『付与』して『リセット』!ハズレスキルを駆使し、理不尽な世界で成り上がる!

びーぜろ@転移世界のアウトサイダー発売中

文字の大きさ
上 下
20 / 47

第19話 第三の鍛練③

しおりを挟む
 戦斧に魔力を流すと、中心に填められた魔石が赤い光を帯びていく。

(――この戦斧にどんな効果があるかはわからない。でも、この戦斧はブルーノさんがこの鍛練のために用意してくれたもの……黒龍を倒すことができる。それだけの力が秘めているはずだ……!)

「――うおぉおおおおっ!」

 ありったけの魔力を戦斧に流すと、銀色に輝く戦斧が紅色に染まっていく。

「むうっ!! あ、あれは……! ノアよ。止めろっ! 止めるんじゃああああっ!!」

(遠くで心配そうな声を上げるブルーノさんの声が聞こえる……)

 ノアは、一瞬、ブルーノに視線を向けると『大丈夫。安心して……絶対に黒龍を倒して見せるから』と微笑んだ。

 ノアの微笑みとは真逆に、顔を引き攣らせるブルーノ。

(……ち、違う! そうじゃないっ! 灰燼丸なんて使ったら、真・黒龍丸がっ……新たに打ち直したばかりの真・黒龍丸がぁぁぁぁ!!)

 紅色に染まった戦斧に填められた魔石が限界まで輝くと、魔石から紅い光がノアに向かって伸びていく。その光はノアの背中に紅い翼を作り上げると、まるで敵から身を守るように体に纏わりついていく。

「すごいや……戦斧を持っているだけで力が溢れてくる……」
『GU! GRU⁉︎』

 ノアの持つ戦斧の力を感じ取った黒龍は、顔を上げると空に向かって逃げようとする。

「……逃がさないよ」

 そのことを感じ取ったノアは、紅い翼をはためかせ黒龍の目の前に移動し牽制した。そして魔力を込め紅く輝く戦斧を振り上げる。

「これで、終わりだぁぁぁぁ!」

 最後の足掻きに黒炎を吐こうとする黒龍と、打ち直したばかりの真・黒龍丸が壊されることを予見し、心の中で絶叫を上げるブルーノ。

『GRAAAAAAA』
(いやああああぁぁぁぁ!)

 ノアの声と共に振り下ろされた戦斧の一撃は黒龍を黒炎ごと真っ二つに両断すると、断面から発火し爆散した。
 その瞬間、真・黒龍丸に填められた魔石は砕け散り、ブルーノはガックリとうな垂れる。

(う、うおおおおっ!? ワシの……ワシの真・黒龍丸がぁぁぁぁ‼︎)

 心の中で絶叫し、涙を流すブルーノ。

「ブルーノさん! やりました……って、あれ? ブルーノさん⁇」

 黒龍を倒したノアがブルーノの下に降り立つとブルーノの様子がおかしいことに気付く。

(ブルーノさん……もしかして、泣いてる? でも、泣く理由なんて……)

 そこまで考え、ノアは気付く。
 ブルーノの流した涙が、嬉し涙であることに……。

「……ノアよ。素晴らしい戦いぶりじゃった。特にワシが鍛えた戦斧・灰燼丸の使い方が秀逸だったぞ」

 その証拠にブルーノは、ノアが黒龍を倒したことを称え喜んでいる(ように見える)。

「ありがとうございます!」
「うむ。本日の鍛練はこれで終いじゃ。さて、ノアよ。灰燼丸をワシに……」
「はい」

 手に持っていた灰燼丸をブルーノに渡すノア。

「うむ……」

 灰塵丸を受け取ったブルーノは、安堵の表情を浮かべる。

(真・黒龍丸は残念ながら壊れてしまったが、これだけでも回収することができて本当に良かった……しかし、おかしいのぅ? 灰燼丸に魔力を込めてもあんなことにはならないはずなのじゃが……)

 真・黒龍丸は魔力を流すことにより、闇の眷属・黒龍を召喚することのできる戦斧。
 そして、灰燼丸は魔力を流すことにより、原初の炎・プロメテウスを召喚することのできる戦斧だ。

 先ほどの炎を纏ったノアの姿は、まるで原初の炎・プロメテウスを模したかのような姿だった。プロメテウスの力を最大限に引き出し操っていたようにも見える。

 ブルーノ自身が鍛え上げた戦斧を失うのは体中の穴という穴から血と涙と悔恨の叫びを上げてしまうほど惜しい。
 しかし、灰燼丸を真に使いこなすことのできる者にこの戦斧が渡らないのは、灰燼丸があまりにも可哀想だ。

(灰燼丸は、真に使いこなすことのできる者が持つべきじゃな……その方が、灰燼丸も喜ぶじゃろうて……)

 灰燼丸に視線を落とした後、ノアに視線を向けると、ブルーノは頷いた。

「……ノアよ。灰燼丸を使って見てどうじゃったかのぅ?」
「灰燼丸ですか? それはもう、とても凄かったです! 持っているだけで力が湧いてくるし、あの黒龍を一撃で倒すことができるし! もう言うことなしですよっ!」
「ふむっ。そうか、気に入ってもらえてなによりじゃ……」

