45 / 47
第44話 傭兵団VS『使役』⑤
しおりを挟む
「……『使役』よ。無様な姿だな。今のあなたは到達者とは、思えぬほど弱くなった……いや、私が強くなったのか?」
体中を血の色に染め立つ傭兵団の団長、ダグラスは、腹を刺され脂汗を流すドワーフに声を掛ける。
「――そうだとしたら? お主は……力を求め……なにをするつもりだ?」
生き絶え絶えとなりながらも、そう呟くとダグラスは意気揚々と告げる。
「そんなことは決まっている……私が目指すのは最強の頂。そして、今、私はあなた方の上に立ったっ! 他でもない、悪名高き『使役』の上に立ったのだっ!」
その言葉を聞き、ブルーノは苦笑する。
「――くだらぬことだ……」
「そうかい? しかし、私にとっては大事なことなのだよ。お前たちにはわからないだろうな。『回復』と『指揮』……他人を支援する……ただそれだけのスキルしか授かることのできなかったこの私の悔しさがっ!」
ダグラスは、血が滴った剣の刃先を地面に擦りながらブルーノに向かって歩き出す。
「私はね。小さい頃、馬鹿にされ続けてきた。他人の支援をするしか能のない腰抜けダグラスとね。あなた方にはわからないだろう。だからこそ私は力を求めた! スキルに頼らず、己の剣技を磨き『付与』のスキルホルダーを見付けては、その力を搾取して、ようやくここまで来たんだっ! 私が傭兵団を立ち上げたのもそう。全ては力を求めてのこと……まあ、その傭兵団もあなた方に潰されてしまったようだがね……」
所彼処に散らばった団員たちの死骸。
ミギーの持っていたスキル『リライフ』を『同族殺し』の力で取り込んだからだろう。今、すべてのライフがこの身に集まって来ている。
「……しかし、彼らの死も無駄ではなかった。なぜなら、ここで亡くなったすべての同胞のライフがこの私に集まっているのだからね。ミギーも良いスキルを残して逝ってくれたよ(――本当は、『使役』のスキルも欲しかったが、種族が違うためか、上手くスキルを抜き取ることができないようだな……だが、まあいい……)」
「――がっ⁉」
持っていた剣でブルーノの四肢を切り裂くと、ダグラスは深い笑みを浮かべる。
「……お前は後回しだ。後でじっくりとステータス値を奪い取ってやる。だから、今は、そこで寝ていろ」
「ぐっ……!」
ダグラスの言葉に、悔しそうに唇を噛むブルーノ。
「(――このまま行かせてなるものか……婆さんとノアは夢の中にいるはず……このまま行かせては……婆さんが……ノアが……!)――大蛇よ! この者を……!」
大蛇が動き出すその瞬間、大蛇の頭にダグラスの体から出た光の玉が入り込み動きを止めた。
「――な、なんじゃと……⁉」
驚愕の表情を浮かべるブルーノ。
対するダグラスは呆れた表情を浮かべた。
「……無駄。ミギーの持っていたスキル『リライフ』で大蛇の脳を支配した。知っているかい? 脳の構造っていうのは、魔物であろうが人であろうが基本的に同じなんだよ。つまり、脳さえ支配してしまえば、どんな魔物でも操ることができるということさ――つまりは……」
ダグラスの言葉にブルーノは目を見開き口を大きく開ける。
「……こんなこともできるという訳さ」
ダグラスの体から溢れ出た光の玉の数々。
それらが、ブルーノにより格子状となった魔戦斧・666に吸収されると、姿を変え悪魔となって格子から這い出てきた。
「ば、馬鹿な……」
驚くブルーノを見て、ダグラスは嬉しそうに笑う。
「――いいね。その表情……その表情が見れただけで、十分さ。まあ、そこで待っていなよ。この私によってすべてが蹂躙される。その様をね……」
笑いながらそう言うと、魔戦斧・666から這い出てきた悪魔たちが森の中心へ向かっていく。
(――『使役』は捕らえた。後は『読心』を捕らえステータス値を奪うだけだ……!)
