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第33話 イデアの鍛練『デッドボール』①

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 ここは、サクシュ村。
 至る所で火の手が上がり数多の魔物により蹂躙されたこの村で、ダグラス傭兵団の団員・ガリアは手に持つ剣で魔物を突き刺し、肩で息をしながら呟くように言う。

「――はあっ、はあっ、はあっ……何人殺られたっ……?」

 ガリアの問いに、団員・リーフは辺りを見渡し苦い表情を浮かべる。

「……十、いや……二十人は殺られたかな?」
「二十人……『使役』の奴。やってくれたな……」

 ダグラス傭兵団は総勢百二十人からなる傭兵団。サクシュ村に常駐させていた団員数は四十人。その内、過半数が今回、発生したスタンピードにより死別。
『使役』と『読心』の監視に当てていた団員八十人もスタンピードにより行方不明となっており傭兵団として甚大な被害を受けていた。

 幸いなことに、村人や栽培していた違法薬物『エムエム』を精製するための植物、マジックマッシュルームは教会の地下に避難した際、村長たちが苗ごと持ち運んだため無事。そのことは、村人の警護をしていた既に報告を受けている。
 しかし、拠点にしていた村がこうもボロボロの状態では……

 教会の扉が開き地下に避難していた村人たちがゾロゾロと中から出てくる。
 そして、村の現状をその目に焼き付けると、誰もが口を閉ざし、地面に膝を付いた。
 村人の中には目に涙を浮かべる者もいる。

 至る所で火の手が上がり、数多の魔物により蹂躙された村の光景を目の当たりにした村人たちが愕然とした表情を浮かべる中、教会に避難していた村長・デイリーが幽鬼のようにふらりふらりと歩き、ガリアの前で立ち止まる。
 そして、ガリアの両肩に手を当て顔を上げると、呟くように言う。

「――な、なんで……なんでこんなことに……」

 村人たちを守っていた団員からなにも聞いていないのだろう。ガリアは、デイリーの眉間にしわを寄せ目を瞑る。

「……『使役』ですよ。『使役』の奴が魔物をこの村に嗾けたのです」
「な、なんですって……!?」

 信じられないと目を見開くデイリー。

 その気持ちはよくわかる。
 事前に聞いていた話とはだいぶ様相が異なるからだ。

「――で、ですが、あなた方は言っていたではありませんかっ!? ダグラス傭兵団には、三人の準到達者が在籍していると……『使役』がどのようなスキルを持っていたとしても問題ない、と言っていたではありませんかっ!?」

 村長であるデイリーはそう言うが、ダグラス傭兵団の団員たちは、団長であるダグラス。そして、デイリー本人からこう聞いていた。

「――確かに、うちの団長がそう言ったかもしれません。しかし、村長……俺たちは『使役』に危害を加えない限り無害であると聞かされてました。この依頼を受ける際、そう話していたのは村長。あなたでしょう?」
「――ううっ!? そ、それは……」

 そう。だからこそ、事を起こすまでの間、見張りに徹していた。
 もちろん、デイリーの言葉を100%信じていた訳ではないが、『使役』の気性に関する情報がいかんせんと情報が少ない。
 しかし、戦力を集め、事を起こすまで見張りに徹すれば問題ないと考えた結果がこれだ。
 我々の見積も甘かった。そのため、そんな不確かな情報を吹き込んできたデイリーが100%悪いとは言わない。しかし、100%こちらが悪いように言われるのは気に食わない。
 こちら側にも看過できぬ程の被害が出ているのだ。

「村長はこう言ってますが、どうします? 団長……?」

 ガリアは遠くで様子を見ていたダグラスに話しかける。
 ダグラスは眉間にしわを寄せると、デイリーに向かって呟くように言った。

「――村長、まずは落ち着いて下さい。こうなった以上、仕方がありません。とりあえず、皆さんには我々の命令に従って頂きます。なにせ食糧も水も限られているのでね。なに、安心して下さい。我々の命令にさえ従って頂ければ命だけは保障してあげますよ。今の所はね……」

 ダグラスの言葉を聞いた傭兵団は村人たちを取り囲む。
 取り囲まれた村人たちは傭兵団を見て真っ青な表情を浮かべた。

 ◇◆◇

 鍛練を重ねること二週間。
 ノアとイデアの二人は変わらず夢の世界にいた。

「ふえっ、ふえっ、ふえっ……惜しかったねぇ?」
「ううっ……今のはいけると思ったのに……」

 現実世界での二週間は、夢の世界ベースで六週間。
 既に一ヶ月半近くの時間を夢の世界で過ごしている。

 夢の世界での六週間。それはもう濃密な時間だった。
 朝、イデア特製ドリンクを飲んでから鍛練が始まり、夢の世界ベースで54時間経過したら、現実世界への帰還。そして、就寝前にイデア特製ドリンクを飲み気絶するように眠り込んでは、口の中に広がるパープル・トードの味で朝、目が覚める。
 そんな毎日を送っている。

 最近、このパープル・トード味の特製ドリンクが美味しく感じてきた。
 なんだか複雑な心境だ。
 イデアさんはパープル・トード味の特製ドリンクが美味しく思えてきたのは大人になった証拠だと言っていたが納得はしていない。イデアさん自身がパープル・トード味の特製ドリンクを飲んでいないからだ。現にイデアさんは、鍛練前、普通にマップルティーを飲んでいる。

 ちなみに今、やっているのは『デッドボール』という名のボールを使った鍛練。
 子供の顔くらいの大きさのボールを使い、相手の頭部以外の身体にボールを当てる鍛練だ。
 一見、簡単そうに見えるこの鍛練も相手がイデアだと途端に難易度が跳ね上がる。
 ボール自体も重いので魔法の補助なしにマトモに投げることができない上、魔力を込めなければ、ボールを投げることすら叶わない。
 なぜか……それはボールに、ボールを投げる方向・威力といった指向性を持たせなければならないためだ。

 簡単に言えば、魔力という名のレールを敷き、ボールという名の列車の向かう先を設定しなければ、デッドボールで使っているボールは前に飛ばないのである。

 しかも、鍛練の相手は『読心の魔女』イデア。
 この鍛練をクリアするためには、イデアが心を読むよりも先にボールに指向性を持たせ当てる必要がある。

 ハッキリ言って無理ゲーだ。

「ふえっ、ふえっ、ふえっ……できないと自分に言い聞かせ諦めることは誰にだってできることさね。手持ちのカードでどうやったら勝てるのかを常に考えな……考えることを止めなければ、必ず答えが見つかるはずだよ。解答のない問題なんてないのだからね……」

(――少なくとも、私は答えのある問題しか出さない。既にノアは私に勝てるだけのポテンシャルを持っているんだからねぇ……)

「で、でも……」
「……仕方のない子だね。それじゃあ、一つだけ――」

 弱気なことを言うノアにイデアは一本指を立てる。

「――デッドボールは、ボールを投げて相手に当てる鍛練だよ。どうやって、ボールを当てるかではなく、どうやったら当たるのか……どう相手を動かしたら当てることができるのかを考えながら動いてごらん……」

 四方は壁で囲われている。この鍛練では、バウンドしたボールでも当たれば勝ちなのだ。
 この鍛練の目的は、魔力の扱い方の向上及び相手の動きを意図通り動かす技術の取得にある。

 イデアはそう言うと、ボールをノアに投げ渡した。
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