『付与』して『リセット』!ハズレスキルを駆使し、理不尽な世界で成り上がる!

びーぜろ@転移世界のアウトサイダー発売中

文字の大きさ
上 下
36 / 47

第35話 鍛練の裏側で……①

しおりを挟む
 ノアとイデアが鍛錬に打ち込んでいる頃、サクシュ村では魔の森に住む『読心』の魔女・イデアと『使役』のドワーフ・ブルーノの捕獲に向け着実に準備が進んでいた。

「――ふふふっ、今日という日を待ち侘びたぞ……」

 今日は、ダグラスが購入した『付与』のスキル保持者・レジーナの『発現の儀』を行う日。
 スタンピードによる影響でサクシュ村が半壊してから二週間。
 傭兵団の団長・ダグラスはこの日を心待ちにしていた。
 ボロボロになった教会で、逃げられないように隷属の首輪を付け、感情を無くした表情で佇むレジーナを見て、ダグラスはほくそ笑む。

(もうすぐだ。もうすぐ新たなスキルが手に入るっ……)

『付与』のスキル保持者が賜わる二つ目のスキルはどれも強力。後は祭壇を定位置に設置すれば『発現の儀』を行うことができる。
 スタンドグラスの光に照らされる位置に祭壇を設置すると教会内に人が入ってくる気配を感じた。

「――おう。ダグラス、邪魔するぞ?」
「うん? ああ、ミギーか。準備ができたのか?」

 ミギー傭兵団の団長・ミギー・クレナンデッツ。
『使役』と『読心』の捕獲に失敗した時のために呼び出していた傭兵団の団長だ。

 ダグラスの問いにミギーは笑いながら答える。

「おうよ。当然だ。そんなことより、ダグラス。お前が対象の捕獲に失敗するなんて珍しいじゃないか。『使役』と『読心』はそんなに手強い相手だったのか?」
「ああ、あれは手強いなんてもんじゃあない。浅はかだった。準備が足りていなかった。侮っていたよ。お蔭で村もこのザマさ……」

 ダグラスは『使役』のドワーフ・ブルーノとの戦いを脳裏に浮かべ思い返す。

(……あれは信じられない程、強かった。たった、数旬の内に何度、イメージだけで殺されたかわからない。斬撃の鋭さ、手数の多さ……そのすべてが今の私を軽く凌駕していた)

 たった一人。たった一人のドワーフを相手にしてこの体たらくだ。

「――だからこそ、ミギー。お前は侮るなよ。あれは人の形をした災害だ。下手に触れれば大怪我では済まない。そんなことよりも、今、準備ができたと言ったか?」
「ああ、言った。できたぜ。『使役』そして『読心』を捕縛するための準備がな……」
「そうか……! それでは、俺の傭兵団と共に先に向かっていてくれ」

 ミギーに次いで、扉の前で待機するダグラス傭兵団の傭兵・ガリアに視線を向けると、ガリアは黙って頷いた。

「――別にいいけどよ……わかっているだろうな?」
「ああ、わかっているさ。獲物は早い者勝ち……。もし君達が『使役』と『読心』を捕えた際には、相場の倍の価格で買い取ってやるよ」
「へえっ、相場の倍で買ってくれるのか? いいね。そう言われると、やる気が出るってもんだ。それじゃあ、俺は行くぜ。早く来ねーと、折角の獲物がいなくなっちまうかも知れねーぞっ? ふへははははっ!」

 ミギーが教会から出て行くのを見届けると、ダグラスはガリアに視線を向ける。

「……さて、邪魔者はいなくなったな。ガリア。報告を……」

 ダグラスがそう言うと、ガリアは片膝を付いて答える。

「――はい。違法薬物『エムエム』の生育及び精製方法を前村長より聞き出し、その販売ルートを確保致しました」

 ガリアの報告を聞き、ダグラスは深い笑みを浮かべる。

「……そうか。よくやった。ならばこの村にいる必要はなくなったな」

 目ぼしい『付与』のスキル保持者は買い取った。村を占領した際、支払った金も回収している。
 違法薬物『エムエム』の生育及び精製方法を聞き出せれば、こんな村には用はない。
 折を見て行動に移す予定ではあったが丁度良かった。
 理由もなく機密を聞き出し、村を滅ぼしたとあれば、近くにあるユスリ村がサクシュ村に対し調査を行う可能性がある。
 その点ではスタンピードは好都合だった。サクシュ村は魔の森近くに作られた秘密村。村を滅ぼし証拠隠滅するための理由として申し分ない。

「はい。それで……村人たちはどう致しますか?」
「そうだな……飼うにしても、食糧が足りない。売るにしても足が付く。ならば、いっそのこと処分する他ないだろう。まあ、その話は一度、置いておくとして、先にこちらを片付けよう」

 ダグラスはそう言うと、隷属の首輪に付いた鎖を引き『付与』のスキル保持者・レジーナに命令を降す。

「――さあ、レジーナよ。祭壇の前で神々に祈りを捧げろ」
「はい……」

 ダグラスの言葉に隷属の首輪が反応し、レジーナを強制的に祭壇の前に連れて行く。
 そして、祭壇の前に膝を付き、祈りを捧げると、祭壇に置かれた水晶がキラリと光り、地面に光の文字が浮かびあがる。

「ど、『同族殺し』……」

 地面に浮かび上がった『同族殺し』のスキル名。
 それを見たダグラスは瞳孔を開き歓喜した。

「――おお、おおっ! 『同族殺し』……よくやったっ! よくやったぞ、レジーナッ!」

『同族殺し』……それは、自分と同じ種族の他者を殺せば殺すほど、自分のステータスが永続的に底上げされる固有スキルの名前。

(――このスキルがあれば……このスキルがあれば私は最強だっ!)

