向けられる。その日を境に、従業員たちのやる気はMAXとなり、悠斗のいうことについては盲目的に従うようになるのだがそれは別のお話である。
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