『付与』して『リセット』!ハズレスキルを駆使し、理不尽な世界で成り上がる!

びーぜろ@転移世界のアウトサイダー発売中

文字の大きさ
上 下
22 / 47

第21話 イデアの考察②

しおりを挟む
 刃先が桃色に変っていることに気付いたノアは灰燼丸を指差す。

「えっと、なんだか灰燼丸の刃先が桃色に染まっているんですけど……」

 そう呟くと灰燼丸が宙に浮いた。

「それと……なんだか浮いている見たいなんですけど……」
「そりゃそうさ。灰燼丸はインテリジェンス・ウェポンに生まれ変わったからねぇ。そりゃあ、浮きもするさ」

 ポカンとした顔を浮かべるノアが面白かったのか、イデアは笑みを浮かべる。

(ええっ、インテリジェンス・ウェポンって、そういうものなのっ!?)

 ノアがそう思考すると、すかさずイデアは頷いた。

「ふえっ、ふえっ、ふえっ……これから灰燼丸のことは、戦斧の形をした生物だと思いな。事実、そうなっちまっているんだからねぇ。とはいえ、灰燼丸もまだこの世に生まれたばかりの赤子のような存在。大切に育ててやりな。そうすれば、ノアがピンチに陥った時にきっと助けになってくれるよ」
「そういうものですか……」

 宙に浮いた灰燼丸の柄を握ると、灰燼丸から噴き出た魔力の炎がノアの手を撫でる。
 一瞬、条件反射で『熱っ!?』と叫びそうになったが、灰燼丸のから噴き出た炎は不思議と熱を感じなかった。不思議なこともあるものだ。

「さてと、講義はここまでにしようかね。ああ、それとこのドリンクだけどね……」

 イデアは椅子から立ち上がると、テーブルに置いてあった『戦闘脳になーるドリンク』を手に取った。
『戦闘脳になーるドリンク』は、ブルーノとの鍛練が始まる前にイデアからもらった特製ドリンクだ。なんでも、恐怖心を無くす効果があるらしい。
 そのドリンクがどうかしたのだろうか?

 頭に疑問符を浮かべていると、イデアは楽しそうな表情を浮かべた。

「……明日、午前中の座学が終わった後、戦闘訓練を行うから必ず飲んでから来るんだよ。いいね?」
「えっ? それはどういう……それに、戦闘訓練ですか?」
「ああ、そうさ。明日からしばらくの間、私がノアの鍛練を請け負うことになったからねぇ」
「えっ? イデアさんがですか⁇ ブルーノさんとの訓練は?」

 座学はイデア。鍛練はブルーノが行うものとばかり思っていたノアは唖然とした表情を浮かべる。

「ふえっ、ふえっ、ふえっ……爺さんは、ちょっと手が離せなくてねぇ」

 ノアと黒龍との戦い。
 これにより、イデアとブルーノの住処がサクシュ村を拠点とする傭兵団に完全に割れてしまった。
 本来であれば、時間をかけゆっくりノアを育てる予定だったが、大幅に予定を早める必要が出てしまったのだ。

(もう少し時間があると思っていたんだけどね……)

 イデアもブルーノ自身もノアが鍛練中、灰燼丸に目を付け、それを十全に扱うとは思いもしなかった。
 それに、イデアとブルーノの顔や名前は、『付与』のスキル保持者を狙う多くの者に知れ渡っている。一緒にいれば、ノアを危険に晒すかも知れない。

(――危険な目にあうのは私たちだけで十分さね。爺さんが時間を稼いでいる間に、ノアには私の持つ知識と技術のすべてを教え込む。万が一、私等になにかが遭ったとしてもノアだけは生きて行けるように……そして、できることなら……)

「イデアさん? イデアさん⁇ どうかしたんですかイデアさん?」
「うん? ああ、なんでもないよ……」

 イデアはノアの頭を撫でると、ドアに向かう。

「それじゃあ、今日はゆっくり休みな……明日からは厳しい鍛練が待っているんだからねぇ……」
「は、はい……って、うわっ⁉︎」

 呆然とした表情を浮かべるノア。その肩にホーン・ラビットが遊んでくれとしがみ付く。

「ふえっ、ふえっ、ふえっ……」

 イデアは、そんな微笑ましいひと時に笑みを浮かべると、ノアの部屋を出る。
 そして、ドアを背にして宙を仰いだ。

(――会わせてあげたいねぇ。ノアの、本当の両親に……)

 ブルーノに教えてもらったノアのステータス。
 そこには確かにこう書いてあった『ノア・アーク・・・』と……

 この世界でアーク姓を名乗るのが許されるのは、イデアとブルーノが属する国・アクスム王国の王族に限られる。
 そして、アクスム王国の国王であるレメク・アークには、二人の妻と五人の子供がいる。しかし、その内、一人の子が十五年前に行方不明となっている。

 行方不明となった子の名前は、ノア・アーク。

(ふえっ、ふえっ、ふえっ……これも神の御導きかねぇ……)

