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第20話 イデアの考察①
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ブルーノの鍛練終了後、気を失ったノアは、個室のベッドに横たわっていた。
体が凍えるように寒く。手足も思うように動かせない。頭も痛いし、意識が朦朧とする。
「――俺、このまま死ぬのかな……」
心なしか胸も痛くなってきた。
倦怠感もある気がする。
ノアの片目から涙が零れ落ち、枕を濡らす。
弱気なことを言うノアの姿を見て、イデアはため息をついた。
「――ふえっ、ふえっ、ふえっ、馬鹿なことを言うんじゃないよ。ただの魔力切れで死んでたまるかい。良いから、この薬を飲んでゆっくり寝ておきな」
そう言って渡されたのは、いかにも不味そうな紫色の錠剤。
ノアの隣では、『その錠剤を飲んだら死んじゃうよ!』とでも言わんばかりに、ホーン・ラビットが『キュイキュイ!』鳴いている。
(――ど、毒とかじゃ……ないよね? っていうか、魔力切れ??)
あまりの毒々しさにノアは思わず呟く。
「……これって、飲んでも大丈夫な奴ですよね? 飲んだ瞬間、死んじゃったりしませんよね? うぐっ!?」
そう尋ねた瞬間、頭に拳骨を落とされた。
でも全然、痛くない。ステータス値を底上げしていたお陰だろうか。
『付与』と『リセット』を繰り返しステータス値を底上げしておいて本当に良かった。ステータス万歳。
「……冗談が言えるなら問題なさそうだね。なんなら、これからここで『付与』スキルの考察について講義してやろうか?」
「いえ、すいませんでした……」
ノアはそう言うと、上半身を起こし紫色の錠剤を口に入れ水で飲み込む。
「うっ……!?」
錠剤を口に入れた瞬間、口の中に劇物でも入れたかのような錯覚に陥った。
イデアの手前、吐き出さずに飲み込んだが、中々の苦行だった。
しばらくすると、体の中を清涼な風が通り抜けていくようなそんな感覚に襲われる。
なんだか頭もスッキリしてきた。
「……あれ?」
ふと、視線をベッドの隅に向けると、そこにはブルーノから託された戦斧が立て掛けてあった。
「あれはブルーノさんの……」
「ふえっ、ふえっ、ふえっ……もうブルーノの戦斧じゃないよ。それはブルーノがノアに託した戦斧さね――と、言っても、もはや、戦斧と言っていい代物かどうかはわからないがねぇ……」
なんだか気になる一言をイデアが呟いた。
「……えっ? どういうことですか……?」
首を傾げそう言うと、イデアはポカンとした表情を浮かべる。
「ふぅむ? 無自覚じゃったか……この戦斧はねぇ、ノアにステータス値を与えられたことにより、インテリジェンス・ウェポンに生まれ変わったのじゃよ……」
「え、ええっ! インテリジェンス・ウェポンにっ!?」
インテリジェンス・ウェポンとは、自我、意思、知性を持つ御伽の中でのみ存在する武器の総称である。
「……な、なんでそんなことに」
唖然とした表情を浮かべるノア。
ノアを見てイデアは首を横に振る。
「……そこにいるホーン・ラビットを見ればわかりそうなものだけどねぇ?」
『キュイ?』
ベッドの上で横になっているホーン・ラビットに視線を向けると、ホーン・ラビットは首を傾げそう鳴いた。
なんでこっちを見ているのとでも言いたげな目をしている。
クリクリとした目がとても可愛い。
「ふむ。なんだか元気そうだし、折角だ。少し講義してやるとするかね」
そう言うと、イデアはベッドの近くに置いてあった椅子に腰掛ける。
全然関係ないことを考えていたら講義が始まってしまった。
イデアは宙から黒板を取り出すと、講義を始める。
「まずは私たちが持つスキル『付与』について説明しようかねぇ。ノアは『付与』について、どの程度のことを知っているんだい?」
「えっ? 『付与』についてですか?」
(……知っていることといえば、自分のステータス値やスキルをモノに移し替えることができる位だけど)
「ふむ。そうだね。ノアの考えた通り、それが皆が知る『付与』の認識じゃ……」
イデアはノアの思考を読み取り話を続ける。
「誰もが、『付与』スキル保持者のことを自らのステータス値を楽に上げるためのツール位にしか認識していない……しかしね。最近になってわかり始めたことがあるんじゃよ。なんだかわかるかい?」
イデアは笑みを浮かべるとホーン・ラビットに視線を向ける。
視線を追ってホーン・ラビットの頭を撫でると、ノアは恐る恐る回答した。
「……魔石にステータス値を『付与』すると、疑似生命体を創り出すことができるとかですか?」
ノアの回答にイデアは満足そうな表情を浮かべる。
「その通りじゃ。例えば、アンデッド系の魔物・レイスなどが、良い例かのぅ?」
「えっ? レイス?」
(レイスは、なんらかの要因で肉体と魂が分離してしまった人間が変貌したアンデッド系の魔物。まさか、それとホーン・ラビットが同一の存在とでも言うのだろうか?)
