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第24話 夢の世界での鍛練③
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ノアが十数えている間にイデアはその場から颯爽と立ち去った。近くには、同じオーガ面を被ったブルーノが立っている。
「――は~ち、きゅ~う、じゅう!」
十数えたノアは、まずブルーノに声をかけることにした。
ブルーノも同じオーガの面を被っている。
オーガの面を被っているということは、ノアの味方であるということ。
「ブルーノさんっ! イデアさんを捕まえるのに協力してもらえませんかっ!?」
『…………』
そう頼み込むと、ブルーノは無言で頷く。
「……ブルーノさん?」
なにかがおかしいような……まるでブルーノではないみたいだ。
しかし、今、それを確認している余裕はない。
なにしろ、時間はたった三十分しかないのだ。
三十分以内にイデアを捕まえなければ、魔力徴収率は一割上がった状態のまま……
魔力の枯渇はそのまま『オーガごっこ』の勝敗に係わってくる。
負けず嫌いなノアは、これが鍛練であることをすっかり忘れ、勝負に夢中になっていた。
「それじゃあ、ブルーノさん。イデアさんは俺が捕まえるのでサポートをお願いします!」
『…………』
ノアの言葉にブルーノは頷くと、ストレージから戦斧を取り出した。
ブルーノが取り出したのは黒く禍々しい666個の小さな斧が一つの斧を形成している魔戦斧。
その戦斧を見たノアは、サッと顔を青褪め警戒感を顕わにした。
(――な、なにあの戦斧……なんだか危険な、禍々しい気配を感じるっ……)
『……魔戦斧・666』
ブルーノがそう呟いた瞬間、小さな斧一本一本がはじけ飛び悪魔の姿に変っていく。
「……あ、悪魔を召喚する戦斧っ!?」
ブルーノが魔戦斧を振ると、召喚された悪魔たちはイデアを探すため、四方に散開していく。
(――す、すごい)
これならすぐにでも、イデアの居場所を割り出すことができそうだ。
「ありがとう、ブルーノさん! これならすぐにイデアさんを捕まえることができそうだよっ!」
ブルーノに向けて満面の笑みを浮かべるノア。
その瞬間、ノアの囲むように地面から光の柱が上がり悪魔すべてを跡形もなく吹き飛ばした。
◇◆◇
「ふえっ、ふえっ、ふえっ……」
親指と人差し指で作った輪っかを目に当て、ノアがブルーノに協力を仰ぐのを遠目で見ていたイデアは笑みを浮かべる。
『……ブルーノに協力を仰ぐとは思い切ったことをする。ブルーノとやり合うのも久しぶりだねぇ』
当然のことながら、夢の世界にブルーノは存在しない。
あのブルーノは、イデアの記憶から創り出した夢の世界の住人だ。
本物のブルーノは今、魔の森に住む魔物の処理と、傭兵団の足止めをしている真っ最中。『ワシもノアの鍛練に参加したい!』と駄々を捏ねていたが、イデアの一喝により渋々、足止めに向かった。
『おやおや、魔戦斧・666じゃないか。懐かしいねぇ……』
魔戦斧・666は、百年ほど前、ステータス値を搾取するため、イデアとブルーノを捕らえようとした国を滅ぼす際に使った悪魔を召喚する戦斧。
イデアを以ってしても、攻略に手の係る魔戦斧だ。
しかし、あのブルーノはイデアの記憶から作り出された百年前の姿。
『ふえっ、ふえっ、ふえっ……百年前の爺さんになんて負ける気がしないねぇ「聖域」』
イデアは地中を伝いノアを取り囲むように魔法陣を描くと、ブルーノの召喚した悪魔すべてを聖魔法『聖域』で吹き飛ばした。
◇◆◇
「――は、えっ?」
一瞬にしてブルーノ以外の手駒すべてを失ったノア。
ブルーノに視線を向けると、召喚した悪魔すべてが光に飲まれ消えてしまったことがショックだったのか、その場で泣き出してしまった。
「ち、ちょっと待って!?」
(――ブ、ブルーノさんが召喚した悪魔が全部光に飲まれて消えちゃったんですけどっ――!? これ、どういうことっ⁉︎ 誰か『オーガごっこ』のルールを教えてっ⁇ っていうか、オーガ役の人に攻撃するのはありなの!!!?)
