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第22話 夢の世界での鍛練①
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翌日、完全回復したノアはイデアと共に外にいた。
数々の薬品をテーブルに並べるイデア。
そんなイデアを見て、ノアは心配そうな表情を浮かべる。
「イデアさん。これは……」
「うん? なんだい、ノア。そんな顔をして……」
「えっ、だって……」
ノアは困ったように首を傾げる。
(――昨日、午前中は座学だって、そう言っていなかっただろうか?)
しかし、ここは外で『魔の森』の中。
ノアの中にある座学の定義か崩れていく。
「ふえっ、ふえっ、ふえっ……気が変わったのさ。さて、今日から本格的な鍛練を始めるよ。まずは、そこの切り株に座りな……」
「は、はい……」
心配そうな表情を浮かべながら切り株に座るノア。
そんなノアに、イデアは紫色の液体の入ったコップを差し出す。
「さて、これをお飲み……」
「えっ? これを飲むんですか……??」
「ああ、そうだよ」
差し出されたコップの中を覗いて見ると、紫色の液体からポコポコと泡のようなものが湧いている。
見たらわかる。二つの意味で飲んだらまずい奴だ。
謎の液体をジッと見つめ、ゴクリと喉を鳴らすノア。
そんなノアにイデアは、早く飲むよう発破をかける。
「ふえっ、ふえっ、ふえっ、その飲み物は、効率的に鍛練を進めるための特製ドリンクさ。みんな大好き、パープル・トード味だよ。どうしたんだい? 早く飲んじまいな……」
「パ、パープル・トード味……」
(――ど、どうしよう。原料を聞いたせいか余計飲みたく無くなってしまった……)
紫色の液体を見ているだけで、パープル・トードの生前の姿が思い浮かんでくる。
なんだか幻聴まで聞こえてきた。
ゲコゲコと鳴くパープル・トードの鳴き声が頭に響く。
「ち、ちなみにこのドリンクにはどんな効果が……」
少しでも飲むのを先延ばしにしたいノアは効能について質問する。
「ふむ……精神安定、疲労回復、知覚活性に記憶力増強といった所かねぇ? 一日に必要となる栄養素やカロリーすべてが含まれているから、それを飲んで私の鍛練を受ければ、すぐに到達者になれるよ……」
「ソ、ソウナンデスカ……」
(――既に到達者クラスのステータス値なんですけどっ……)
頭の中で、そう叫ぶとイデアは「ふむ……」と呟いた。
「――確かにそうだったね。より効果的な鍛練を積むには、ノアに合ったモチベーションの設定も必要か……よし。それじゃあ、こうするとしようかねぇ……」
すると、イデアは二本指を立てた。
「……もしノアが現実世界ベースで一ヶ月間、夢の世界ベースで三ヶ月間に及ぶ鍛練を乗り超えたら、私たちのとっておきをプレゼントしよう。ついでに、ノアの願いをなんでも一つだけ叶えてあげるよ。それでどうだい?」
イデアの提案を聞き、ノアは立ち上がる。
「――そ、その願いは本当になんでもいいんですか?」
「ふえっ、ふえっ、ふえっ、私のとっておきより、願いを叶えてもらう方がいいのかい?」
やる気が出たのか真剣な表情を浮かべるノア。
イデアが笑みを浮かべると、ノアはパープル・トード味の特製ドリンクを飲み干した。
口の中を跳ね回る生臭いパープル・トードの味。
「うぷっ――!!??」
特製ドリンクを飲んだノアは、目を回し吐き出さないよう口を押える。
そして、コップを切り株に置くと、イデアの目を見つめた。
「――はい」
「……そうかい。それじゃあ、早速、始めようかねぇ」
イデアが手に持っていた杖を振ると、影がノアを取り囲むように形を変える。
「――イ、イデアさん? こ、これは……?」
「ふえっ、ふえっ、ふえっ……ノアにはこれから夢の世界で鍛練を行ってもらうよ。安心して影に身を委ねな……」