イデアは、ノアの思考を読み頷く。
「――魔石には、魔力の他にその魔物の設計図・ゲノムと呼ばれる遺伝子情報が記憶されているからねぇ。魔石にステータス値を『付与』すれば、レイスに似た疑似生命体を創り出すことができる。爺さんが打った戦斧にも魔石が使われているからねぇ。戦斧が魔石の元となった魔物の体代わりとなっているんだ。そこにステータス値を『付与』されれば、インテリジェンス・ウェポンにもなるさね……」
「な、なるほど……そうだったんですね」
ノアが戦斧に視線を向ける。
すると、戦斧・灰燼丸の刃先が桃色に染まった。
体が凍えるように寒く。手足も思うように動かせない。頭も痛いし、意識が朦朧とする。
「――俺、このまま死ぬのかな……」
心なしか胸も痛くなってきた。
倦怠感もある気がする。
ノアの片目から涙が零れ落ち、枕を濡らす。
弱気なことを言うノアの姿を見て、イデアはため息をついた。
「――ふえっ、ふえっ、ふえっ、馬鹿なことを言うんじゃないよ。ただの魔力切れで死んでたまるかい。良いから、この薬を飲んでゆっくり寝ておきな」
そう言って渡されたのは、いかにも不味そうな紫色の錠剤。
ノアの隣では、『その錠剤を飲んだら死んじゃうよ!』とでも言わんばかりに、ホーン・ラビットが『キュイキュイ!』鳴いている。
(――ど、毒とかじゃ……ないよね? っていうか、魔力切れ??)
あまりの毒々しさにノアは思わず呟く。
「……これって、飲んでも大丈夫な奴ですよね? 飲んだ瞬間、死んじゃったりしませんよね? うぐっ!?」
そう尋ねた瞬間、頭に拳骨を落とされた。
でも全然、痛くない。ステータス値を底上げしていたお陰だろうか。
『付与』と『リセット』を繰り返しステータス値を底上げしておいて本当に良かった。ステータス万歳。
「……冗談が言えるなら問題なさそうだね。なんなら、これからここで『付与』スキルの考察について講義してやろうか?」
「いえ、すいませんでした……」
ノアはそう言うと、上半身を起こし紫色の錠剤を口に入れ水で飲み込む。
「うっ……!?」
錠剤を口に入れた瞬間、口の中に劇物でも入れたかのような錯覚に陥った。
イデアの手前、吐き出さずに飲み込んだが、中々の苦行だった。
しばらくすると、体の中を清涼な風が通り抜けていくようなそんな感覚に襲われる。
なんだか頭もスッキリしてきた。
「……あれ?」
ふと、視線をベッドの隅に向けると、そこにはブルーノから託された戦斧が立て掛けてあった。
「あれはブルーノさんの……」
「ふえっ、ふえっ、ふえっ……もうブルーノの戦斧じゃないよ。それはブルーノがノアに託した戦斧さね――と、言っても、もはや、戦斧と言っていい代物かどうかはわからないがねぇ……」
なんだか気になる一言をイデアが呟いた。
「……えっ? どういうことですか……?」
首を傾げそう言うと、イデアはポカンとした表情を浮かべる。
「ふぅむ? 無自覚じゃったか……この戦斧はねぇ、ノアにステータス値を与えられたことにより、インテリジェンス・ウェポンに生まれ変わったのじゃよ……」
「え、ええっ! インテリジェンス・ウェポンにっ!?」
インテリジェンス・ウェポンとは、自我、意思、知性を持つ御伽の中でのみ存在する武器の総称である。
「……な、なんでそんなことに」
唖然とした表情を浮かべるノア。
ノアを見てイデアは首を横に振る。
「……そこにいるホーン・ラビットを見ればわかりそうなものだけどねぇ?」
『キュイ?』
ベッドの上で横になっているホーン・ラビットに視線を向けると、ホーン・ラビットは首を傾げそう鳴いた。
なんでこっちを見ているのとでも言いたげな目をしている。
クリクリとした目がとても可愛い。
「ふむ。なんだか元気そうだし、折角だ。少し講義してやるとするかね」
そう言うと、イデアはベッドの近くに置いてあった椅子に腰掛ける。
全然関係ないことを考えていたら講義が始まってしまった。
イデアは宙から黒板を取り出すと、講義を始める。
「まずは私たちが持つスキル『付与』について説明しようかねぇ。ノアは『付与』について、どの程度のことを知っているんだい?」
「えっ? 『付与』についてですか?」
(……知っていることといえば、自分のステータス値やスキルをモノに移し替えることができる位だけど)
「ふむ。そうだね。ノアの考えた通り、それが皆が知る『付与』の認識じゃ……」
イデアはノアの思考を読み取り話を続ける。
「誰もが、『付与』スキル保持者のことを自らのステータス値を楽に上げるためのツール位にしか認識していない……しかしね。最近になってわかり始めたことがあるんじゃよ。なんだかわかるかい?」
イデアは笑みを浮かべるとホーン・ラビットに視線を向ける。
視線を追ってホーン・ラビットの頭を撫でると、ノアは恐る恐る回答した。
「……魔石にステータス値を『付与』すると、疑似生命体を創り出すことができるとかですか?」
ノアの回答にイデアは満足そうな表情を浮かべる。
「その通りじゃ。例えば、アンデッド系の魔物・レイスなどが、良い例かのぅ?」
「えっ? レイス?」
(レイスは、なんらかの要因で肉体と魂が分離してしまった人間が変貌したアンデッド系の魔物。まさか、それとホーン・ラビットが同一の存在とでも言うのだろうか?)
イデアは、ノアの思考を読み頷く。
「――魔石には、魔力の他にその魔物の設計図・ゲノムと呼ばれる遺伝子情報が記憶されているからねぇ。魔石にステータス値を『付与』すれば、レイスに似た疑似生命体を創り出すことができる。爺さんが打った戦斧にも魔石が使われているからねぇ。戦斧が魔石の元となった魔物の体代わりとなっているんだ。そこにステータス値を『付与』されれば、インテリジェンス・ウェポンにもなるさね……」
「な、なるほど……そうだったんですね」
ノアが戦斧に視線を向ける。
すると、戦斧・灰燼丸の刃先が桃色に染まった。
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