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第40話 傭兵団VS『使役』①
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「――な、なぜ、こんな所に『使役』が……ま、まさか……」
突然現れた『使役』のドワーフこと、ブルーノを見てガリアは驚き慌てふためく。
(まさか、この檻の……『魔戦斧・666』の力を封じているミギー団長を始末しにっ……!?)
そんな中、ミギーだけは『使役』のドワーフを間近に見て笑みを浮かべた。
「はいはいはいはい。みんな、落ち着いて――いやぁ、良かったじゃあないか。探す手間が省けた。この爺さんが『使役』のドワーフ、名前は確か……ブルーノ・ケルンだったかな?」
「ほう。ワシのことを知っているか……そうじゃよ。ワシはブルーノ・ケルン。お主が言うように巷では、『使役』のドワーフと呼ばれておる。それで……なぜ、ワシがここに来たのか、わかるかのぅ?」
ブルーノがそう言った瞬間、場の空気が殺意に満ちて重くなる。
「うーん。俺を殺すために来たのかな? 態々、ご苦労なことだ。見てわからないかな? ここには数十人を超える団員たちがいる。ただの団員ではない。準到達者を三人抱えるダグラス傭兵団さ。例え君があの『使役』のドワーフだとして、ここにいる団員たちを倒すことができると本気で思っているのか? 確かに、あんたの強さは認めるが……図に乗るなよクソ爺……」
殺意を直接、ぶつけられたミギーがあっけからんとした態度でそう言うと、ブルーノは髭を撫でながら笑みを浮かべた。
「――ほう。面白いことを言う。それでは少し試させて貰おうかのぅ」
ブルーノは、ストレージから一本の戦斧を取り出すと、戦斧の中心に填められた銀色の魔石に魔力を込める。
「……な、なにをする気だっ!?」
「へえっ……」
ブルーノの行動に警戒心を顕わにするガリア。
ミギーはブルーノが宙から取り出した斧を興味津々といった様子だ。
戦斧の中心に填められた銀色の魔石。
その魔石から伸びた銀色の光は、ブルーノの前で卵のような球体を形取ると、ドクンドクンと胎動を始めた。
「――さて、お主等は、白虎の猛攻に抗うことができるかな?」
ブルーノがそう呟いた瞬間、卵はヒビ割れ、中から白い煙が立ち昇ると煙が白虎を形取っていく。
白銀の体毛に黒の縞模様。10mを超える体躯に、上顎犬歯がサーベル状となった強靭な歯。白虎が上げる『グァロォオオオオゥ――!』という咆哮を聞き、団員たちは顔を強張らせた。
「じ、冗談じゃないっ!」
「こ、こんな化け物、相手にしていられるかっ!?」
そう声を上げその場から逃げ出そうとする数人の団員たち。
そんな団員たちを横目にして、ミギーは呟くように言った。
「――あーあ、敵さんにビビって戦場から逃げるんだ? 敵前逃亡は重罪だよ。恥ずべき所業だ」
ミギーがそう呟くと、逃亡しようとしていた数人の団員が膝を付いて苦しみ始める。
「う、ぐ、苦しいっ……!?」
「さ、寒い。体が……体がどんどん冷たくなっていく……」
そして、そのまま崩れ落ち白目を剥くと、逃亡しようとした団員たちの胸から二つの『ライフ』が浮かび上がり、ミギーの右手へ向かっていく。
「ミギー団長。い、一体、なにをっ……!?」
ガリアがそう尋ねると、ミギーはさも当然のように呟く。
「……なにをって、敵前逃亡は死刑に相当する重罪だろう? だから、裁いたのさ。団長であるこの俺がね」
「で、ですが、なにも行動不能に陥らせなくても……」
「うん? 行動不能?? なにを言っているんだい。君は……?」
「なにをって、言葉の通りですが……」
ガリアは地面に倒れ、白目を剥いた団員たちに視線を向け呟く。
