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第28話 一方、サクシュ村では……
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サクシュ村。それは、とある目的のために作られた国も知らない秘密村。
この村には、まだ固有スキルを授かっていない十歳未満の子供が集められる。
その目的は主に二つ。
一つ目は、『付与』のスキル保持者そして、売買用の奴隷を確保するため。
『付与』のスキルを発現する人間は極めて稀だ。
ステータスを他人に譲渡できるだけではなく、非常に強力なスキルを賜わることが知られている。
そのことが知られるや否や数多くの『付与』のスキル保持者が狙われた。
しかし、ここ数年、とある国の台頭により、表立って『付与』のスキル保持者を取引することが禁じられてしまった。当然、その中にはスキルやステータスの奪取の禁止も含まれる。そのため、サクシュ村では、国のお偉い方々が欲しがる『付与』のスキル保持者を確保するため、秘密裏に十歳未満の子供を集めている。
しかし、それだけのために子供を育てるのは非常にお金がかかる。
そのため、サクシュ村では、奴隷売買に手を染めていた。
売買する奴隷は見目麗しい者、または、売却先に適したスキルを持つ者が選ばれ、それ以外の者は、幾ばくかの金を握らせ、『魔の森』に廃棄することにしている。
サクシュ村の奴隷は、皆、目が死んでおらず生きが良い。
それもそのはず……この村で育った子供たちはいつか親が迎えに来てくれると信じ、のびのび育てられる。
そして、十五歳を迎えると大半の子供が『両親が見つかった』という体で奴隷として出荷される。
また廃棄される子供は、幾ばくかの金を渡し『魔の森』の向こう側にあるユスリ村を目指させるため、自分が廃棄対象であることに気付かない。
廃棄対象となりそうな子供には事前に『このサクシュ村では、働き口がないため、一部の希少なスキルを賜わった者を除き、孤児院で育った者は皆、魔の森の向こう側にあるユスリ村に行くしかない』と伝えてあるから尚更だ。
二つ目は、栽培が禁止されている植物の栽培をするためだ。
『魔の森』には、魔素と呼ばれる魔力を通じて魔法などの現象を引き起こす元素が多く存在しており、違法薬物『エムエム』の原料・マジックマッシュルームの栽培に適した環境にある。
しかも、このマジックマッシュルームはどういうことか、魔力の低い子供にしか栽培することができない。
そのため、子供たちには十五歳となりスキルを賜わるまでの間、マジックマッシュルームの栽培をさせている。
「村長さーん! 今日も一杯とれたよっ!」
サクシュ村の村長・デイリーは、笑みを浮かべながら子供たちの頭を撫でると、マジックマッシュルームの入った籠に視線を向ける。
「――ああ、本当だ。一杯とれたね。ご苦労様。君たちの頑張りのお陰でみんなを幸せにする薬をたくさん作ることができそうだ。ありがとう」
「えへへっー!」
子供たちは人の人生を狂わす違法薬物の栽培をしていることに気付かず、褒められたことに対して満面の笑顔を浮かべる。
すると、子供たちは思い出したかのように言った。
「あっ、そういえば、最近、ウールお兄ちゃんの姿が見えないんだけど、村長さんはどこに行ったか知らない?」
「レジーナ姉ちゃんもー!」
ウールとレジーナとは、数年前に『付与』のスキルを賜り、ダグラス傭兵団に売り払った子供の名前である。
「うん? ああ、そういえば傭兵団の中にウールとレジーナのご家族がいたんだったな……もしかしたら、ダグラス傭兵団の新しい団員として『魔の森』で訓練をしているかもしれないよ。ウールもレジーナもご家族が見つかって喜んでいたみたいだったからね」
既にウールとレジーナはダグラス傭兵団に売却済み。
レジーナはわからないが、ウールは先日、十五歳を迎えスキルを賜ったことで用済みとなり、スキルとステータスを奪われ『魔の森』に捨てられている頃だろう。
「いいなー、ウールお兄ちゃんもレジーナお姉ちゃんも親が見つかって……」
「ふふふっ、安心しなさい。良い子にしていれば、きっとご両親が迎えに来てくれるさ」
デイリーは子供たちの頭を撫でながらそう言う。
(――君たちはそれなりに優秀なスキルを持っている。ちゃんと、高値で売って上げるから安心しなさい)
内心では、そんなことを思いながら……
すると、村中に『――カンカンカンカンカンッ!』と、警鐘が鳴り響く。
「うん? この警鐘は……ま、まさか……スタンピードッ!?」
スタンピードとは、魔物の集団が、興奮や恐怖などのために突然同じ方向へ走り始める現象。鐘の音が五回……これは『魔の森』で魔物のスタンピードが発生したことを意味している。
デイリーは顔を青褪めさせると、採取したばかりのマジックマッシュルーム入ったの籠を持ち、慌てて声を上げた。
「マ、マジックマッシュルームを持って教会の地下室に避難しないさいっ! 早くっ!」
「は、はいっ!」
「わ、わかりましたっ!!」
子供たちはデイリーに言われた通り、マジックマッシュルームの入った籠を持つと教会に向かって走っていく。
