『付与』して『リセット』!ハズレスキルを駆使し、理不尽な世界で成り上がる!

びーぜろ@転移世界のアウトサイダー発売中

文字の大きさ
上 下
32 / 47

第31話 その頃の傭兵団は……③

しおりを挟む
 まるで侵入を阻むかのように張り巡らされた黒く禍々しい檻。
 サクシュ村に向かって暴走する魔物。
 村に駐留している傭兵たちが応戦しているが、魔物の数に対してあまりに戦力が足りない。
 戦況は圧倒的にこちら側が不利だ。

(このままでは拙い……)

『使役』と『読心』の動向を探るため、見張りを付けたのが拙かったか……
 まさか、拠点としている村まで巻き込み仕掛けてくるとは……
 ダグラスはブルーノから目を離さず考える。

(逃げ帰るか、立ち向かうか、か……どうする。私はどうしたらいい……目の前に『使役』の奴がいる……)

 恐らく『使役』を倒せば、魔物の暴走は止まる。
 しかし、魔物が村に到達している以上、早く加勢に行かなければ村が……サクシュ村が魔物によって蹂躙されてしまう。

 サクシュ村の存在は、傭兵団にとって非常に重要だ。
『付与』のスキル保持者も違法薬物もこの村でしか手に入らない。
 なにより、『使役』と『読心』を捕え、スキルとステータスを奪うために絶対になくてはならない拠点の一つ。

(――っ!? そうだ。『鑑定』すればいい。『使役』の奴を鑑定し、スキルを『共有』すれば、魔物たちの侵攻を止めることができるはず……いや、そうでなくては困るっ! そうと決まれば……『鑑定』!)

 サクシュ村で戦う傭兵一人のスキルを『共有』すると、ブルーノに気付かれぬよう『鑑定』する。

 ◆――――――――――――――――――◆
【名 前】ブルーノ・ケルン
【年 齢】150    【レベル】‌90
【スキル】付与   【ジョブ】斧匠
     ストレージ
【特 殊】鑑定眼
【STR】体力:95    魔力:60
     攻撃:100(MAX)  防御:100(MAX) 
     知力:70    運命:70
 ◆――――――――――――――――――◆

 右眼の前に浮かび上がる魔法陣。
 そこに表示されたステータスを見てダグラスは愕然とした表情を浮かべた。

(――な、持っているスキルは『付与』そして『ストレージ』だけだと……!)

『付与』は、謂わずと知れた自身のステータスとスキルを他人に与えるハズレスキル。そして、『ストレージ』は、スキル名から察するに物を収納するただそれだけのスキル……

(――【ジョブ】に『斧匠』とある。『斧匠』とは、優れた斧職人の到達点……ま、まさか『使役』とは、魔物を操るスキルを持った『付与』スキル保持者ではなく、大蛇を召喚したように、斧を介して魔物を召喚するドワーフを現す二つ名だったのかっ……!? ならば……だとしたら拙いっ……! この魔物の侵攻を……止める手段がないということになるっ!)

「随分と長く思い悩んでいるようじゃのぅ……」
「――な、いつの間にっ!?」

 考え事をしている最中、突如として目前に現れたブルーノ。
 ダグラスは目を見開かせる。

「――言ったじゃろう? ワシも暇ではないと……ワシ等に残された時間はそう永くない。まだまだ寿命が残されているお主等と違い時間がないのじゃよ。問答する時間すら惜しいと思ってしまう程にのぅ……」

 言葉と共に容赦なく振られる魔戦斧。
 ブルーノが薙いだ魔戦斧がダグラスの脇腹を掠める。

「ぐうっ! この老い耄れがぁぁぁぁ!」

 ダグラスは脇腹に負った傷に手を添えると、『回復』のスキルで止血し後ろに飛び退いた。
 脇腹を掠めただけとはいえ、その魔戦斧を振ったのは到達者であるブルーノだ。
 魔戦斧が脇腹を掠めただけで周囲の肉が持っていかれる。

(――ま、拙い。ここまで力の差があるとは……!)

 止血した脇腹に目を向けると、そこには握り拳一個分、腹に穴が開いていた。
 それを認識した瞬間、体の内側から喉になにかがせり上がってくる。

「ぐっ、がはっ……!?」

 口から出た赤い吐瀉物を見て、ダグラスは苦笑いを浮かべる。

(……内臓も持っていかれたか、いよいよだな)

『使役』と『読心』が到達者であることは知っていた。
 しかし、ダグラスはどこかで慢心していた。見誤っていた。
 他人にできないことも、自分にならそれができると……
 準到達者としてのステータス……そして、『共有』という最強のスキルを手に入れたことで、自己効力感に浸っていた。
 目標を達成するための力を持っているとそう認識していた。

(――しかし、それは誤りだった……)

「さて、そろそろ、終わりにしようかのぅ」

 距離を取ったつもりが、いつの間にか目の前には、止めを刺すため魔戦斧を振り上げるブルーノの姿がある。

(――足りなかった。力が……スキルが……だが、しかし……)

「――こんな所で、終れる訳がねぇだろうがぁぁぁぁ!」

 口から血を吐きながらも持っていた剣でブルーノの魔戦斧を弾き、息を荒く吐きながら再度距離を取る。

「――ほう。その体でよくやるわぃ……」

 ブルーノの口から出た賞賛の言葉。
 ダグラスは剣をブルーノに向けて構えると、笑みを浮かべた。

(――『使役』。確かに強い。戦ってみてよくわかったよ。あんたと戦うにはまだ早いってことがな……だからっ……!)