ノアが心の中でそう叫ぶと、脳に直接、イデアの思念が飛んでくる。
『ふえっ、ふえっ、ふえっ、ありだよ……ブルーノに助力を願い出たまでは良かったのだがねぇ……それじゃあ、ノアの鍛練にならない。自分の頭で考え、私を捕えないとねぇ?』
至極真っ当なイデアの言葉にノアは口を噤む。
『――ここは夢の世界。なんでもありなんだから、ノアのスキルを十全に活かせる方法で私を捕まえてみな……できるものならねぇ? ふえっ、ふえっ、ふえっ』
イデアはそう言い残すと、ノアから思念を切り離した。
挑発されたノアはというと……
「……ブルーノさん。魔戦斧・666を貸してください」
『…………』
ブルーノから壊れた魔戦斧・666を受け取ると息を吐く。
魔戦斧・666は悪魔を召喚する戦斧。
あんな簡単に悪魔が消し飛ばされてしまったのは、召喚した悪魔が単純に弱かったからなのではないかとノアは推測する。
イデアの魔法は強力だ。
そんなイデアの魔法に対抗するにはどうしたらいいか。
単純な話だ。
召喚する悪魔を強くすればいい。
ノアは『付与』と『リセット』を繰り返し魔戦斧・666に尋常ではないほどのステータス値を付与していく。
ステータス値を付与する度、イデアの魔法攻撃によりボロボロとなった魔戦斧が元の姿を取り戻していく。
そして、666本すべての魔戦斧にステータス値を付与すると、ノアは魔力を流し込んだ。
「――は~ち、きゅ~う、じゅう!」
十数えたノアは、まずブルーノに声をかけることにした。
ブルーノも同じオーガの面を被っている。
オーガの面を被っているということは、ノアの味方であるということ。
「ブルーノさんっ! イデアさんを捕まえるのに協力してもらえませんかっ!?」
『…………』
そう頼み込むと、ブルーノは無言で頷く。
「……ブルーノさん?」
なにかがおかしいような……まるでブルーノではないみたいだ。
しかし、今、それを確認している余裕はない。
なにしろ、時間はたった三十分しかないのだ。
三十分以内にイデアを捕まえなければ、魔力徴収率は一割上がった状態のまま……
魔力の枯渇はそのまま『オーガごっこ』の勝敗に係わってくる。
負けず嫌いなノアは、これが鍛練であることをすっかり忘れ、勝負に夢中になっていた。
「それじゃあ、ブルーノさん。イデアさんは俺が捕まえるのでサポートをお願いします!」
『…………』
ノアの言葉にブルーノは頷くと、ストレージから戦斧を取り出した。
ブルーノが取り出したのは黒く禍々しい666個の小さな斧が一つの斧を形成している魔戦斧。
その戦斧を見たノアは、サッと顔を青褪め警戒感を顕わにした。
(――な、なにあの戦斧……なんだか危険な、禍々しい気配を感じるっ……)
『……魔戦斧・666』
ブルーノがそう呟いた瞬間、小さな斧一本一本がはじけ飛び悪魔の姿に変っていく。
「……あ、悪魔を召喚する戦斧っ!?」
ブルーノが魔戦斧を振ると、召喚された悪魔たちはイデアを探すため、四方に散開していく。
(――す、すごい)
これならすぐにでも、イデアの居場所を割り出すことができそうだ。
「ありがとう、ブルーノさん! これならすぐにイデアさんを捕まえることができそうだよっ!」
ブルーノに向けて満面の笑みを浮かべるノア。
その瞬間、ノアの囲むように地面から光の柱が上がり悪魔すべてを跡形もなく吹き飛ばした。
◇◆◇
「ふえっ、ふえっ、ふえっ……」
親指と人差し指で作った輪っかを目に当て、ノアがブルーノに協力を仰ぐのを遠目で見ていたイデアは笑みを浮かべる。
『……ブルーノに協力を仰ぐとは思い切ったことをする。ブルーノとやり合うのも久しぶりだねぇ』
当然のことながら、夢の世界にブルーノは存在しない。
あのブルーノは、イデアの記憶から創り出した夢の世界の住人だ。
本物のブルーノは今、魔の森に住む魔物の処理と、傭兵団の足止めをしている真っ最中。『ワシもノアの鍛練に参加したい!』と駄々を捏ねていたが、イデアの一喝により渋々、足止めに向かった。
『おやおや、魔戦斧・666じゃないか。懐かしいねぇ……』
魔戦斧・666は、百年ほど前、ステータス値を搾取するため、イデアとブルーノを捕らえようとした国を滅ぼす際に使った悪魔を召喚する戦斧。
イデアを以ってしても、攻略に手の係る魔戦斧だ。
しかし、あのブルーノはイデアの記憶から作り出された百年前の姿。
『ふえっ、ふえっ、ふえっ……百年前の爺さんになんて負ける気がしないねぇ「聖域」』
イデアは地中を伝いノアを取り囲むように魔法陣を描くと、ブルーノの召喚した悪魔すべてを聖魔法『聖域』で吹き飛ばした。
◇◆◇
「――は、えっ?」
一瞬にしてブルーノ以外の手駒すべてを失ったノア。
ブルーノに視線を向けると、召喚した悪魔すべてが光に飲まれ消えてしまったことがショックだったのか、その場で泣き出してしまった。
「ち、ちょっと待って!?」
(――ブ、ブルーノさんが召喚した悪魔が全部光に飲まれて消えちゃったんですけどっ――!? これ、どういうことっ⁉︎ 誰か『オーガごっこ』のルールを教えてっ⁇ っていうか、オーガ役の人に攻撃するのはありなの!!!?)
ノアが心の中でそう叫ぶと、脳に直接、イデアの思念が飛んでくる。
『ふえっ、ふえっ、ふえっ、ありだよ……ブルーノに助力を願い出たまでは良かったのだがねぇ……それじゃあ、ノアの鍛練にならない。自分の頭で考え、私を捕えないとねぇ?』
至極真っ当なイデアの言葉にノアは口を噤む。
『――ここは夢の世界。なんでもありなんだから、ノアのスキルを十全に活かせる方法で私を捕まえてみな……できるものならねぇ? ふえっ、ふえっ、ふえっ』
イデアはそう言い残すと、ノアから思念を切り離した。
挑発されたノアはというと……
「……ブルーノさん。魔戦斧・666を貸してください」
『…………』
ブルーノから壊れた魔戦斧・666を受け取ると息を吐く。
魔戦斧・666は悪魔を召喚する戦斧。
あんな簡単に悪魔が消し飛ばされてしまったのは、召喚した悪魔が単純に弱かったからなのではないかとノアは推測する。
イデアの魔法は強力だ。
そんなイデアの魔法に対抗するにはどうしたらいいか。
単純な話だ。
召喚する悪魔を強くすればいい。
ノアは『付与』と『リセット』を繰り返し魔戦斧・666に尋常ではないほどのステータス値を付与していく。
ステータス値を付与する度、イデアの魔法攻撃によりボロボロとなった魔戦斧が元の姿を取り戻していく。
そして、666本すべての魔戦斧にステータス値を付与すると、ノアは魔力を流し込んだ。
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