ダグラスの体から溢れ出た光の玉に触れた瞬間、ブルーノが召喚した魔物たちがダグラスの配下に降っていく。
「さあ、ブルーノの召喚した魔物たちよ。その力をもって『読心』を生け捕りにしろぉぉぉぉ!」
ブルーノの手を離れ、魔の森を覆うようにして展開された666体の悪魔と魔物たち。
ダグラスの命を受けた魔物たちは、読心の魔女イデアとノアを捕らえるため、森の中心へと向かっていく。
「もうすぐだ。もうすぐ私は二人分の到達者のステータス値をこの手に……(――そうすれば、もう私を止めることができる者は存在しない……すべては私の思いのままだっ!)」
大蛇の背に乗り森の中心部に近付くと、小さなペンションハウスがあることに気付く。その側に慌てた表情を浮かべる『読心』の姿を視認する。
「――見つけたぁぁぁぁ!!」
ダグラスは己が未来を……『読心』を捕らえ、ステータス値を奪い最強となった自分の姿を夢想し、歓喜する。
「――魔物共、『読心』を捕らえろぉぉぉぉ!」
『読心』の魔女イデアを捕らえるため、殺到する魔物たち。
「ふえっ、ふえっ、ふえっ……馬鹿だね……」
そうイデアの声が頭に響いたその瞬間、場の魔力が急激に膨れ上がる。
「――な、なんだっ⁉︎ 一体、なにがっ……」
この場の空間を歪めるほど膨れ上がった魔力。魔力は魔物たちを覆い。数多のベクトルが宙に浮かび上がると、どこからともなく轟音が上がり、一瞬にして、魔物たちの体がバラバラとなる。
唖然とした表情を浮かべていると、ペンションハウスから一人の子供が出てきた。
体中を血の色に染め立つ傭兵団の団長、ダグラスは、腹を刺され脂汗を流すドワーフに声を掛ける。
「――そうだとしたら? お主は……力を求め……なにをするつもりだ?」
生き絶え絶えとなりながらも、そう呟くとダグラスは意気揚々と告げる。
「そんなことは決まっている……私が目指すのは最強の頂。そして、今、私はあなた方の上に立ったっ! 他でもない、悪名高き『使役』の上に立ったのだっ!」
その言葉を聞き、ブルーノは苦笑する。
「――くだらぬことだ……」
「そうかい? しかし、私にとっては大事なことなのだよ。お前たちにはわからないだろうな。『回復』と『指揮』……他人を支援する……ただそれだけのスキルしか授かることのできなかったこの私の悔しさがっ!」
ダグラスは、血が滴った剣の刃先を地面に擦りながらブルーノに向かって歩き出す。
「私はね。小さい頃、馬鹿にされ続けてきた。他人の支援をするしか能のない腰抜けダグラスとね。あなた方にはわからないだろう。だからこそ私は力を求めた! スキルに頼らず、己の剣技を磨き『付与』のスキルホルダーを見付けては、その力を搾取して、ようやくここまで来たんだっ! 私が傭兵団を立ち上げたのもそう。全ては力を求めてのこと……まあ、その傭兵団もあなた方に潰されてしまったようだがね……」
所彼処に散らばった団員たちの死骸。
ミギーの持っていたスキル『リライフ』を『同族殺し』の力で取り込んだからだろう。今、すべてのライフがこの身に集まって来ている。
「……しかし、彼らの死も無駄ではなかった。なぜなら、ここで亡くなったすべての同胞のライフがこの私に集まっているのだからね。ミギーも良いスキルを残して逝ってくれたよ(――本当は、『使役』のスキルも欲しかったが、種族が違うためか、上手くスキルを抜き取ることができないようだな……だが、まあいい……)」
「――がっ⁉」
持っていた剣でブルーノの四肢を切り裂くと、ダグラスは深い笑みを浮かべる。
「……お前は後回しだ。後でじっくりとステータス値を奪い取ってやる。だから、今は、そこで寝ていろ」
「ぐっ……!」
ダグラスの言葉に、悔しそうに唇を噛むブルーノ。
「(――このまま行かせてなるものか……婆さんとノアは夢の中にいるはず……このまま行かせては……婆さんが……ノアが……!)――大蛇よ! この者を……!」
