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第21話 イデアの考察②
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刃先が桃色に変っていることに気付いたノアは灰燼丸を指差す。
「えっと、なんだか灰燼丸の刃先が桃色に染まっているんですけど……」
そう呟くと灰燼丸が宙に浮いた。
「それと……なんだか浮いている見たいなんですけど……」
「そりゃそうさ。灰燼丸はインテリジェンス・ウェポンに生まれ変わったからねぇ。そりゃあ、浮きもするさ」
ポカンとした顔を浮かべるノアが面白かったのか、イデアは笑みを浮かべる。
(ええっ、インテリジェンス・ウェポンって、そういうものなのっ!?)
ノアがそう思考すると、すかさずイデアは頷いた。
「ふえっ、ふえっ、ふえっ……これから灰燼丸のことは、戦斧の形をした生物だと思いな。事実、そうなっちまっているんだからねぇ。とはいえ、灰燼丸もまだこの世に生まれたばかりの赤子のような存在。大切に育ててやりな。そうすれば、ノアがピンチに陥った時にきっと助けになってくれるよ」
「そういうものですか……」
宙に浮いた灰燼丸の柄を握ると、灰燼丸から噴き出た魔力の炎がノアの手を撫でる。
一瞬、条件反射で『熱っ!?』と叫びそうになったが、灰燼丸のから噴き出た炎は不思議と熱を感じなかった。不思議なこともあるものだ。
「さてと、講義はここまでにしようかね。ああ、それとこのドリンクだけどね……」
イデアは椅子から立ち上がると、テーブルに置いてあった『戦闘脳になーるドリンク』を手に取った。
『戦闘脳になーるドリンク』は、ブルーノとの鍛練が始まる前にイデアからもらった特製ドリンクだ。なんでも、恐怖心を無くす効果があるらしい。
そのドリンクがどうかしたのだろうか?
頭に疑問符を浮かべていると、イデアは楽しそうな表情を浮かべた。
「……明日、午前中の座学が終わった後、戦闘訓練を行うから必ず飲んでから来るんだよ。いいね?」
「えっ? それはどういう……それに、戦闘訓練ですか?」
「ああ、そうさ。明日からしばらくの間、私がノアの鍛練を請け負うことになったからねぇ」
「えっ? イデアさんがですか⁇ ブルーノさんとの訓練は?」
座学はイデア。鍛練はブルーノが行うものとばかり思っていたノアは唖然とした表情を浮かべる。
「ふえっ、ふえっ、ふえっ……爺さんは、ちょっと手が離せなくてねぇ」
ノアと黒龍との戦い。
これにより、イデアとブルーノの住処がサクシュ村を拠点とする傭兵団に完全に割れてしまった。
本来であれば、時間をかけゆっくりノアを育てる予定だったが、大幅に予定を早める必要が出てしまったのだ。
(もう少し時間があると思っていたんだけどね……)
イデアもブルーノ自身もノアが鍛練中、灰燼丸に目を付け、それを十全に扱うとは思いもしなかった。
それに、イデアとブルーノの顔や名前は、『付与』のスキル保持者を狙う多くの者に知れ渡っている。一緒にいれば、ノアを危険に晒すかも知れない。
(――危険な目にあうのは私たちだけで十分さね。爺さんが時間を稼いでいる間に、ノアには私の持つ知識と技術のすべてを教え込む。万が一、私等になにかが遭ったとしてもノアだけは生きて行けるように……そして、できることなら……)
「イデアさん? イデアさん⁇ どうかしたんですかイデアさん?」
「うん? ああ、なんでもないよ……」
イデアはノアの頭を撫でると、ドアに向かう。
「それじゃあ、今日はゆっくり休みな……明日からは厳しい鍛練が待っているんだからねぇ……」
「は、はい……って、うわっ⁉︎」
呆然とした表情を浮かべるノア。その肩にホーン・ラビットが遊んでくれとしがみ付く。
「ふえっ、ふえっ、ふえっ……」
イデアは、そんな微笑ましいひと時に笑みを浮かべると、ノアの部屋を出る。
そして、ドアを背にして宙を仰いだ。
(――会わせてあげたいねぇ。ノアの、本当の両親に……)
ブルーノに教えてもらったノアのステータス。
そこには確かにこう書いてあった『ノア・アーク』と……
この世界でアーク姓を名乗るのが許されるのは、イデアとブルーノが属する国・アクスム王国の王族に限られる。
そして、アクスム王国の国王であるレメク・アークには、二人の妻と五人の子供がいる。しかし、その内、一人の子が十五年前に行方不明となっている。
行方不明となった子の名前は、ノア・アーク。
(ふえっ、ふえっ、ふえっ……これも神の御導きかねぇ……)
本来であれば、『転移』を使い、今すぐにでもノアをアクスム王国に連れ帰りたいが、今は情勢が悪い。
今、あの国に帰れば、まず間違いなく巻き込まれる。
次代のアクスム国王を決める王選に……
現国王であるレメク・アークの体調が芳しくないことから始まった王選だが、今のノアには力も後ろ盾もなにもない状態。
そのような時期に、アクスム王国に連れ帰っても、返ってノアの命を危険に晒すだけだ。
(私たちが後ろ盾についてもいいんだけどねぇ……)
しかし、それは現国王が許さないだろう。
なぜならば、今のイデアとブルームの立場は、レメク・アーク国王の食客だからだ。それに、他にも理由がある。
(――それなら、私たちに出来ることは、ただ一つ)
徹底的にノアを鍛え上げることだけだ。
「えっと、なんだか灰燼丸の刃先が桃色に染まっているんですけど……」
そう呟くと灰燼丸が宙に浮いた。
「それと……なんだか浮いている見たいなんですけど……」
「そりゃそうさ。灰燼丸はインテリジェンス・ウェポンに生まれ変わったからねぇ。そりゃあ、浮きもするさ」
ポカンとした顔を浮かべるノアが面白かったのか、イデアは笑みを浮かべる。
(ええっ、インテリジェンス・ウェポンって、そういうものなのっ!?)