「……撤退させてもらおう。今の私ではお前を倒せないことがよくわかった」

(――だが、後、二週間。二週間待てば手が届く……)

「ふむ。賢明な判断じゃな、だが……このワシが手負いのお主を逃がすと思うか?」
「思うね……」
「――ほう。そうか……」

 そう呟くと共に飛んでくる斬撃。
 それを視界に捉えながらダグラスは呟いた。

「――『転移』」

 その瞬間、ブルーノの前からダグラスの姿が掻き消える。
『転移』したダグラスの視線の先には、赤く燃え盛るサクシュ村の姿があった。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

固有スキルガチャで最底辺からの大逆転だモ~モンスターのスキルを使えるようになった俺のお気楽ダンジョンライフ~

うみ
ファンタジー
 恵まれない固有スキルを持って生まれたクラウディオだったが、一人、ダンジョンの一階層で宝箱を漁ることで生計を立てていた。  いつものように一階層を探索していたところ、弱い癖に探索者を続けている彼の態度が気に入らない探索者によって深層に飛ばされてしまう。  モンスターに襲われ絶体絶命のピンチに機転を利かせて切り抜けるも、ただの雑魚モンスター一匹を倒したに過ぎなかった。  そこで、クラウディオは固有スキルを入れ替えるアイテムを手に入れ、大逆転。  モンスターの力を吸収できるようになった彼は深層から無事帰還することができた。  その後、彼と同じように深層に転移した探索者の手助けをしたり、彼を深層に飛ばした探索者にお灸をすえたり、と彼の生活が一変する。  稼いだ金で郊外で隠居生活を送ることを目標に今日もまたダンジョンに挑むクラウディオなのであった。 『箱を開けるモ』 「餌は待てと言ってるだろうに」  とあるイベントでくっついてくることになった生意気なマーモットと共に。

異世界召喚されたら無能と言われ追い出されました。~この世界は俺にとってイージーモードでした~

WING/空埼 裕@書籍発売中
ファンタジー
 1~8巻好評発売中です!  ※2022年7月12日に本編は完結しました。  ◇ ◇ ◇  ある日突然、クラスまるごと異世界に勇者召喚された高校生、結城晴人。  ステータスを確認したところ、勇者に与えられる特典のギフトどころか、勇者の称号すらも無いことが判明する。  晴人たちを召喚した王女は「無能がいては足手纏いになる」と、彼のことを追い出してしまった。  しかも街を出て早々、王女が差し向けた騎士によって、晴人は殺されかける。  胸を刺され意識を失った彼は、気がつくと神様の前にいた。  そしてギフトを与え忘れたお詫びとして、望むスキルを作れるスキルをはじめとしたチート能力を手に入れるのであった──  ハードモードな異世界生活も、やりすぎなくらいスキルを作って一発逆転イージーモード!?  前代未聞の難易度激甘ファンタジー、開幕!

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

投擲魔導士 ~杖より投げる方が強い~

カタナヅキ
ファンタジー
魔物に襲われた時に助けてくれた祖父に憧れ、魔術師になろうと決意した主人公の「レノ」祖父は自分の孫には魔術師になってほしくないために反対したが、彼の熱意に負けて魔法の技術を授ける。しかし、魔術師になれたのにレノは自分の杖をもっていなかった。そこで彼は自分が得意とする「投石」の技術を生かして魔法を投げる。 「あれ?投げる方が杖で撃つよりも早いし、威力も大きい気がする」 魔法学園に入学した後も主人公は魔法を投げ続け、いつしか彼は「投擲魔術師」という渾名を名付けられた――

俺だけ成長限界を突破して強くなる~『成長率鈍化』は外れスキルだと馬鹿にされてきたけど、実は成長限界を突破できるチートスキルでした~

つくも
ファンタジー
Fランク冒険者エルクは外れスキルと言われる固有スキル『成長率鈍化』を持っていた。 このスキルはレベルもスキルレベルも成長効率が鈍化してしまう、ただの外れスキルだと馬鹿にされてきた。 しかし、このスキルには可能性があったのだ。成長効率が悪い代わりに、上限とされてきたレベル『99』スキルレベル『50』の上限を超える事ができた。 地道に剣技のスキルを鍛え続けてきたエルクが、上限である『50』を突破した時。 今まで馬鹿にされてきたエルクの快進撃が始まるのであった。

念動力ON!〜スキル授与の列に並び直したらスキル2個貰えた〜

ばふぉりん
ファンタジー
 こんなスキルあったらなぁ〜?  あれ?このスキルって・・・えい〜できた  スキル授与の列で一つのスキルをもらったけど、列はまだ長いのでさいしょのすきるで後方の列に並び直したらそのまま・・・もう一個もらっちゃったよ。  いいの?

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

処理中です...