 ブルーノは満足そうに呟くと、灰燼丸をノアの前に提示する。

「ノアよ。改めて黒龍との戦い。見事であった」

 できれば、真・黒龍丸を壊さないで欲しかったが……と、そう言いかけてブルーノは首を振る。

「……戦斧・灰燼丸をノアに託す。この灰燼丸をワシだと思って大切に使ってくれ」
 
 唐突に気持ちが悪いことを言い出すブルーノ。

「……あ、ありがとうございます」

 そう言って灰燼丸を握り締めると、ブルーノは血の涙を流し、歯を食いしばって灰燼丸を凝視する。

「あ、あの……やっぱり、この戦斧はブルーノさんが持っていた方が……」

 ブルーノの剣幕に圧倒されたノアが思わずそう言うと、ブルーノは灰燼丸から手を離しソッポを向いた。

「……いや、そう言ってくれるのは嬉しいが、灰燼丸はノアにこそ相応しい。ワシを可愛がると思って大切に扱ってやるのじゃ」
「あ、はい。ありがとうございます……」

 そう言われノアは思った。
 この灰燼丸は軽々しく扱えないなと……。

「……あ、あれ?」

 ブルーノに託された戦斧を手にお礼の言葉を述べた瞬間、視界がブレた。
 見ている光景がモザイク状となり、視界の端から真っ黒に染まっていく。

「うん? ノアよ。どうし……ノアッ! しっかりするのじゃっ! ノアッ!」

(あれ? ブルーノさんが俺を心配して……あ、ダメだ。これ以上、なにも考えられ……)

 ブルーノの声が魔の森に響き渡ると共に、託されたばかりの戦斧がノアの手からするりと抜け落ちた。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

異世界に転生したもののトカゲでしたが、進化の実を食べて魔王になりました。

トモモト ヨシユキ
ファンタジー
異世界に転生したのだけれど手違いでトカゲになっていた!しかし、女神に与えられた進化の実を食べて竜人になりました。 エブリスタと小説家になろうにも掲載しています。

固有スキルガチャで最底辺からの大逆転だモ~モンスターのスキルを使えるようになった俺のお気楽ダンジョンライフ~

うみ
ファンタジー
 恵まれない固有スキルを持って生まれたクラウディオだったが、一人、ダンジョンの一階層で宝箱を漁ることで生計を立てていた。  いつものように一階層を探索していたところ、弱い癖に探索者を続けている彼の態度が気に入らない探索者によって深層に飛ばされてしまう。  モンスターに襲われ絶体絶命のピンチに機転を利かせて切り抜けるも、ただの雑魚モンスター一匹を倒したに過ぎなかった。  そこで、クラウディオは固有スキルを入れ替えるアイテムを手に入れ、大逆転。  モンスターの力を吸収できるようになった彼は深層から無事帰還することができた。  その後、彼と同じように深層に転移した探索者の手助けをしたり、彼を深層に飛ばした探索者にお灸をすえたり、と彼の生活が一変する。  稼いだ金で郊外で隠居生活を送ることを目標に今日もまたダンジョンに挑むクラウディオなのであった。 『箱を開けるモ』 「餌は待てと言ってるだろうに」  とあるイベントでくっついてくることになった生意気なマーモットと共に。

異世界召喚されたら無能と言われ追い出されました。~この世界は俺にとってイージーモードでした~

WING/空埼 裕@書籍発売中
ファンタジー
 1~8巻好評発売中です!  ※2022年7月12日に本編は完結しました。  ◇ ◇ ◇  ある日突然、クラスまるごと異世界に勇者召喚された高校生、結城晴人。  ステータスを確認したところ、勇者に与えられる特典のギフトどころか、勇者の称号すらも無いことが判明する。  晴人たちを召喚した王女は「無能がいては足手纏いになる」と、彼のことを追い出してしまった。  しかも街を出て早々、王女が差し向けた騎士によって、晴人は殺されかける。  胸を刺され意識を失った彼は、気がつくと神様の前にいた。  そしてギフトを与え忘れたお詫びとして、望むスキルを作れるスキルをはじめとしたチート能力を手に入れるのであった──  ハードモードな異世界生活も、やりすぎなくらいスキルを作って一発逆転イージーモード!?  前代未聞の難易度激甘ファンタジー、開幕!

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います

ゆさま
ファンタジー
美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされ、生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれてしまった、ベテランオッサン冒険者のお話。 懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?

俺だけ成長限界を突破して強くなる~『成長率鈍化』は外れスキルだと馬鹿にされてきたけど、実は成長限界を突破できるチートスキルでした~

つくも
ファンタジー
Fランク冒険者エルクは外れスキルと言われる固有スキル『成長率鈍化』を持っていた。 このスキルはレベルもスキルレベルも成長効率が鈍化してしまう、ただの外れスキルだと馬鹿にされてきた。 しかし、このスキルには可能性があったのだ。成長効率が悪い代わりに、上限とされてきたレベル『99』スキルレベル『50』の上限を超える事ができた。 地道に剣技のスキルを鍛え続けてきたエルクが、上限である『50』を突破した時。 今まで馬鹿にされてきたエルクの快進撃が始まるのであった。

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

処理中です...