『付与』して『リセット』!ハズレスキルを駆使し、理不尽な世界で成り上がる!

びーぜろ@転移世界のアウトサイダー発売中

文字の大きさ
上 下
37 / 47

第36話 鍛練の裏側で……②

しおりを挟む
 スキルを移すため、ポケットから『同化のピアス』を取り出すと、ダグラスは笑いながら首輪に付けられた鎖を引く。

「――うっ⁉︎」

 苦しそうに両手で隷属の首輪を掴むレジーナ。
 ダグラスはレジーナの手を取ると、『同化のピアス』を握らせる。

「……さあ、さあさあさあっ! その『同化のピアス』に君の全ステータス値と今、賜ったばかりの固有スキル『同族殺し』を付与するんだっ!」

『同化のピアス』それはステータス値やスキルを簒奪することを前提に作られた『付与』のスキル保持者専用アイテム。
『付与』のスキル保持者が『同化のピアス』にステータス値とスキルを移し、他の者がそれを身に着ければ、誰でも容易に付与されたスキルを使うことができるようになる。

 ダグラスの命令を受け、隷属の首輪に光が帯びる。

「――う、ううっ、イヤッ……イヤァァァァ!」

 ステータス値とスキルを『同化のピアス』に移せば、どうなるか……
 ダグラスの邪な視線からそれを悟ったレジーナは震え泣きながら声を上げた。

(――なんで、なんで私がこんな目に……なんで私がこんな目に遭わなきゃいけないのよっ!? 私は……私はただ十歳の頃、『付与』のスキルを授かっただけじゃない――!)

 レジーナの心に宿る憎悪の炎。
 自分にこんなスキルを与えた神を呪い、自分を利用しようとするすべての人に心の中で怨嗟の言葉を投げかける。

(――許さない。絶対に許さないっ! 私は呪う。呪うわ。神を……私を苦しめるすべての者を……そして、私からすべてを奪い、笑みを浮かべる。この異常者をっ……! 絶対に呪ってや……る……)

「――ァァァァ……」

 自分のすべてが奪われる。それを悟った瞬間、レジーナの心に宿った怨嗟の炎。
 ステータス値やスキルが移動すると共に、レジーナの瞳から光が消えていく。
 しかし、レジーナが生前宿した怨嗟の炎は消えることなくステータス値、そして、スキルと共に『同化のピアス』へ移動した。

「――これが『同族殺し』……『同族殺し』のスキルが宿った……」

 レジーナの手から『同化のピアス』を奪い取ると、ダグラスはステンドグラスから差し込んでくる光にそれを当てる。

「ふはっ! ふははははっ! やった! やったぞっ! このスキルさえあれば私は最強だっ!」

 胸の鼓動が高鳴る。高揚が止まらない。

(――折角だ。こいつを殺すことでスキルの効果を試して見るとしよう。これが私の知る『同族殺し』であれば、スキルの効果は……)

『同化のピアス』を左耳に着けたダグラスは、鎖を引きレジーナを手繰り寄せる。
 そして、首輪を掴みレジーナを立ち上がらせ顔を覗き込むと、つまらなそうな表情を浮かべた。

「――ふむ? ……興覚めもいい所だな。死んでいるじゃあないか。しかし、どういうことだ? ステータス値やスキルを付与しただけでは、そんな……まあいい」

 ダグラスはレジーナの死体を床に放ると、ガリアに視線を向ける。

「――ガリア。村人はこの教会の地下に収容されているんだったな?」
「はい。もしや……団長自ら引導を渡すおつもりで?」

『同族殺し』が付与された『同化のピアス』を左指で撫でると、ダグラスは深い笑みを浮かべる。

「――どの道処分する予定だった。それが遅いか早いかの違いだ。私はこれから地下に潜る。お前はこの村に残っている傭兵を引き連れ、ミギーを追え……『使役』を倒し捕縛するにしても人手が必要だろうからな……」

 ミギーの持つスキルの一つに『形状不変化』がある。
 スキルの発動中、ミギーを中心に半径20km以内の物の形状を封じる嫌がらせのようなスキルだが、斧を魔物に変え『使役』するドワーフには絶大な効果を及ぼす。