「えっ!? ええっ――!!」
「さて、行くよっ……闇魔法『悪夢』」
そうイデアが声を上げた瞬間、ノアの周りの影が球状に変り、ノアの体を影が包み込む。
(――ち、ちょっと待ってぇぇぇぇ……)
夢の中に落ちていくノア。
薄れていく意識の中でそう声を上げるも、その声は闇の中に消えて行く。
「う、うーん。ここは……」
夢の世界で目覚めるノア。
目を擦り起き上がると、そこには――
『――ふえっ、ふえっ、ふえっ……ようこそ、夢の世界へ……それじゃあ、鍛練を始めようかねぇ』
――若かりし頃のイデアとブルーノの姿があった。
◇◆◇
『さて、ノアには、この夢の世界で三ヶ月間。特殊な鍛練を受けてもらうよ』
「さ、三ヶ月間も特殊な鍛練を……!?」
イデアの言葉を聞き身構えるノア。
『ふえっ、ふえっ、ふえっ……安心しな。夢の世界ベースで言う所の三日に一回は現実世界に帰してやるさ。鍛練の結果を体にフィードバックしなきゃいけないからねぇ……』
「えっ……? 体を休めるために現実世界に戻してくれるんじゃないんですか??」
ノアがそう尋ねると、イデアは笑みを浮かべる。
『体のことなら心配しなくて大丈夫だよ。現実世界と夢の世界は繋がっているからね。ここでの休息も現実世界の体を休める効果がある』
「現実世界と夢の世界は繋がっている……」
そう。この夢の世界は夢であって夢ではない。
ノアの体は今、現実世界に……『魔の森』に影響を及ぼさないよう影の世界にある。そして、夢の世界での動きはすべて元の体にフィードバックされる。
夢の世界と現実世界の時間差は三倍。
ノアが夢の世界で動けば、現実世界では、その三倍の速度でノアの体が勝手に動く。
(――『頭でわかっていても体が追い付かない』ということが現実世界では良くあることだからねぇ……夢の世界での鍛練がノアの脳と神経、筋肉を協調させ思い通りに動く体を創り出す……そして、反射神経が鍛えられれば……ふえっ、ふえっ、ふえっ)
『――さて、鍛練を始めるよ』
数々の薬品をテーブルに並べるイデア。
そんなイデアを見て、ノアは心配そうな表情を浮かべる。
「イデアさん。これは……」
「うん? なんだい、ノア。そんな顔をして……」
「えっ、だって……」
ノアは困ったように首を傾げる。
(――昨日、午前中は座学だって、そう言っていなかっただろうか?)
しかし、ここは外で『魔の森』の中。
ノアの中にある座学の定義か崩れていく。
「ふえっ、ふえっ、ふえっ……気が変わったのさ。さて、今日から本格的な鍛練を始めるよ。まずは、そこの切り株に座りな……」
「は、はい……」
心配そうな表情を浮かべながら切り株に座るノア。
そんなノアに、イデアは紫色の液体の入ったコップを差し出す。
「さて、これをお飲み……」
「えっ? これを飲むんですか……??」
「ああ、そうだよ」
差し出されたコップの中を覗いて見ると、紫色の液体からポコポコと泡のようなものが湧いている。
見たらわかる。二つの意味で飲んだらまずい奴だ。
謎の液体をジッと見つめ、ゴクリと喉を鳴らすノア。
そんなノアにイデアは、早く飲むよう発破をかける。
「ふえっ、ふえっ、ふえっ、その飲み物は、効率的に鍛練を進めるための特製ドリンクさ。みんな大好き、パープル・トード味だよ。どうしたんだい? 早く飲んじまいな……」
「パ、パープル・トード味……」
(――ど、どうしよう。原料を聞いたせいか余計飲みたく無くなってしまった……)
紫色の液体を見ているだけで、パープル・トードの生前の姿が思い浮かんでくる。
なんだか幻聴まで聞こえてきた。
ゲコゲコと鳴くパープル・トードの鳴き声が頭に響く。
「ち、ちなみにこのドリンクにはどんな効果が……」
少しでも飲むのを先延ばしにしたいノアは効能について質問する。
