『付与』して『リセット』!ハズレスキルを駆使し、理不尽な世界で成り上がる!

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第16話 第二の鍛練②

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 食べ物や飲み物を十分に与えられていないのだろう。
 虚な目をした未来のノアは、ボソボソ呟きながら、檻の中でどこか遠くを見つめている。

『あ……ああ……』

 ノアのその虚な視線を向ける先に目をやると、そこには、未来のノアと同じく捕らえられ収容されたイデアとブルーノの姿があった。
 双方共に満身創痍で、いつ命が尽きてもおかしくはない。
 ノアは思わず呟く。

「ひ、酷い……」

 おそらく、この場所は『付与』のスキル保持者を捕らえ、ステータス値を搾取するための収容所。
 しばらくすると、それを証明するかのように、魔石を持った男が現れる。
 男はギロチン台のように刃の付いた手押し式の機械に魔石を置くと、ノアに魔石を破壊するよう指示を出す。

『28番。本日分の魔石だ。早く砕け……』

 魔石は壊すことで経験値に換えることができる。
 男は未来のノアに魔石を壊させることで、レベルを上げさせステータスを搾取しようとしているのだろう。

『おい。早くしろ』

 男はそう言うと、牢屋越しにノアの手を取り魔石を破壊させる。
 そして、ルーペのような道具でノアを覗くと、ニヤリと笑った。

『よし。それでは、「ステータス」を開け』

 男の言葉に未来のノアは『あ……ああ……』と呟く。
 その瞬間、未来のノアの体が後ろに向かって吹っ飛んだ。
 男が持っていた槍の柄でノアを突いたのだ。

「な、なんてことを……」

 あまりに非人道的な扱いに、ノアは目に皴を寄せる。
 男は檻の扉を開け中に入ると、ノアの胸倉を掴み恫喝するように言った。

『おら、「ステータス」だ。言ってみろゴミクズ』
『ス、ステータス……』

 未来のノアがそう言うと、半透明な四角いボードが表示される。

 ◆――――――――――――――――――◆
【名 前】ノア・アーク
【年 齢】18    【レベル】‌60
【スキル】リセット 【ジョブ】奴隷
     付与
【STR】体力:2  魔力:2
     攻撃:2  防御:2
     知力:2  運命:2
 ◆――――――――――――――――――◆

 そのステータスを見てノアは愕然とした。
 三年後の自分があまりに不憫で……。

「ど、奴隷……」

 奴隷とは、人格としての権利と自由を持たず、主人の支配下で強制・無償労働を行い、商品として売買、譲渡の対象とされる『もの言う道具』の総称である。
 レベル60という高さから見るに、相当、前から奴隷としてステータスを搾取され続けたであろうことがステータスを通じて理解できた。

『ほら、これを持て。落とすんじゃないぞ。これは、お前よりよっぽど価値のあるアイテムなんだからな』

 男は、未来のノアの片手に指輪のようなアイテムを持たせると、もう片方の手を掴みステータス値を指輪に移していく。

 そして……

『さてと……もういいか。それじゃあな』

 ――ドスッ

『う、ぐっ……』

 それだけ呟くと、男は持っていた槍で未来のノアの喉を思い切り突いた。
 苦悶の表情を浮かべる未来のノア。
 喉から噴き出す血。そして、男の笑い声。
 未来のノアの目から段々と光が失われていく。

『あははははっ! これでようやくお役御免だぜ。正直、きつかったんだよなぁ。臭ぇし、汚いし、こんなゴミの掃き溜めみたいな所に来るのはよぉ! あ、そうだ。こいつも死んだことだし。あいつ等も一緒に処分しちまおう』

 未来のノアを足蹴にすると、男は向かい側の檻に入った未来のイデアとブルームに視線を向ける。

『こいつ等を生かしておかないと死ぬって、うるさかったからなぁ。まあ、もうそれもこれでお終いだ。よかったなぁ。こいつと同じ天国に行けるぜ? ステータス値を搾取された後の干乾びたジジイとババアはさっさと死ねよ!』

 そう言って、未来のイデアとブルームの喉を槍の穂先で突いていく男。
 あまりの居たたまれなさに、思わず顔を背けると、目の前の景色が暗転し、またもや場面が変わった。

「はあっ、はあっ、はあっ、はあっ……」

 荒い息を吐くノア。
 目の前には、手斧を持ったブルーノが立っていた。
 どうやら、現実に戻ってきたみたいだ。

「――戻ってきたようじゃな? どうじゃったかのぅ? 己に起こりうる未来を見た感想は……」
「ブルーノさん……」

 そう呟くと、ノアはブルーノにしがみ付く。

「うん? どうした。もしかして、怖い未来でも見たか?」
「は、はい……恐ろしい未来を……」

 しかし、ノアはそれを口に出して言わない。
 それを言ってしまえば、現実になってしまいそうな気がするからだ。
 ブルーノはノアの頭に手を乗せる。

「そうか……しかし、だからこそ、ノアは強くならねばならん。心を強く持たねばならんのじゃ。そうでなくては、自分だけではない。本当に護りたい者ができた時、その者を失うことになるじゃろう」
「うん」
「……それがわかれば良い」

 そう言うと、ブルーノはノアの頭から手を離し、戦斧を手に取る。

「えっ?」

 戦斧を持ったブルーノに視線を向けるノア。
 そこには、顔から感情の抜けたブルーノが立っていた。

「……恐怖を克服し、起こりうる未来を見せることで、己がスキルを理解したはず。それでは、本日最後の鍛練と洒落込もうかのぅ」
「ブ、ブルーノさん。なにを……」

 ノアの言葉にブルーノは口元を歪ませる。

「最後の鍛練じゃ。己が力を示し、このワシに認めさせてみよ」

 そう言うと、ブルーノは手に持った戦斧を振り上げた。
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