ノアがそう思考すると、すかさずイデアは頷いた。
「ふえっ、ふえっ、ふえっ……これから灰燼丸のことは、戦斧の形をした生物だと思いな。事実、そうなっちまっているんだからねぇ。とはいえ、灰燼丸もまだこの世に生まれたばかりの赤子のような存在。大切に育ててやりな。そうすれば、ノアがピンチに陥った時にきっと助けになってくれるよ」
「そういうものですか……」
宙に浮いた灰燼丸の柄を握ると、灰燼丸から噴き出た魔力の炎がノアの手を撫でる。
一瞬、条件反射で『熱っ!?』と叫びそうになったが、灰燼丸のから噴き出た炎は不思議と熱を感じなかった。不思議なこともあるものだ。
「さてと、講義はここまでにしようかね。ああ、それとこのドリンクだけどね……」
イデアは椅子から立ち上がると、テーブルに置いてあった『戦闘脳になーるドリンク』を手に取った。
『戦闘脳になーるドリンク』は、ブルーノとの鍛練が始まる前にイデアからもらった特製ドリンクだ。なんでも、恐怖心を無くす効果があるらしい。
そのドリンクがどうかしたのだろうか?
頭に疑問符を浮かべていると、イデアは楽しそうな表情を浮かべた。
「……明日、午前中の座学が終わった後、戦闘訓練を行うから必ず飲んでから来るんだよ。いいね?」
「えっ? それはどういう……それに、戦闘訓練ですか?」
「ああ、そうさ。明日からしばらくの間、私がノアの鍛練を請け負うことになったからねぇ」
「えっ? イデアさんがですか⁇ ブルーノさんとの訓練は?」
座学はイデア。鍛練はブルーノが行うものとばかり思っていたノアは唖然とした表情を浮かべる。
「ふえっ、ふえっ、ふえっ……爺さんは、ちょっと手が離せなくてねぇ」
ノアと黒龍との戦い。
これにより、イデアとブルーノの住処がサクシュ村を拠点とする傭兵団に完全に割れてしまった。
本来であれば、時間をかけゆっくりノアを育てる予定だったが、大幅に予定を早める必要が出てしまったのだ。
(もう少し時間があると思っていたんだけどね……)
イデアもブルーノ自身もノアが鍛練中、灰燼丸に目を付け、それを十全に扱うとは思いもしなかった。
それに、イデアとブルーノの顔や名前は、『付与』のスキル保持者を狙う多くの者に知れ渡っている。一緒にいれば、ノアを危険に晒すかも知れない。
(――危険な目にあうのは私たちだけで十分さね。爺さんが時間を稼いでいる間に、ノアには私の持つ知識と技術のすべてを教え込む。万が一、私等になにかが遭ったとしてもノアだけは生きて行けるように……そして、できることなら……)
「イデアさん? イデアさん⁇ どうかしたんですかイデアさん?」
「うん? ああ、なんでもないよ……」
イデアはノアの頭を撫でると、ドアに向かう。
「それじゃあ、今日はゆっくり休みな……明日からは厳しい鍛練が待っているんだからねぇ……」
「は、はい……って、うわっ⁉︎」
呆然とした表情を浮かべるノア。その肩にホーン・ラビットが遊んでくれとしがみ付く。
「ふえっ、ふえっ、ふえっ……」
イデアは、そんな微笑ましいひと時に笑みを浮かべると、ノアの部屋を出る。
そして、ドアを背にして宙を仰いだ。
(――会わせてあげたいねぇ。ノアの、本当の両親に……)
ブルーノに教えてもらったノアのステータス。
そこには確かにこう書いてあった『ノア・アーク』と……
この世界でアーク姓を名乗るのが許されるのは、イデアとブルーノが属する国・アクスム王国の王族に限られる。
そして、アクスム王国の国王であるレメク・アークには、二人の妻と五人の子供がいる。しかし、その内、一人の子が十五年前に行方不明となっている。
行方不明となった子の名前は、ノア・アーク。
(ふえっ、ふえっ、ふえっ……これも神の御導きかねぇ……)
本来であれば、『転移』を使い、今すぐにでもノアをアクスム王国に連れ帰りたいが、今は情勢が悪い。
今、あの国に帰れば、まず間違いなく巻き込まれる。
次代のアクスム国王を決める王選に……
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そのような時期に、アクスム王国に連れ帰っても、返ってノアの命を危険に晒すだけだ。
(私たちが後ろ盾についてもいいんだけどねぇ……)
しかし、それは現国王が許さないだろう。
なぜならば、今のイデアとブルームの立場は、レメク・アーク国王の食客だからだ。それに、他にも理由がある。
(――それなら、私たちに出来ることは、ただ一つ)
徹底的にノアを鍛え上げることだけだ。
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