 心の内側から湧き上がる喜びの感情に焦がされたダグラスは、レジーナに視線を向け深い笑みを浮かべた。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

固有スキルガチャで最底辺からの大逆転だモ~モンスターのスキルを使えるようになった俺のお気楽ダンジョンライフ~

うみ
ファンタジー
 恵まれない固有スキルを持って生まれたクラウディオだったが、一人、ダンジョンの一階層で宝箱を漁ることで生計を立てていた。  いつものように一階層を探索していたところ、弱い癖に探索者を続けている彼の態度が気に入らない探索者によって深層に飛ばされてしまう。  モンスターに襲われ絶体絶命のピンチに機転を利かせて切り抜けるも、ただの雑魚モンスター一匹を倒したに過ぎなかった。  そこで、クラウディオは固有スキルを入れ替えるアイテムを手に入れ、大逆転。  モンスターの力を吸収できるようになった彼は深層から無事帰還することができた。  その後、彼と同じように深層に転移した探索者の手助けをしたり、彼を深層に飛ばした探索者にお灸をすえたり、と彼の生活が一変する。  稼いだ金で郊外で隠居生活を送ることを目標に今日もまたダンジョンに挑むクラウディオなのであった。 『箱を開けるモ』 「餌は待てと言ってるだろうに」  とあるイベントでくっついてくることになった生意気なマーモットと共に。

異世界召喚されたら無能と言われ追い出されました。~この世界は俺にとってイージーモードでした~

WING/空埼 裕@書籍発売中
ファンタジー
 1~8巻好評発売中です!  ※2022年7月12日に本編は完結しました。  ◇ ◇ ◇  ある日突然、クラスまるごと異世界に勇者召喚された高校生、結城晴人。  ステータスを確認したところ、勇者に与えられる特典のギフトどころか、勇者の称号すらも無いことが判明する。  晴人たちを召喚した王女は「無能がいては足手纏いになる」と、彼のことを追い出してしまった。  しかも街を出て早々、王女が差し向けた騎士によって、晴人は殺されかける。  胸を刺され意識を失った彼は、気がつくと神様の前にいた。  そしてギフトを与え忘れたお詫びとして、望むスキルを作れるスキルをはじめとしたチート能力を手に入れるのであった──  ハードモードな異世界生活も、やりすぎなくらいスキルを作って一発逆転イージーモード!?  前代未聞の難易度激甘ファンタジー、開幕!

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

投擲魔導士 ~杖より投げる方が強い~

カタナヅキ
ファンタジー
魔物に襲われた時に助けてくれた祖父に憧れ、魔術師になろうと決意した主人公の「レノ」祖父は自分の孫には魔術師になってほしくないために反対したが、彼の熱意に負けて魔法の技術を授ける。しかし、魔術師になれたのにレノは自分の杖をもっていなかった。そこで彼は自分が得意とする「投石」の技術を生かして魔法を投げる。 「あれ?投げる方が杖で撃つよりも早いし、威力も大きい気がする」 魔法学園に入学した後も主人公は魔法を投げ続け、いつしか彼は「投擲魔術師」という渾名を名付けられた――

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

念動力ON!〜スキル授与の列に並び直したらスキル2個貰えた〜

ばふぉりん
ファンタジー
 こんなスキルあったらなぁ〜?  あれ?このスキルって・・・えい〜できた  スキル授与の列で一つのスキルをもらったけど、列はまだ長いのでさいしょのすきるで後方の列に並び直したらそのまま・・・もう一個もらっちゃったよ。  いいの?

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

俺だけ成長限界を突破して強くなる~『成長率鈍化』は外れスキルだと馬鹿にされてきたけど、実は成長限界を突破できるチートスキルでした~

つくも
ファンタジー
Fランク冒険者エルクは外れスキルと言われる固有スキル『成長率鈍化』を持っていた。 このスキルはレベルもスキルレベルも成長効率が鈍化してしまう、ただの外れスキルだと馬鹿にされてきた。 しかし、このスキルには可能性があったのだ。成長効率が悪い代わりに、上限とされてきたレベル『99』スキルレベル『50』の上限を超える事ができた。 地道に剣技のスキルを鍛え続けてきたエルクが、上限である『50』を突破した時。 今まで馬鹿にされてきたエルクの快進撃が始まるのであった。

処理中です...