(――い、一体、なにが起こっているんだっ!? スタンピードなんてこの村始まって以来の出来事だぞっ‼)
ブルーノが人為的に引き起こしたスタンピード。
魔物の波は村の近くまで押し寄せてきていた。
この村には、まだ固有スキルを授かっていない十歳未満の子供が集められる。
その目的は主に二つ。
一つ目は、『付与』のスキル保持者そして、売買用の奴隷を確保するため。
『付与』のスキルを発現する人間は極めて稀だ。
ステータスを他人に譲渡できるだけではなく、非常に強力なスキルを賜わることが知られている。
そのことが知られるや否や数多くの『付与』のスキル保持者が狙われた。
しかし、ここ数年、とある国の台頭により、表立って『付与』のスキル保持者を取引することが禁じられてしまった。当然、その中にはスキルやステータスの奪取の禁止も含まれる。そのため、サクシュ村では、国のお偉い方々が欲しがる『付与』のスキル保持者を確保するため、秘密裏に十歳未満の子供を集めている。
しかし、それだけのために子供を育てるのは非常にお金がかかる。
そのため、サクシュ村では、奴隷売買に手を染めていた。
売買する奴隷は見目麗しい者、または、売却先に適したスキルを持つ者が選ばれ、それ以外の者は、幾ばくかの金を握らせ、『魔の森』に廃棄することにしている。
サクシュ村の奴隷は、皆、目が死んでおらず生きが良い。
それもそのはず……この村で育った子供たちはいつか親が迎えに来てくれると信じ、のびのび育てられる。
そして、十五歳を迎えると大半の子供が『両親が見つかった』という体で奴隷として出荷される。
また廃棄される子供は、幾ばくかの金を渡し『魔の森』の向こう側にあるユスリ村を目指させるため、自分が廃棄対象であることに気付かない。
廃棄対象となりそうな子供には事前に『このサクシュ村では、働き口がないため、一部の希少なスキルを賜わった者を除き、孤児院で育った者は皆、魔の森の向こう側にあるユスリ村に行くしかない』と伝えてあるから尚更だ。
二つ目は、栽培が禁止されている植物の栽培をするためだ。
『魔の森』には、魔素と呼ばれる魔力を通じて魔法などの現象を引き起こす元素が多く存在しており、違法薬物『エムエム』の原料・マジックマッシュルームの栽培に適した環境にある。
しかも、このマジックマッシュルームはどういうことか、魔力の低い子供にしか栽培することができない。
そのため、子供たちには十五歳となりスキルを賜わるまでの間、マジックマッシュルームの栽培をさせている。
「村長さーん! 今日も一杯とれたよっ!」
サクシュ村の村長・デイリーは、笑みを浮かべながら子供たちの頭を撫でると、マジックマッシュルームの入った籠に視線を向ける。
「――ああ、本当だ。一杯とれたね。ご苦労様。君たちの頑張りのお陰でみんなを幸せにする薬をたくさん作ることができそうだ。ありがとう」
「えへへっー!」
子供たちは人の人生を狂わす違法薬物の栽培をしていることに気付かず、褒められたことに対して満面の笑顔を浮かべる。
すると、子供たちは思い出したかのように言った。
「あっ、そういえば、最近、ウールお兄ちゃんの姿が見えないんだけど、村長さんはどこに行ったか知らない?」
「レジーナ姉ちゃんもー!」
ウールとレジーナとは、数年前に『付与』のスキルを賜り、ダグラス傭兵団に売り払った子供の名前である。
「うん? ああ、そういえば傭兵団の中にウールとレジーナのご家族がいたんだったな……もしかしたら、ダグラス傭兵団の新しい団員として『魔の森』で訓練をしているかもしれないよ。ウールもレジーナもご家族が見つかって喜んでいたみたいだったからね」
既にウールとレジーナはダグラス傭兵団に売却済み。
レジーナはわからないが、ウールは先日、十五歳を迎えスキルを賜ったことで用済みとなり、スキルとステータスを奪われ『魔の森』に捨てられている頃だろう。
「いいなー、ウールお兄ちゃんもレジーナお姉ちゃんも親が見つかって……」
「ふふふっ、安心しなさい。良い子にしていれば、きっとご両親が迎えに来てくれるさ」
デイリーは子供たちの頭を撫でながらそう言う。
(――君たちはそれなりに優秀なスキルを持っている。ちゃんと、高値で売って上げるから安心しなさい)
内心では、そんなことを思いながら……
すると、村中に『――カンカンカンカンカンッ!』と、警鐘が鳴り響く。
「うん? この警鐘は……ま、まさか……スタンピードッ!?」
スタンピードとは、魔物の集団が、興奮や恐怖などのために突然同じ方向へ走り始める現象。鐘の音が五回……これは『魔の森』で魔物のスタンピードが発生したことを意味している。
デイリーは顔を青褪めさせると、採取したばかりのマジックマッシュルーム入ったの籠を持ち、慌てて声を上げた。
「マ、マジックマッシュルームを持って教会の地下室に避難しないさいっ! 早くっ!」
「は、はいっ!」
「わ、わかりましたっ!!」
子供たちはデイリーに言われた通り、マジックマッシュルームの入った籠を持つと教会に向かって走っていく。
(――い、一体、なにが起こっているんだっ!? スタンピードなんてこの村始まって以来の出来事だぞっ‼)
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