大蛇が動き出すその瞬間、大蛇の頭にダグラスの体から出た光の玉が入り込み動きを止めた。
「――な、なんじゃと……⁉」
驚愕の表情を浮かべるブルーノ。
対するダグラスは呆れた表情を浮かべた。
「……無駄。ミギーの持っていたスキル『リライフ』で大蛇の脳を支配した。知っているかい? 脳の構造っていうのは、魔物であろうが人であろうが基本的に同じなんだよ。つまり、脳さえ支配してしまえば、どんな魔物でも操ることができるということさ――つまりは……」
ダグラスの言葉にブルーノは目を見開き口を大きく開ける。
「……こんなこともできるという訳さ」
ダグラスの体から溢れ出た光の玉の数々。
それらが、ブルーノにより格子状となった魔戦斧・666に吸収されると、姿を変え悪魔となって格子から這い出てきた。
「ば、馬鹿な……」
驚くブルーノを見て、ダグラスは嬉しそうに笑う。
「――いいね。その表情……その表情が見れただけで、十分さ。まあ、そこで待っていなよ。この私によってすべてが蹂躙される。その様をね……」
笑いながらそう言うと、魔戦斧・666から這い出てきた悪魔たちが森の中心へ向かっていく。
(――『使役』は捕らえた。後は『読心』を捕らえステータス値を奪うだけだ……!)
ダグラスの体から溢れ出た光の玉に触れた瞬間、ブルーノが召喚した魔物たちがダグラスの配下に降っていく。
「さあ、ブルーノの召喚した魔物たちよ。その力をもって『読心』を生け捕りにしろぉぉぉぉ!」
ブルーノの手を離れ、魔の森を覆うようにして展開された666体の悪魔と魔物たち。
ダグラスの命を受けた魔物たちは、読心の魔女イデアとノアを捕らえるため、森の中心へと向かっていく。
「もうすぐだ。もうすぐ私は二人分の到達者のステータス値をこの手に……(――そうすれば、もう私を止めることができる者は存在しない……すべては私の思いのままだっ!)」
大蛇の背に乗り森の中心部に近付くと、小さなペンションハウスがあることに気付く。その側に慌てた表情を浮かべる『読心』の姿を視認する。
「――見つけたぁぁぁぁ!!」
ダグラスは己が未来を……『読心』を捕らえ、ステータス値を奪い最強となった自分の姿を夢想し、歓喜する。
「――魔物共、『読心』を捕らえろぉぉぉぉ!」
『読心』の魔女イデアを捕らえるため、殺到する魔物たち。
「ふえっ、ふえっ、ふえっ……馬鹿だね……」
そうイデアの声が頭に響いたその瞬間、場の魔力が急激に膨れ上がる。
「――な、なんだっ⁉︎ 一体、なにがっ……」
この場の空間を歪めるほど膨れ上がった魔力。魔力は魔物たちを覆い。数多のベクトルが宙に浮かび上がると、どこからともなく轟音が上がり、一瞬にして、魔物たちの体がバラバラとなる。
唖然とした表情を浮かべていると、ペンションハウスから一人の子供が出てきた。
9
お気に入りに追加
233
あなたにおすすめの小説
無限の成長 ~虐げられし少年、貴族を蹴散らし頂点へ~
りおまる
ファンタジー
主人公アレクシスは、異世界の中でも最も冷酷な貴族社会で生まれた平民の少年。幼少の頃から、力なき者は搾取される世界で虐げられ、貴族たちにとっては単なる「道具」として扱われていた。ある日、彼は突如として『無限成長』という異世界最強のスキルに目覚める。このスキルは、どんなことにも限界なく成長できる能力であり、戦闘、魔法、知識、そして社会的な地位ですらも無限に高めることが可能だった。
貴族に抑圧され、常に見下されていたアレクシスは、この力を使って社会の底辺から抜け出し、支配層である貴族たちを打ち破ることを決意する。そして、無限の成長力で貴族たちを次々と出し抜き、復讐と成り上がりの道を歩む。やがて彼は、貴族社会の頂点に立つ。

