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第1章 城塞都市マカロン
第16話 発火点1度のオリーブオイル
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「――ふんっ! フィンガースナップなどしてどうするつもりだっ! 命乞いのつもりか⁉」
テールスが指を弾く動作を見て、サボテリーナが叫び笑う。
巨大化したサボテンダーの手が迫る中、テールスはサボテリーナに視線を向けると不敵な笑みを浮かべた。
「『――命乞い? 神が人間相手に命乞いなどする訳がないでしょう。この指パッチンは手向けですよ。巨大化させられた哀れなサボテンダーを救う黄泉への手向けです』」
「手向けだとっ⁉ なにを馬鹿な……! ええい、サボテンダァァァァ! あのクソ生意気な小僧を……って、サボテンダー?」
テールスの言葉と共に止まるサボテンダーの手。
なぜ手を止めたのか疑問に思い、サボテリーナが視線を向けると、そこには体中に黒い斑点が浮かび上がるサボテンダーの姿があった。
サボテンダーの体中に浮かび上がる黒い斑点は時の経過と共に大きくなっていく。
「こ、これは一体……」
サボテリーナの言葉を受け取り実況のピエールがマイクを握りしめる。
『おーっと、サボテンダー選手! ヒナタ選手を握り潰そうとしていた手を止め呆然と立ち尽くしている! サボテンダー選手に一体なにがあったのでしょうか⁉︎ 体中に黒い斑点模様が浮かび上がっております!』
サボテンダーの体中に浮かび上がった斑点模様は徐々に大きくなり、やがてそこに赤い火が灯る。
「サ、サボテンダー?」
『どうしたサボテンダァァァァ! 大変な事が起きました! サボテンダー選手、まさかの炎上……! 体中から火の手が上がり炎上しております! その姿はまるで動くキャンプファイヤー! 4体すべてが燃え上がっています! 一体、なにがあったというのでしょうかぁぁぁぁ⁉︎』
呆然とした視線をサボテンダーに向けるサボテリーナに向かってテールスは軽く指を弾く。
サボテリーナは軽快に鳴り響くその音にギョッとした表情を浮かべると、テールスに視線を向ける。
「『――サボテンダーの体内にオリーブオイルを創造しました。知っていますか? オリーブオイルの発火点は、他の油と比較すると相当低いそうですよ?』」
「オ、オリーブオイルだと? それがなんだ⁉︎」
こうしている最中も炎上し続けるサボテンダー。打つ手もなく呆然とした表情を浮かべるサボテリーナに対し、テールスは話を続ける。
「『――普通の油の発火点が300度なのに対して、オリーブオイルの発火点は、234度……。しかし、それは普通のオリーブオイルの話……』」
「だ、だからそれがなんだというのだぁぁぁぁ!? オリーブオイルの発火点が、234度ならサボテンダーが燃えるはずがないだろうがぁぁぁぁ!!」
意味がわからず叫ぶサボテリーナ。
そんなサボテリーナに向かって、テールスは指を一本立てる。
「『――私が創造したオリーブオイルは発火点を極限まで下げた特別性……。燃えるんですよ。たった1度でね』」
「な、なにぃぃぃぃ!?」
今の気温は約25度。人間からして見れば適温だ。
しかし、テールスが創造したオリーブオイルの発火点は1度……。
テールスは薄ら笑みを浮かべながら言う。
「『――そして、一度、燃え上がった炎は止まらない』」
発火点は1度であったとしても、炎の温度は1500度。体の内側まで、テールスの創造した特性オリーブオイルに塗れたサボテンダーの炎は体が灰になるまで止まらない。
『サ、サボボボボボボッ……サ……ボ……』
「サ、サボテンダァァァァ⁉︎」
炎上し、黒炭となったサボテンダーを見て実況がマイクを握り締める。
『おーっと、サボテンダー選手! 燃え尽き真っ黒な灰となってしまいましたぁぁぁぁ! まさかの展開! 流石は優勝候補筆頭だったティル・ヴィング選手を降しただけのことはあります! 冷血非道。ヒナタ選手の辞書に情け容赦という言葉はないのでしょうかぁぁぁぁ!』
「『――中々、酷いことを言う実況ですね?』」
テールスがそう呟くと、実況は急いで弁明に走る。
『もちろん、聡明なヒナタ選手であればおわかり頂けているとは思いますが、今のは場を盛り上げるための戯言です。真に受けないで頂けると大変ありがたく思います! うん? おーっと、私からヒナタ選手への謝罪中、サボテリーナ選手がへたり込んでしまいましたぁぁぁぁ! 大切なサボテンダーを燃やされたことが余程ショックだったのでしょうかぁぁぁぁ⁉︎』
実況の言葉に釣られ観客の視線がサボテリーナに向く。
当のサボテリーナはというと……。
「う、うぐぐぐぐっ……⁉︎ は、腹が……。腹が痛くて立ち上がれん」
そう呟きながらしゃがみ込んでいた。
自分に向いた矛先を逸らすため、実況はいつもより声を張り上げマイクを握り締める。
『どうした、サボテリーナァァァァ⁉︎ 先ほどまでの威勢はどこにいったのか、サボテリーナ選手、両手で腹を抱え腹痛と戦っております!』
「う、うぐぐぐぐっ……!」
サボテリーナは悔しそうに顔を歪めると、テールスに視線を向ける。
「こ、この腹の痛みは……ま、まさか……」
「『――ええ、あなたの胃腸に普通のオリーブオイルを創造しました。あなたも選手なのだから当然でしょう? いかがですか。オリーブオイルの味は?』」
口の奥から込み上げるオリーブオイルの臭いが吐き気を誘い。大腸から吸収されたオリーブオイルが尋常ではない腹痛を引き起こす。
正直言って、もう喋っている余裕はない。
「うぐぐぐぐっ……!」
――パチン!
ただひたすらにそう唸っていると、耳にフィンガースナップの音が聞こえてくる。
「『――これからあなたが負けを認めるまでの間、60秒毎、胃の中に直接、オリーブオイルを1リットルずつ創造します』」
「なぁ⁉ (――な、なんだとっ⁉︎ そんなことをされては、一番初めのサボテンダーのように体が破裂してしまう!)」
額に脂汗を浮かべ立ち尽くしていると、テールスはサボテリーナの足元に視線を向ける。
「『しかし、私も鬼ではありません。私があなたに差し上げたコレをすべて食すと言うのであれば、降参することを認め、施しを差し上げましょう』」
テールスの視線の先……。サボテリーナの足下には、潰れて砂まみれとなったバナナが一本落ちている。
「ま……(まさか、これを食べろと言うつもりか……⁉︎)」
サボテリーナの胃腸は既にオリーブオイルで満タンだ。バナナ1本入れる隙間もなければ、吐き気で降参と叫ぶ余裕もない。
しかし、無理矢理にでも食べなければ、毎分、胃腸に1リットルのオリーブオイルを創造されてしまう。
「(ぐ、ぐぐぐぐぐぐぐっ……!)」
ここでこれを食べたら確実に吐き散らかす。
それ所か、体中の穴という穴からオリーブオイルが流れ出てくる可能性すらある。
砂に塗れたバナナなど食べられたものではないし、なにより、挑発のため踏み付けたものを、負けそうになって口にするなどサボテリーナのプライドが許さない。
サボテリーナは、腹を抱え、ゆっくり地面に横になると、砂まみれとなったバナナに舌を伸ばす。
「ぐ、ぐぐぐぐぐぐぐぐっ……!」
横になったお陰で少し胃に余裕ができた。
今はプライドよりも人としての尊厳がなによりも優先される。
「(お、覚えておれよ。小僧! いつか絶対に復讐してやるからな……! あ、あと、もう少し……。うぐっ⁉︎)」
砂まみれのバナナに舌が届きそうになった時、パチンと軽快なフィンガースナップ音が鳴り響く。
「『60秒経ちました。大腸にオリーブオイル1リットルを創造します』」
その瞬間、盛り上がる腹部。
大腸が悲鳴を上げ、激しい便意がサボテリーナを襲う。
「(う、うごごごごごごっ……⁉︎ なんという便意、この小僧……。本気でやりおった⁉︎)」
もうバナナなんぞ食べている場合ではない。
サボテリーナは思わず悶絶しのたうち回る。
「『おや? 苦しそうですね。そんなあなたにお教えしましょう。あなたが踏み付け砂まみれにしたバナナには、整腸作用があります。そのバナナを食べれば、今、あなたが抱えている問題すべてが解決しますよ』」
「なぁ……(なにっ⁉︎)」
整腸作用があると聞かされては話が別。
サボテリーナは全身から脂汗を流しながら、ゆっくり砂まみれのバナナに顔を近付けると、バナナを皮ごと噛み締めるように食していく。
ガリガリガリッ
バナナごと食べた砂がサボテリーナの不快度指数を上げていく。
しかし、バナナを食べてすぐ体の不調が収まってきた。
「……(どうやら今の話に嘘はないようだな)」
屈辱的ではあったが、観客に醜態を晒さずに済んだようだ。
サボテリーナが『ふうっ』と、ため息を吐くとまたしても急に下腹部が膨れ上がる。
「『60秒経ちました。大腸にオリーブオイル1リットルを創造します』」
「うぐっ……⁉︎ (き、貴様ぁぁぁぁ!! それは反則だろうがぁぁぁぁ!!)」
体が全快したことによる油断。
隙を突かれ完全に脱力した所に襲い掛かる便意のセカンドインパクト。
サボテリーナは苦悶の表情を浮かべながら腹とお尻を押さえる。
「……負けだ。私の負けでいい。だから……。だから、もうトイレに行かせてくれぇぇぇぇ‼︎」
お腹とお尻を押さえ、よろめきながら闘技場外に設置してある簡易トイレへと向かうサボテリーナ。
サボテリーナが負けを宣言したことにより2回戦の勝者が確定する。
『――し、勝者、ヒナタ・クルルギィィィィ!』
――わああああっ‼︎
実況が勝敗を告げると、会場内が歓声に湧く。
『――番狂わせです! またもや番狂わせ起きました! 何度も申し上げますが、闘儀は、武具の実演を兼ねた選手同士の戦い。にも拘わらず、ヒナタ選手はフィンガースナップだけでサボテリーナ選手を圧倒! サボテンダー選手に勝利してしまいましたぁぁぁぁ!』
『サボテリーナ選手、簡易トイレに間に合うといいのですが……』
『――間に合うといいですね。第2回戦Bブロックは、黒焦げとなったサボテンダー選手の片付けが終わり次第、開始致します。しばらくお待ちくださ……。うん? 黒焦げとなったサボテンダー選手に異変が……。これは一体、どうしたことでしょうか⁉︎』
巨大化し黒焦げとなったサボテンダーの燃えカスの中から現れた小さなサボテンダーを見て実況が声を上げる。
『――まさかの復活! サボテンダー選手が一回りも二回りも小さくなって復活を遂げましたぁぁぁぁ!』
「『――当然です。私も無意な殺生は好みません』」
テールスは灰になったサボテンダーの残骸の中から黒焦げとなったバナナを取り出すと、ふらつくサボテンダーに手渡した。
テールスが指を弾く動作を見て、サボテリーナが叫び笑う。
巨大化したサボテンダーの手が迫る中、テールスはサボテリーナに視線を向けると不敵な笑みを浮かべた。
「『――命乞い? 神が人間相手に命乞いなどする訳がないでしょう。この指パッチンは手向けですよ。巨大化させられた哀れなサボテンダーを救う黄泉への手向けです』」
「手向けだとっ⁉ なにを馬鹿な……! ええい、サボテンダァァァァ! あのクソ生意気な小僧を……って、サボテンダー?」
テールスの言葉と共に止まるサボテンダーの手。
なぜ手を止めたのか疑問に思い、サボテリーナが視線を向けると、そこには体中に黒い斑点が浮かび上がるサボテンダーの姿があった。
サボテンダーの体中に浮かび上がる黒い斑点は時の経過と共に大きくなっていく。
「こ、これは一体……」
サボテリーナの言葉を受け取り実況のピエールがマイクを握りしめる。
『おーっと、サボテンダー選手! ヒナタ選手を握り潰そうとしていた手を止め呆然と立ち尽くしている! サボテンダー選手に一体なにがあったのでしょうか⁉︎ 体中に黒い斑点模様が浮かび上がっております!』
サボテンダーの体中に浮かび上がった斑点模様は徐々に大きくなり、やがてそこに赤い火が灯る。
「サ、サボテンダー?」
『どうしたサボテンダァァァァ! 大変な事が起きました! サボテンダー選手、まさかの炎上……! 体中から火の手が上がり炎上しております! その姿はまるで動くキャンプファイヤー! 4体すべてが燃え上がっています! 一体、なにがあったというのでしょうかぁぁぁぁ⁉︎』
呆然とした視線をサボテンダーに向けるサボテリーナに向かってテールスは軽く指を弾く。
サボテリーナは軽快に鳴り響くその音にギョッとした表情を浮かべると、テールスに視線を向ける。
「『――サボテンダーの体内にオリーブオイルを創造しました。知っていますか? オリーブオイルの発火点は、他の油と比較すると相当低いそうですよ?』」
「オ、オリーブオイルだと? それがなんだ⁉︎」
こうしている最中も炎上し続けるサボテンダー。打つ手もなく呆然とした表情を浮かべるサボテリーナに対し、テールスは話を続ける。
「『――普通の油の発火点が300度なのに対して、オリーブオイルの発火点は、234度……。しかし、それは普通のオリーブオイルの話……』」
「だ、だからそれがなんだというのだぁぁぁぁ!? オリーブオイルの発火点が、234度ならサボテンダーが燃えるはずがないだろうがぁぁぁぁ!!」
意味がわからず叫ぶサボテリーナ。
そんなサボテリーナに向かって、テールスは指を一本立てる。
「『――私が創造したオリーブオイルは発火点を極限まで下げた特別性……。燃えるんですよ。たった1度でね』」
「な、なにぃぃぃぃ!?」
今の気温は約25度。人間からして見れば適温だ。
しかし、テールスが創造したオリーブオイルの発火点は1度……。
テールスは薄ら笑みを浮かべながら言う。
「『――そして、一度、燃え上がった炎は止まらない』」
発火点は1度であったとしても、炎の温度は1500度。体の内側まで、テールスの創造した特性オリーブオイルに塗れたサボテンダーの炎は体が灰になるまで止まらない。
『サ、サボボボボボボッ……サ……ボ……』
「サ、サボテンダァァァァ⁉︎」
炎上し、黒炭となったサボテンダーを見て実況がマイクを握り締める。
『おーっと、サボテンダー選手! 燃え尽き真っ黒な灰となってしまいましたぁぁぁぁ! まさかの展開! 流石は優勝候補筆頭だったティル・ヴィング選手を降しただけのことはあります! 冷血非道。ヒナタ選手の辞書に情け容赦という言葉はないのでしょうかぁぁぁぁ!』
「『――中々、酷いことを言う実況ですね?』」
テールスがそう呟くと、実況は急いで弁明に走る。
『もちろん、聡明なヒナタ選手であればおわかり頂けているとは思いますが、今のは場を盛り上げるための戯言です。真に受けないで頂けると大変ありがたく思います! うん? おーっと、私からヒナタ選手への謝罪中、サボテリーナ選手がへたり込んでしまいましたぁぁぁぁ! 大切なサボテンダーを燃やされたことが余程ショックだったのでしょうかぁぁぁぁ⁉︎』
実況の言葉に釣られ観客の視線がサボテリーナに向く。
当のサボテリーナはというと……。
「う、うぐぐぐぐっ……⁉︎ は、腹が……。腹が痛くて立ち上がれん」
そう呟きながらしゃがみ込んでいた。
自分に向いた矛先を逸らすため、実況はいつもより声を張り上げマイクを握り締める。
『どうした、サボテリーナァァァァ⁉︎ 先ほどまでの威勢はどこにいったのか、サボテリーナ選手、両手で腹を抱え腹痛と戦っております!』
「う、うぐぐぐぐっ……!」
サボテリーナは悔しそうに顔を歪めると、テールスに視線を向ける。
「こ、この腹の痛みは……ま、まさか……」
「『――ええ、あなたの胃腸に普通のオリーブオイルを創造しました。あなたも選手なのだから当然でしょう? いかがですか。オリーブオイルの味は?』」
口の奥から込み上げるオリーブオイルの臭いが吐き気を誘い。大腸から吸収されたオリーブオイルが尋常ではない腹痛を引き起こす。
正直言って、もう喋っている余裕はない。
「うぐぐぐぐっ……!」
――パチン!
ただひたすらにそう唸っていると、耳にフィンガースナップの音が聞こえてくる。
「『――これからあなたが負けを認めるまでの間、60秒毎、胃の中に直接、オリーブオイルを1リットルずつ創造します』」
「なぁ⁉ (――な、なんだとっ⁉︎ そんなことをされては、一番初めのサボテンダーのように体が破裂してしまう!)」
額に脂汗を浮かべ立ち尽くしていると、テールスはサボテリーナの足元に視線を向ける。
「『しかし、私も鬼ではありません。私があなたに差し上げたコレをすべて食すと言うのであれば、降参することを認め、施しを差し上げましょう』」
テールスの視線の先……。サボテリーナの足下には、潰れて砂まみれとなったバナナが一本落ちている。
「ま……(まさか、これを食べろと言うつもりか……⁉︎)」
サボテリーナの胃腸は既にオリーブオイルで満タンだ。バナナ1本入れる隙間もなければ、吐き気で降参と叫ぶ余裕もない。
しかし、無理矢理にでも食べなければ、毎分、胃腸に1リットルのオリーブオイルを創造されてしまう。
「(ぐ、ぐぐぐぐぐぐぐっ……!)」
ここでこれを食べたら確実に吐き散らかす。
それ所か、体中の穴という穴からオリーブオイルが流れ出てくる可能性すらある。
砂に塗れたバナナなど食べられたものではないし、なにより、挑発のため踏み付けたものを、負けそうになって口にするなどサボテリーナのプライドが許さない。
サボテリーナは、腹を抱え、ゆっくり地面に横になると、砂まみれとなったバナナに舌を伸ばす。
「ぐ、ぐぐぐぐぐぐぐぐっ……!」
横になったお陰で少し胃に余裕ができた。
今はプライドよりも人としての尊厳がなによりも優先される。
「(お、覚えておれよ。小僧! いつか絶対に復讐してやるからな……! あ、あと、もう少し……。うぐっ⁉︎)」
砂まみれのバナナに舌が届きそうになった時、パチンと軽快なフィンガースナップ音が鳴り響く。