 本来であれば、『転移』を使い、今すぐにでもノアをアクスム王国に連れ帰りたいが、今は情勢が悪い。
 今、あの国に帰れば、まず間違いなく巻き込まれる。

 次代のアクスム国王を決める王選に……

 現国王であるレメク・アークの体調が芳しくないことから始まった王選だが、今のノアには力も後ろ盾もなにもない状態。

 そのような時期に、アクスム王国に連れ帰っても、返ってノアの命を危険に晒すだけだ。

(私たちが後ろ盾についてもいいんだけどねぇ……)

 しかし、それは現国王が許さないだろう。
 なぜならば、今のイデアとブルームの立場は、レメク・アーク国王の食客だからだ。それに、他にも理由がある。

(――それなら、私たちに出来ることは、ただ一つ)

 徹底的にノアを鍛え上げることだけだ。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

固有スキルガチャで最底辺からの大逆転だモ~モンスターのスキルを使えるようになった俺のお気楽ダンジョンライフ~

うみ
ファンタジー
 恵まれない固有スキルを持って生まれたクラウディオだったが、一人、ダンジョンの一階層で宝箱を漁ることで生計を立てていた。  いつものように一階層を探索していたところ、弱い癖に探索者を続けている彼の態度が気に入らない探索者によって深層に飛ばされてしまう。  モンスターに襲われ絶体絶命のピンチに機転を利かせて切り抜けるも、ただの雑魚モンスター一匹を倒したに過ぎなかった。  そこで、クラウディオは固有スキルを入れ替えるアイテムを手に入れ、大逆転。  モンスターの力を吸収できるようになった彼は深層から無事帰還することができた。  その後、彼と同じように深層に転移した探索者の手助けをしたり、彼を深層に飛ばした探索者にお灸をすえたり、と彼の生活が一変する。  稼いだ金で郊外で隠居生活を送ることを目標に今日もまたダンジョンに挑むクラウディオなのであった。 『箱を開けるモ』 「餌は待てと言ってるだろうに」  とあるイベントでくっついてくることになった生意気なマーモットと共に。

異世界召喚されたら無能と言われ追い出されました。~この世界は俺にとってイージーモードでした~

WING/空埼 裕@書籍発売中
ファンタジー
 1~8巻好評発売中です!  ※2022年7月12日に本編は完結しました。  ◇ ◇ ◇  ある日突然、クラスまるごと異世界に勇者召喚された高校生、結城晴人。  ステータスを確認したところ、勇者に与えられる特典のギフトどころか、勇者の称号すらも無いことが判明する。  晴人たちを召喚した王女は「無能がいては足手纏いになる」と、彼のことを追い出してしまった。  しかも街を出て早々、王女が差し向けた騎士によって、晴人は殺されかける。  胸を刺され意識を失った彼は、気がつくと神様の前にいた。  そしてギフトを与え忘れたお詫びとして、望むスキルを作れるスキルをはじめとしたチート能力を手に入れるのであった──  ハードモードな異世界生活も、やりすぎなくらいスキルを作って一発逆転イージーモード!?  前代未聞の難易度激甘ファンタジー、開幕!

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

投擲魔導士 ~杖より投げる方が強い~

カタナヅキ
ファンタジー
魔物に襲われた時に助けてくれた祖父に憧れ、魔術師になろうと決意した主人公の「レノ」祖父は自分の孫には魔術師になってほしくないために反対したが、彼の熱意に負けて魔法の技術を授ける。しかし、魔術師になれたのにレノは自分の杖をもっていなかった。そこで彼は自分が得意とする「投石」の技術を生かして魔法を投げる。 「あれ?投げる方が杖で撃つよりも早いし、威力も大きい気がする」 魔法学園に入学した後も主人公は魔法を投げ続け、いつしか彼は「投擲魔術師」という渾名を名付けられた――

俺だけ成長限界を突破して強くなる~『成長率鈍化』は外れスキルだと馬鹿にされてきたけど、実は成長限界を突破できるチートスキルでした~

つくも
ファンタジー
Fランク冒険者エルクは外れスキルと言われる固有スキル『成長率鈍化』を持っていた。 このスキルはレベルもスキルレベルも成長効率が鈍化してしまう、ただの外れスキルだと馬鹿にされてきた。 しかし、このスキルには可能性があったのだ。成長効率が悪い代わりに、上限とされてきたレベル『99』スキルレベル『50』の上限を超える事ができた。 地道に剣技のスキルを鍛え続けてきたエルクが、上限である『50』を突破した時。 今まで馬鹿にされてきたエルクの快進撃が始まるのであった。

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

念動力ON!〜スキル授与の列に並び直したらスキル2個貰えた〜

ばふぉりん
ファンタジー
 こんなスキルあったらなぁ〜?  あれ?このスキルって・・・えい〜できた  スキル授与の列で一つのスキルをもらったけど、列はまだ長いのでさいしょのすきるで後方の列に並び直したらそのまま・・・もう一個もらっちゃったよ。  いいの?

処理中です...