そんなガリアを見て、ミギーはため息を吐いた。
「――あー、ダメダメ。全然、ダメ……ガリア君だったね。君、頭は大丈夫かい? 敵前逃亡を企て実行に移した彼等は死刑に相当する重罪を犯した。だから、団長であるこの俺が罰した。まあ、今、君たちの団員がいないようだから、この俺がそれを代行した訳だが、そこまではわかるかな? わかるよね?」
「――っ! で、ではっ……!?」
ミギーの言葉を理解したガリアは白目を剥いた団員たちに視線を向けたまま呟く。
「……まさか、あの者たちは――」
「そう。この俺に『ライフ』を抜き取られ死んでいる。でも、安心していいよ。彼等の死は無駄なんかじゃあない。新たな『ライフ』のストック作りに協力してくれたとも言える。いわば、彼等はこの俺に命を捧げることで貢献したんだよ。これは誰にでもできるようなことじゃあない。しかし、油断した。よく考えて見れば、話し合いをしている場合でもなかったね……」
「な、なにを――」
意味がわからずそう言うと、直後、ガリアの首に戦斧の刃が突き刺さり首が飛ぶ。
首は放物線を描くように飛んでいくと、そのまま地面に転がった。
ミギーと首を失ったガリアの前には、戦斧を振りかぶったブルーノの姿がある。
「――敵を前に話し合いをするとは、お主等はなにを考えておるのじゃ? お主等の相手は白虎だけでは……うん? これは――」
ガリアの首を刎ね飛ばしたブルーノが感じた異変。
即座にその場から飛び退いた瞬間、ガリアの体が動きブルーノが先程までいた場所に向かって剣が振るわれる。
首を無くしたガリアの胴体が動いたことに驚くブルーノ。
そんなブルーノに視線を向けながらガリアは呟くように言う。
「……ああ、これがミギー団長の『リライフ』の力ですか――」
地面に落ちたガリアの首。
口元を動かし、そう呟くと、ガリアは落ちていた頭を拾い体と首をくっ付ける。
「――これは素晴らしいスキルですね」
そして、ブルーノに向かって剣を付き付けると、ガリアは口から血を流しながら笑みを浮かべた。
突然現れた『使役』のドワーフこと、ブルーノを見てガリアは驚き慌てふためく。
(まさか、この檻の……『魔戦斧・666』の力を封じているミギー団長を始末しにっ……!?)
そんな中、ミギーだけは『使役』のドワーフを間近に見て笑みを浮かべた。
「はいはいはいはい。みんな、落ち着いて――いやぁ、良かったじゃあないか。探す手間が省けた。この爺さんが『使役』のドワーフ、名前は確か……ブルーノ・ケルンだったかな?」
「ほう。ワシのことを知っているか……そうじゃよ。ワシはブルーノ・ケルン。お主が言うように巷では、『使役』のドワーフと呼ばれておる。それで……なぜ、ワシがここに来たのか、わかるかのぅ?」
ブルーノがそう言った瞬間、場の空気が殺意に満ちて重くなる。
「うーん。俺を殺すために来たのかな? 態々、ご苦労なことだ。見てわからないかな? ここには数十人を超える団員たちがいる。ただの団員ではない。準到達者を三人抱えるダグラス傭兵団さ。例え君があの『使役』のドワーフだとして、ここにいる団員たちを倒すことができると本気で思っているのか? 確かに、あんたの強さは認めるが……図に乗るなよクソ爺……」
殺意を直接、ぶつけられたミギーがあっけからんとした態度でそう言うと、ブルーノは髭を撫でながら笑みを浮かべた。
「――ほう。面白いことを言う。それでは少し試させて貰おうかのぅ」
ブルーノは、ストレージから一本の戦斧を取り出すと、戦斧の中心に填められた銀色の魔石に魔力を込める。
「……な、なにをする気だっ!?」
「へえっ……」
ブルーノの行動に警戒心を顕わにするガリア。
ミギーはブルーノが宙から取り出した斧を興味津々といった様子だ。
戦斧の中心に填められた銀色の魔石。