「『60秒経ちました。大腸にオリーブオイル1リットルを創造します』」
その瞬間、盛り上がる腹部。
大腸が悲鳴を上げ、激しい便意がサボテリーナを襲う。
「(う、うごごごごごごっ……⁉︎ なんという便意、この小僧……。本気でやりおった⁉︎)」
もうバナナなんぞ食べている場合ではない。
サボテリーナは思わず悶絶しのたうち回る。
「『おや? 苦しそうですね。そんなあなたにお教えしましょう。あなたが踏み付け砂まみれにしたバナナには、整腸作用があります。そのバナナを食べれば、今、あなたが抱えている問題すべてが解決しますよ』」
「なぁ……(なにっ⁉︎)」
整腸作用があると聞かされては話が別。
サボテリーナは全身から脂汗を流しながら、ゆっくり砂まみれのバナナに顔を近付けると、バナナを皮ごと噛み締めるように食していく。
ガリガリガリッ
バナナごと食べた砂がサボテリーナの不快度指数を上げていく。
しかし、バナナを食べてすぐ体の不調が収まってきた。
「……(どうやら今の話に嘘はないようだな)」
屈辱的ではあったが、観客に醜態を晒さずに済んだようだ。
サボテリーナが『ふうっ』と、ため息を吐くとまたしても急に下腹部が膨れ上がる。
「『60秒経ちました。大腸にオリーブオイル1リットルを創造します』」
「うぐっ……⁉︎ (き、貴様ぁぁぁぁ!! それは反則だろうがぁぁぁぁ!!)」
体が全快したことによる油断。
隙を突かれ完全に脱力した所に襲い掛かる便意のセカンドインパクト。
サボテリーナは苦悶の表情を浮かべながら腹とお尻を押さえる。
「……負けだ。私の負けでいい。だから……。だから、もうトイレに行かせてくれぇぇぇぇ‼︎」
お腹とお尻を押さえ、よろめきながら闘技場外に設置してある簡易トイレへと向かうサボテリーナ。
サボテリーナが負けを宣言したことにより2回戦の勝者が確定する。
『――し、勝者、ヒナタ・クルルギィィィィ!』
――わああああっ‼︎
実況が勝敗を告げると、会場内が歓声に湧く。
『――番狂わせです! またもや番狂わせ起きました! 何度も申し上げますが、闘儀は、武具の実演を兼ねた選手同士の戦い。にも拘わらず、ヒナタ選手はフィンガースナップだけでサボテリーナ選手を圧倒! サボテンダー選手に勝利してしまいましたぁぁぁぁ!』
『サボテリーナ選手、簡易トイレに間に合うといいのですが……』
『――間に合うといいですね。第2回戦Bブロックは、黒焦げとなったサボテンダー選手の片付けが終わり次第、開始致します。しばらくお待ちくださ……。うん? 黒焦げとなったサボテンダー選手に異変が……。これは一体、どうしたことでしょうか⁉︎』
巨大化し黒焦げとなったサボテンダーの燃えカスの中から現れた小さなサボテンダーを見て実況が声を上げる。
『――まさかの復活! サボテンダー選手が一回りも二回りも小さくなって復活を遂げましたぁぁぁぁ!』
「『――当然です。私も無意な殺生は好みません』」
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他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
日本は異世界で平和に過ごしたいようです。
Koutan
ファンタジー
2020年、日本各地で震度5強の揺れを観測した。
これにより、日本は海外との一切の通信が取れなくなった。
その後、自衛隊機や、民間機の報告により、地球とは全く異なる世界に日本が転移したことが判明する。
そこで日本は資源の枯渇などを回避するために諸外国との交流を図ろうとするが...
この作品では自衛隊が主に活躍します。流血要素を含むため、苦手な方は、ブラウザバックをして他の方々の良い作品を見に行くんだ!
ちなみにご意見ご感想等でご指摘いただければ修正させていただく思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
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