「ふむ……精神安定、疲労回復、知覚活性に記憶力増強といった所かねぇ? 一日に必要となる栄養素やカロリーすべてが含まれているから、それを飲んで私の鍛練を受ければ、すぐに到達者になれるよ……」
「ソ、ソウナンデスカ……」
(――既に到達者クラスのステータス値なんですけどっ……)
頭の中で、そう叫ぶとイデアは「ふむ……」と呟いた。
「――確かにそうだったね。より効果的な鍛練を積むには、ノアに合ったモチベーションの設定も必要か……よし。それじゃあ、こうするとしようかねぇ……」
すると、イデアは二本指を立てた。
「……もしノアが現実世界ベースで一ヶ月間、夢の世界ベースで三ヶ月間に及ぶ鍛練を乗り超えたら、私たちのとっておきをプレゼントしよう。ついでに、ノアの願いをなんでも一つだけ叶えてあげるよ。それでどうだい?」
イデアの提案を聞き、ノアは立ち上がる。
「――そ、その願いは本当になんでもいいんですか?」
「ふえっ、ふえっ、ふえっ、私のとっておきより、願いを叶えてもらう方がいいのかい?」
やる気が出たのか真剣な表情を浮かべるノア。
イデアが笑みを浮かべると、ノアはパープル・トード味の特製ドリンクを飲み干した。
口の中を跳ね回る生臭いパープル・トードの味。
「うぷっ――!!??」
特製ドリンクを飲んだノアは、目を回し吐き出さないよう口を押える。
そして、コップを切り株に置くと、イデアの目を見つめた。
「――はい」
「……そうかい。それじゃあ、早速、始めようかねぇ」
イデアが手に持っていた杖を振ると、影がノアを取り囲むように形を変える。
「――イ、イデアさん? こ、これは……?」
「ふえっ、ふえっ、ふえっ……ノアにはこれから夢の世界で鍛練を行ってもらうよ。安心して影に身を委ねな……」
「えっ!? ええっ――!!」
「さて、行くよっ……闇魔法『悪夢』」
そうイデアが声を上げた瞬間、ノアの周りの影が球状に変り、ノアの体を影が包み込む。
(――ち、ちょっと待ってぇぇぇぇ……)
夢の中に落ちていくノア。
薄れていく意識の中でそう声を上げるも、その声は闇の中に消えて行く。
「う、うーん。ここは……」
夢の世界で目覚めるノア。
目を擦り起き上がると、そこには――
『――ふえっ、ふえっ、ふえっ……ようこそ、夢の世界へ……それじゃあ、鍛練を始めようかねぇ』
――若かりし頃のイデアとブルーノの姿があった。
◇◆◇
『さて、ノアには、この夢の世界で三ヶ月間。特殊な鍛練を受けてもらうよ』
「さ、三ヶ月間も特殊な鍛練を……!?」
イデアの言葉を聞き身構えるノア。
『ふえっ、ふえっ、ふえっ……安心しな。夢の世界ベースで言う所の三日に一回は現実世界に帰してやるさ。鍛練の結果を体にフィードバックしなきゃいけないからねぇ……』
「えっ……? 体を休めるために現実世界に戻してくれるんじゃないんですか??」
ノアがそう尋ねると、イデアは笑みを浮かべる。
『体のことなら心配しなくて大丈夫だよ。現実世界と夢の世界は繋がっているからね。ここでの休息も現実世界の体を休める効果がある』
「現実世界と夢の世界は繋がっている……」
そう。この夢の世界は夢であって夢ではない。
ノアの体は今、現実世界に……『魔の森』に影響を及ぼさないよう影の世界にある。そして、夢の世界での動きはすべて元の体にフィードバックされる。
夢の世界と現実世界の時間差は三倍。
ノアが夢の世界で動けば、現実世界では、その三倍の速度でノアの体が勝手に動く。
(――『頭でわかっていても体が追い付かない』ということが現実世界では良くあることだからねぇ……夢の世界での鍛練がノアの脳と神経、筋肉を協調させ思い通りに動く体を創り出す……そして、反射神経が鍛えられれば……ふえっ、ふえっ、ふえっ)
『――さて、鍛練を始めるよ』
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