その魔石から伸びた銀色の光は、ブルーノの前で卵のような球体を形取ると、ドクンドクンと胎動を始めた。
「――さて、お主等は、白虎の猛攻に抗うことができるかな?」
ブルーノがそう呟いた瞬間、卵はヒビ割れ、中から白い煙が立ち昇ると煙が白虎を形取っていく。
白銀の体毛に黒の縞模様。10mを超える体躯に、上顎犬歯がサーベル状となった強靭な歯。白虎が上げる『グァロォオオオオゥ――!』という咆哮を聞き、団員たちは顔を強張らせた。
「じ、冗談じゃないっ!」
「こ、こんな化け物、相手にしていられるかっ!?」
そう声を上げその場から逃げ出そうとする数人の団員たち。
そんな団員たちを横目にして、ミギーは呟くように言った。
「――あーあ、敵さんにビビって戦場から逃げるんだ? 敵前逃亡は重罪だよ。恥ずべき所業だ」
ミギーがそう呟くと、逃亡しようとしていた数人の団員が膝を付いて苦しみ始める。
「う、ぐ、苦しいっ……!?」
「さ、寒い。体が……体がどんどん冷たくなっていく……」
そして、そのまま崩れ落ち白目を剥くと、逃亡しようとした団員たちの胸から二つの『ライフ』が浮かび上がり、ミギーの右手へ向かっていく。
「ミギー団長。い、一体、なにをっ……!?」
ガリアがそう尋ねると、ミギーはさも当然のように呟く。
「……なにをって、敵前逃亡は死刑に相当する重罪だろう? だから、裁いたのさ。団長であるこの俺がね」
「で、ですが、なにも行動不能に陥らせなくても……」
「うん? 行動不能?? なにを言っているんだい。君は……?」
「なにをって、言葉の通りですが……」
ガリアは地面に倒れ、白目を剥いた団員たちに視線を向け呟く。
そんなガリアを見て、ミギーはため息を吐いた。
「――あー、ダメダメ。全然、ダメ……ガリア君だったね。君、頭は大丈夫かい? 敵前逃亡を企て実行に移した彼等は死刑に相当する重罪を犯した。だから、団長であるこの俺が罰した。まあ、今、君たちの団員がいないようだから、この俺がそれを代行した訳だが、そこまではわかるかな? わかるよね?」
「――っ! で、ではっ……!?」
ミギーの言葉を理解したガリアは白目を剥いた団員たちに視線を向けたまま呟く。
「……まさか、あの者たちは――」
「そう。この俺に『ライフ』を抜き取られ死んでいる。でも、安心していいよ。彼等の死は無駄なんかじゃあない。新たな『ライフ』のストック作りに協力してくれたとも言える。いわば、彼等はこの俺に命を捧げることで貢献したんだよ。これは誰にでもできるようなことじゃあない。しかし、油断した。よく考えて見れば、話し合いをしている場合でもなかったね……」
「な、なにを――」
意味がわからずそう言うと、直後、ガリアの首に戦斧の刃が突き刺さり首が飛ぶ。
首は放物線を描くように飛んでいくと、そのまま地面に転がった。
ミギーと首を失ったガリアの前には、戦斧を振りかぶったブルーノの姿がある。
「――敵を前に話し合いをするとは、お主等はなにを考えておるのじゃ? お主等の相手は白虎だけでは……うん? これは――」
ガリアの首を刎ね飛ばしたブルーノが感じた異変。
即座にその場から飛び退いた瞬間、ガリアの体が動きブルーノが先程までいた場所に向かって剣が振るわれる。
首を無くしたガリアの胴体が動いたことに驚くブルーノ。
そんなブルーノに視線を向けながらガリアは呟くように言う。
「……ああ、これがミギー団長の『リライフ』の力ですか――」
地面に落ちたガリアの首。
口元を動かし、そう呟くと、ガリアは落ちていた頭を拾い体と首をくっ付ける。
「――これは素晴らしいスキルですね」
そして、ブルーノに向かって剣を付き付けると、ガリアは口から血を流しながら笑みを浮かべた。
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