「はい。かしこまりました……」
「よろしい。それじゃあ、私も地下に向かうとしよう」

『同族殺し』は自ら殺意を持って同族を殺さぬことには発動しないスキル。

(――確か、村人は百人前後いたな……)

 地下へと続く扉を開くと、笑みを浮かべたまま、一歩一歩階段を降りていく。
 その日、教会の地下で人の悲鳴が木霊した。

 ◇◆◇

 まるで侵入を阻むかのように張り巡らされた黒く禍々しい檻。
 魔の森をスッポリ覆うお椀を反転させたかのような檻を見て、ミギー傭兵団の団長・ミギーはポカンとした表情を浮かべる。

「ふへぇ……こいつは凄い。こりゃあ、中々、厄介そうだ……」

(――遠目からじゃわからないこともあるもんだ……これが報告にあった『使役』の作り出した檻。確か、『魔戦斧・666』だったか? おぞましいね。なんというおぞましさだ……格子縞状に張り巡らされた構造物。まるで悪魔が重なり合うように作られているじゃあないか……)

「……確かにこれはダグラスのスキルじゃ荷が重い。檻に張り巡らされた悪魔。中に入り込んだ瞬間、実体化しそうな勢いだ。しかーし、この俺様がいればもう大丈夫……『形状不変化』」

 ミギーが檻に近付き手を触れると、まるで時が止まったかのように木々の動きが制止する。

「――『形状不変化』は物の形状を不変にするスキル。風が木を揺らそうとも木の形状は不変。このスキルを使っている間、『使役』の奴は斧を魔物に変えることはできない。当然、この檻を悪魔に変えることもなぁ……さあ、野郎共っ! 『使役』と『読心』を打倒し捕縛しろぉぉぉぉ!」
「「「おおおおっ!!!!」」」

 ミギーは檻に触れたままそう言うと、魔の森へ傭兵団を送り込んだ。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

異世界召喚されたら無能と言われ追い出されました。~この世界は俺にとってイージーモードでした~

WING/空埼 裕@書籍発売中
ファンタジー
 1~8巻好評発売中です!  ※2022年7月12日に本編は完結しました。  ◇ ◇ ◇  ある日突然、クラスまるごと異世界に勇者召喚された高校生、結城晴人。  ステータスを確認したところ、勇者に与えられる特典のギフトどころか、勇者の称号すらも無いことが判明する。  晴人たちを召喚した王女は「無能がいては足手纏いになる」と、彼のことを追い出してしまった。  しかも街を出て早々、王女が差し向けた騎士によって、晴人は殺されかける。  胸を刺され意識を失った彼は、気がつくと神様の前にいた。  そしてギフトを与え忘れたお詫びとして、望むスキルを作れるスキルをはじめとしたチート能力を手に入れるのであった──  ハードモードな異世界生活も、やりすぎなくらいスキルを作って一発逆転イージーモード!?  前代未聞の難易度激甘ファンタジー、開幕!

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

聖剣を錬成した宮廷錬金術師。国王にコストカットで追放されてしまう~お前の作ったアイテムが必要だから戻ってこいと言われても、もう遅い!

つくも
ファンタジー
錬金術士学院を首席で卒業し、念願であった宮廷錬金術師になったエルクはコストカットで王国を追放されてしまう。 しかし国王は知らなかった。王国に代々伝わる聖剣が偽物で、エルクがこっそりと本物の聖剣を錬成してすり替えていたという事に。 宮廷から追放され、途方に暮れていたエルクに声を掛けてきたのは、冒険者学校で講師をしていた時のかつての教え子達であった。 「————先生。私達と一緒に冒険者になりませんか?」  悩んでいたエルクは教え子である彼女等の手を取り、冒険者になった。 ————これは、不当な評価を受けていた世界最強錬金術師の冒険譚。錬金術師として規格外の力を持つ彼の実力は次第に世界中に轟く事になる————。

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される

こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる 初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。 なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています こちらの作品も宜しければお願いします [イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。 異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。 せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。 そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。 これは天啓か。 俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。

処理中です...