固有スキルガチャで最底辺からの大逆転だモ~モンスターのスキルを使えるようになった俺のお気楽ダンジョンライフ~
うみ
ファンタジー
恵まれない固有スキルを持って生まれたクラウディオだったが、一人、ダンジョンの一階層で宝箱を漁ることで生計を立てていた。
いつものように一階層を探索していたところ、弱い癖に探索者を続けている彼の態度が気に入らない探索者によって深層に飛ばされてしまう。
モンスターに襲われ絶体絶命のピンチに機転を利かせて切り抜けるも、ただの雑魚モンスター一匹を倒したに過ぎなかった。
そこで、クラウディオは固有スキルを入れ替えるアイテムを手に入れ、大逆転。
モンスターの力を吸収できるようになった彼は深層から無事帰還することができた。
その後、彼と同じように深層に転移した探索者の手助けをしたり、彼を深層に飛ばした探索者にお灸をすえたり、と彼の生活が一変する。
稼いだ金で郊外で隠居生活を送ることを目標に今日もまたダンジョンに挑むクラウディオなのであった。
『箱を開けるモ』
「餌は待てと言ってるだろうに」
とあるイベントでくっついてくることになった生意気なマーモットと共に。
異世界召喚されたら無能と言われ追い出されました。~この世界は俺にとってイージーモードでした~
WING/空埼 裕@書籍発売中
ファンタジー
1~8巻好評発売中です!
※2022年7月12日に本編は完結しました。
◇ ◇ ◇
ある日突然、クラスまるごと異世界に勇者召喚された高校生、結城晴人。
ステータスを確認したところ、勇者に与えられる特典のギフトどころか、勇者の称号すらも無いことが判明する。
晴人たちを召喚した王女は「無能がいては足手纏いになる」と、彼のことを追い出してしまった。
しかも街を出て早々、王女が差し向けた騎士によって、晴人は殺されかける。
胸を刺され意識を失った彼は、気がつくと神様の前にいた。
そしてギフトを与え忘れたお詫びとして、望むスキルを作れるスキルをはじめとしたチート能力を手に入れるのであった──
ハードモードな異世界生活も、やりすぎなくらいスキルを作って一発逆転イージーモード!?
前代未聞の難易度激甘ファンタジー、開幕!

投擲魔導士 ~杖より投げる方が強い~
カタナヅキ
ファンタジー
魔物に襲われた時に助けてくれた祖父に憧れ、魔術師になろうと決意した主人公の「レノ」祖父は自分の孫には魔術師になってほしくないために反対したが、彼の熱意に負けて魔法の技術を授ける。しかし、魔術師になれたのにレノは自分の杖をもっていなかった。そこで彼は自分が得意とする「投石」の技術を生かして魔法を投げる。
「あれ?投げる方が杖で撃つよりも早いし、威力も大きい気がする」
魔法学園に入学した後も主人公は魔法を投げ続け、いつしか彼は「投擲魔術師」という渾名を名付けられた――
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

俺だけ成長限界を突破して強くなる~『成長率鈍化』は外れスキルだと馬鹿にされてきたけど、実は成長限界を突破できるチートスキルでした~
つくも
ファンタジー
Fランク冒険者エルクは外れスキルと言われる固有スキル『成長率鈍化』を持っていた。
このスキルはレベルもスキルレベルも成長効率が鈍化してしまう、ただの外れスキルだと馬鹿にされてきた。
しかし、このスキルには可能性があったのだ。成長効率が悪い代わりに、上限とされてきたレベル『99』スキルレベル『50』の上限を超える事ができた。
地道に剣技のスキルを鍛え続けてきたエルクが、上限である『50』を突破した時。
今まで馬鹿にされてきたエルクの快進撃が始まるのであった。

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる